概要
当記事では、セトルラーム連邦を構成する中央組織について纏める。
上位組織
上位組織として構成される三機関のうち、地域君主が集う連邦公爵会議と各構成主体の代表からなる同首長会議を信託両会議として指定している。
国の最高機関たる連邦評議会は、信託両会議の承認を前提に構成されるもので共同大権(君主大権とも言う)の濫用を避けるための工夫が講じられた。
連邦評議会
主に行政の精察を司る
連邦筆頭公爵を中心に、その補佐役を担う立法の
左位連邦公爵と法の番人たる
右位連邦公爵が列席する。これら
三元君主(王大公)と称される人物は各々三権(行政、立法、司法)に対する最高責任を共有し、三名一致による
共同大権を有した。それぞれが任意の部下を迎える権限を持ち、直接的に指揮を取ることもできる。公の家臣たる連邦評議員は通常、閣僚レベルの処理能力を持つことから高度に制度化されて久しく、特定事態下における政権担当能力を維持しなければならない。優秀な文官たる彼らは必要とされる資料を纏めた後、各々が責任を持つ連邦公爵に報告を行うのである。下から挙げられた法案や人事を三元君主が拒否するような事態は基本的に想定されておらず、所定の法解釈から極端に逸脱するケースでない限り追認するのが最善とされた。それでも一部の君主が強い権力を持つことに変わりはなく、今後の代替わり(乱心または利害の一致等)によって民主制が損なわれる可能性も危惧される。そのため、以下の関連会議における拒否権も制定された。(筆頭公爵と呼ばれるのは通常、
ロフィルナ連邦の長たる
アリウス女大公に限られるが、国内儀礼上の観点から三元君主全てに共通する呼び方としても認められた。)
連邦公爵会議
共立連邦を構成する各自治体の名目領主が集う。全員に公爵位が与えられており、現行の国内法においては三元君主と同等の身分であることが保障された。その席上において、最上位の品格を司る彼らには国の模範となることが求められる。そのため、代表となる三元君主も厳格な審査と評価によって続投の良し悪しが決まる仕組みとなった。候補者を認定する際も、民主的プロセスに則って構成される連邦首長会議の議決を要することから、両会議いずれかの不信任決議が成立した場合には例え国家元首であろうと直ちに解任される。とはいえ、事案に至ったことは当時代において一度たりとも存在しない。改暦以前の
独裁者に
アルバス大公(当時)の解任を強制された事例が不名誉な教訓として刻まれているからだ。
連邦首長会議
主に自治体の総意を司る組織。各恒星域を代表する星区長を始め、構成各国の総知事、特別行政区の長などから成り立つ。公爵会議に対して拒否権を持っており、三元君主の暴走を抑制する仕組みを取った。一方、当会議の歴史において三元君主の続投を拒否した事例は一度たりとも存在せず、そうした状態が健全なものであるか否かは国民の政治的立場により意見が分かれているのが現状とされる。つまり、当代君主を代替わりさせるどころか、それ以前の問題として立候補に値する人材が存在しないことも一部の政治家の視点から大きな問題点として挙げられた。逆に当代の三元君主が国民の根強い支持によって続投しているとも言える。その他、現中央政権(行政評議会)との利害が著しく衝突した場合は
勅令による緊急停止の措置を求める権能(上奏権)も有しており、
フリートン大統領の暴発阻止を目的に過去42回にわたる上奏が繰り返された。しかし、三元君主の視点から如何なる違法性も見いだせず、全て棄却された経緯がある。
下位組織
行政府
行政評議会
政治の中枢たる行政評議会は、大統領を長とした
セトルラーム共立連邦の意思決定機関である。大統領には同傘下組織における
閣僚(政策理事・長官)の任免権限があり、ともに行政権を共有する連邦公爵、同首相との力関係に応じて人選を行う。また、外交・経済・その他すべての政策に係る
