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 神君マルスがメディウスを倒して数百年の時が流れた。そのころアリティアの一室でリュートはアカネイア英雄戦記を読んでいた。
「リュート様相変わらずその本が好きなんですね。」
「英雄戦争は有名だからね。」
アカネイア英雄戦記の中でも英雄戦争は有名である。
「そういえばミリアは強いから先祖は英雄戦争に参加しているかもな。」
「そんな昔のことはわかりません。」
リュートとミリアの最初の出会いはミリアがアリティアの模擬試合で優勝し、その活躍を認められリュートの側近になった。
「そんなに英雄戦争が好きならラーマン神殿にいってくれば。」
「ラーマン神殿?そうかチキ様ならよく知っているはずだ。」
英雄戦争に参加したマムクートプリンセス、チキは現在ラーマン神殿にいる。
「じゃあ行ってみるか。」
「リュート様危険です。」
各地で魔物が現れるからだ。
「ミリアがついて来てくれるならだいじょうぶだ。」
「リュート様・・・。」
ドアがバタンと開いた。
「大変だ。」
その一言からすべては始まった。
「いったいどうしたんんだ。」
「ドルーア地方に魔物が大量発生したんです。」
ドルーア地方、特に国はなく自由都市が多数ある。軍事力は無に等しい。
「リュート様、どうしますか。私達の部隊では数が足りません。ロイト王子はあてにできません。」
「確かに、ラティ傭兵団の力を借りれば大丈夫。」
ラティ傭兵団、腕がたち、信頼のおける傭兵団。現在、アリティアで休暇中。
「わかりました。手配します。」
「よし、出撃だ。」
そこで、運命の出会いがあるのは誰も知らない。
 ここは、ラティ傭兵団。アリティアで休暇中。アリティアから依頼が来ていた。ラティはのんきに寝ていた。
「ラティさん、起きてください。仕事が入りました。」
その声の主はウォルだった。
「なに、本当かよ。で仕事の内容は?」
「アリティアの魔物退治の加勢です。依頼主は、リュートです。」
「あの噂のリュートか、わかった引き受けよう。コード、準備を怠るな。」
「・・・わかった。」
「コードさん、もう少し愛想よくしたほうがいいんじゃないんですか。私も連れてってください」
フィリアがいう。
「わかった。後方で援護してくれ。」
抗議しても無駄だと察したようだ。
「そういえば、なんかいい夢でも見ていたんですか。」
フィリアが尋ねた。
「昔の夢をちょっとな。」
「それはぜひ聞かせてほしいな。」
ウォルが言った。
「昔、俺がいっぱしの傭兵だったとき作戦ミスで重傷を負った。」
その話を聞いてウォルは
「ラティさんにもそんな時代があったんですね。」
フィリアがつっこむ。
「当たり前ですよ。でその後どうなったんですか。」
「ある女性の回復魔法でたすかったが名前も行方もわからない。」
その者がチキということは言うまでもない。
「合流場所はドルーアでいいんだな。いまから楽しみだ。」
コードが話を戻した。
「みんな準備を急げ。」
(そういえばあの人「チキ」はどうしているんだろう。また会えるといいのだが・・・)
後の戦いで活躍する若き者達とその者達を育てたラティが平和を守るための戦いの第一章に参加する。
話は変わって、ラーマン神殿、チキは独り言をつぶやいていた。
「ここのところ魔物の勢力が急激に強くなっている。おそらく、暗黒竜の復活の影響でしょう。もしくは、封印の盾が不完全なせいか。いずれにしても放ってはおけない。マルス、あなたが作り上げた平和は必ず守ります。」
彼女の脳裏には暗黒戦争、英雄戦争、数々の戦いが浮かんでいた。
「やはり、ファルシオンとマルスの直系が必要です。そして、それを支える仲間たちが。その前にドルーアの魔物をどうにかしなければならない。」
こうして、チキはドルーアへ向かった。そこで、リュート達の最初の戦いが始まった。それぞれの思いを秘めて。

