「人間とは愚かなものだ。こうしてまた戦を繰り返す。狂っているとしか思えん。」
遠くから眺めていた一人の男が呟く。そこにふと一人の女性が降り立った。それに気付いた男が話す。
「ついに行くのか?どうやら、あちらも感付いているようだぞ。」
「元より承知です。ですが、クラウスとブローに全てを委ねるわけにはいきません。」
若干、意固地にも聞こえる口調だが、男は全く気にしなかった。
「無駄死にはしないことだ。お主はこんなところで死ぬことは許さぬぞ。」
「ご心配ありがとうございます。」
そう言って、女性は再び消え去った。
「随分、待ったな。いよいよか・・・。」
男の口調もしみじみとしていた。
セーナの本陣は妙な緊張感に包まれていた。別にアカネイアの反撃があったわけでもないし、その兆候すら掴んでいない。もっとも今のセーナからすれば、アカネイア軍など眼中にないのだから、これだけ引き締まる空気になるのは別の理由があった。つい最近、特務諜報を担っていたゼロが特別の情報路を開拓し、その伝手から今夜ある者からの襲撃を報せてきたのだ。今夜、セーナはリュートと詰めの協議をするためにリュートのいるアカネイア・パレスに戻るのだが、その最中に襲うというのだ。
「やっぱりあの兄妹が鍵を握っていたようね。私たちはついに虎の尻尾を掴んだようね。」
セーナがミカにつぶやく。いつになく、口調が真剣であった。
「そしてその虎が初めて牙を剥くのが今夜・・・。」
ミカの言葉に、セーナが訂正する。
「最初はノルゼリアだから、厳密には2度目ね。」
そんなことを言っている間にセーナはとにかく陣中の勇者を集結させていた。
「アルフレッド様、マーニ様、及び、サーシャ様・トウヤ様ご夫妻、ご到着」
アルバトロスの勇壮な声を背景に四人が入ってきた。セーナの真剣な目を見て、トウヤが悟ったのか、口を開く。
「ついに来るのですか。」
セーナは頷くと、トウヤもまた自分の斧の手入れに入った。そしてアルたちにも助言しておいた。
「武器の手入れをしておくといい、これから戦う相手は今までの奴らとはレベルどころか次元が違う。」
あまりにも真剣な口調に、アルたちも息を呑み、言う通りにして、それぞれの剣の手入れを始めた。マーニの剣はアリティアの精霊の剣の異名を持っているのだが、一方のアルは未だにそこらで売っている剣を使用していた。これを見たセーナが一振り剣をアルに差し出した。
「アル、そんな剣では役に立たないわ。この剣を貸してあげる。」
渡されたのはエレナが操る剣の一本・シュヴァルツゼロであった。シュヴァルツバルトに劣るも、その威力はエレナはサブの剣に使い続けるほどのものであり、アルの技量と合わせれば想像以上の威力を発揮するだろう。恭しく受け取ったアルはよく鍛えられた剣を見て、唸りながらもマーニと同じようにこの剣の手入れを始めるのであった。しばらくして、二つの魔法陣がセーナの前に降り立つ。
「ハル、アトス、またあなたの力を借りるわ。」
降り立ったのはセーナ三男のハルトムートに、ミカの嫡子アトスであった。
「まさか母上から私にヘルプが来るとは思わなかったぜ。」
腕っ節のいいハルが満面の笑みで母に対面する。傍らにはミカに似て冷静沈着なアトスが厳かに片膝をつく。
「ハル、今夜の戦いは本気で戦わないと命を落とすからね、気をつけてかかりなさい。」
仮にもグリューゲル№0001のハルトムートは強い相手と戦えそうなことだけで満足していた。そんな内心を察してか、アトスが苦笑しながら溜め息を吐く。
「全く、あなたは本当に気楽でいいわね。アベルの爪の垢でも煎じて呑ませてあげたいわ。」
これに対してハルトムートは
「アベルからなら昔から何個もゲンコツをもらっているから爪の垢まではさすがに勘弁願いたい。」
