神君マルスがファイアーエムブレムを初めて手にした地オレルアン。現在はアカネイア傘下としながらもロイト陣営に参加し、アカネイア大陸東方に睨みをきかす立場にあるが、今は突如矛先を変えてきたグラ王国軍によって押されている。オレルアンの総動員の4分の1程度の軍勢で侵攻してきたグラだが、電撃戦の元に王国西部を瞬く間に席巻し、オレルアン王都に迫ろうとしていた。だが、オレルアンもようやく体勢を立て直して40万という大軍を持ってグラ軍と対峙、数の圧倒的多数を持って平押しにしていた。グラ軍はアリティア軍と匹敵する精鋭ではあるが、女王ジャンヌのいない軍勢では地力にも劣っていた。ジリジリと押されていたグラ軍だが、ここで参戦したきたマケドニア国王ガーラントの軍勢が流れを変えた。アリティア・アカネイア双方から恐れられた竜騎士の帝王はさすがに威厳に満ち溢れており、腰が引けつつあったグラ軍も喝を入れられたことで反転攻勢に転じた。しかしこれでも兵数は互角。意気は盛んだが、長行軍でマケドニア軍はまだまだ全力は出せずにいることで決め手にはなり得なかった。当然、オレルアン軍もガーラントを攻める意気が上がらず、自然と膠着状態となる。
流れを変えたのは更に遅れて参戦してきた軍勢だ。しかし数は万にも満たないごく少数だが、その旗印にグラ・マケドニア軍、オレルアン軍双方が戦慄した。瞬く間にオレルアン軍後方を急襲した【双龍旗】の軍勢は一気に突き抜けた。ガタガタとなった軍勢にグラ・マケドニア軍が突っ込んだことで、オレルアン軍は今までの善戦が嘘のような大敗となり、王城まで後退していった。泣く子も黙る【双龍旗】の旗印、ヴェスティア帝国の証である。そしてこの軍勢はセーナの長女エレナが率いるプレヴィアス・グリューゲル、つまり世界最強の少数精鋭部隊だった。中央公路入り口でアカネイア軍と睨みあっていたはずだが、彼女は手勢のほとんどをアーサーとサーシャに預けてオレルアンに向かって飛び出してきたのだ。ハルトムート、アトス、サルーン、リーネの四人が欠けているグリューゲルではあるが、まだまだ現役のアベルとフリードが彼らを引っ張っているのでアーサーも心配することなく、即座に承諾したので何とかこの会戦に間に合った形になった。
戦後、エレナはアベルとフリードら残った十勇者たちを引き連れて、ガーラントやグラの諸侯たちと会見した。ガーラントは表の性格こそ孫娘アイリと似ていることを実感したものの、器量では遠くアイリは及ばないことを即座に見て取り、驚くべき行動を取った。この軍の指揮権を丸ごと全てエレナに委譲したのだ。何度も言うが、ガーラントはアリティアもアカネイアも恐れさせた狼で、それがまだヴェスティア皇女という地位しか持たない少女の傘下に入ると言ったようなものである。当のエレナも珍しく戸惑う素振りを見せたが、結局はエレナがグラ・マケドニア両軍をとりあえずまとめることになった。
翌日からエレナ軍はオレルアン王城を包囲。降伏勧告をしたものの、すぐ近くの中央公路にてアカネイア軍がいることを知っているので、彼らの援軍に望みを託しているのか、即座に拒絶してきた。兵力も決して凌駕しているわけではないので、エレナたちも我攻めにすることはできず、再び膠着状態に陥ることになる。
そしてカダイン砂漠の決戦は、すでにカイ率いるロイト軍別働隊とセーナ軍が睨み合っている。
「相手はカイだそうね。」
セーナがミカとブラミモンドに訪ねると、二人は神妙に頷く。ミカはかつての同僚、ブラミモンドは尊敬すべき先輩にあたるので複雑な心境である。
「聞けば、もうそう長くはない命だとか。ならば私たちも全力を尽くさねばカイに失礼ね。」
