ついに解放軍はリグリア砦を発ち、レダ地方への侵入を始めた。先鋒を任されたのは騎馬部隊のグラムド公子とアーレス王子があたった。グラムドはリーヴェ王国の中でも文武に優れていて将来を有望視されていた。アーレス王子もまたカナン王国で最も優れた大将としてこちらも有望視されていた。二人の軍は早速、メーメル山に展開していたガーゼル教国の騎馬部隊との戦闘が始まった。いつもは冗談を交わす二人だったが、戦場となると一気に人が変わり敵を斬っていた。二人の勇猛な働きにその家臣たちもまた勇気付けられ猛攻を教国軍へ与えた。戦闘開始からわずか1時間、敵陣から撤退の狼煙(のろし)が上がり敵は陣を崩しわれが先にと逃げてゆく。だが山に囲まれた地形で撤退するなど命を捨てるようなものだった。ましてや敵は陣形を崩している。しかし二人は声をそろえて、
「深追いはするな。戦意のないやつを殺すのはガーゼル教国と同じだ。」
その直後、騎馬部隊は陣形を速やかに戻した。それは二人の部隊が厳しい訓練をしてきた証拠だった。まもなくして神官家の魔道部隊も追いつき、ここで陣を張ることとなった。
「教国軍といえども哀れだな。なぜガーゼルを信奉するのかわからない。」
グラムドが嘆く。
「やはりサリア・レダ戦争が原因ではないのか?あの戦争からこの大陸の人間はどうも私欲のために動いているとしか思えない。それで旧ゾーア人の迫害だ。カルバザンの時と何も変わっていない。」
アーレスもまた嘆く。二人はこの戦争を早く終わらして、万民が平和に作る世界を作りたかった。そのことが二人の距離を縮めていた。リーヴェとカナン、二つの違う国など、この解放軍では意味のないこと。ここには大陸全土から若者が集まっている。しかも同じ大志を持って・・・。
「なぁ、この戦争が終わっても一緒に戦おうぜ。おまえと一緒にいるとなぜか気が合う。さっきの掛け声だって全く同じだっただろ。」
とアーレスが冗談交じりに言うと、
「冗談じゃねぇよ。この戦争が終わったら、お互いにラゼリア公子とカナン王子にもどっちまうんだ。二カ国間に同盟が無い限り、おれは一人で戦うぜ。」
「硬いなぁ。別にそういう意味じゃねぇよ。お互いに困ったことがあれば助け合う、それだけのことだよ。」
「そうならそうと言え。全くお前はいつも表現が間接的だな。」
「で、どっちなんだ?」
「それならもちろん構わないぜ。」
二人はここで誓い合った、「俺たちは永遠の戦友だ」と。
次の日も二人の部隊が先鋒となりさらに奥地へと進む。しかし先日リーザが見たような大軍はいなかった。おそらく二人の勇猛さに恐れをなし、レダの谷まで後退したのだろうと二人は読み、伏兵にも注意ながらレダの谷へと向かった。レダの谷とは旧レダ王国の中央にある谷のことである。解放軍の最終目的地であるレダの城はこの谷にある。つまりここを抑えられると教国軍はレダ領における支配を手放すことになる。二人は谷を一望できる所に軍を止め、谷を見回した。予想通り、古城のまわりにはかなりの量の大軍が配備されていた。さすがに二部隊でも不利と見た二人は魔道部隊の到着を待つこととなった。しかし二部隊に気づいた教国軍は彼らに攻撃を始めた。仕方が無く戦闘を余儀なくされた二人は数に勝る教国軍と対等に戦った。しかし2時間が経過すると、解放軍にも疲れが見えてきた。徐々に戦況がわるくなるのが二人にはわかっていた。6段に構えていた陣も30分毎に1段ずつ撃破されて、まもなく全滅という所に教国軍に火の手が上がった。オクトバスのメティオールが敵の後方に炸裂したのだった。これに動揺した教国軍に対して息を吹き返したグラムド・アーレス軍は突撃を敢行した。魔道部隊からのヘルファイアー、ブリザ―ド、ライトニング、前回の雪辱を晴らすべく再編成されたリーザの天馬騎士団から投げられるピラムの雨、ゾーアの魔剣士と呼ばれたヨーダとエリアルの傭兵王テムジンの剣士部隊の華麗なる剣技、そして勇敢なグラムド・アーレス軍の突撃により教国軍は惨敗した。生き残った教国軍の敗走の様子を見ながらアーレスが言う。
「とうとう終わるな、この戦争も。」
「いやまだ終わっていない。ガーゼル教国がもう悪さができないようにしただけだ。教皇グエンカオスを倒さない限り、教国はまたやってくるだろう。」
「そうだな。だがまた出てきても俺たちで撃退させちゃおうぜ。」
「ふ、そうだな。約束だぜ。」
「ああ、もちろんだ。」
解放軍がレダの古城についた時、戦争は終わったと皆が思っていた。だがその古城に教国軍の最後の罠が待ち受けているとは誰もが思わなかった。