専決政令権を有するが、通常の合意事項として連邦議会(同胞院)から選出される連邦首相の手に委ねられて久しく、必要に応じて協議を重ねる体制となった。大統領は
議会に対して強力な拒否権を持つものの、殆どの局面において首相の内政権を追認しているのが現状で、安定政権を維持するための柔軟な役割分担が進んだ。以上の調整に従って集約された決定事項は、省令となり、下部の機関まで通達される。大統領と首相が対立した場合は、必要に応じて筆頭公爵(大公)が仲裁を実施できる体制となった。
大統領の要求に従って首相を罷免することも法律上は可能とされる。議会が交代を拒否し、行政の機能不全を招いた場合は共立裁判所に裁量権が移り、必要な人事措置を下すことになる。状況次第で解散総選挙に持ち込むことも想定されるが、事案に至ったことはこれまでに一度もない。以上の構造から、
強い長と弱い議会・または
セトルラームの特色ある半大統領制として説明されることが多く、連邦政府もそのようなエビデンスに基づいた分析を認めている。
連邦大統領
国民の直接選挙によって選出される。行政の長。立法に対する拒否権の他、議会の事後承認を前提とする専決政令権を持つ。三権の中でも特に広範な実行力を認めるが、立法府議員のうち、4分の3を超える反対と裁判所の判決、連邦評議会の「命令」によって覆されるという制約もあり、無制限に発動できるわけではない。政権与党の代表たる連邦首相との関係も軽視できず、暴走の可能性は通常、低いものと見られる。利害関係を共有する支持母体をはじめ、その他の無党派層と、連邦首長会議に影響力を持つ有力者との取引によって上記の停止措置を避けることも出来なくはない。現状、大統領個人に全権を委ねることは想定されておらず、理論上の予想に留まった。国民の代表として軍を直接指揮する立場にあるものの、憲法擁護を理由に軍事クーデターを起こされるリスクも否定できず、予算、その他の人事措置において細心の注意を払わなければならない局面もあるという。
連邦首相
立法府を構成する多数派の中から選出される。憲法・法律上における
任期制限の対象外となって久しく、
信任される限り続投可能となった。院内派閥間の合意で特定の野党から選出することも可能だが、そのようなケースは稀である。今日では最大与党(連邦社会共立党)の総裁たる
ゾレイモス首相が国内統治のコントロールを担っており、大統領の追認を前提とする
代理解散権の行使も認められた。党派間の調整によって、ある程度の役割分担が成立しているという。また、連邦議会において答弁するのも首相であり、党を代表する重要なポジションとなった。政府内における紛争で失脚しない限り、内政に関する多くの権限を維持できる。国民の直接選挙によって就任する大統領の拒否権、専決政令権の発動、その他、直属機関の暴走を如何に封じるかが腕の見せ所とされた。
地方自治体政府
特別行政区
現在、独自の体制を持つ自治体(特別行政区)に関しては、連邦法の適用対象外として扱われており、徴税.司法.安全保障に関する事項においてのみ連邦総議会への参加を認める方式を採用した。
また、経済分野(税制含む)において細かな調整を必要とする場合、対象となった特別行政区は係る事項を精査し、批准の可否を決定することができる。
その他の外交権に関しては中央政府(行政評議会)の管轄となるため、必要に応じて双方の政策を擦り合わせているのが現状である。
何らかの要因によって該当の自治体が強度の紛争状態に陥ると、連邦の特別統治条項が適用され、治安維持部隊の介入要件を満たすことになる。当時代においては、
アルゼヌーク紛争に対して実行された。
立法府