それは己にも言い聞かせているようでもある。すでにロイトとカイが半生をかけて練り上げてきた大作戦は、セーナのアリティア占拠によって破綻している。だがカイは己の命にかけてその戦略をつなごうとしている。共に戦い抜いてきた戦友としてはどうにかカイの顔を立たせてあげたいとも思うが、ヴェスティア皇帝という地位に上った今は私情を挟むわけにはいかない。ましてや、この戦を負ければセーナたちの今までの努力が水泡に帰してしまうのだ。そして何よりもカイがセーナとの戦いを望んでいる。ブラミモンドからの報告を受けるにつれてセーナはこの戦いが運命づけられていたことを悟った。
「ブラミモンド、諜報網は万全ね?」
「さすがにカイ様のおかげで度々寸断されておりますが、明日は増員するので大丈夫です。」
「わかったわ。ミカ、アルフレッドたちを呼んで。」
頷いたミカはすぐにアリティアで雇った騎士たちを連れてきた。リーベリアで若き傭兵王と謳われた剣士アルフレッド、そして彼に付き従うアカネイアの女剣士マーニであった。
「お呼びですか?女帝さん。」
気さくに話しかけるアルフレッドにさっきまでの葛藤をすっかり吹き飛ばしたセーナは微笑みながら、アルフレッドに語る。
「明日の戦はあなたに全てを委ねるわ。目の前にあなたの仇がいることですしね。」
そして敵陣先鋒の位置する、翼の生えた剣の紋章を指差した。
「私はこの戦、メーヴェ様の期待に応えるために戦うのみです。仇とかそんなものは・・・。」
「ふふ、あなたは普段元気なのに、どうして難しい話になると息苦しいくらいになるのかしらね。」
「そ、それはセーナ様が・・・。」
「もうちょっと肩の力を抜きなさい。あなたの目指していることは素晴らしいことに違いないわ。でも、だからこそ己が突き進むだけではなく、周りのことにもしっかりと目を配らないとね。」
その言葉にアルフレッドはハッとする。今まで思ってもみなかった言葉だ。
「今のは私からあなたに送る言葉よ。何かの役に立てば幸いよ。」
「と、とんでもない。今の言葉は目からウロコが落ちる思いです。」
地面に顔がめり込むくらいに頭を下げるアルフレッドを見て、セーナたちはつい微笑みをもらす。
「アルフレッド、明日の戦い、お願いするね。」
そう言って下がっていった。
「ミカ、ブラミモンド、あなたたちももう寝なさい。明日から2、3日は寝かせないんだからね。」
苦笑いを浮かべてミカもアルフレッドの下を去り、残ったアルフレッドはマーニに言う。
「マーニ、君も同じことを思っていたのか?」
無愛想なマーニは何も言わないが、どことなく目が笑って見えた。それでアルフレッドは十分だった。
「そうだったのか・・・。だからこうなってしまったのか。」
「早く寝よう。私たちも体が持たなくなるぞ。」
マーニはすでに寝床に向かっていた。
「あ、マーニ、ちょっと待て。」
駆けて行くアルフレッドの背中にはもう迷いは見られなかった。その光景を遠くから見ていたセーナもしみじみ思っていた。
「私も迷っていられないわね。」
そしてセーナも寝床に付いた。
翌日、ついにカイとセーナの戦いが始まった。セーナに時間を与えたくないカイが先手を取って、カダインで雇った傭兵隊を先鋒にして突撃させる。彼らが戦うカダイン砂漠には障害物は何もなく、伏兵を隠す要素は皆無。つまりセーナの得意戦術は封印された形となり、グリューゲルを引き連れていないセーナ軍は圧倒的多数のカイの軍勢に負けるはずであった。しかしカイは目の前の光景に目を疑った。
『敵軍、先鋒を残して北上!戦場を離脱します!』
