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 リーベリアで起こった解放戦争は邪神ガーゼルの断末魔と共に終結、その最大の立役者である皇女セーナは仲間達と共にガルダ島で先の戦いで消耗した英気を養っていた。その様子を一人の青年が島の高台で見守っていた。それは紛れも無く風の迷宮にて彼女の力量を試すべく立ちはだかった吟遊詩人ホルスその人である。彼はその戦いの後闇に紛れて立ち去ったフリをして遠くからではあるものの彼女達の様子を見ていたのであった。彼自身は彼女達にとっととここから立ち去ってもらいたいと考えているが、先の戦いで体力がかなり消耗している上、セーナ自身も「魔力の受け流し」を使用しているので仕方ないと思っている。でもこうしている間にもユグドラルでは暗黒神ロプトウスの傀儡と化されているマリク軍の侵攻が始まろうとしている。
 本当なら彼自身が彼女らの手助けをしたいところだが、一連の騒動の背後にいる「巨悪」の存在を危惧しているためか迂闊に動けずにいる。その巨悪-ラグナ神軍達もセーナ達の実力を少しながらも認めており、彼女らの動向をマークしているという情報が舞いこんで来たからである。伝説の糧にするのか消すのか定かではないが自分が動けば何をされるか想像がつく(いや、彼女達には恵まれた仲間たちがいる、奴らの思うようには行くまい・・・)、彼はそう思っていた。そんな時二つの魔法陣が彼の前に降り立った。それはラグナ神軍の竜狩りによって滅ぼされた白竜族の生き残りでありホルスの無二の親友でもあるエルフィン、そして眼鏡をかけた一見変わった外見をしたおっさん風の男の姿だった。それを見てホルスは
「エルフィンか・・・ってまたですか・・・」
とエルフィンの背負っている大きな袋を見て唖然とした。その中味は数十年前同士であるレヴィンとの初対面時と同様に未使用、または使えそうなのに戦場に捨てられてあった武具、魔道書等がぎっしりと入っていた。これには先ほどまで真剣な眼差しでセーナを見ていたホルスも返す言葉がなかった。
「いやぁ、またいつもの癖で・・・」
エルフィンは緊張感も無い言い方で今にも崩れそうな荷物を地面に降ろした。もはやいつ崩れてもおかしくない状態だ。これを見てホルスは
「いい加減この癖止めた方が、あとで長老達にどやされても知りませんよ」
と軽くぼやくのが精一杯だった。
「まあまあ、そう固いこと言うなよ。これで当分の間あんたらところの武具に困らなくて済むんだろう?」
突然二人の会話にエルフィンと一緒にやって来た眼鏡を掛けた男が割って入った。これを見てホルスは
「そう言われてもサブちゃん、困るんですよ。私の放浪中、世間で詩人の格好をした追い剥ぎ男が世界中飛び回っているという変な噂を耳にしているのですから。幸いその噂の範囲が小規模なので大丈夫だと思いますが・・・」
とまるで自分がこれらの疑いを掛けられているかのような言い方でサブちゃんと呼ばれる男に話し掛けた。一方そのエルフィンは遠くにいる少女セーナに気付いたようで、
「あそこにいる娘が例のお前が話していたセーナ殿なのか?」
と遠くにいるセーナを指差して二人に話し掛けた。するとホルスはこれに軽く頷いた。エルフィンらも彼女らの評判は聞いており、期待もしているようだ。だがサブちゃんは
「だが彼女達のことだけど、あの連中からかなりマークされてるぞ?」
と険しい表情を見せた。それはホルスも知っているようで、それが証拠にノゼルリア大決戦の最中どさくさに紛れて魔竜が彼女を抹殺しようと襲い掛かったそうだがそれに気付いた彼が即座に竜化してこれを妨害して彼女を守った。結局何事もなかった形で通り過ぎたが、後に正体があのブローだと言うことを知り逃すべきでなかったと後悔したそうだ。
 だが同時に驚きも隠し切れなかった。本来ラグナ神軍直下の部隊は自ら手を下す事自体禁句(タブー)とされており、たいていここリーベリアではガーゼル教国らゾーアの軍勢に攻撃させるのが定石、かつこの地を影で治めているのはあの聖女ミュー、彼女に限って例えブローが筆頭であるとは言えその横行を許すはずがないのだ。それが一体なぜここまでする必要があるのか不思議でならなかった。それほど彼女を恐れているのか、それとも自分達が動き出したので余計なことまで首を突っ込むなと言う脅しでの意味なのか色々と想像しているうちにサブちゃんは話を続けた。情報だとこの一件以来ここの影の統治者ミューは事態によほどショックだったのかより一層警戒を強め、ブローとはほとんど決別状態であると言う。だがそれでも同じ竜神であるラオウ、ネクロス達とは関係を保ち続けているそうだ。さらに「災い転じて福となす」と言う言葉どおり彼女はこの戦いでまた人材確保、補強等に成功しており、兵力を一層強化されているらしく、多分ナバダ軍は勿論の事今のセーナ軍の兵力でも太刀打ち出来ないらしいそうだ。そして現在彼女はネクロスの許可を得てセーナより先にユグドラルへ渡り再び補強に当たるそうだ。リーベリアの再興は信頼している部下達に委任せているらしくそこにはネクロスの部隊もいると言う情報が入った。リーベリア、ユグドラル間は暗黙の了解の上で、二人とその部隊がこのガルダを中継地として行ったり来たりしている。そのネクロス自身も暗黒神ロプトウスの化身であったガレの一件以来ブローの横行には腹を立てているが立場上何も言えないらしく、あそこでの横行を許しざるを得ないのが現状であるがそういう男に限って最期に墓穴を掘ることになる運命であることを彼の人生での経験上知っておりそれを待っているらしい。