連邦総議会は、右院、中院、左院の3機関によって構成され、それぞれ同胞院、法理院、共立院の名で呼ばれている。審議の際には、まず左右の院から決を取り、最終的に法理院(中院)が成立させる仕組みとなった。左右の院には予め先権権が与えられており、開催期間中に提出することも可能である。法理院で否決された法律案は一度合同審議会に差し戻され、然るべき修正を経て再び法理院に提出される。この時、否決となった場合は、そのまま廃案となることが多いものの、次の議題に間に合うのであれば、理論上、何度でも審議を繰り返すことが出来る。左右の院において、どちらか一方が法律案を提出する場合、必ず双方で共有され、それぞれの議決をもって二通りの案が法理院に提出されることになる。この方式のメリットは、それぞれの利害関係を十分に加味することが想定され、ポピュリズムによらない高度な政策審議によって可決させることを理とする。なお、立法権は左位連邦公爵(大公)と共有するが、大抵の場合は議会の助言に従う形で関連法案を成立させている。3機関のうち、同胞院(右院)に関しては首相判断に基づく解散が認められることから、必要に応じて総選挙に持ち込むことも可能とされた。事案に至ったケースは殆どない。
同胞院(右院)
同胞院議員は、一般国民の投票(総選挙)を通じて選ばれ、任期は15年。法定議席は各行政主体の人口比率に応じて配分される。一部の特別行政区は完全な自治権と引き換えに関与できる議題が制限されており、必要とされる場面を除いて連邦予算による地方交付金の分配も行われない。同胞院選挙における選挙区制度は政治の安定を重んじる小選挙区制を採用。共立憲法における擁護義務の制定から、
連邦社会共立党による事実上の一党優位体制が成立した。
当該小選挙区における有効投票総数のうち、10%に満たない候補者の当選は認められない。同胞院(右院)以外の2つの立法機関選挙に供託金制度が成立して久しく、民主主義の在り方を巡る論争が続いている。今日では連邦首相が形式上の右院解散権を持ち、必要に応じて実行できる体制となった。正式な解散権を持つのは、あくまでも大統領であり本来の法的解釈における首相の役割は補助的なものに留まっていた。ゾレイモスの卓越した政治手腕によって現在の役割分担が成立し、国内序列において事実上、対等な地位を保っているという。
フリートン大統領が所属する包括政党で、現在の党首は
ゾレイモス・ヴィ・ケレキラ=プルームダール。同首相が率いる右派リベラル(通称、ゾレイモス派)を筆頭に、大統領を支持する中道共立(通称、フリートン派)、キャスティングボードを握る保守改革連合(通称、エルク派)から構成される。党内派閥のうち、ゾレイモス及びフリートンの二大派閥が双頭体制を築いて久しく、必要に応じて保守改革と調整する構図となった。現状、最大勢力となって久しいゾレイモス派の企業優遇路線に、積極財政を掲げるフリートン派のバラ撒き政策がミックスされ、そこにメスを入れる保守改革派の科学志向が現在のセトルラームを築き上げた。社会的弱者に寛容である反面、伝統の破壊に躊躇がなく、汚職の疑惑が尽きないところに懸念を持たれている。更に民主主義を後退させかねない法案を成立させたり、政権にとって都合の良い人事を断行するなど国民の政治不信を加速させた。
連邦議会において第2位の勢力を保つ。自由主義保守政党。全体として市場経済を重んじるが、度重なる政権奪回の失敗から国粋主義者を含む多くの宗教保守を受け入れた。その結果、積極介入を是とするセトルラーム・ファースト路線に傾倒し、結党当初の
黒丘思想は鳴りを潜めてしまっている。現在の主流派は社会的弱者に不寛容で、一部の国民曰く、『かつての独裁政党(現.共立党)が相対的にマシに思える』逆転現象が生じた。多くの持たざる者がこの政党に嫌悪感を表しており、財界からも見限られている現状では政権交代など不可能に等しいだろう。現政権による選挙制度の改悪から、民主主義の崩壊に異議を唱えた一定層の投票によって支えられる。現在の公約として政財界の腐敗を一掃することに力を注いでおり、大統領の不正を厳しく追求している。