物見からの報告も目の前の光景そのままである。
「軍師様、これは一体!!」
異様な光景に驚いたプラウドが駆けつけてきた。
「もしかしたら先日のアルド皇太子の真似かもしれない。プラウド殿、セーナ様の本隊を攻撃してくれ。」
本隊が伏兵と化す戦術はラーマンの戦いで経験積みだ。だが、あそこには軍勢を隠す森があったが、ここは砂の荒野である。ならば横撃されるまでに突っかかれば良い。プラウドもすぐに承知して、手勢を繰り出す。さすがにグラ率いるバーハラ・ロートリッターを蹴散らした軍勢だけあって精強で、プラウドの命があるやすぐに飛び出した。
「あれが噂の軍勢ね。確かにかつてのクロスナイツにそっくりだわ。あんなのに捕まったらいっかんの終わりよ。」
そう言ってさらに軍勢を急かせる。
「いい、今は逃げるのよ。命あっての物種よ。」
何とセーナはすでに逃げていたのだ。セーナの軍勢は一万未満、援軍は遥か後方、戦場は砂漠、こんな状況でセーナは勝ちはないことを誰よりも理解していた。そして戦うと見せかけて1日待った上で、一気に逃げ出した。だがただ逃げるだけでは芸がない。いずれ追いかけてくる敵が追いつかないとも限らない。そこでセーナはとんでもない手を打っていた。
恥も外聞もなく逃げるセーナ軍に引き摺られるようにプラウド軍が突出するようになった。そこに北から正体不明の軍勢が突っ込んだ。
「行けーーーっ!グラオリッターよ、リーベリアで溜め込んだエネルギーを目の前の敵に解き放て!」
黒き重鎧を身にまとった軍勢、グラオリッターがプラウド軍に突っ込んだ。
「我が名はユグドラルの双龍星の暴龍・レクサス!!腕に覚えのある奴は出て来いっ!」
前まではリーベリア大陸でレダと睨みあっていたアグスティー公国公子のレクサスであった。彼は親友デーヴィドと共に『セーナの指令』の元、密かにアカネイアに渡っていたのだ。そしてブラミモンドとの繋ぎを確立したことで、いつでもセーナ軍に参加することが出来るようにもなっていたのだ。彼の率いる軍勢は2
万、彼らの重装軍団を輸送したためにデーヴィドの竜騎士団は休養が必要ですぐには動けないのだが、それでもこれだけの数は今のセーナ軍では心強い。グラオリッターは斜め前方から突撃を敢行し、プラウド軍は大きく陣形を乱した。
「俺はプラウドだ。レクサスとか言うのは貴様か!?」
あと少しでセーナ軍に追いつけそうなところを急襲されたので、すこぶる機嫌を害しているプラウドは八つ当たり気味にレクサスにぶつかった。だが相手は若くして百戦錬磨の斧戦士、何よりもセーナから暴龍と命名されているだけあって恐ろしく強かった。もしプラウドが巨剣ツヴァイハンダーを使っていなければ、当に剣もろとも吹き飛ばされていただろう。気が付けばセーナ軍は地平線の彼方に消えつつあり、それを見届けたレクサスも最後に強烈な一撃を放って悠々と戦場を後にした。プラウド軍はほぼ蹴散らしたものの、後続にカイが本隊を率いてきてしまったために、今の兵力では無謀と判断したためだ。
「くそっ!待てっ!俺と戦え!!」
叫ぶプラウドだが、もうレクサスは去っていた。そしてプラウドの腕もじんじんと痺れており、意志とは裏腹にこれ以上の戦いは無理であることを体は示している。
「プラウド殿、無事ですか?」
駆けつけてきたカイに、プラウドはようやく我に返った。手勢はグラオリッターによって切り刻まれ、すぐの追撃は無理である。
「この様子だと、数時間は建て直しに必要だな。プラウド、説明は後だ。軍を立て直し次第、すぐにロイト様のところまで戻るんだ。」
そしてカイは呆然とするプラウドを置いて猛スピードで駆けて行く。
