土蜘蛛

土蜘蛛


土蜘蛛(つちぐも)は、日本の古代史や伝承、妖怪物語に登場する存在です。


概要

土蜘蛛は歴史的には反抗的な地方勢力を指す蔑称から始まりましたが、時代とともに巨大な蜘蛛の妖怪として物語や演劇で描かれるようになりました。
歴史的背景としての土蜘蛛
古代日本では、「土蜘蛛」という言葉はヤマト王権に従わない地方豪族や土着民を指す蔑称として用いられていました。
『古事記』や『日本書紀』、各地の風土記には、彼らが「身短くして手足長し」と形容されるなど、異形の存在として描写されています。彼らは山野や洞窟に住み、王権に反抗したため討伐される対象とされました。

「土蜘蛛」という呼称は、穴式住居に住む様子から「土隠(つちごもり)」に由来するとも考えられており、実際の蜘蛛とは直接的な関係はありません。
妖怪としての土蜘蛛
時代が下るにつれ、土蜘蛛は妖怪としての性質が強調されるようになりました。
その姿は鬼の顔、虎の胴体、蜘蛛の手足を持つとされ、大きな蜘蛛の化け物として描かれます。特に平安時代には源頼光(みなもとのよりみつ)伝説に登場し、多くの物語や能楽で題材とされました。
代表的な伝承
1. 源頼光と土蜘蛛退治
  • 頼光が病床に伏せているとき、巨大な僧侶の姿をした土蜘蛛が現れます
  • 頼光は名刀「膝丸」で斬りつけ、逃げた土蜘蛛を家臣たちが追跡し討伐します
  • この刀は後に「蜘蛛切」と改名されました
  • この話は『平家物語』や能『土蜘蛛』で知られています
2. 『土蜘蛛草紙』
  • 頼光が北山で空飛ぶ髑髏を追い、不気味な屋敷で妖怪たちと戦い、最終的に巨大な蜘蛛を討伐する物語です
  • この絵巻では、蜘蛛の腹から無数の髑髏や子グモが現れるという恐ろしい描写があります
能『土蜘蛛』
  • 能楽では「膝丸」で斬られた僧侶が実は土蜘蛛だったという展開が描かれます
  • 後半では家臣たちが塚を崩し、中から現れた巨大な土蜘蛛を退治します
  • 特に、和紙で作られた蜘蛛糸を投げる演出が見どころとなっています
文化的影響
  • 近世以降、土蜘蛛は浮世絵や戯曲などにも取り上げられ、日本文化における妖怪像として定着しました
  • また「妖怪ウォッチ」など現代作品にも登場し、その恐ろしい姿や能力が再解釈されています

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最終更新:2025年01月14日 09:08