連邦議会で8議席を持つ野党第二党。党首マリナ・ヴェルク・トゥールヴェンが率いるトゥールヴェン派、副党首ガストン・リードの協働派、生者優先派の三派閥から成る。左右包括的ポピュリズムと地方協働主義を掲げ、
連邦社会共立党の技術偏重と
救国行動党の国家主義を批判。不老技術禁止、富裕層増税、軍備縮小、地方分権を主張し、関税撤廃と移民制限を両立させる。ヴァルツェルナの協同モデルを全国に広げ、大都市化を「地域の魂の喪失」と非難する。法定得票10%制限の廃止や三院制から一院制への移行を求め、「既得権益の打破」を訴えるが、議席数の少なさから議会での影響力はほぼ皆無。地方の農工層や都市部の低所得者に支持される一方、財界や技術依存の大都市住民からは「経済を停滞させる非現実的な夢想」と冷笑され、与党の選挙制度改悪が勢力拡大の壁となっている。
共立院(左院)
共立院は、主に各州代表、国家に勲功のある者、高額納税者(1代貴族)、その他の職能議員によって構成される。
原則的に国民政党非所属であることが条件とされるものの、多くの議員が特定の営利団体(会派)に所属しており、それぞれの利益を追求することから一種の政党勢力として認知された。
議員定数は1000議席で、通常任期は30年、15年ごとの半数改選を実施する。
会派の長たる院内総務は各階層毎の互選を経て任命されるが、共立思想に基づく契約関係の熟成から社会保障利権に肯定的な者が有利とされた。
法理院(中院)
法理院は、各界の有識者(学識ある者)によって成り立つ審査機関で、各関係団体での互選を経て左位連邦公爵が任ずる。
原則的に国民政党非所属であることが条件とされるものの、多くの議員が特定の学術団体(会派)に所属しており、それぞれの政策を調整することから一種の政党勢力として認知された。
議員定数は1000議席で、任期は50年。25年ごとの半数改選を実施する。審議水準の高さに定評があり、再考の府としての役割に期待する向きが大きい。
王党共立派
かつてアリウス女大公主導の民主化に協力した。法理院における現在の最大派閥。どちらかと言えばリベラル的な思想に偏るが、当初の改革から1000年を経た現在では保守改革派閥として分類される。共同リベラルを自称する現在の政権与党との違いはアリウス女大公に対して強固な忠誠心を保っていることである。ゆえに権力濫用を繰り返す
フリートン大統領の躍動を強く警戒。セトルラーム・ファーストを掲げる救国行動党に対しても不倶戴天の政敵として突き放し、階層を問わず多くの敵を作った。王党共立を掲げる法学者の態度は年々硬化の一途を辿っており、ゾレイモス率いる右派リベラルとの連携も疑われた。
司法府
共立裁判所を始め、連邦裁、地方裁、軍事裁の4機関によって構成される。共立裁判所は憲法問題に関する紛争を取り扱っており、必要に応じて合憲性などの判断を担う。連邦裁判所は主に連邦問題に係る紛争を、地方裁判所は連邦構成主体たる各公国の訴訟事案に対応し、それぞれに下級裁判所、中級裁判所、上級裁判所からなる三審制を採った。軍法を司る軍事裁判所は、主に軍規違反を裁く司法機関として設置され、その中に通常軍規裁判所、特殊軍規裁判所、略式軍規裁判所、国際軍規裁判所の4機関を構成している。また、それぞれの軍事法廷が一審制を採っており、迅速な処理を可能とした。司法府の長となる最高司法長官を始め、各裁判所の構成員は行政評議会の助言と、連邦総議会の推薦、右位連邦公爵の承認を経て任命される。各々15年に一度の法曹審査があり、司法府内における投票の多数を占めることで続投となる。弾劾に関しては別途、三権(行政、立法、司法)による同意を必要とした。
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最終更新:2025年03月08日 18:06