<宮田一穂の2/14>
2月13日、南風大学セントラルタワー地下三階・研究書庫にて。
「あ、いたいた シースさん」
書庫に入ってきたキキが、大きな体を活かし棚の上のほうの本を取ろうとしていたシースに話しかける。
書庫に入ってきたキキが、大きな体を活かし棚の上のほうの本を取ろうとしていたシースに話しかける。
「にゃ……キキちゃん。 研究書庫ではお静かに、だよ」
「ごめん、ちょっと聞きたい事あって」
「……?」
「ごめん、ちょっと聞きたい事あって」
「……?」
「……そっか、キキちゃんも明日みやっちゃんにチョコあげようとしてたのね。
バレンタインだものね」
バレンタインだものね」
用事を済ませ、カール=ケンド研究室に戻ってきたシースはキキの話を聞いていた。
「うん、それで……私が自分で作ったりとかできないかな、って」
「なるほどね。 ただ、実はさキキちゃん……」
「なるほどね。 ただ、実はさキキちゃん……」
「?」
シースの言葉に首をかしげるキキ。
シースの言葉に首をかしげるキキ。
「今の段階で四人ばかしみやっちゃんにあげることになってんだ。
秋さん、七美さん、パラさん……でもってあたし」
「そ、そうなの。
全部渡して…… 宮田さん、食べきれるかな?」
「食べきれないだろーね、あの食の細いみやっちゃんのことだから」
秋さん、七美さん、パラさん……でもってあたし」
「そ、そうなの。
全部渡して…… 宮田さん、食べきれるかな?」
「食べきれないだろーね、あの食の細いみやっちゃんのことだから」
少し考えて、シースは言葉を続けた。
「……渡すのは一人一粒ずつにして、あとはみんなのおやつとして冷蔵庫にしまっとこうか。
もっと欲しかったらそっから持ってくってコトで」
もっと欲しかったらそっから持ってくってコトで」
その後、ある者は購入し、またある者は自作し、各々宮田に渡すチョコを用意していった。
そして2月14日、バレンタインデーがやって来たのだった。
そして2月14日、バレンタインデーがやって来たのだった。
南風大学は交流所世界にも研究所を設けており、宮田たちSPPメンバーの活動拠点として機能している。
その研究所のロビーで秋がシースに話しかけていた。
「すいません、宮田のヤツ見てません?」
「にゃ、見てないよ。 あたしも探してんだけどさ」
「電話かけても出なくて。 ちょっと交流所も見てきたんですが、いませんでした」
「んー。 そのうち帰ってくるとは思うケド……」
「にゃ、見てないよ。 あたしも探してんだけどさ」
「電話かけても出なくて。 ちょっと交流所も見てきたんですが、いませんでした」
「んー。 そのうち帰ってくるとは思うケド……」
「……別にチョコ渡すのなんて、いつでもいいんだけど」
つぶやく秋。
つぶやく秋。
「……渡すん?」
「日頃のお礼ってことで、ね」
「みやっちゃんもずいぶん頑張ってくれてるもんねー。
あたしもホントならいっぱいあげたいとこなんだけどさー」
「……相変わらず好きですね、アイツのこと」
「うん……みやっちゃんは可愛すぎてもう…… うふふー」
「ああ……じゃまた後で」
「日頃のお礼ってことで、ね」
「みやっちゃんもずいぶん頑張ってくれてるもんねー。
あたしもホントならいっぱいあげたいとこなんだけどさー」
「……相変わらず好きですね、アイツのこと」
「うん……みやっちゃんは可愛すぎてもう…… うふふー」
「ああ……じゃまた後で」
愛する宮田のことを考え微笑むシースを残し、秋はその場を後にした。
さてその宮田がどこに行ったかであるが、彼はトリエルドシティに散在する書店を回っているところだった。
知っている限りの店を回ったのち、宮田はスマートフォンを取り出し、同じSPPメンバーの村田に電話をかけた。
知っている限りの店を回ったのち、宮田はスマートフォンを取り出し、同じSPPメンバーの村田に電話をかけた。
「もしもし、村田くん?