 数日後、リュートの魔道部隊、ミリアのテンプルナイツ、ラティの傭兵団が合流した。数は少ないが大陸の中でも1、2位を争う精鋭部隊であった。
「俺の名はラティ、あんたが噂のリュートなのか。」
「はい。あなたの噂も聞いています。」
それぞれ自己紹介する。
「ミリア、あれが魔物なのか。初めてみた。」
「はい。私もはじめてみました。ここのところ増えているようです。」
リュートとミリアの様子をみて
(ミリアは美人だけどリュートの恋人だ。恋人のいる人に手を出すことは俺のプライドが許さない。)
ラティが落ちこんだ。それを見たフィリアが
「ラティさんどうかしたんですか?」
「なんでもない。」
ミリアが心配になって、
「リュート様、本当に大丈夫でしょうか?」
「とりあえず、腕は立ちそうだが・・・。」
「そろそろ本題に入っていいですか?作戦はこっちで決めていいですか?そっちは対魔物戦は初めてのようですから。」
ウォルが提案する。それに対し、ミリアが反対する。
「そんなことが許されるとおもっているのですか。」
作戦を決めるのは普通は雇い主であるからだ。
「まて、彼の言うことは事実だし、無駄に兵を失いたくないし、先を急いでいる。反対するのは、作戦が決まった後でも遅くない。」
ラティが作戦の説明をする。
「魔物は魔物のボスによって統制されている。雑魚を倒してもきりがない。つまり、ボスを倒せば俺たちの勝ちだ。具体的な作戦は、俺とウォルとコードとリュートとミリアでボスを倒しに行き、他は援護だ。この魔物の数からしてボスはかなり強いはずだ。気を抜くな。」
リュートが
「作戦はシンプルだがそれが一番いいと思う。しかし、コードを連れていくのは危険ではないか。」
どうみても子供であるからだ。コードが
「俺なら大丈夫だ。そこらへんのものより強い。心配なのはそっちだが。」
ミリアが怒ったが、リュ-トは納得した。
「よし、作戦決行だ。」
リュート達アリティアの者は、魔物を見るのが初めてのものが多い。戸惑いが隠せないでいた。
「思ったより魔物の数が多いな。作戦どおり魔物のボスを倒しにいくぞ。」
ラティの合図とともにウォルとコードが次々と魔物を切り倒していった。負傷者は速やかに後退してフィリアの治療を受ける。ラティ自身は戦闘だけでなく、指揮官としての能力が高い。さすが大陸一の傭兵といったところか。それを見たミリアは
「リュート様、私達も突撃します。援護を頼みます。」
騎士のミリアがストームスラッシャーを放ち、魔物を蹴散らしラティ傭兵団の活躍に負けなかった。魔物の数は多いが、個々の実力は山賊以下であった。形勢はリュート達が有利であった。そんな時カースドラゴンが現れた。恐ろしい威圧が兵士たちを襲い動揺が走らせた。
「邪悪な力を感じるが、空を飛べば風魔法の餌食だ。くらえクロスカリバー。」
リュートの放った二つの風の刃が、カースドラゴンを襲い倒した。これにより兵士は士気を取り戻し、いや前よりも高めた。魔物の数が減り、ついにボスと対面することになった。なぜかラティは後退の合図を出していた。
「あんな魔物始めて見たぜ、まともに戦っても無駄な犠牲しかでないな、伝説に出てくる暗黒竜なのか。とりあえず様子を見たほうがよさそうだ。」
リュートは後退の合図の意図を理解したが
「倒せるかどうかわからないが、このまま見過ごすわけにはいかない。どうすれば・・・」
北西の方角から神々しい竜が現れた。その竜は光のブレスを放ち、一瞬にして暗黒竜らしきものを倒した。その竜は人間になった。緑の髪のきれいな女性で、ラティの命の恩人であり、アカネイア大陸の二つの戦争で活躍した伝説のマムクート。
目の前にある光景が理解できず唖然としているなかリュートが勇気を出して質問をした。
「あなたがマルス様と共に戦ったチキ様ですか?」
チキはそれを肯定した。それを聞いたラティはショックを受けていた。
(なぜ俺の好みの女は恋人がいたり、人でなかったりするんだ!)
心の中で叫んでいた。なぜラティががっかりしているのか疑問に思いつつも、リュートは神君マルスについていろいろ聞きたくて、うずうずしているようだった。
「リュート様、気持ちは解かりますが、夜にならないうちにこの場所から離れましょう。危険です。」
ミリアは一度ドルーアへ来たことがあるためここがどれほど危険なのか知っている。ラティ達傭兵団は当然知っているためすでに準備をしている。現在のドルーアはどこの国にも属さず自由都市がほんの少ししかない。農作物が取れない不毛の地であり、治安が悪く盗賊や山賊も多い。道中何回か襲われたが、リュート達の敵ではなかった。それだけなら良いが、近年魔物が現れた。だから、どこの国も治めようとは思わないし、治安維持のために軍隊を派遣しない。もちろんリュート達は例外である。現在のアカネイア大陸は騎士も貴族も質が低下している。神君マルスが嫌った貴族による自分勝手な政治が再現されつつある。野宿に適した場所が見つかり、そこで夜を迎えた。