と言いながら、頭をさする姿をするもんだから、さすがに周りは笑わざるを得ない。
そして最後にアルドがルゼルを連れてやってきた。
「母上、あれ、それにハルまで、一体どうしたんです。この物々しさは。」
アルフレッド、マーニ、トウヤ、サーシャ、ハルトムート、アトス、おそらく現在パレス周辺にいるセーナ軍の中では一騎当千の猛者が集っているのであろう。その変化をアルドは嫌な予感に感じた。
「アルド、万が一の場合に備えて、この書状を託しておくわ。何かあった場合はこれを読んで、この通りに行動しなさい。」
「それはどういう・・・。」
「私たちはこれから危険な戦いに臨むのよ。だからこそ、あなたにはその間、この軍をまとめておいてちょうだい。」
「ならば我々も。」
アルドの剣技も地味だが、ハルトムートと同等以上のものを持っているのだ。当然頼りになるはずである。だが
「あなたまで巻き込んでいざということがあった場合、ヴェスティアはどうするの?この戦は?」
セーナはやや感情的になって反論する。珍しく取り乱しかけていた。
「エレナがおります。あいつならば何の問題もなく、ヴェスティアをまとめられるでしょうし、戦だって私より上手いでしょう。」
今のセーナの危ぶむ目を向けるミカに気付いたのか、一息入れてセーナが言う。
「今のエレナは無理よ。表には出さないけれどもオレルアンの攻城戦に失敗したことが糸を引いているわ。だから何か私の役に立てないか焦っている。こんな状態でもし何かあれば、どうなると思うの?」
聞かれたアルドだが、確かに彼にも妹の変化を微妙に捉えていた。彼女とあったのはグラでのことだが、表向きは本当に変わらず明るい笑顔を作っていたが、どこかギクシャクしていたのも同時に感じていたのだ。それが今、母が言ったこととなれば、満更嘘ではないのだろう。もともと母に似て感情で動く妹だから、期待というよりはまだ危惧の方が多いだろう。落ち着いて整理したアルドもまた一息ついて自身を落ち着かせた。
「仕方がありません、わかりました。でも母上、出来ればこの書状の封を空けないよう、無事に帰ってきてください。」
「もちろんよ。」
セーナが大きく頷くと、アルドはルゼルに促されて陣へ戻っていった。
「さぁ、行くわ。何事もなくパレスに着けばそれで良し、何かあっても皆で打ち負かしましょう。」
セーナの一声で、一団はパレスへと向かっていった。
セーナ本陣からパレスまではさほど離れているわけではないが、城下町を跨ぐために数キロは離れている。襲われるとすれば、城下町を守る水堀の上になるのだろう、とセーナとミカは見ていた。そして二人が予想していた通り、水堀を渡る途上、前方に黒い影が二つ下りてきた。そして背後にもまた二つ下りてきた。
「セーナ様、お初にお目にかかります。四竜神のミューと申します。無理を承知でお願いがございます、タリスで匿った竜の兄妹をお渡しいただけません。」
この言葉にサーシャとトウヤが反応して、それぞれの得物を向けた。実は二人はすでにタリスでもこのミューと戦っており、辛くも撃退した過去を持っているだけでなく、トウヤはこのミューとはそれ以上にはるかに深い因縁を持っているようである。
「ミュー、闇討ちとはお前も大分染まってきたようだな。まさかリーベリアではなく、このアカネイアで二度も対峙するとはな。」
「トウヤ、どうしても私たちの元には来ないというのですね。」
「当然だ。俺は自由を愛するものを守るために戦う。お前みたいに命をもてあそぶ奴は許さん。」
トウヤは己が鍛え上げた斧・ヴォルフバイルを構えて、ミューにいつでも襲い掛かる準備を整えていた。
「ミュー、言っただろう、こんな奴らに話し合いなど無駄だと。これだけ戦を続ける野蛮な奴らとはな。」
