そのサリアの天馬騎士リーザ率いる天馬騎士団がレダ領にいた。ガーゼル教国軍の配置状況を確認するためであった。メーメル山を越えたところに教国軍の騎馬部隊が展開されていた。リーザはリグリアへの奇襲部隊だと推測し、迂回しながらさらに奥地へと向かったリーザの予想通り、エリアル山の麓に暗黒魔道士やダークソルジャーの大軍団がいた。さっきのメーメル山の騎馬部隊に合流するための行軍中であろう。リーザがリグリア砦への帰途に着く途端に、一本の空気がペガサスの足をかすった。それは紛れも無く教国軍の弓兵が放った弓であった。次の瞬間に暗黒魔法が彼女たちを襲い始めた。巧みにかわし続けてはいたものの、その連続攻撃にペガサスが避けきれなくなっていた。次第に仲間の天馬騎士がジャヌーラの生贄になっていった。それはリーザを逃がすためにあえての行動であった。他のものも隊長を守るため命を賭けて守りつづけたものの、少数だったため瞬く間にリーザ一人となってしまった。しかしその頃には仲間の決死の行動もありジャヌーラの攻撃範囲を抜けていた。後悔と失意の念を抱きながらリーザはどうにかリグリア砦へと戻ってきた。そこで待っていたのは『ウエルトの王子』のロファールであった。彼は彼女の疲労困憊(ひろうこんぱい)の様子と一人だったことから彼女に起こった事件を悟った。そして何も言わずに彼女を父親であるオクトバスのもとに連れて行った。リーザが父親の顔を見たとき、いままでこらえていたのかわっと泣き出した。オクトバスはロファールから事情を知り、リーザをきつく抱きしめた。それはまさに親子そのものであった。ロファールは何も言わずに彼らのテントから出て行った・・・。次の日、ロファールはオクトバスの元へ行った。やはり彼女のことが気になったのであろう。
「オクトバス殿、リーザさんはどうでしょうか?」
「おお、ロファール王子。昨日はご迷惑をかけてすまなかった。彼女ならもうグラムド公子たちの所へ昨日の報告に行っておる」
「なんと気の強い女性だ。しかしやはり辛いでしょうね、悲劇の舞台まで再び行くのなら」
「いや彼女はそうしなければいけないと自分で言っておりましたぞ。彼女たちのために遺体を出来るだけ自分の手でサリアの地に埋めてあげなければ、と思っているのでしょう。」
「しっかりした娘だ。」
「おや、もしかして私の娘に惚れたのか?」
こうオクトバスが訪ねると、ロファールは顔を赤らめながら、
「そ、そんなわけありませんよ。オクトバス殿も人が悪い。」
「ハハハ。そうごまかすな。そなたたちが初めて出会ったときからお互いに惚れあったことぐらい私にはわかる。だから軍議の時もリーザの偵察に難色を示されたのでは?」
「・・・・・・」
火の神官家に全てを見透かされたロファールはまた赤くなりながらもうなずいた。
「ハハハ、そうかそうか。それでは今夜、砦の東の門にリーザを行かせるからうまくやるんだぞ。」
「! しかしそれでは神官家の後継ぎが・・・。」
「なにも心配することはない。後継ぎならアンドレもいるし、クラリスもいる。気にすることはない。それにあいつはサリアの天馬騎士団長だったのだから神官家を継ぐ訳がないだろう。あいつには騎士が似合っている。そしてお主ならあいつを幸せに出来る。」
その夜、ロファールはリグリア砦の東の門で彼女を待っていた。もちろん彼らが結ばれた
ことは言うまでも無い。