 それでも女好きの性格は相変わらずであり、彼らもたまにアカネイア以外の大陸の町々で人に変身したネクロスを見かけているが、面倒な騒ぎに巻き込まれぬように見てみぬ振りをしている。
「あいつ本当に四竜神なのか?」
エルフィンはそのやり取りを聞いて軽くぼやいたが、
「甘く見ないほうがいいと思うぞ、あれでも・・・」
とサブちゃんが言いかけた時、小さな黒い物体が突如三人の元へ飛んできた。紛れもなくそれは黒竜ルナだった。ルナはファントムモードという姿を消す能力を持っておりホルスの指示でリーヴェでの不穏な動きを観察するためリーヴェ上空を飛んでいた。それが戻ってきた事を見るとどうやら内乱が鎮圧されたようだ。その内容を聞くと、リュナン側の勝利でタトゥス派の貴族達はほぼ一掃されたそうだ、その中にはブロー傘下の工作員達の姿もあったと言う。でも結局ネクロス直属の特殊工作員部隊「フレイム・ウィンズ(炎の翼達)」はリュナン側が勝つことを前提にしていたため全軍彼ら側にいた為無傷だったそうだ。これを聞いて
「さすがはネクロス軍、一筋縄では行かぬか・・・」
とこの報告を聞き軽くため息をついた。
「これじゃ、あの<フォルセティ>も大変だろうな」
「フォルセティ?そうかまだ彼はそのままだったな・・・」
エルフィンはフォルセティことレヴィンのことを思い出した。彼はユグドラルで唯一ラグナの存在を知っている人物で彼らとは後の同士となった。だが世間ではまだ知られていないあの戦いの後は迷惑をかけられまいと思った彼は拠点であるナバダ古城を去り行方知れずとなった。後に<フォルセティ>と言う形で聖戦開始時に今は亡きグランベル皇帝セリスの元に現れたが、彼の実像すなわちレヴィンとしての肉体はどこかに封印されているらしい、来たる日に向けて・・・。ユグドラルの統治者ネクロスもそれに気付きレヴィン暗殺に自ら懐に潜り込んだものの<フォルセティ>である事が判明、殺しても無駄だと判断した。その<フォルセティ>もネクロスの存在を確認、結局セリスはおろか息子セティもラグナの存在を知ることはなく聖戦はとりあえず終了した・・・。その後彼は再び行方をくらましたが、ホルスは意外な所で彼と再会を果たす事になり、苦悩する彼の孫と戦う事となるがそれはまだ先のこと。
「とりあえず、うちが知ってるのはここまでだ、後のことは全然知らんぞ」
「そうか・・・」
ホルスがサブちゃんの言葉に軽く反応した。そして
「以前から聞きたかったんですけど、どっちの味方なのですか?」
とサブちゃんに不思議そうに聞いた。なぜなら彼の情報は彼らのみならずあのラグナ軍の一部の部隊にも情報を教えている所を目撃していており、真意をなかなか聞き出せずにいた。するとサブちゃんはあっさり
「ジャーナリストだからさ」
と言った。そして彼はこう続けた。
「と言うよりうちは戦乱状態のこの世界の行く末がどうなるのか見届けたいだけなんだ。そのためにはジャーナリストの方がいいからな・・・。このまま光と闇がぶつかり続ける時代を迎えるのか、新たな局面を迎えるのか、うちには見届ける義務があるんだ。だからどっちの味方でもないんだ。解ってくれ・・・」
サブちゃんはそう言って二人を見つめた。
「そうか、だがお前はすっかりお尋ね者状態になっているんだから無理はするなよ、幸いここだから何とか居られるだけなんだから・・・」
エルフィンの言う通りガルダ島は領土的にはリーベリア、つまりミューの管轄地、彼女はよほどの騒ぎを起こさない限り部外者の滞在を許可しているので安全地帯とも言えるので、エレブの脱走者、部外者等を徹底的に抹殺するアカネイアとは正反対である。
「二人はこれからどうするんだ?」
サブちゃんが二人に聞いた。
「私はリディアのことが心配だから一度古城に戻る」
「私は暫く彼女達と影ながらですが行動を共にします。あの時の一件もありますから」
エルフィン、ホルスがそれぞれ言った。
「そうか、お互い気をつけろよ」
「それはお前に言うセリフだ」
エルフィンが軽く受流すと彼の満杯状態である荷物の中身が破裂するかのように崩れ落ちた。これに気付いてエルフィンは慌ててそれを直そうと躍起になった。だが袋が所々破けており、多すぎるせいか袋に入りきらずにいた。明らかに無理がありすぎるような気がしてならない。ホルスらはそれをまじまじと見ていたが
「見ていないでおまえらも手伝ってくれ!!」
とエルフィンが大声で言った。(ああ~大事な掘り出し物が・・・)エルフィンはそう嘆きながら思った。仕方なく二人も嫌々ながらこれに手伝った。
「やれやれ・・・」
三人が過大な荷物に悪戦苦闘していることなどをよそにユグドラルでの一大決戦は刻一刻と迫っていた。

