お嬢様ことば
お嬢様ことばは
役割語の一種で、主に創作作品において
お嬢様キャラクターを表現するために使われる特有の言葉遣いです。
特徴
お嬢様ことばの特徴
- 1. 上品で丁寧な言葉遣い
- お嬢様ことばは、上品で丁寧な印象を与えるため、敬語や婉曲表現が多く使用されます
- 例えば「~ですこと」「〜ですわ」「〜ですの」「〜ますわ」「〜〜て?」「ございますわ」といった語尾が特徴的で、「こと/わ/の/て」が付きます
- 「お」や「ご」を付けて丁寧に表現(例:「お紅茶」「ご本」)
- 尊敬語や謙譲語を駆使し、自分は控えめに、相手を高める表現を心がけます
- 2. 古風な表現
- 「てよ」「だわ」などの古風な表現が含まれることがあり、これらは特に過去の時代設定や伝統的な家庭背景を持つキャラクターによく使われます
- 「~あそばせ」「ごめんあそばせ」などの丁寧かつ上品な命令・依頼表現が使われます
- 3. 役割語としての使用
- 小説や漫画では、お金持ちのお嬢様らしさを強調するための「役割語」として広く用いられています
- これにより、キャラクターの社会階層や性格を迅速に伝えることができます
お嬢様ことばの例文
シチュエーション |
通常表現 |
お嬢様ことば |
説明 |
挨拶 |
「こんにちは」 |
「ごきげんよう」 |
|
「はじめまして |
「お初にお目にかかわりますわ」 |
|
「よろしくお願いします」 |
「以後、お見知りおきを」 |
初めて合う人向けの挨拶 |
「さようなら」 |
「ごきげんよう」 |
|
「また会いましょう」 |
「またお目にかかりましょう」 |
やや上から目線なのがお嬢様視点 |
返事 |
「いいですよ」 |
「よろしくてよ」 |
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「いいえ」 |
「結構ですわ」 |
|
「ありがとう」 |
「感謝いたしますわ」 |
|
質問 |
「大丈夫ですか?」 |
「よろしくて?」 |
|
「〜ですか?」 |
「〜かしら?」 |
|
相槌 |
「はい」 |
「ええ」 |
|
「ん?」「え?」 |
「あら」「まぁ」 |
|
来客への案内 |
「どうぞ、お入りください」 |
「どうぞ、お入りあそばせ」 |
丁寧かつ格式高い案内表現 |
来客を待たせる際 |
「お待ちください」 |
「お待ちあそばせ」 |
上品な促し表現 |
謝罪・軽い断り |
「すみません」 「ごめんなさい」 |
「ごめんあそばせ」 「ごめんくださいませ」 |
軽くユーモラスにも用いられるお嬢様語 または相手に余裕を見せる場合など |
「~したくない」 「~は遠慮したい」 |
「いたしかねますわ」 |
とても丁寧に、かつ断るニュアンスを残す表現 「遠慮します」のお嬢様語で、 丁寧さを保ちながら表明する言い回し |
「~は好ましくない」 |
「~なさるのはお気が進まれませんの」 |
「~することに気が進まないように感じます」 という婉曲な表現 |
断りの挨拶(休息) |
「おやすみなさい」 |
「おやすみあそばせ」 |
優雅な挨拶表現として使われることも |
語尾の特徴 |
~だ、~ね(普通の丁寧語) |
「~ですわ」「〜ですの」 「~ますわ」「~ございますわ」 など |
語尾に優雅で柔らかい表現を使う |
一人称 |
「わたし」 |
「わたくし」 |
|
二人称・呼称 |
「あなた」「お父さん」 「皆さん」など |
「~さま」「おとうさま」「皆様」 「おかあさま」「おねえさま」など |
敬意を込めた呼称 |
言葉の選び方 |
「知ってる?」、 「会う?」など |
“する”→「なさる」「いたす」、 ”会う”→「お会いになる」「お目にかかる」など |
尊敬語・謙譲語を使い分ける |
- 「…あそばせ」シリーズ:お嬢様ことばを代表する表現で、来客対応にユーモアと上品さを加えます(例:「どうぞ、ご覧あそばせ」なども応用可能)
- 語尾の優雅さ:「~ですわ」や「〜ですの」「~ますわ」などで、品格と女性らしさを演出します
- 敬称の徹底使用:「~さま」を使う呼び方や、尊敬語・謙譲語の明確な使い分けで、上下関係や礼節の意識を強調します
二人称について
- 1. 「〇〇さま」の使用
- お嬢様ことばでは、相手を呼ぶ際に「〇〇さん」ではなく、「〇〇さま」と呼ぶことが特徴的です