……ごめん、どこ探しても見つからなかったよ、その雑誌」
「ああ、そうか。 やはりちびしぃのキーホルダーとあっては……」
……ごめん、どこ探しても見つからなかったよ、その雑誌」
「ああ、そうか。 やはりちびしぃのキーホルダーとあっては……」
村田が探していたのは交流所世界のアニメを取り扱う週刊誌であった。
この週は「ちびしぃがみんなと一緒に都市を作るアニメ」の特集が組まれており、付録として主人公のちびしぃのキーホルダーがついていた。
このアニメは交流所世界で大変な人気を博しており、関連商品はどれも飛ぶように売れていたのだった。
雑誌もまた例外ではなかった。 おまけがついているとあれば、なおさらだ。
この週は「ちびしぃがみんなと一緒に都市を作るアニメ」の特集が組まれており、付録として主人公のちびしぃのキーホルダーがついていた。
このアニメは交流所世界で大変な人気を博しており、関連商品はどれも飛ぶように売れていたのだった。
雑誌もまた例外ではなかった。 おまけがついているとあれば、なおさらだ。
「すまない、先輩…… 手間をかけさせてしまって。
じゃあ研究所でまた」
「ごめんね村田くん、力になれなくて。
あ、そうだ、帰ったらみん わっ!?」
じゃあ研究所でまた」
「ごめんね村田くん、力になれなくて。
あ、そうだ、帰ったらみん わっ!?」
直後、がたっ、という衝突音が聞こえた。
「動くな……お前らみんな動くんじゃねーぞ。 動いたらコイツの命はないぜ!!」
書店の中、客たちの前で紫のマスクの男が宮田の首を腕で押さえ、頭に拳銃をつきつけている。
書店の中、客たちの前で紫のマスクの男が宮田の首を腕で押さえ、頭に拳銃をつきつけている。
客も宮田も動けずにいる中、マスク男は模様の書かれた札を取り出し、自分と宮田に貼り付けた。
「そうら! 飛ぶぜ!!」
男が叫ぶと札が光りだした。
ギュン、という音と共に空間が歪み、宮田と男はその中に吸い込まれて消えてしまった。
男が叫ぶと札が光りだした。
ギュン、という音と共に空間が歪み、宮田と男はその中に吸い込まれて消えてしまった。
男の声は通話中のままだった宮田のスマートフォンを通じ、村田にも聞こえていた。
「……先輩!!」
大きな窓のついた部屋があった。
窓からはまた別な部屋が見え……そこには機械のアームで柱に固定され、力なくうなだれている宮田がいた。
窓からはまた別な部屋が見え……そこには機械のアームで柱に固定され、力なくうなだれている宮田がいた。
「さてガキさらってきたが、これでいいのか?」
部屋の中で、先ほどのマスクの男が隣に座っているゴテゴテとした装飾のついたメガネをかけた小柄な男と話していた。
部屋の中で、先ほどのマスクの男が隣に座っているゴテゴテとした装飾のついたメガネをかけた小柄な男と話していた。
「上出来だッチ。 ほれ、報酬」
メガネの男―――ドクター・アッチがマスク男に、金の入った封筒を手渡した。
マスク男は早速中身を取り出して数える。
メガネの男―――ドクター・アッチがマスク男に、金の入った封筒を手渡した。
マスク男は早速中身を取り出して数える。
「ひい、ふう、みい…… 確かに受け取った。
だがなんでこんな、ひ弱そうなガキをわざわざ……? 確かに一部じゃ有名だが」
「一つには、ボクはこいつとその取り巻きに三回ばかし痛い目に遭わされてるッチ。 その仕返しッチね。
で、もう一つは……」
「……もう一つは?」
だがなんでこんな、ひ弱そうなガキをわざわざ……? 確かに一部じゃ有名だが」
「一つには、ボクはこいつとその取り巻きに三回ばかし痛い目に遭わされてるッチ。 その仕返しッチね。
で、もう一つは……」
「……もう一つは?」
首をかしげるマスク男の前で、アッチは壁にかけてあったカレンダーの、今日の日付を指さした。
「今日は2月の14日。 何の日だか知ってるッチね?」
