南リーヴェとカナンから同時に戦火があがった頃、一度収まったはずのサリアでも新たな戦火が巻き起こった。ガーゼル教皇グエンカオスによって連れ去られサリアの王女カトリを救うべく、ホームズ軍がサリア神殿に向かうべく封印の谷に進入して、リュナン軍を裏切ったジーク率いるガーゼル教国軍騎馬軍団と激突したのだ。しかしその結末は思いのほか呆気ないものだった。わずか数時間の戦いでガーゼル軍の主将ジークはシゲンによって捕らえられ、騎馬軍団はホームズ軍の猛烈な攻撃の前に霧散したのだ。リュナン軍にいた頃は手勢を持たなかったものの、武神ナロンと双璧をなす程の武名を轟したがやはりこういう大戦となると些か勝手が違ったようだ。そして何よりもホームズ軍の士気が異常なまでに高かったことが大きな要素だったのかもしれない。捕らえたジークはゾーアの魔女カルラによって奪取されたもののその大勢に影響は少なく、圧倒的な勢いを持って封印の谷を突破したホームズ軍の前に最初の難関が立ちはだかった。サリア神殿の手前にある湖が毒の沼と化して、ここにガーゼルの一大魔道士部隊が展開していたのだ。
しかしこの難所もホームズの決死の覚悟の前に瞬く間に陥落する。敵のワープ特攻で進軍が止まったのを見たホームズはすぐに敵と同じ手を思いつき、単身レネの転送の杖を使ってサリア神殿入り口にいる敵本陣を奇襲したのである。数こそ多いが、それにも増して今のホームズの戦闘力は彼らを凌駕していた。そして同じ手を使ってくるとはよもや思わなかったのか、かなり浮き足立っているので尚更である。こうなるとホームズの独壇場だった。真っ先にこの陣の敵主将ペリシテが討たれ、さらに敵兵たちも次々とホームズの剣の錆となっていた。この時のホームズの戦いは鬼神のごとき凄まじさだった。しばらくしてシゲンが同じように転送の杖で駆けつけてきたが、あのシゲンですら返り血で赤鬼のようになっているホームズを見たときは驚いたようだ。当のホームズはと言えば、そんなことなど全く気にせずに我武者羅に敵兵を切りつけていく。大勢が決したのは今ではホームズ軍随一の剣士となったゼノが転送してきた時である。ホームズ軍の三銃士が整えば、さしもの大軍も脆いものである。湖上に布陣した敵軍も本陣が壊滅状態になったことを知って浮き足立ち、さらには湖上を押し渡るホームズ軍の襲来で瞬く間に壊滅した。こうして霧の沼はホームズ軍の手に落ちた。
すぐさま神殿内に突入するかと思われたホームズ軍だが、ここで進軍がバッタリと止まった。ホームズは断固進軍を主張したが、シゲン以下ほとんどの者が将兵の疲労を理由に反対したために結局ホームズが折れた形となった。もっとも彼らは先ほどの戦いで短期突入したホームズを心配してのことで進軍を反対したのであって、ホームズ軍の将兵たちは勝ち戦続きで疲労はあるものの意気は恐ろしく高かったのである。結局ホームズ軍は神殿の入り口に3日留まることになった。
休憩二日目、突如封印の谷から大軍が進撃してくるような地響きが響き渡った。。ガーゼル軍が逆襲に転じてきたのかと思ったが、直後その部隊の使いと名乗るものがホームズ軍の本陣を訪れた。封印の谷を越えてきたのはセーナの本拠ガルダ島から武器・道具等を長駆輸送してきた輸送隊と、その護衛であった。セーナはホームズ軍がグラナダを確保してから、自身のカナン出兵と平行してガルダで開発した武器・道具をホームズに支援させるために貴重なエーデルリッターの戦力を分割して担当させたのだ。この思わぬ支援にこの頃難しい顔が続いていたホームズも相好を崩した。ラゼリアでわずかに休んだのみでグラナダからずっと駆けてきたために物資の調達がほとんどままなっていなく、また怒涛の進撃の代償に兵站が極端に細くなっていたのでホームズ軍の兵站を担う将はセーナの支援物資がとにかく宝の山に見えたのだろう。エーデルリッター5千で輸送してきた支援物資はかなりの膨大な量で、しかもガルダで開発された、当時としては世界最先端の武具も含まれたためにホームズ軍の戦力はさらに向上することになった。実はこのエーデルリッターの別働隊にはさらなる任務が任されているようで、輸送任務が終わったらすぐさま今来た道を戻っていった。次の日、ホームズ軍の中ではセーナから渡された武器の取り合いでようやくホームズ軍らしい騒々しさを取り戻した。もっともホームズは再び厳しい顔に戻ったのは言うまでもない。その表情はどこか何かを決意したようである。
その次の日、ついにホームズ軍がサリア神殿に進入した。神殿内に潜んでいたガーゼル軍は霧の沼の戦いを聞き、わずかながらホームズ軍を恐れていたが、すぐに神殿に侵入してこないことがわかりホッと撫で下ろしていた。しかしその代わりにガーゼル軍の将兵たちの中にはこの三日間で心に隙ができていた。ある者は、ホームズ軍が驚くべき秘策を練っている、と恐れる者や、進入してこないのは先の戦いで我々の恐ろしさを知ったからだ、と侮る者などがかなり増えてきていた。そこにホームズ軍が意気揚々と侵入してきたのだから誰もが不意を突かれたようだ。サリアの隠れ里から付いてきたクラリスの案内もあり、地の利を得たホームズ軍は瞬く間にサリア神殿の半分を制圧。残りはゴーレムの大群との戦いと、暗黒司祭バールの操るアースクエイクに手間取りはしたもののホームズ、シゲン、ゼノのホームズ軍三銃士の奮闘でついに陥落した。制圧後、カトリから託されたリングオブサリアの力により聖剣サリアが覚醒し、ホームズの手に収まることになった。そしてホームズは改めてカトリを救出することを誓い、邪神の祭壇へと続く火の迷宮に消えていった。