 それから数日が過ぎところ変わって、ガルダ島のセーナ陣営・・・
ユグドラルの方角に視線を向けていた彼女の元にミーシャ率いるエーデルリッターが合流、さらにその数日後、心強い援軍サーシャ達率いる総勢五千のウエルト軍がやってきた。彼女達の到来にセーナも気を良くし久々に顔を綻ばせた。そしていよいよユグドラルに向けて準備を整えるよう諸将に通達を出し、セーナがついに動き出した。そしてあの伝説の吟遊詩人が唯一恐れるあの男も・・・
 出発前日の夜で皆が寝静まっている頃、一人の兵士が陣の外で寝そべっていた。
「ふっ、やっとか・・・」
兵士が星空を見ながら言うとその背後から四つの炎の他幾つかの炎が浮かび上がった。それを見てその兵士は驚くどころか、その炎たちをまるで人がそこにいるかのように軽く出迎えた。
「お頭、ここにいたのですか」
一つの炎が兵士に言った。お頭と呼ばれたこの兵士こそラグナ四竜神の一人ネクロス、変身が得意な彼は現在彼女らの動向を探るため自らグリューゲル一卒兵となっている。だがセーナ達に対しては殺意はないらしく、一応見守っていると言うのが妥当である。
「状況は?」
ネクロスが一つの炎塊(工作員部隊の影)に言うと、リーベリアにいるブロー傘下の工作員部隊の壊滅、マリクがエッダに向けて侵攻中であること等を伝えた。そしてホルス達がこの島にいたと言う情報も・・・。ネクロス自身もホルスらナバダ軍が密かに動いている事は既にキャッチ済みだがナバダには全く興味を示していないらしく軽く受流した。もし彼らが下手に動けばどうなるかはあの件以来既に証明済みなので余計な事をしなければ放って置くと言う考えらしい。それにあのサブちゃんには多少世話になっているのでブローに殺せと言う命令は無視している。ただ師父ラオウの命だったら別らしいが・・・。
「報告は以上です」
炎塊がそう報告すると。ネクロスは
「そうか、ならばお前たちに頼みたい事がある。出て来い!」
と言うと四つの大きな炎が人の姿として現れた。それは大剣を背負っている風来坊の格好をした剣士、巨斧巨剣を背に背負っている野生児の勇者、背にアーチ型の弓、腕には鍵爪等を装着しているキザな弓騎士、そして赤い髪をした無愛想な少女の姿をしていた。彼らは『四炎』と呼ばれる密偵を兼ね合わせているネクロス軍最強の暗殺者で後に驚異的な能力でセーナ達に立ちはだかる事となるがそれは相当先のこと。彼は野生児の勇者-バートルにミューの所へ行けと命じた。神軍の中には彼女達を疎んじている輩もいて、彼女もあの一件でショックを受けているから行って慰めてやれと言う配慮である。弓騎士-バスターは暫くこの島に残りガーディアンフォースの動向を探れと命じた。その際その長ミーシャの命には服従だと言った。他の工作員たちにはユグドラルへ先に帰還してブローやあの『ロプトウス』達が勝手な事をしないか見張れと命じた。そして先に帰還したライト達の情勢の探索、そしてまだ島にいるホルスや彼が属するナバダ軍の動向も・・・。これは軽視しているとは言えわずかな油断が命取りであると言う事を知っているからでの考えだ。
「俺たちは?」
「何をすればいい?」
まだ命令されていない風来坊の剣士-レイヴンと赤髪の少女-アスカがネクロスに言った。
「お前達は、レヴィンを捕獲しろ!!」
ネクロスは二人のそう言った。
「レヴィン?<フォルセティ>の方でじゃないのか?」
「ああ・・・」