「バレンタインデー……だよな」
「うむ。 ……ボクはもう四十年以上もチョコをもらってないッチ」
「俺ももう二十年ちょっとはもらってないぞ、チクショー……」
「バレンタインデー……だよな」
「うむ。 ……ボクはもう四十年以上もチョコをもらってないッチ」
「俺ももう二十年ちょっとはもらってないぞ、チクショー……」
つらい現実に、悲しみに暮れるマスク男。
だがすぐに、当然の疑問を口にした。
「でもそれとこの件に何の関係が?」
「でもそれとこの件に何の関係が?」
アッチはメガネを直し、男の問いかけに答え始めた。
「こいつ、ボクの調べじゃ少なくとも合計五人からチョコ貰う予定らしいッチ。
まごうことなきリア充だッチ。 許せんッチ」
「……」
まごうことなきリア充だッチ。 許せんッチ」
「……」
「ボクはこいつを…… 宮田一穂を、おもいックソ辱めてやりたいッチ!!」
黙ってしまったマスク男を前に、アッチは拳を握り締めて強く言った。
黙ってしまったマスク男を前に、アッチは拳を握り締めて強く言った。
「……ウワサ通りのボケナスだなこいつ」
ボソリ、とマスク男がつぶやく。
ボソリ、とマスク男がつぶやく。
「ん? 何か言ったッチか?」
「いや別に何も?」
「……まあいいッチ。
さてこっからはボクの開発した素敵なマシーンの出番ッチね。
世紀の大発明、せっかくだから見ていくッチよ」
「……なんか仕事来たら抜けさせてもらうからな?」
「いや別に何も?」
「……まあいいッチ。
さてこっからはボクの開発した素敵なマシーンの出番ッチね。
世紀の大発明、せっかくだから見ていくッチよ」
「……なんか仕事来たら抜けさせてもらうからな?」
アッチは手元にある、機械の操作パネルをビシバシと叩き始めた。
「ええーっ!! み、みやっちゃんがっ!?」
ナリに似合わぬ慌てっぷりのシース。
ナリに似合わぬ慌てっぷりのシース。
「宮田さん……さらわれちゃったの!?」
とキキ。
とキキ。
宮田がさらわれた後すぐ、村田は研究所にそのことを知らせていた。
連絡を受けたのはロッシュだ。
連絡を受けたのはロッシュだ。
「落ち着けよお前ら」と皆を制し、ロッシュは話を続けた。
「……村田が言ってる状況からすると、転移の術でも使ったっぽいンだよなその誘拐犯。
行き先がわかりゃ宮田を助けにも行けるだろう」
「で、でも……どーすれば」
「ちょっと待ってな」
行き先がわかりゃ宮田を助けにも行けるだろう」
「で、でも……どーすれば」
「ちょっと待ってな」
そう言ってロッシュはタブレットPCを取り出して操作し、あるテキストファイルを開いた。
そのタイトルは「転移逆探知技術メモ」であった。
そのタイトルは「転移逆探知技術メモ」であった。
「最新の研究成果を試すときが来た」
ロッシュはタブレットから顔を上げて言い、立ち上がった。
ロッシュはタブレットから顔を上げて言い、立ち上がった。
「キキ、パラさん、シッスー、出かけるぞ! 秋は留守番頼むぜ!」
「あ、はい」
「あ、はい」
四人は出て行き、秋は一人残された。
「……しょうがない、掃除でもしとくか」
ロッシュ、シース、キキ、パラの四人は事件現場となった書店にいた。
事件現場にはすでに警察がいて、客や店員に聞き込みをしていた。 辺りには野次馬も集まっている。
事件現場にはすでに警察がいて、客や店員に聞き込みをしていた。 辺りには野次馬も集まっている。
「ロッシュさん達!」
野次馬の中から村田が駆け寄ってくる。 あの後ここまで来たらしい。
野次馬の中から村田が駆け寄ってくる。 あの後ここまで来たらしい。
「村田か」
「すみません、先輩が……」
「気にすんな。 今から助けに行ける……かもしれないから」
「……かもしれない?」
「すみません、先輩が……」
「気にすんな。 今から助けに行ける……かもしれないから」
「……かもしれない?」
