プロット・バウチャー(Plot Voucher)
プロット・バウチャー(Plot Voucher)は、物語における
プロット・デバイスの一種であり、登場人物(特に主人公)が後に直面する障害を解決するために、事前に与えられる物体や要素を指します。
このデバイスは、物語の進行や解決に重要な役割を果たしますが、不自然に感じられる場合には批判の対象となることもあります。
概要
プロット・バウチャーの特徴
- 1. 事前に与えられるアイテムや情報
- 主人公が物語の早い段階で受け取るが、その時点では重要性が明確ではない
- 後になって、そのアイテムや情報が障害を乗り越える鍵となる
- 2. 物語進行の伏線
- プロット・バウチャーは伏線として機能し、物語の後半でその価値が明らかになります
- 例: あるキャラクターが贈り物として渡されたペンダントが、後に命を救う防具として機能する
- 3. 作為的な印象を与える可能性
- プロット・バウチャーがあまりにも都合よく機能すると、読者や観客に「作為的」だと感じられ、不信の停止の喪失リスクがあります
具体例
- 1. 映画や小説
- 『ハリー・ポッター』シリーズ*: ハリーがダンブルドアから受け取った「逆転時計」が、後に時間を巻き戻して危機を回避するために使用される
- 『ロード・オブ・ザ・リング』: フロドが受け取った「エルフの光る瓶」が、後に暗闇の中でモンスターを撃退するために役立つ
- 2. アクション映画
- 主人公が序盤で手に入れた武器や装置が、クライマックスで敵を倒すための決定的な道具となる
- 3. ミステリー作品
- 事件解決の鍵となる証拠品や手掛かりが、物語の初めでさりげなく提示される
プロット・バウチャーのメリット
- 1. 伏線として物語を豊かにする
- 初めは何気ない要素として登場し、後半でその重要性が明らかになることで読者や観客に驚きや満足感を与える
- 2. ストーリー構造を支える
- プロット・バウチャーは物語全体の整合性を保ち、スムーズな進行を可能にします
- 3. キャラクターとプロットの結びつき
- 特定のアイテムや情報によってキャラクターとストーリー展開が密接につながります
注意点と批判
- 1. 作為性への注意
- プロット・バウチャーがあまりにも都合よく登場したり機能すると「ご都合主義的展開」として批判される可能性があります (→不信の停止の喪失)
- 対策: そのアイテムや情報が自然な形でストーリー内に組み込まれるよう工夫する
- 2. 過剰な依存
- プロット・バウチャーだけに頼りすぎると、キャラクター自身の成長や行動による解決ではなく、外部要因による解決ばかりになり、物語が浅く感じられることがあります
- 3. 不信の停止への影響
- バウチャーの使用方法によっては、不自然さから読者や観客が物語への没入感を失うリスクがあります
作品例
霊撃輪具「幽☆遊☆白書」
「幽☆遊☆白書」における霊撃輪具(レイゲキリング)は、剛鬼との戦いでぼたんが幽助に渡した霊界探偵七つ道具の一つで、霊丸の威力を倍以上に高めることができるアイテムです。
霊撃輪具のプロット・バウチャーとしての特徴は以下の通りです:
- 1. 一時的な強化アイテム
- 霊撃輪具は、幽助の霊丸の威力を倍以上に高めることができる道具で、剛鬼戦という特定の場面で幽助が苦戦を打開するために使用されました
- 2. 代償を伴うリスク
- このアイテムを使うと、霊力と体力を大幅に消耗するため、戦闘後には動くことも困難になるほどの負担がかかります
- この点で、万能ではなく制約がある設定です
- 3. 物語の進行を助ける限定的な役割
- 剛鬼戦以降、この道具は登場せず、幽助自身の成長や他の手段によって困難を乗り越える展開に移行します
- そのため、一時的なプロット・デバイスとして使用されたと解釈できます
これらの特徴から、霊撃輪具は主人公が窮地を脱するために導入された典型的なプロット・バウチャーと言えます。
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最終更新:2025年01月30日 08:00