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 ヴェスティア決戦2日目、すでに多くの戦いの決着がつき、勝利した勇者たちはヴェスティア宮殿にてようやく安息の時が訪れたかのように思われた。しかしヴェスティア宮殿でセーナが想像していない事態が勃発していた。
 それはライトがヴェスティア宮殿に戻ってきた頃である。リュナン、セネトらリーベリア諸将とフィリップ、ミーシャらがそれぞれの戦いについて語っていたところに、セイラ、ライを引き連れて戻ってきた。仮にも主筋にあたるミーシャやカリナは大人しく下がり、対等の位置にいるフィリップ、リュナン、セネトらが彼の戦勝を祝した。しかしライトは彼らに何も言わずにまたしても奥に下がってしまうのだから、忠臣ゼノンを失ったばかりのセネトは声を荒げた。
「待たれよ。貴公の国のために忠臣を失ってまで戦って、労いの言葉どころか挨拶すらないのか。」
セネトは一見温厚に見えるが、一度機嫌を損ねるとリーベリアの獅子王リチャードにすら突っかかるほどの気の悪さを有していた。いつものライトならせめて謝罪をしていたのだが、エルトを討ったことで彼の中で何かの箍が外れていた。
「貴公らにはヴェスティアに来るなとは言わなかったが、招待するとも言ってはいない。」
つまりはこっちが知らぬことと突き放したのだ。これにセネトが激怒した。だがライトは更に冷酷に言い放つ。
「一国の主ならば自分の行動に責任を持ったらどうだ。それを我々にぶつけるから西蛮と揶揄されるのだ。」
捨て台詞を残してライトは去っていった。これには少なくない犠牲を払ったリュナンらリーベリア諸将も愕然としており、フィリップ、ミーシャらもライトの変わり様に唖然とした。場の状況を察したレイラとカリナ、グレンらが必死にセネトらに謝罪するも、もはやセネトも激したまま終われなかった。
「もうこのような国にはおれぬ。即刻、帰るぞ!!」
怒声をあげてセネトはカナン軍をまとめて、何とカナンに帰ってしまったのだ。リュナンたちが必死に制止しようとするも、セネトは全く聞く耳を持とうとすらしなかった。
(確かにやってられないな。)
リュナンもそう感じていたが、ライトの言うことにも理がないわけではないのだから非常に複雑だった。


 その日の午後、ヴェスティア北部にてグリューゲルとクロスナイツによる最後の戦いが始まった。ヴェスティア宮殿からはリュナン、サーシャ、ノールらリーベリア諸将が後学のためにと、レイラ、ミーシャ、グレン、カリナ、ミキらが純粋にセーナを心配してその様子を見ている。
 戦いはアベル指揮するグリューゲルがヴェスティアに乱入してきた時点で始まっていた。セーナにこれ以上、苦痛を与えないように流星陣による一気攻略を目論んだアベルは手勢を三つに分け、臨戦態勢の整っているクロスナイツに流れ込んだ。カリナやミキはもうこれで勝ったと思い込んでいたが、レイラやグレンは単純に喜んでいない。
(流星がこんな簡単にハマるはずがない。)
今までセーナが発動してきた流星陣は2度。ガルダ戦役では今のガーディアンフォースが当時のゾーア帝国軍を正面から受け止めていた間に背後から切り裂き、シアルフィ決戦ではマリク軍後方にいたフィーリアを寝返らせることで敵を二方面に分割して、かつ心理的動揺を誘ってから仕掛けた背景がある。しかし今、目の前ではその事前を疎かにした状態での発動に彼らは疑問に思っていたのだ。
 すると思わぬところから軍勢が飛び出てきた。クロスナイツの背後からふぃに出たかと思えば、雪崩れ込もうとしている流星陣に横から奇襲した。
「クロスナイツ隊長マックス、ここにあり!」
ライト率いるテルシアスとの戦いで生死不明となっていたマックスだが、わずかな手勢と共に密かに戦場を脱出してこの機会をこそ真に狙っていたのだ。マックスの奇襲で、無敵を誇った流星はついに強引に止められて、それを満を持して進撃してきたクロスナイツに迎撃された。
 乱戦となると流星陣のためにバラバラになっていたグリューゲルの不利は否めなかった。戦力的にはクロスナイツはエルトシャン2世が欠けているが、グリューゲルはセーナがいない(ミカとゲインはグリューゲルを既に離脱しているので別)ため互角と言える。だからこそマックスの奇襲は何よりも大きなアドバンテージを持っており、それゆえにクロスナイツはグリューゲルを圧倒している。
 だがマックスの奇襲で作った流れはやがり別の奇襲でガラッと変わるものである。突如、フリージ方面から新たな手勢が現われたかと思えば、アベルがし損ねた流星陣を形成してクロスナイツ後方に襲い掛かる。それこそがセーナ、ミカ、ゲインの三将率いる精鋭アルバトロスである。数は一ヶ月前のフリージ奇襲戦で数を大きく減らしているが、この三人に指揮された部隊は恐ろしく強かった。それでいて目の前のグリューゲルに夢中となっていたときでの奇襲であったためにそれこそマックスの奇襲をも上回る衝撃がクロスナイツにかかった。
「さすがはセーナ様だ、我々の行動は読まれていたのか。」
マックスは既に勝敗がついたことを察したが、当のセーナはマックスの奇襲を読んではおらず、フリージ丘陵にて悲しみに暮れていたところにグリューゲル苦戦の知らせが届いて、即座に駆けつけてきたのが事実である。
 (もうこれ以上、大事なものを失わせるわけにはいかない。)
そう決意したセーナは自身の作り上げし『家族』ともいえるグリューゲルのために奮闘した。流星陣はクロスナイツを貫き、すぐに引き返してはそのど真ん中を文字通りぶち抜いた。この二度の強襲でクロスナイツ主将マックスはゲインによって一刀のもとに斬られ、短いその生涯を終えることになった。
 ある程度、勝負が決まれば抵抗することが無駄であると知っているクロスナイツは一斉に戦闘をやめた。そこはエルトシャンの薫陶よろしい精鋭の姿があった。グリューゲルも敵の勇を讃えて、捕縛するようなことはせずにセーナは希望すればグリューゲルに無条件に入れることも確約し、彼らの感動の涙を誘った。


 後世、この戦いを語った吟遊詩人の多くはこう謳い終えた。

流星よ
 あまねく照らす
  光とならん

セーナの涙が流星となり、これからユグドラルは新たなる時代を迎えることになる。

 

 

 

 

 

最終更新:2011年07月23日 22:48