(私が愚かであった。まだセーナ様の策が潰えていなかったのか。全ては私とロイト様を引き裂くためのもの、そして何よりもセーナ様は囮。本命は今まで戦ってきた者だ。)
唇を噛みながら馬を走らせるカイはレクサスの参戦で事の全容を理解した。
(ルゼル、まさか君が舞台を設えていたとはな。)
もうこの頃にはロイト軍は悲惨を極めていた。カイの後詰に向かっていた頃に南から突き上げてくるルゼル率いるヴェスティア・マケドニア連合軍に押され捲くっていた。
「くそっ、こいつらはどこから現われた。カシミア大橋が落とされたという報せは入ってないぞ。」
混乱しながらも必死に態勢を立て直そうとするロイトに、容赦なくマケドニアの勇者フレディの豪槍が振るわれる。そう、これこそがセーナ、ミカ、ルゼルが脳漿を搾りあって作り上げた結晶。セーナの【剣と槍】も、あくまでルゼルの策の前哨に過ぎなかったのだ。全てはここでロイトに決定打を打ち込むための布石であった。ここまでの輸送はセーナがアリティアに来る時に使ったヴェスティア海軍やアリティアで買い揃えた小船で行うことで、ロイト軍にも知られることもなく無事に果たしている。そしてセーナに目が行っている昨今の状況では発見できる要素は何もなかった。作り出した死角を効率的に利用したルゼルの鮮やかな作戦である。
「凄いな、ルゼル。こんな壮大なことを考えていたのか。」
感嘆するのは彼についてきたアルドである。今回の大策戦においては蚊帳の外に置かれていた彼だが、不思議と悪い気分にはなっていなかった。今回の戦に限っては指揮権をルゼルに委譲して、今は後学のための勉強ということで付いてきているが、これほど素晴らしい経験になろうとは本人も思っていなかったのだろう。とにかく柄にもなく、アルドも興奮していた。
「皇子、まだ戦場ですので、油断なさらないでください。」
するとルゼルの元にグラが飛んできた。プラウドとの戦いで重傷を負った彼だが、すでに快復してルゼル軍の先鋒として襲い掛かっていた。
「どうした、グラ。またあいつでも出てきたか。」
半分からかい気味にルゼルが聞くが、頬を膨らませながらも軽く受け流して報告する。
「ロイト軍が潰走を始めました。方角は北東方面。」
ニヤニヤしていたルゼルだが、一気に真顔に戻り、返答をする。
「予定通りの方角だな。カリン、セーナ様に報告してくれ。」
すると隅に控えていたカリンが頷いて、影となって姿を消した。それを見届けてルゼルが更なる命を下す。
「このまま一気に追い込め!!」
温厚なルゼルが軍神へと昇華した瞬間である。
ルゼル軍の追撃は苛烈を極めた。日を徹して追ってきたためにロイトたちも必死になって逃げるしかなかった。だが彼らの目前に新たな、想定外の敵が姿を現す。それこそがグラオリッターを吸収したセーナ軍である。どちらも夜通し駆け通した同士であるが、ロイト軍は奇襲されて敗走中の身、とても戦える状態ではなかった。セーナ軍は良い様にロイト軍を翻弄していくが、ある時を境に一気に攻勢を弱めた。そしてロイト軍に退路を空けて、戦闘を終わらせたのだ。というのもセーナ軍の更に後方からカイ率いるロイト軍別働隊が迫ってきていた。勢いこそセーナ軍のものだが、今の別働隊はカイの執念が宿り、狂気に支配されている。セーナは徹底的にカイと戦闘を避けたのだ。【君子危うきに近寄らず】とはよく言ったものだが、当のカイからすればたまったものではなかった。道を逸れていくセーナ軍を見つけてカイは嘆息をついた。
「私の執念が強すぎた故の結果か。」
強すぎる執念がセーナの中で危機感を煽っていた、これこそが全てであった。一息ついたカイはプラウドを呼んで、言い放った。