不安になる村田をよそに、ロッシュは事件現場を軽く眺め、警察に話しに行った。
「すんません」
「わ! ……どなた?」
ロッシュに声をかけられた警官が返事をする。 何とも頼りなさそうな感じだ。
「わ! ……どなた?」
ロッシュに声をかけられた警官が返事をする。 何とも頼りなさそうな感じだ。
「すまない、ここは今立ち入り禁止なんだぜ」
隣にいた、水色のAA族の警官もロッシュに話しかける。
隣にいた、水色のAA族の警官もロッシュに話しかける。
「あー、南風研のモンです。
犯人の行方がわかるかもしれない方法持ってきたんで試させてもらえません?」
とロッシュ。
犯人の行方がわかるかもしれない方法持ってきたんで試させてもらえません?」
とロッシュ。
「……ハァ?」
「犯人の行方がわかるかも……でありますか?」
「はい。 ちょっとうちのモンをそこらへんに立たせていただければ」
「……だがなあ、調査中だしな」
「犯人の行方がわかるかも……でありますか?」
「はい。 ちょっとうちのモンをそこらへんに立たせていただければ」
「……だがなあ、調査中だしな」
ロッシュはパラの方を向いて言う。
「なあ、何か転送術使った痕跡とかわからねーか?」
「なあ、何か転送術使った痕跡とかわからねーか?」
「やってみる」
そう言って、パラは眼をつむり意識を集中させ始めた。
やがてパラは再び目を開いて、何もない床を指差した。
そう言って、パラは眼をつむり意識を集中させ始めた。
やがてパラは再び目を開いて、何もない床を指差した。
「あそこね、あそこから魔力が放たれた感じがするわ」
「よしきた」
「よしきた」
ロッシュとパラのやりとりを聞いていた先ほどの警官が、彼に話しかけてきた。
「あのー……犯人はひょっとして魔法使いの方なのでありますか?」
「術符使っただけって可能性もあるけどな」
「うう、本官たち魔法はニガテなのであります。 ちょっと先輩に相談してくるのであります」
「あのー……犯人はひょっとして魔法使いの方なのでありますか?」
「術符使っただけって可能性もあるけどな」
「うう、本官たち魔法はニガテなのであります。 ちょっと先輩に相談してくるのであります」
頼りない警官は、先輩と呼ばれたAA族の警官と話に行き、すぐに二人で戻ってきた。
「……魔法がらみじゃしょうがない。 その方法、ちょっと試してくれないか」
「あい、試させていただきます」
「あい、試させていただきます」
ロッシュはタブレットPCを再び取り出し、パラに手渡した。
画面には先ほどのテキストファイルが表示されている。
画面には先ほどのテキストファイルが表示されている。
「この中じゃあんたが一番魔力強いだろうから頼むぜ。
そこに書いてある手順の通りにやってみてくれ」
「……わかったわ」
そこに書いてある手順の通りにやってみてくれ」
「……わかったわ」
パラはタブレットに表示された手順を読みながら、実行していく。
パラはまず目を閉じ、集中した。 続いて先ほど指差した地点に立ち、何かを念じた。
すると、パラが一瞬輝きだした。
……かと思うと、空間のゆがみが起こり、近くにいたシースとキキも巻き込んで消えてしまった。
すると、パラが一瞬輝きだした。
……かと思うと、空間のゆがみが起こり、近くにいたシースとキキも巻き込んで消えてしまった。
「……アレ? 俺おいてけぼり?」
呆然とするロッシュ。
呆然とするロッシュ。
キキは背中に冷たい物が触れたことで目を覚ました。
辺りを見回す。
ここは森の中で、今は雪が降っているようだ。
そして、キキは木の枝の上に引っかかっていた。
下を見るとシースが倒れているのが見えた。 しかし、パラの姿はない。
ここは森の中で、今は雪が降っているようだ。
そして、キキは木の枝の上に引っかかっていた。
下を見るとシースが倒れているのが見えた。 しかし、パラの姿はない。
キキはとりあえず飛び上がり、シースの頭の近くまで行った。