ネクロスは二十年以上前より継続中の指令-レヴィンの捕獲を今遂行しようとしていた。目的はレヴィンを神軍に引き入れる事らしく、ラグナは洗脳させてでも引き入れたいと言う考えらく躍起だそうだ。<フォルセティ>の状態ではレヴィンを殺す事は愚か、捕えることすら出来ない事は先程触れたが、セーナ達のリーベリア帰還時に彼女の持つマスターリングから凄まじき波動が飛び出た事をネクロスも目撃しており、これを見て彼はレヴィンが出てくると確信した。単に実体を捕獲すれば最善の策だが何か強大な力に遮られ発見出来ずにいるのが現状だ。
「分かった・・・」
アスカが少女とは思えぬ無愛想な言い方で話した。そして彼女の瞳は心を抜かれたかのような虚空の眼差しだった。
「レイヴン、アスカの事頼むぞ。あいつたまに命令を間違えるからくれぐれも注意しろよ・・・ってそうだ、あいつ捕らえたら俺様の所じゃなくて真っ直ぐ師父の所に突き出せよ」
ネクロスはレイヴンに言うと軽く頷いた。
「お頭は?」
「俺様はここに残ってセーナちゃん達と一緒に行くぜ、文句あるか?」
ネクロスがあっさりと言った。すると工作員の一人が
「また不祥事起こさなければいいんですが・・・」
と小声で呟いた。だがそれは彼にも聞こえたらしく
「やかましい!!」
と怒鳴りつけた。そしてその工作員に素早く飛びつくと、得意の首固めを繰り出した。これには彼もギブアップのジェスチャーをしようとしたが、ネクロスは
「あれは不祥事じゃねえ、只のナンパだ!!」
と大声で言ったが、その顔色は多少赤く見えた。だがその様子を誰かがかぎつけたのか慌ててやってくる気配を感じた。
「この騒ぎは一体なんだ!?」
「げっ・・・」
そう言うと、レイヴンを始めとする工作員達は素早く退散した。そしてグリューゲルの兵士がネクロスの元へやってきた。だが首固めを喰らっている工作員はそのままの状態だった。兵士の一人がネクロス事情を聞くと彼は怪しい奴の尋問をしているなどあべこべな事を説明、兵士はならばこちらでと言ったが彼は反省しているからその必要はないと説明して兵士は
「明日は早いのだぞ、とっとと寝てくれ。全く・・・」
とぶつぶつ言いながら帰っていった。その様子を見て
「お頭、もう勘弁してください・・・」
と工作員が言った。するとネクロスはあっさりとそれを解いた。するとまた気配が消えたと察知するな否やレイヴン達が再び出現した。
「悪い、だがあれを不祥事扱いするな」
ネクロスがやっと普通の調子の戻った。
「お頭、リーベリアはどうする?」
野生児バートルが静かに言うと、彼はそっちの方はフレイム・ウィンズの連中の任せてあるから心配するなと軽く受流した。それを聞いて彼はホッとした様子だった。そして彼は最後に
「くれぐれも驕るなよ。わずかな油断が命取りだからな・・・」
と彼らに驕りを出さぬよう軽く釘をさした。何百年経っても英雄たちがラグナの存在を察知できないのは彼の優れた統率力等によるものである。
「お頭の方もあの軍に女性が多いからとは言えセーナやサーシャには出さないよう、特にまだ未婚の・・・」
「またやられたいか?」
先程やられた工作員の告げ口にネクロスがまたやろうとしたが
「まっいいか、今回は許す」
と持ち前の気さくな対応を見せた。すると工作員はホッと胸を撫で下ろした。部下達の間からは彼のこう言う性格等が慕われているそうだ。
「とにかく、任務開始だ!!」
ネクロスの号令の元、それぞれの部隊が闇に紛れて動き出した。それからは嘘のような静寂が訪れた。
「さてと俺様も寝るか・・・」
ネクロスは欠伸をしながら密かに義勇軍宿舎へと戻った。