そう言ったのはミューの隣にいる男である。だが、元々この男とは馬が合わないのか、鼻から無視してセーナに訪ねる。
「セーナ様、あなたも彼と同じ意見ですか?」
「ええ、これだけの勇者を揃えておいて、まさか大人しく差し出すわけがないでしょう。」
そしてミューとは逆の方向に向いて言い放つ。
「ねぇ、ブロー、あなたもそう思っているんでしょ。」
ブローは配下のブルーノと合わせての参加である。すでにブルーノの姿を見つけたアルフレッドが斬りかからんばかりに、熱くなっていた。
「俺は竜の兄妹のことなどどうでもいい。目の前にいる『時空剣の継承者』さえ抹殺できれば、構わない。」
「ふふ、いつの間にかそれぞれで戦いたい相手が決まっていたようね。ならば私が決めるのは無粋。いざ、戦いよ。」
ここについに光と影の戦いが始まった。
まずはサーシャ・トウヤとミューとの戦いである。先ほど触れたようにすでにタリス・シーダの墓で戦っていた二組であるが、戦い方はその時と変わらない。サーシャがミューを撹乱しつつ、トウヤのヴォルフバイルがミューにダメージを蓄積させていくというもの。だが、ここは水堀の橋の上、どうしても動ける範囲が限られてくる。
『オーラ』
ミューの放つ魔法は上位魔法オーラ、そして術者の魔力も今まで戦ってきたものとは桁が違うために、凄まじい破壊力を持っている。サーシャとトウヤは軽妙なステップでそれをかわすと一気に合体技を解き放つ。
『エターナルインパルス』
サーシャの剣とトウヤの斧が放物線を描いて、切りかかる。が、ミューは軽くひねっただけで二人の攻撃をかわすと、わずかな詠唱で聞きなれない魔法を解き放った。
『フィンブル』
直後、猛烈な吹雪が二人を襲い、それぞれが離れたところに吹き飛んでしまった。しかもサーシャはこの時、着地の打ち所が悪くタリスで痛めていた右腕の古傷をまた痛めてしまった。
「あなたたちの兵法でいうところの鉄則では、まず敵を分断すべしと言ってたかしら。そして、」
ゆっくりサーシャの方を向かい、ミューは言う。
「弱い方から叩くべし、と。」
ミューは静かに思念を集中して、魔法剣ファンブルを手に作り上げた。そして一気に斬りかかる。
「サーシャッ!」
叫ぶトウヤだが、とても間に合う距離ではなかった。だが次の瞬間、サーシャの前に一陣の風が止まり、ミューの剣を受け止めた。その姿は紛れもなくゼロであった。
「あなたが横槍を入れてくるとはね、ヴェガ」
ミューはゼロをヴェガと言った。一瞬、サーシャとトウヤがエッとした顔をするが、確かに風貌はヴェガそのものである。
「我がシュラムの里の怒り、ようやく返す時が来たのだ。覚悟はいいな、ミュー。」
シュラムの里、ヴェガの出身であることはもはや言うまでもないが、リーベリア解放戦争の直後、何者かに襲撃されて壊滅していたのだ。ヴェガは運良く里にはいなかったものの、残っていた者は皆、全て惨殺されていた。もちろんヴェガのように腕の立つものもいたのであろうが、里に転がっていたのは全て里の住人のものであったのだ。ヴェガは復讐を近い、同じような件を必死で探っていたセーナ陣営に潜り込むことが出来、特務諜報として働いていた。
「シュラムの里、あれは私がやったことではありませんが、そう言ったところであなたは納得しないでしょう。すでに調べはついているのでしょう、私がリーベリアの監視をしていたことを。」
「ああ、そうだ。おそらく犯人は橋の奥で戦っている奴らしいが、確たる証拠はまだない。だがお前たちが同じ一味であるならば、俺は貴様らを打ち倒す。」
一気に振りかぶったヴェガは斬撃を解き放つ。
『クリムゾンバード』
だが、漆黒の不死鳥もミューの前ではあまりにも単調な攻撃であった。
『フィンブル!』