- これは相手をより丁寧に敬う表現となります
- 2. 相手の立場や役割による呼称
- 例えば、家族に対しても「おとうさま」「おかあさま」「おねえさま」「おにいさま」のように「さま」をつけて呼びます
- 3. 敬称の使用
- 「貴公」「貴殿」などの敬称を使用することもあります
- これらは特に格式高い場面で用いられます
注意点としては以下のことがあります。
- 相手の名前や役割を使う
- 可能な限り、相手の名前や役割に「さま」をつけて呼ぶことが望ましいです。
- 状況に応じた適切な敬称の選択
- 相手との関係性や場面に応じて、適切な敬称を選ぶことが重要です。
- 「貴方(あなた)」「貴方様」はお嬢様ことばに該当しない
- 「あなた」は丁寧な言い方でないので、「〇〇さま」「貴公」「貴殿」を使用します
お嬢様ことばの歴史
- 1. 起源と発展
- お嬢様ことばは、江戸時代の女言葉や山の手の芸者言葉が起源とされており、明治時代から昭和初期にかけて女学校を通じて広まりました
- 当初は「乱れた日本語」として批判されることもありましたが、次第に上流階級の女性によって使われるようになりました
- 2. 文化的背景
- 戦後、日本国憲法による性別差別の撤廃とともに「ざます」などの女性言葉は権威を失いました
- 「です」などの丁寧語は市民権を得て広く使われるようになりました
お嬢様ミーム
- 「おハーブ生えますわ」「おハーブですわ」
- 「パクパクですわ」
- 食べ物を美味しく食べるときに使うミーム
- もともとはスーパーに関西弁で書かれていたのがミーム化してお嬢様ミームとなったもの
- 「タイが曲がっていてよ」
- マリア様がみてるの小笠原祥子の台詞の百合ミーム
- 女性の服装を正すときや、「タイ」の部分を別の言葉に置き換えて使う
- 「早くわたくしをころしにいらっしゃい!」
- 元ネタはガンダムWのリリーナのセリフ。ゲーム配信で余裕を見せるときに使う
- 「何なのこの人…」
- 同様にガンダムWで頭のおかしいヒイロに対してリリーナが言ったセリフ
- 「ええ、よくってよ」
- 元ネタは OVA「トップをねらえ!」でのセリフ「お姉さま、『アレ』を使うわ」「ええ、よくってよ」
作品例
時崎狂三『デート・ア・ライブ』
時崎狂三の「お嬢様ことば」の特徴は、彼女の
ミステリアスで優雅なキャラクター性を強調する重要な要素です。
- 1. 基本的な話し方
- ・語尾に「〜ですわ」を多用
- 狂三は会話の際に「〜ですわ」「〜ますわ」といった丁寧で上品な語尾を使用します
- これにより、彼女の優雅さやお嬢様らしい雰囲気が際立っています
- ・古風で格式高い言葉遣い
- 「昼食」を「昼餉(ひるげ)」、「お金」を「金子(きんす)」と呼ぶなど、古風で洗練された表現を好みます
- 長母音を「ァ」「ィ」「ゥ」などで発音する特徴もあり、例えば「デート」を「デェト」、「クッキー」を「クッキィ」と表現します
- 2. 慇懃無礼さと繰り返し
- ・慇懃無礼とも取れる話し方
- 丁寧で上品な口調ながらも、皮肉や挑発を含む場合があり、相手を翻弄するような会話術が特徴です
- ・感情が高ぶると繰り返す癖
- 感情が昂った際には、「〜ですわ、〜ですわ」のように同じ言葉を繰り返す傾向があります
- この癖は彼女の狂気的な一面ともリンクしており、ヤンデレ的な性質を強調しています
- 3. 狂気的な笑いとギャップ
- ・狂気的な笑い
- 興奮すると「きひひひひ」という独特の狂気的な笑い方を見せることがあり、お嬢様口調とのギャップが印象的です
- ・上品さと壊れた一面の対比
- 普段は落ち着いたお嬢様口調ですが、内面には壊れたヤンデレ気質や狂気が潜んでいます
- この二面性が彼女の魅力となっています
- 4. 人間関係における言葉遣い
- ・名前の呼び方
- 人名は基本的に漢字読みで呼びますが、主人公・五河士道だけはカタカナで「シドー」と呼びます
- 仲の悪い鳶一折紙についてはフルネームで呼ぶなど、相手によって微妙に言葉遣いや態度を変える点も特徴です
- 5. お嬢様ことばの演出効果
- 時崎狂三のお嬢様口調は、彼女の優雅さや神秘性を強調するだけでなく、その裏にある狂気や危うさとの対比によってキャラクター性をさらに際立たせています
