サンクコスト錯覚
サンクコスト錯覚(またはサンクコスト効果)とは、過去に費やした回収不可能なコスト(埋没費用)に囚われ、その影響で合理的な判断ができなくなる心理的現象を指します。
この「コスト」は金銭だけでなく、時間や労力といった非物質的なものも含まれます。サンクコスト錯覚は、経済学や心理学の分野で広く研究されており、日常生活やビジネスの意思決定に大きな影響を与えることがあります。
概要
サンクコスト錯覚は誰にでも起こり得るため、自分の意思決定が過去への執着によって歪められていないか冷静に見直すことが重要です。
サンクコスト錯覚の特徴
- 1. 取り戻せないコストへの執着
- 過去に支払ったお金や時間が無駄になることを避けようとする心理が働きます
- この結果、非合理的な行動を取ることがあります
- 2. 「もったいない」という感情
- 「ここまで投資したのだから」と考え、損失を回避しようとする気持ちが強くなることで、新たな選択肢を見逃すことがあります
- 3. 損失回避性
- 人間は利益を得る喜びよりも、損失を避ける悲しみの方が強く感じる傾向があり、これがサンクコスト錯覚を助長します
具体例
- 映画館での例
- チケット代を支払った映画がつまらなくても、「お金がもったいない」と考えて最後まで観続ける
- ギャンブル
- プロジェクトの継続
- 失敗が明らかになっている事業でも、「これまでの投資が無駄になる」として中止できない
- 例: 超音速旅客機コンコルドの開発
- 問題点
- サンクコスト錯覚に陥ると、未来の利益や効率性よりも過去の投資に囚われてしまい、さらなる損失を招く可能性があります
- 例えば、ビジネスでは不採算プロジェクトへの追加投資や非効率的なリソース配分につながります
克服方法
- 1. ゼロベース思考
- 過去の投資は忘れ、現在から未来の利益だけを基準に判断する
- 2. 事前ルールの設定
- 投資額や期間に上限を設け、それ以上は続けないと決めておく
- 3. オポチュニティコストとの比較
サンクコスト錯覚を使った物語の裏切りの手法
サンクコスト錯覚を物語創作において「
裏切り」を生み出すために活用する方法について解説します。
この心理的効果を利用することで、キャラクターや読者が抱く期待や信念を巧みに操作し、物語に緊張感や意外性を加えることができます。
- 1. キャラクターの執着心を描く
- 物語のキャラクターが、過去に多大な時間や労力、感情を費やしたものに執着する様子を描くことで、読者に共感させます
- その後、その執着が裏切りや悲劇的な結末につながる展開を作ります
- 例: 主人公が長年信頼してきた友人(実は裏切り者)との関係を維持しようと努力します
- しかし、友人が主人公の弱点を利用して大きな損害を与えます
- 2. 読者へのミスリード
- サンクコスト錯覚を読者自身に体験させるようなプロットを構築します
- 読者が「ここまで読んだから、このキャラクターは善人だろう」と思わせるような伏線を張り巡らせた後、それを覆す裏切り展開を入れます
- 例: 長い間、正義のために戦っていると信じられていたキャラクターが、実は敵側のスパイだったことが明かされる
- 信頼していた人の裏切りは読者に大きなインパクトを与えます
- 3. サンクコストによるジレンマの演出
- キャラクターが「ここまで来たから引き返せない」と感じる状況を作り、その選択が裏切りにつながるようにします
- これにより、キャラクターの行動に説得力と悲劇性が生まれます。
- 例: 主人公が長年追い求めていた目標(例えば宝物や復讐)を手に入れるため、仲間を犠牲にする選択を迫られる
- 4. 感情的投資の裏切り
- 登場人物同士の関係性におけるサンクコスト錯覚を利用します
- 読者や他のキャラクターが「これだけ尽くしたから信頼できる」と思い込んでいる人物によって裏切られる展開です。
- 例: 恋愛関係で相手に尽くしてきたキャラクターが、最終的にその相手から見捨てられる
- 5. プロジェクトや計画の失敗
- 物語内で大規模なプロジェクトや計画(戦争、事業など)に膨大なリソースを投じた結果、それが破綻し、誰かの裏切りによってさらに悪化する展開です
- 例: 国家規模のプロジェクトが敵国との内通者によって失敗し、主人公たちが全てを失う
具体的な活用ポイント
- 伏線と伏線回収
- サンクコスト錯覚による執着心や信念は伏線として機能します
- 後半でそれらが崩壊することで読者に驚きを与えます
- 倫理的葛藤
- サンクコスト錯覚によってキャラクターが非合理的な選択をする様子は、読者にも「自分ならどうするか」を考えさせる深みを与えます
- タイミング
サンクコスト錯覚は、人間心理に基づいたリアルな葛藤や意外性のある展開を作る強力なツールです。
これを巧みに取り入れることで、読者の感情移入と驚きを引き出すことができます。
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最終更新:2025年01月31日 13:51