猛烈な吹雪がヴェガを包み込み、容赦なく彼の体力を奪っていく。だが、復讐の怨念と化したヴェガは止まろうとはしない。
「この魂、果てようが、貴様だけは許さん!!」
そして連続で大技を解き放つ。
『ブレイズストライク!!』
フィンブルで弱まった不死鳥は更に火勢を増して、そしてミューに突っ込んだ。
「アッーーーーーーーーーーーーッ!」
ミューの絶叫と共に、辺りは赤黒い炎が弾け飛び、まるで地獄の様相を示している。
「クッ、ここまでやるとはね。今日もこのあたりで去るとするわ。トウヤ、まだあなたがコッチに来るというのならば拒みはしないわ。」
ヴェガの決死の攻撃で全身に紅蓮の炎を燃やしながら、ミューは辛うじてまだ生きていた。だがさすがにダメージが大きいのか、トウヤへ台詞を残すと、転送の術に委ねて飛んで行った。
「ヴェガ!」
サーシャとトウヤが慌てて駆けつけるが、まだヴェガは立っていた。
「横になってヴェガ。もうあなたの身体はギリギリよ。」
サーシャが自身の右腕をかばいながらも、ヴェガを気遣う。が、
「心配はいらん。もうこの命も燃え尽きようとしている。だが、まだやらねばならないことがある。」
そう言って、再び魔剣シュラムを持つと、橋の向こうに走っていった。
「待ちなさい、ヴェガ。」
サーシャの叫びも、もうヴェガに届いていない。
「あの馬鹿に、最期に『剣』というものを教えてやるのだ。」
その先にはブローに手を焼くアルフレッドとマーニの姿があった・・・。その瞳にはもう復讐の炎は燃えていなかった。
橋の手前ではもう一組、セーナとミカがもう一人の男と戦っていた。さすがに世界一の魔法剣士セーナと魔道士ミカの黄金コンビだけあって、男相手に一歩も引いてはいなかった。が、決定打もない状況で体力勝負の様相を示してきていた。
「ミカ、もう少し休んでいなさい。ここは私だけでどうにかなる。」
しかしそう言われると反発するのがミカである。即座に
『フォルブレイズ』
と大魔法を解き放って健在ぶりをアピールする。
「私のことなど心配無用です。一体、宰相になってどれくらいの会議をこなして、何個の法律を整備したと思っているんですか。セーナ様こそ、ずっと奥で采配ばかりで身体はなまっていないんですか?何でしたらお休みになられても構いませんよ。」
難敵相手にも二人は言い合う有様に、敵の方が怒り出した。
「お前ら、このクラウス相手におしゃべりとはふざけるな。ならば、両方とも永遠の眠りにつかせてやる!」
「ふふ、ようやく名乗ってくれたわね。ってことはあなたも四竜神の一人ってわけね。」
セーナの言葉にミカが毒を吐く。
「それにしても四竜神の割には張り合いがありませんね。もう少し追い詰められるかと思ってましたが、セーナ様、もしかして彼が最弱なのでは。」
「そうかもね。」
二人はすでに20年前に共に戦場を駆け回っていた頃に戻っているかのようであった。とてもヴェスティアの女帝と宰相の会話ではない。だがクラウスもここまで言われて黙っているわけにはいかない。もちろん挑発にも乗っているわけではない。
「ククク、ならば貴様らには死の恐怖を味合わせることにしよう。」
『死せる怨霊よ、生けるものの力を蝕むがよい。』
そして詠唱の果てに呼び出したのは二人が予期しない魔法だった。
『マフー!』
マフー、かつて、神君マルスに抵抗した闇の司祭ガーネフが扱う闇魔法である。滅んだはずのこの魔法を受けたものは力を吸い取られ、戦闘不能にする恐るべき力を持っている。しかもこのマフー自体が魔法の加護を持っているので、特定の武器と魔法でしか対策が取れない。セーナとミカは闇の怨霊たちを辛うじてかわすと、ミカを下がらせて一気にセーナが間合いを詰める。
「私がファルシオンの継承者だと、知ってのことかしら?」