 そして次の朝セーナはアグストリア王アレスが手配した軍船を使用、長老にそこそこの挨拶を交わしたのち決戦の地ユグドラルへ向けて出航した。ネクロス達が陰で動き出している事、そして既にもう一人の竜神がヴェルダンに到来している事もしらず・・・。

 所変わって後に戦場と化すヴェルダン地方・・・
『ミュー様、セーナ殿達がやってまいります』
「分かっているわ、既にネロが潜伏しているから」
エバンス城下町に潜伏している青髪の少女ミューがテレパシーを使って話した。話している相手は彼女の部下の氷竜エイナールである。
『流石はミュー様・・・』
エイナールが感心しているとミューとこんなやり取りをした。
「エイル、リーベリアのことお願いね」
『はい、ミュー様もお気を付けて・・・』
「ええ、ネルの方は?」
『主人なら大丈夫です。それよりも主人はミュー様のことを一番心配しているみたいです、あの時見たいな暴走を起こさないか・・・』
「・・・ありがとう、私のことは心配しないで。ネルのこともお願い」
『はい、ミュー様がいなければ主人は・・・』
「エイル・・・」
ミューはテレパシーでの会話ゆえ彼女の表情は分からぬものの、明らかに悲しそうな顔をしているのが感知し黙り込んでしまった。そして彼女の華奢な体も怒りのため震えていた。
『ミュー様?』
「クラウス、あの男だけは絶対に許さない・・・」
彼女の声はエイナールの声が聞こえていないのか怒りのため震えていた。
『ミュー様!!』
「!?エイル、またあの時の事思い出したの・・・」
『ミュー様、もうお忘れになってください、私達は常にミュー様と一緒です』
「ありがとう・・・」
『ミュー様に女神の祝福のあらん事を・・・』
その言葉を最後にテレパシーが途絶えた。そしてセーナ軍がやってくる事を察知した彼女は立ち上がりエバンス城下町を後にした。そして彼女は
(死に行く者の波動が異常に感じる・・・)
と軽く呟いた、まるでこの地方で無差別虐殺が起こる事を予期していたかのように・・・。

そして・・・
「いよいよ始まったか・・・」
目覚めたばかりのレヴィンがその様子を影ながら見ていた。
 ホルス、エルフィン、ネクロス、ミュー、そしてレヴィン、いずれ起こる大決戦の命運の握る五者の思惑が交錯するなか、<光と闇の決戦>の序幕が下ろされた。

 

 

 

 

 

最終更新:2011年12月30日 18:44