「今までお世話になったな、プラウド。すまないが、最期の命をお前に託そう。この手勢を持ってロイト様をお救いするのだ。」
気が付けばカイは愛竜の背に乗っている。驚くプラウドだが、
「私の荷物の中にロイト様に宛てた書状がある。それをロイト様に見せて、後のことを仰いでくれ。」
「お待ちください!軍師様はどちらに向かわれるのですか。」
「私はこれからセーナ様の元に切り込んで参ります。」
「単身でですか?!」
「これが不忠者の末路、プラウド殿、後追いしたら許しませんよ。」
良い笑顔を向けたカイは飛竜をしごいて、飛行させた。
「カイが?!」
久しぶりに寝床に付こうとしたセーナにカリンが駆け寄ってきた。
「なにやらセーナ様との手合わせを求めているようです。」
「・・・カイ。わかったわ。」
むくりと起き上がったセーナはティルフィングを腰に差して、外に出て行く。そして陣を出たところにカイは一人立っていた。
「セーナ様、今までの恩義を仇にする真似をして申し訳ありませんでした。こんな大乱を招いた罪を承知で、最期の願いを聞いていただけませんでしょうか。」
願いとは言うまでもなく、セーナは理解している。騎士としての哀しい運命とも言える。
「カイ・・・。」
やせ細ったカイを見ると、それ以上の言葉をセーナはかけられなかった。コクリと頷こうとしたとき、セーナの横に一人の竜騎士が降り立った。
「セーナ様、その役、私にやらせてください!!」
それはカイの親友サルーンだった。アルド、ルゼルの二人に許可をもらい、セーナの元に向かっていたのだ。
「それは私に聞くことじゃないわ、カイに聞いて。」
二人のやり取りを聞いていたカイが穏やかに応じた。
「サルーン、君とやれるならそれもまた本望。」
その瞳はどこまでも透き通っていた。それを見てセーナは感じた。
(あの頃のお兄様とそっくり。)
暗黒神ロプトウスにとり付かれた兄マリクを救うために彼と戦ったことをセーナは思い出している。しかし感傷にふける暇は彼女には与えられなかった。すでにサルーンとカイの戦いは始まっていたのだ。
しかし戦いはやはり一方的であった。この20年間、変わらずに鍛錬を続けてきたサルーンに、病を得ながらロイトと謀議を続けてきたカイとでは見た目でも腕の太さが違うのである。とても戦いと呼べるものではない。しかしカイも必死にサルーンの槍を凌いでいるあたりは十勇者だった面影をしのばせる。
「さすがはサルーンだな、未だに成長を遂げるか。」
だがサルーンは何も返せない。すでに目には涙を貯めて、溢れんばかりであった。
「お前こそ、本当に病人かよ。」
ようやく搾り出したのがこの言葉だった。だがこの言葉が悲劇の呼び水となった。サルーンの言葉に微笑んで応えたカイだったが、それが動きを止め大きな隙となった。騎士の宿命か、サルーンはこの隙を逃さずに槍を突き出した。鈍い感覚をサルーンは感じ取り、我に返ったサルーンは思わず握った槍から手を放す。
「さすがだな・・・サルーン・・・・。」
静かに言い放つカイはサルーンの槍を自力で引き抜いた後、地面に突っ伏した。セーナも駆けつけてカイを仰向けにするが、もうカイの魂はそこにはなかった。
「こいつの笑顔を見ると、どうも憎めないな。」
サルーンが言うと、セーナも頷いて
「私も同じよ。彼の笑顔にどれだけ私の心も晴れやかになったことか。」
しかしそれももう見れない。二人はカイを優しく地面に寝かせて合掌した。グリューゲル十勇者の一人にして、その知謀でグリューゲルの創成期を支え、温厚な人柄で周囲を和ませたカイ、ここに眠る。