功利の怪物
功利の怪物は、哲学者ロバート・ノージックが1974年に提唱した
思考実験であり、功利主義の問題点を指摘するために考案されました。
この思考実験は、ある架空の存在「功利の怪物」が、他の誰よりもはるかに多くの幸福を感じることができるという設定を用いています。
概要
思考実験の内容
功利の怪物は、例えばケーキを食べるとき、普通の人が感じる幸福を1とした場合に、1000倍もの幸福を感じることができると仮定されます。このため、功利主義に基づけば、限られた資源(この場合はケーキ)を最大限に活用するためには、それらを功利の怪物に与えるべきだという結論になります。なぜなら、そうすることで全体の幸福度が最大化されるからです。
功利主義への批判
この思考実験は、功利主義が一見すると公平であるように見えながらも、実際には不平等を生む可能性があることを示しています。具体的には、一部の個人(この場合は功利の怪物)の幸福を最大化するために、多くの人々が犠牲になる可能性があるという点です。これにより、功利主義が必ずしも全体として公正であるとは限らないことを批判しています。
現実世界への影響と考察
この思考実験は、単なる哲学的な問いかけに留まらず、現実社会での政策決定や倫理的判断にも影響を与える可能性があります。例えば、資源配分や社会福祉政策などで、一部の人々やグループが他よりも多くの利益や幸福を享受することが正当化されるかどうかについて考える際に、この思考実験が参考になるでしょう。
功利の怪物は、単なる幸福の総量だけではなく、その分配方法や個々人の権利も考慮に入れる必要性を示唆しており、倫理学や政治哲学における重要な議論を促進しています。
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最終更新:2024年12月12日 15:42