利他主義
利他主義(りたしゅぎ、英: Altruism)とは、自分自身の利益を超えて他者の幸福や利益を優先し、見返りを求めずに行動することを指します。
この概念は倫理学、哲学、生物学、心理学など多くの分野で議論されており、人間社会や動物界における重要な行動原理として注目されています。
概要
利他主義の起源と概念
- 語源
- 「利他主義」という言葉は、19世紀のフランス哲学者オーギュスト・コントが提唱したものです
- ラテン語の「alteri(他者)」に由来し、利己主義(エゴイズム)の対義語として用いられました
- 基本的な考え方
- 他人の幸福や利益を行動の基準とし、自分自身の犠牲を伴う場合でも他者を助けることが利他主義の核心です
利他主義の種類
- 1. 純粋な利他主義(Pure Altruism)
- 完全に無私で、見返りを期待せずに行動する形態
- 例: ホームレスの人に食べ物や衣服を提供する、災害支援活動に参加する
- 2. 互恵的利他主義(Reciprocal Altruism)
- 将来的な見返りを期待して行動する形態
- 例: 友人にお金を貸す、同僚の仕事を手伝う
- 3. 遺伝的利他主義(Genetic Altruism)
- 家族や血縁者など遺伝的に近い存在への利他的行動
- 例: 親が子供のために犠牲を払う
- 4. 集団選択的利他主義(Group-Selected Altruism)
- 社会や特定のグループ全体の利益を目的とする行動
- 例: 地域活動への参加、環境保護運動への貢献
心理学と生物学における利他主義
- 心理学的視点
- 心理的利他主義は「他者の福祉を増進させようとする動機」と定義されます
- 一方で、人間が本当に無私であるかについては議論があり、共感による行動が自己満足や社会的報酬を目的としている可能性も指摘されています
- 進化生物学的視点
- 生物学では、自分自身の繁殖成功率が低下しても群れ全体や遺伝子プールに貢献する行動が観察されています
- 例えば、ハチやアリなど社会性昆虫は典型的な例です
文化や倫理における意義
- 多くの文化や宗教では、利他主義は重要な道徳的価値として位置づけられています
- 仏教やキリスト教などでは慈悲や博愛として推奨されています
- また、多様性、公平性、包摂性(DEI)など現代社会の課題にも関連し、共感と協力を通じてより良い社会構築に貢献します
- 実生活での例
- ボランティア活動(例: 食品配布、災害支援)
- 他者への寄付やプロボノ活動
- 困っている人への日常的な助け(例: 高齢者を手助けする、席を譲る)
利他主義は、
人間関係や社会全体の調和を促進する重要な概念です。
しかし、その背後には時折自己利益との境界線が曖昧になる場合もあり、その純粋性については議論が続いています。
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最終更新:2025年02月22日 18:01