「起きて、シースさん」
「ん……がぅ……っ」
「ん……がぅ……っ」
シースはむくりと起き上がった。
そして下を見下ろすと、自分が倒れていたところで大の字になって雪の中に埋もれているパラがいた。
そして下を見下ろすと、自分が倒れていたところで大の字になって雪の中に埋もれているパラがいた。
「……」
「……」
「……」
「……きゃーーー!? パラさぁーん!!」
潰されてしまったパラだったが割とすぐに復活した。 彼女は頑丈なのだ。
「……ほ、ほんと、ごめんなさい パラさん」
シースは涙目で謝っている。
シースは涙目で謝っている。
「いいのよ、しょうがない……
まだまだ改善の余地ありそうね、この転移逆探知。
帰ったらロッシュさんに伝えときましょう。 ……さて」
まだまだ改善の余地ありそうね、この転移逆探知。
帰ったらロッシュさんに伝えときましょう。 ……さて」
パラは辺りを見回し、何かに気づいた。
「……ねえ、あの建物」
パラは何かの建物を指差した。
角ばった構造をして、大き目の煙突があり、工場のようにも見える建物だった。
角ばった構造をして、大き目の煙突があり、工場のようにも見える建物だった。
「あそこ、怪しくない?」
工場らしき建物に人の気配はなく、入り口にも鍵はかかっていなかった。
「……じゃ、開けるわよ」
パラは扉を開き、建物の中に入っていく。 その肩にはキキがしがみついていた。
後ろからシースが四つんばいになり、縮こまりながら中に入った。
パラは扉を開き、建物の中に入っていく。 その肩にはキキがしがみついていた。
後ろからシースが四つんばいになり、縮こまりながら中に入った。
中に入って少し進んだところで、何かの音が聞こえてきた。
「……ねえ、何か聞こえない?」
キキがパラに話しかける。
キキがパラに話しかける。
「……聞こえるわね」
顔の向きを変えないままパラが言う。
顔の向きを変えないままパラが言う。
「ウィーン、とか、ビリビリッ、とか…… するね」
とシース。
とシース。
三人がさらに進むと今度は笑い声が聞こえてきた。
「……」
立ち止まるパラとシース。
立ち止まるパラとシース。
「あれ、どしたの?」
キキはパラに尋ねた。
キキはパラに尋ねた。
「……この笑い声、まさか…… ったく、またアイツかッ!!」
パラは駆け出した。
パラは駆け出した。
「げひゃひゃひゃひゃ! うひゃひゃひゃひゃ!!」
アッチはバカ笑いしながら操作パネルのボタンを乱打していた。
彼の隣に座るマスク男は目を細め、窓から下の部屋を眺めている。
アッチはバカ笑いしながら操作パネルのボタンを乱打していた。
彼の隣に座るマスク男は目を細め、窓から下の部屋を眺めている。
「くきゃきゃーっ! 写真写真! 写真撮っちゃうッチー!!
売りさばいて金の足しにするッチー♪」
「ふぅむ……これは……」
売りさばいて金の足しにするッチー♪」
「ふぅむ……これは……」
アッチとマスク男が何かの話をしていると、彼らの後ろにあったドアに突然切れ目が入った。
少し間をおいて、大きな音と共にドアが破られ、シースが倒れこんできた。 体当たりしたらしい。
少し間をおいて、大きな音と共にドアが破られ、シースが倒れこんできた。 体当たりしたらしい。
続けてパラとキキがその背を乗り越え、室内に飛び込む。
パラの両手には、鋭い氷の刃が形成されている。
パラの両手には、鋭い氷の刃が形成されている。
振り向いたアッチはアゴが外れたかのごとく口をあんぐりと開けていた。
「ドクター・アッチっ!」
叫ぶパラ。
叫ぶパラ。
「あ、あわ、あわわわわ……」
おびえ、動けないアッチ。
おびえ、動けないアッチ。
「……そこのマスク男、あんたの仲間!? 宮田くんをさらった奴なの!?」
両手の刃をアッチとマスク男に向け、パラは問い詰める。
両手の刃をアッチとマスク男に向け、パラは問い詰める。