そう、ファルシオンはマフーの対抗策の一つであるのだ。クラウスにしては迂闊とも言える選択だった。
『ディヴァインスマッシュ!』
大地を削りながら振り上げた一撃は、クラウスの胸元を抉った、はずだった。ひょいと後方へ飛んだクラウスはセーナの斬撃をかわすと、ならばと別の闇魔法を解き放つ。
「ならば、こちらはどうだ!」
『彷徨える悪しき魂よ!!光導きし者の希望を打ち砕け!』
『ザッハーク!』
今度はリーベリア解放戦争でガーゼル教国教皇グエンカオスが使った闇魔法ガーゼルである。今度は加護する神が違うためにファルシオンでも防ぐことはできない。しかも先ほどの攻撃で間合いを詰めていたためにセーナはまともにザッハークを受けてしまった。吹き飛ぶセーナに、ミカはすぐに対応してセーナを受け止めるが、セーナは身体を上手く動かすことができない。
「ククク、ザッハークもマフーと同じく、喰らったものは動けんぞ。」
勝ち誇った笑みを浮かべるクラウスだが、そんな彼の前に出てきた男に笑顔を引きつらせることになる。
「ならば、こちらはどうかね?」
話したのはどこからか駆けつけてきたリュナンである。そして聖剣ライトブリンガーを抜き放つと、一気にクラウスに斬りつけた。
『ライトニングスマッシュ』
ラゼリアの剣技は的確にクラウスに斬りつける。が、やはりクラウスも只者ではなかった。明らかに自身を両断する斬撃を片腕の負傷に留めたのだ。
「クッ、貴様がここにいるとは。今日のところはこのくらいにしておくが、次はその首を斬り裂いてやるから、待っておれよ!」
そう言って、闇に消えていった。同時にセーナの呪縛も解かれて、ようやく自由になり、ミカのリカバーが効いてきた。
「でも、どうしてリュナンはこんなところに?」
セーナの問いに、リュナンはしばらくは何も応えなかった。いつの間にか、リュナンの中に眠っていた久々にカーリュオンが目を覚まし、風雲を感じ取っていたのだ。そしてリュナンは元の人格に戻ってからは、珍しく照れ笑いをして二人に対して誤魔化すしかなかった。そんなことを知らないセーナとミカは顔を見合わせるしかなかった。
いつの間にかそれぞれの戦いが終わった。結局、あれからヴェガはアルフレッドの戦いに参戦してから、その命の灯火を燃やし尽くした。セーナにとってもリュナンにとっても惜しい死であるのは言うまでもないが、敵もそれぞれに傷を負わせブルーノを討ち取ることが出来た。ヴェガも満足の笑みを浮かべて眠っており、それが残ったものたちの悔恨の念を少し和らげた。
「ゼロ、いいえ、ヴェガ、あなたの功績は決して無駄にしないわ、絶対に。」
セーナの誓いに周りのものも大きく頷く。そしてセーナは彼の遺体から剣を取り出してアルフレッドに差し出した。
「ヴェガはあなたのことを認めていた。だからこの剣をあなたが継承して、ヴェガの遺志を継ぎなさい。」
アルフレッドは静かに、しかししっかりとシュラムを握り締めた。
その直後、パレスの方から騎馬隊が猛スピードで飛んできた。騒ぎに気付いたリュートが配下のプラウドの騎馬隊を寄越してきたのだ。
「セーナ様、ご無事でしたか。リュート様がご心配でした。」
プラウドの到着にセーナは再び顔を真っ赤にさせたが、ミカにニヤけられてどうにか真顔に戻った。
「ありがとう、プラウド。お願いがあるのだけれども、ヴェガを、あ、いえ、この剣士を丁重に葬っておいてくれない。棺おけに入れてくれるだけでいいから。」
プラウドが見下ろすと、そこにはどこか見覚えのある剣士が横たわっていた。が、セーナ直々の命であり、考えている暇はない。
「ハッ、必ずや。」
セーナと四竜神、まだ二人しか出てきていないが、ようやく姿を現してきたことにセーナは一層気を引き締め、そして1日も早いこの戦役の終結を誓うのであった。