塔の中の姫君
「塔の中の姫君」は、新城カズマ氏の著書『
物語工学論 キャラクターのつくり方』で定義されているキャラクタータイプの一つです。
このキャラクタータイプは、物語において古典的な
ヒロイン像を表しており、
囚われの姫君と役割はほぼ同じです。
特徴
- 囚われの身
- 「塔の中の姫君」は、物理的または心理的に囚われているキャラクターです
- 彼らは閉じ込められた場所から救出されるか、自ら脱出することで物語が進行します
- 古典的ヒロイン
- このタイプは非常に古典的で、「泣ける」物語を生みやすいですが、単調なドラマになりがちという特徴もあります
- 性別に制限なし
- 便宜的に「姫」とされていますが、性別は問わず、様々な状況でこのタイプが適用されます
作品例
『ペルソナ4』の天城雪子
天城雪子は「ペルソナ4」に登場するキャラクターで、「塔の中の姫君」としての要素を持っています。
- 囚われの身
- 雪子は物語の中で、老舗旅館「天城屋」の次期女将としてのプレッシャーや期待に囚われています
- 彼女はこの環境から逃れたいという思いを抱えており、これが彼女の心理的な囚われとなっています
- また雪子自身も、自分が「籠の中の鳥」として生きていると感じています
- 救出と解放
- 物語では、彼女がテレビの中に囚われるという事件があり、主人公たちによって救出されることで、自身の内面と向き合い成長する機会を得ます
- このプロセスは、典型的な「塔の中の姫君」の救出と解放の物語に類似しています
- そして雪子は主人公や仲間たちと共に過ごすことで、自分自身と向き合う機会を得て、旅館を通じて続く「人の絆」を受け継ぐことを決意し「自らの意思」で次期女将として生きることを選びます
- この選択は、次期女将としての役割を受け入れることでプレッシャーや期待を克服したという成長を示しています
- 古典的なヒロイン像
- 雪子は、控えめで引っ込み思案な性格でありながら、物語が進むにつれて自立心を育んでいく姿が描かれています
- これは古典的ヒロイン像に近いと言えます
このように、天城雪子は「塔の中の姫君」としての特徴を備えており、その成長過程が物語において重要な役割を果たしています。
『左門くんはサモナー』の加護小鳥
加護小鳥は「左門くんはサモナー」に登場するキャラクターで、彼女の役割は「塔の中の姫君」の特徴に当てはまると言えます。
- 古典的なヒロイン像
- 加護小鳥は、控えめで引っ込み思案な性格でありながら、少しずつ自立していく過程が描かれます。そして「周りからの影響を受けやすい」という欠点から「周りの行動をそっくりそのまま真似ることができる」という特技に変換させて演劇の道を選びます
- 囚われの身
- 加護小鳥は、母親の厳しい教育方針によってプライベートの時間を拘束され、友達と遊ぶ時間が取れないという状況にあります。
- これは物理的ではないものの、心理的に囚われている状態と言えます
- 救出や解放
- 加護小鳥の「友達と遊びたい」という願いを天使ヶ原が見つけ、彼女を助けようとします。
- 最終的に、左門の助けもあって母親に本心をぶつけることで、この囚われた状態から解放されることになります
加護小鳥の最初のエピソードは典型的な「毒親からの解放」の物語構造を持っています。この母親は「娘を自分の思い通りにコントロールしたい」という気持ちがエスカレートしてしまいますが、娘の自立心の
成長物語によりそれを奪われます。
そして、このエピソードの構造で特筆すべきもう一つの点は
ヘイト管理です。
母親を一方的に悪者にするのではなく、母親は娘のことを大切に想った上での暴走であると、天使ヶ原のフォローが入ったことです。
天使ヶ原
「…娘に反応されたのがショックだったのかな…。
結局は似た者親子だったってことでしょ。周りからの影響を繊細に受けすぎた」
「…ねぇ今回私たちが口出ししていい問題だったのかな。
あのお母さんも本人なりに加護ちゃんの将来を考えてたと思うし…」
多面的なアプローチをすることで、単なる
勧善懲悪のストーリーではなく、読者に問いかけるような深みを持たせています。
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最終更新:2025年01月18日 13:01