アッチは答えず、震える手を操作パネルに伸ばした。
そして黄と黒のストライプに囲まれたボタンを……
そして黄と黒のストライプに囲まれたボタンを……
「ポチっとぉーっ!!」
押した。
押した。
アッチとマスク男が座っていたイスは突然思いっきり伸び、天井をぶちやぶってしまった。
アッチ達がいなくなってしまった後で、シースはゆっくり起き上がった。
前を見ると、パラとキキが窓の下をじっと見下ろしている。
前を見ると、パラとキキが窓の下をじっと見下ろしている。
「どしたんです、パラさ……」
尋ねつつ自分も窓の下を覗くシース。
尋ねつつ自分も窓の下を覗くシース。
窓の下では宮田が柱にアームで縛り付けられていた。
フリルがつき、胸元の見える紺と白のドレスを着せられ、大きな青いリボンを頭につけられた状態で。
フリルがつき、胸元の見える紺と白のドレスを着せられ、大きな青いリボンを頭につけられた状態で。
その後、パラたちは窓を破って飛び降り、宮田を解放した。
「大丈夫?」
パラが宮田に尋ねる。
パラが宮田に尋ねる。
「はい。 ……こんな服着せられてしまったけど」
と宮田。
と宮田。
「何があったのよ」
「気がついたら、僕、柱に縛り付けられてて……
その後上の窓みたらアッチがいて、何か機械動かして……
そしたらマニピュレータがたくさん出てきて僕に無理やりこの服着せたんです」
「気がついたら、僕、柱に縛り付けられてて……
その後上の窓みたらアッチがいて、何か機械動かして……
そしたらマニピュレータがたくさん出てきて僕に無理やりこの服着せたんです」
「……」
三人は女装させられた宮田を見つめる。 シースに至っては少々息が荒い。
三人は女装させられた宮田を見つめる。 シースに至っては少々息が荒い。
「……どうしたんですか?」
「…… 何でもないわ。 早く出ましょ、こんなとこ。
あなたの服取り戻してね」
「…… 何でもないわ。 早く出ましょ、こんなとこ。
あなたの服取り戻してね」
その後パラたちは宮田が元々着ていた服を見つけ、彼は無事に着替えることができた。
四人は工場から出た。
工場の入り口からは二車線しかない細い道路が続いている。 歩いていけばどこかの街に出られるだろう。
工場の入り口からは二車線しかない細い道路が続いている。 歩いていけばどこかの街に出られるだろう。
「ありがとうございます、皆さん」
歩きながら、宮田はパラたちにお礼をした。
歩きながら、宮田はパラたちにお礼をした。
「ううん、気にしないで」
「……」
パラとキキは平常心だがシースは様子がおかしい。 宮田から目をそらしているように見える。
「……」
パラとキキは平常心だがシースは様子がおかしい。 宮田から目をそらしているように見える。
「どうしたの、シースさん」
「……ごめん さっきのが頭からはなれなくて」
そう言って白っぽい顔を赤らめるシース。
「……ごめん さっきのが頭からはなれなくて」
そう言って白っぽい顔を赤らめるシース。
「確かにかわいかったよね、宮田さん!」
「そうねー。 あなた、割と女装似合ってた」
とキキとパラ。
宮田は特に返事はしなかった。
「そうねー。 あなた、割と女装似合ってた」
とキキとパラ。
宮田は特に返事はしなかった。
そんなことを話しながら道路を歩き続けていると、一行の上を大きな影が通り過ぎた。
影からワイヤーが放たれ、宮田の胸に絡みつく。
影からワイヤーが放たれ、宮田の胸に絡みつく。
「!? わ、わーっ!」
宮田は空中へと連れ去られてしまった。
宮田は空中へと連れ去られてしまった。
影の主は全長12mほどの、銀色の翼竜のロボットであった。
しかし全体的にずんぐりしたフォルムであまり格好がよくない。
しかし全体的にずんぐりしたフォルムであまり格好がよくない。
「ぐひょーひょひょーん! あーのまま逃げたとでも思ったッチかー?