 その夜チキはリュートに暗黒戦争と英雄戦争についていろいろ質問され疲れていた。次の夜、チキは今回の魔物について説明した。
「今回の原因は詳しくわかりません。ただ不吉なことが起こる前兆だと私は思っています。」
これを聞いてリュートは
(暗黒竜が復活するのではないか。)
と考えたが言葉に出さなかった。チキ自身は裏で何かが動いている気配を感じたが確証にはほど遠い。その後リュートとラティは信頼関係を深めるため交流会を催した。リュートはコードを自分のテントに呼んだ。二人で話をしたかったがフィリアが勝手についてきてしまった。
「俺に何のようだ。」
相変わらず無愛想にコードは言った。
「子ども扱いしたこと謝りたくてね。」
嫌な顔もせず答えた。
「いつものことですから、気にしなくてもいいですよ。そのことで謝るなんてなんか珍しいですね。それよりもあの竜を一撃で倒したのが噂に名高いエクスカリバーですか?エクスカリバーというくらいだからてっきり私、剣のことだと思っていました。」
フィリアの悪い癖で勝手に人の話に割り込んだり、余計なことも言ってしまう。その時リュートはピンと来た。
(魔力の具現化で剣にすることがエクスカリバーの本来の使い方ではないか。)
魔力の具現化についてはマリクが残した手記に記されていた。その後は身の上話をしていた。二人とも盗賊に襲われて、両親がいないようだ。その後コードは傭兵になり、フィリアはラティに助けられた。それを聞いたリュートは心を痛めた。治安が悪いのは多かれ少なかれ、自分にも責任があるからだ。もうこれ以上犠牲者は出したくないと心に誓った。
その頃、ウォルとミリアは陣営から離れたところで話し合っていた。主に故郷について話しているようである。ちなみにミリアはグルニア生まれでアリティアに移住し、騎士になりリュートに認められ今の地位に至っている。ウォルはマケドニアの孤児院、通称レナの孤児院で育ち、お金を稼ぐため傭兵になり孤児院へ寄付をしている。
「さすがラティ傭兵団ですね。参考になりました。どうしてあなたほどの方があのラティについているのですか。」
さっきの戦いでミリアはウォルの実力は知っている。指揮能力、実力共にテンプルナイツに入っていてもおかしくないからだ。彼女はウォルが傭兵に甘んじているのが疑問であった。
「それはラティさんに失礼じゃないか。あの人はああ見えても鋭い人だよ。意外といっては失礼だけど人望もある。傭兵にしておくにはもったいない人だよ。」
ミリアはとてもそうは見えないと思ったが黙っていることにした。
「もったいないと言えばリュート様のことだな。ああいう人が王様になるのが世の中のためだと私は思うがね。」
「私もそう思うけどリュート様は王位継承する気はないって言ってます。」
「おそらく内乱を避けるための決断だな。噂によるとリュート様は民に慕われているけど、貴族には嫌われているらしい・・・。そういえばラティさんどこいったんだ?」
ミリアはウォルの物事を見極める力に感心していた。
 そのラティはチキと話していた。
「あのときの命の恩人が伝説のマムクート、チキ様だったとは驚いたな。」
ラティはからかうようにいった。
「伝説は余計です。あのときの少年がここまで立派になったほうが驚きです。」
チキは嫌な顔もせず答えるのだが何かを隠しているような顔であった。ラティはそれを見逃さなかった。
「そろそろ本題に入るか。何かを隠してないか。他の魔物はともかくあの魔物、カースドラゴンは明らかにリュートに敵意を持っていた。あなたがここに来たのは何か別の目的があるのだろう?」
ラティはチキをにらむように言った。
「やはり、気づいていたのですね。アカネイア大陸だけでなく各地で自然を装った不自然なことが起こっています。異大陸で起こったロプトウス、ガーゼルといった暗黒竜があらわれたのは何者かの仕業だと思います。しかし、正体がつかめません。他の魔物は別としてカースドラゴンはそのものたちの刺客の可能性があります。」
ラティはその話からチキがここに来た本当の狙いに気づいた。
「現在のアカネイアはばらばらだ。しかし、まとまればかなりの勢力になるだろう。そのためにはリュートのような強い指導者と彼を支える人間が必要だ。おそらく、やつらはそれを恐れているのだろう。俺を助けたのもそんなところだろ?」
チキはラティの成長に驚きを隠せない。
「あなたに隠し事はできないようですね。そのためにリュートに会って確かめておきたいと思いました。ラティ、このことは・・・」
「わかっている、このことは心に留めておく。不確定な情報を教えても無駄だからな。リュートのことだ、一人で突っ走りかねない。」
チキとラティは思わず苦笑した。しばらく時が流れた。リュートはテントから出て、星空を見上げていた。
「嫌な風を感じる。これがチキ様の言っていた不吉なことが起こる前兆なのか?僕ももう少し強くならなくては。」
彼の感性は普通の人より鋭い。アリティアよりガダインにいるほうが多いのはこのためである。アリティアは危険だと本能的に感じている。ここからリュートの戦いが始まる。そして、夜が明けた。その頃のリュートはリーベリア大陸で起こっている異変に気づくはずもなかった。

 

 

 

 

 

最終更新:2011年12月30日 18:28