** インドラ インドラ(Indra)は、[[インド神話]]における雷と戦争の神であり、ヴェーダ時代の[[バラモン教]]では神々の王として崇拝されました。 彼は雷、雨、戦争、そして天界を司る存在で、多くの神話や讃歌でその力強さと英雄的な性格が描かれています。 ---- #contents() ---- *** 概要 インドラはヴェーダ時代から続く古代[[インド神話]]の中心的な存在であり、その雷と戦争の象徴として多くの物語に登場します。 彼は自然界や農業に深く関わり、人間社会に重要な恩恵を与える存在でした。一方で、その享楽的な性格や[[衝動的]]な行動が神話における人間味あふれるキャラクター性を際立たせています。現代では[[ヒンドゥー教]]や[[仏教]]において異なる形で信仰され続けています。 **** インドラの特徴 :地位| - ヴェーダ時代では「デーヴァ(神々)の王」として最も重要な神格の一柱 - [[ヒンドゥー教]]が発展するにつれ、[[シヴァ]]や[[ヴィシュヌ]]にその地位を譲り、現在では東方を守護する「ローカパーラ(世界守護神)」として位置づけられています :象徴| - 雷と雨を司り、農業や自然環境に重要な役割を果たす - 武器は雷の棍棒「ヴァジュラ」で、これを用いて敵を討ちます - 乗り物は白象「アイラーヴァタ」で、天界を統治する威厳を象徴しています :性格| - 勇敢で力強い一方、享楽的で衝動的な面も持つ - 神酒「[[ソーマ]]」を好み、これによって力を得るとされています **** インドラの神話と役割 :1. 悪竜[[ヴリトラ]]との戦い - 最も有名な神話では、インドラは悪竜[[ヴリトラ]]を討伐し、水を解放しました - このエピソードは宇宙創造や秩序回復の象徴とされています - ヴリトラは水源を封じ込めていましたが、インドラが雷棍ヴァジュラでこれを倒し、人々に水と豊穣をもたらしました :2. 天候と農業| - インドラは雨を降らせる力を持ち、農業や生活において重要な役割を果たします - そのため、農民たちから特に信仰されました :3. 乳海攪拌(ちかいかくはん)| - 神々が不死の霊薬「[[アムリタ]]」を得るために行った乳海攪拌にも関与しています - この際、インドラは[[ヴィシュヌ]]の助言を受けてダイティヤ([[悪魔]])たちと協力しましたが、最終的には[[アムリタ]]を独占し、天界への支配権を取り戻しました :4. [[仏教]]への影響| - インドラは[[仏教]]にも取り入れられ、「帝釈天」(たいしゃくてん)として知られています - 仏法守護の神として、日本や中国などでも信仰されています :信仰の変遷| - ヴェーダ時代には、『リグ・ヴェーダ』全1200編中約4分の1がインドラへの讃歌で占められるほど崇拝されていました - [[ヒンドゥー教]]が成立するにつれ、その地位は低下し、[[シヴァ]]や[[ヴィシュヌ]]など他の神々に取って代わられました - しかし、「ローカパーラ」として東方の守護神となり、一部地域では現在も信仰されています ** 関連ページ #related()