宮田一穂はいただいてくッチー!」
「悪いがこれも仕事だ! 追加でカネくれるっつーからな!」
翼竜ロボの胴体にあるコックピットから大声をあげるアッチとマスク男。
宮田一穂はいただいてくッチー!」
「悪いがこれも仕事だ! 追加でカネくれるっつーからな!」
翼竜ロボの胴体にあるコックピットから大声をあげるアッチとマスク男。
「返しなさいッ! フリーズボルトッ!」
パラとシースはそれぞれ手を突き出し、氷の弾丸を翼竜ロボに向けて放つ。
しかし翼竜ロボは口を開くとそこからものすごい勢いの炎を放ち、弾丸をかき消してしまった。
パラとシースはそれぞれ手を突き出し、氷の弾丸を翼竜ロボに向けて放つ。
しかし翼竜ロボは口を開くとそこからものすごい勢いの炎を放ち、弾丸をかき消してしまった。
「ふひゃははー! このアッチワイバーンSKYでキミら全員コゲカスにしてやるッチー!」
翼竜ロボは長い首をグイグイ動かしながら炎を吐き続け、道路の左右の森の木を燃やしていく。
翼竜ロボは長い首をグイグイ動かしながら炎を吐き続け、道路の左右の森の木を燃やしていく。
「っく……! このままじゃホントにコゲカスにされる!」
「どーすんのパラさん……!」
苦戦するパラとシース。
「どーすんのパラさん……!」
苦戦するパラとシース。
「ふひ、ふひ、ふひぃー!」
コクピットの中で、汗だくのアッチが操縦を続ける。
左手で掴んだレバーを奥に倒したまま、右手のレバーをガシガシと動かしている。
コクピットの中で、汗だくのアッチが操縦を続ける。
左手で掴んだレバーを奥に倒したまま、右手のレバーをガシガシと動かしている。
「お、おい、これ排熱失敗してんじゃねーのか? 暑すぎだぜ!
顔が蒸れちまうよ」
「はひ、はひぃ、ふむっ! そうッチね、べ、別な攻撃するッチ……」
顔が蒸れちまうよ」
「はひ、はひぃ、ふむっ! そうッチね、べ、別な攻撃するッチ……」
アッチは火炎放射をやめにしようと、左手のレバーを手前に倒そうとした。
しかし、レバーはすっぽ抜けてしまった。
しかし、レバーはすっぽ抜けてしまった。
「……」
しばしの沈黙ののち、コックピットにとうとう火がついてしまった。
「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃー!!」
「だ、脱出だ! 脱出装置使えィ!」
「作ったっけそんなのー!?」
「はぁーッ!?!?」
「だ、脱出だ! 脱出装置使えィ!」
「作ったっけそんなのー!?」
「はぁーッ!?!?」
直後、アッチワイバーンSKYこと翼竜ロボは爆発四散した。
ワイヤーで吊り下げられていた宮田はやわらかい雪の上に投げ出され、無事だった。
だが森が大火事だ。
だが森が大火事だ。
「パラさん、森が……!」
慌てるキキ。
慌てるキキ。
「落ち着いて……!」
そう言ってパラは目をつむり、両の手に魔力を集中し始める。
そう言ってパラは目をつむり、両の手に魔力を集中し始める。
パラの手の中に水球ができた。
水球は見る見るうちに大きくなり、それに合わせてパラも手を広げていく。
やがてパラは両手を開ききるが、それでも水球は膨れ上がっていく。
水球は見る見るうちに大きくなり、それに合わせてパラも手を広げていく。
やがてパラは両手を開ききるが、それでも水球は膨れ上がっていく。
今度はパラは手の向きを変え、天を仰ぐような格好になった。
すると、それに合わせて水球もパラの頭上に移動した。
すると、それに合わせて水球もパラの頭上に移動した。
水球は膨れ続け、ついにはパラどころかシースよりも大きくなって……破裂した。
魔力を帯びた水があたりに飛び散り、全ての火を消し去った。
魔力を帯びた水があたりに飛び散り、全ての火を消し去った。
パラが翼竜ロボの残骸に目をやると、メガネが割れ、アフロになったアッチがふらふらと立ち上がっていた。
「……さて」
「う、う、お、覚えてろーーーッチ!!」
パラが何かする暇もなく、ズタボロのマスク男を引きずりアッチは走り去った。
「う、う、お、覚えてろーーーッチ!!」