- また、この上品さは彼女の外見(黒髪ロングやゴシック調の服装)ともマッチしており、一貫したキャラクターイメージを形成しています。
時崎狂三のお嬢様ことばは、彼女の
ミステリアスかつ危険な魅力を象徴する重要な要素であり、その独特な話し方が多くのファンに愛されています。
白鳥麗子『白鳥麗子でございます!』
白鳥麗子『白鳥麗子でございます!』は、ただ「丁寧」なだけでなく、キャラのプライド・恋する乙女心・天然さを巧みに言葉で表現しており、極めて完成度の高い“お嬢様語の模範”とも言えます。
特徴 |
内容 |
高貴で上品な言葉遣い |
「世界の白鳥麗子」「お嬢様語」で始まる強い自己紹介を多用 |
高笑いでキャラを演出 |
「オーホッホッホ…」は高笑いのセリフとして象徴的なフレーズ |
世間知らずな天然キャラ |
常識とはズレた言動(例:クレジットカードを賽銭箱に入れる)がことばにも反映 |
プライド高くも一途な恋心 |
言葉遣いの裏にある“不器用な乙女心”がキャラクターに奥行きを与える |
役割語としての構造的特徴 |
敬語・丁寧語・比喩・語尾表現が役割語として機能し「お嬢様」というキャラを確立 |
- 1. 典型的な“お嬢様語”と高飛車な語り口
- 白鳥麗子は、自称「世界の白鳥麗子」、さらには「日本が生んだお嬢様の中のお嬢様」と言い放つほどのプライドの高いキャラクターです
- 言葉遣いはもちろん高飛車な敬語体が中心で、典型的なお嬢様としての振る舞いを体現しています
- 2. 「オーホッホッホ」等の高笑いで“お嬢様らしさ”の象徴
- 彼女の代名詞とも言える「オーホッホッホ…」という高笑いは、品位の高さのみならず、上から目線のユーモラスな演出としての象徴です
- 3. 世間知らず、天然な要素が台詞に彩りを加える
- 裕福な家庭育ちゆえの世間知らずな言動(例:賽銭箱にクレジットカードを入れるなど)が、ことばの選び方にもあらわれ、コミカルかつお嬢様らしさを際立たせます
- 4. プライドの高さと純情さとのギャップ
- 自称高貴なお嬢様である反面、本当は恋心を素直に伝えられない“可憐でか弱い乙女”という二面性を持つことが、言葉遣いにおいても時折顔を覗かせます
- 5. 「お嬢様語」としての役割語性
- 学術的には、「お嬢様ことば」は典型的な役割語の一種として認識されており、白鳥麗子のセリフ(「お金なら銀行でおろすわよ」「まったくどなたもカンにさわることばかりなさるわね!」など)はその典型例とされています
四宮かぐや『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』
四宮かぐや『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』が使う「お可愛いこと…」のような、お嬢様ことばとしての特徴について整理しました。
- 1. 侮蔑と憐れみを込めた嘲笑表現
- 「お可愛いこと」は直訳すると「なんて可愛いこと…」ですが、かぐやが使う際は明らかに皮肉と見下しのニュアンスを伴います。
- → 高貴な立場から“格下”の存在を嘲るような言い回しとして描かれています
- 典型的には、白銀会長など自分に好意を抱く男子の行動に対して、内心では「滑稽ね」と感じながらも上品に言い放つ断絶された優越感が表現されています
- 2. セリフの多くは“白銀の妄想”の中で
- 実際にかぐやがこのセリフを発するシーンは非常に限られており、多くは白銀の脳内妄想の中で使われる“イメージ上のお嬢様”として登場します。
- → 高嶺の花としての彼女のイメージを強調する演出手法です
- ファンからは「下衆な人たちに向けて放たれる必殺技」として愛されており、アニメやSNS上でも印象的なセリフとして語り継がれています
- 3. 役割語としての機能性
- 「こと」は典型的なお嬢様語尾で、語尾に用いることで上品さや優雅さを強調します。
- これを使うことで、“品のある女性”の雰囲気を醸し出しています
- また、赤坂アカ先生によれば、このセリフを繰り返す演出は“天丼”(同じフレーズによる笑いの連鎖)としての意図もあったそうです
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最終更新:2025年08月31日 22:49