パラが何かする暇もなく、ズタボロのマスク男を引きずりアッチは走り去った。
森は再び静かになった。
四人は雪の中道路を歩き続け、やがて街が見えるところに出た。
見慣れたトリエルドの街だった。
見慣れたトリエルドの街だった。
宮田たちが研究所に戻った頃には、夜も更けていた。
宮田は研究所のテーブルでノートPCを開き、この日のレポートを書いていた。
彼の手元にはチョコレートが六粒あった。
一つ目は、デパートの地下で買ってきたらしい秋のチョコ。
二つ目は、小指に乗ってしまうくらいの大きさのキキのチョコ。
三つ目は、キキの協力のもと作ったという、下手な宮田の顔の絵が描かれたシースのチョコ。
四つ目は、唐辛子の粉が入っているという七美のチョコ。
五つ目は、なぜか非常に冷えているパラのチョコ。
六つ目は…… 忙しい合間を縫って研究所を尋ねてきたアキハラから貰ったチョコ。
二つ目は、小指に乗ってしまうくらいの大きさのキキのチョコ。
三つ目は、キキの協力のもと作ったという、下手な宮田の顔の絵が描かれたシースのチョコ。
四つ目は、唐辛子の粉が入っているという七美のチョコ。
五つ目は、なぜか非常に冷えているパラのチョコ。
六つ目は…… 忙しい合間を縫って研究所を尋ねてきたアキハラから貰ったチョコ。
それぞれ味わいながら、宮田はレポートを書き終えた。
宮田はレポートを確認してもらいに、ロッシュやシースのいる部屋に行った。
部屋に入ると、ロッシュと七美がいた。
部屋に入ると、ロッシュと七美がいた。
「おー宮田。 聞いたぜー、女装させられたンだってな?」
早速声をかけるロッシュ。
早速声をかけるロッシュ。
「……大丈夫、だったか? 他にヘンなことされなかったよな?」
心配する七美。
心配する七美。
「……悪かったな。 肝心なときに助けに行けなくて」
彼女は宮田の頭を軽くなでた。
彼女は宮田の頭を軽くなでた。
「それじゃロッシュさん、レポートの確認お願いします」
宮田はレポートのデータが入ったUSBメモリをロッシュに渡した。
宮田はレポートのデータが入ったUSBメモリをロッシュに渡した。
「あいよ。
……しっかし見たかったなあ、お前の女装」
「あたしもちょっと興味…… あ、スマンスマン」
……しっかし見たかったなあ、お前の女装」
「あたしもちょっと興味…… あ、スマンスマン」
ロッシュと七美に挨拶をして、宮田は部屋を後にした。
部屋を出ると、そこにはシースがいた。
「あっ ……あ、おつかれ、みやっちゃん」
少し驚いたような様子を見せるも、挨拶するシース。
少し驚いたような様子を見せるも、挨拶するシース。
「……大丈夫ですか、シースさん?」
「うん、まあ、ね……」
「……あの時、僕が女装していたのが忘れられないのですか?」
「……うん。
「うん、まあ、ね……」
「……あの時、僕が女装していたのが忘れられないのですか?」
「……うん。
その……すっごく、かわいかったんだ、うん。
だけど…… ちょっと…… かわい、すぎて……」
「……」
だけど…… ちょっと…… かわい、すぎて……」
「……」
少しの沈黙のあと、シースは突然宮田を抱きしめた。
宮田の華奢な体が彼女の白い腹にめり込む。
宮田の華奢な体が彼女の白い腹にめり込む。
「!」
「……ごめん、ガマンできないや。 しばらくこうさせててよ。
どうせこの時間だと誰もいないし」
「……はい」
「……ごめん、ガマンできないや。 しばらくこうさせててよ。
どうせこの時間だと誰もいないし」
「……はい」
その時七美が部屋から出てきた。
「……スキンシップですかい」
「あっ……」
「あっ……」
「……その、アタシも混ざっていいかい?」
と七美。
と七美。
その夜、宮田一穂少年は雌竜と女傑に抱かれたり撫でられたりした。
最後は女傑に膝枕をされて心地よい眠りについたという。
まあ、別に変なことはされていないらしいので、大丈夫だろう。
最後は女傑に膝枕をされて心地よい眠りについたという。
まあ、別に変なことはされていないらしいので、大丈夫だろう。
<おわり>