ここに作品タイトル等を記入
更新日:2021/12/21 Tue 22:07:47
今回のあらすじを担当する雲原ですっ!前回は社長の弟さんの龍斗さんが妹さんの龍香ちゃん達を襲撃したんだよねっ!
その圧倒的な力にピンチな龍香ちゃんを救うべく社長は突然現れた亡くなった昔の友達とそっくりな女の子の力を借りて救援に向かうけど龍斗さんの真意を知った社長は……ってうわぁ〜!!頑張れ社長!負けないで〜〜!どうなる第二十三話!?
その圧倒的な力にピンチな龍香ちゃんを救うべく社長は突然現れた亡くなった昔の友達とそっくりな女の子の力を借りて救援に向かうけど龍斗さんの真意を知った社長は……ってうわぁ〜!!頑張れ社長!負けないで〜〜!どうなる第二十三話!?
「龍賢君。大丈夫?」
シードゥスとの戦闘後。何とか強敵を打ち倒し、ボロボロになって疲労のあまりその場に座り込む龍賢に深春が声をかける。
「深春…か。大丈夫だ。ちょっと疲れただけだ。」
「その割にはボロボロに見えるけど?」
深春は屈んで龍賢と視線を合わせる。視線を合わせられ、少し照れ臭くなり、視線を逸らそうとする龍賢に深春は。
「正直に言って?」
鼻を指でつつく。龍賢は目を丸くし、言い淀むが。
《諦めろ龍賢。こりゃ勝てん。》
カノープスが諭すように龍賢に言う。それを聞いてハァとため息をつくと、苦笑いを浮かべて。
「……疲れた。正直、立つのもしんどい。」
「よく言えました。」
深春は立ち上がると、龍賢に手を差し出す。
「龍賢君はさ、一人で何でも抱え過ぎ。龍斗君や嵩原さんにもっと頼ったっていいんじゃない?」
「…肝に銘じておく。」
龍賢はそう言って深春の手を取ると、立ち上がる。そして深春の肩を借りて二人は歩き出す。
「今日だって勝手に一人で戦って。皆心配してたんだよ?」
「すまない。……それでも、俺は皆を守りたい。龍斗も。龍香も。皆も。……君も。」
龍賢の言葉に深春が龍賢を振り返る。その顔は夕焼けのせいか──酷く朱に染まって見えた。
深春は少しポカンとするが、クスッと笑うと龍賢の背中を叩く。
「そう。ありがと。皆、守ってくれるんだね。」
「………約束だ。」
「うん。約束。」
二人はそう言いながら夕焼けに染まる道を歩いて帰った。
シードゥスとの戦闘後。何とか強敵を打ち倒し、ボロボロになって疲労のあまりその場に座り込む龍賢に深春が声をかける。
「深春…か。大丈夫だ。ちょっと疲れただけだ。」
「その割にはボロボロに見えるけど?」
深春は屈んで龍賢と視線を合わせる。視線を合わせられ、少し照れ臭くなり、視線を逸らそうとする龍賢に深春は。
「正直に言って?」
鼻を指でつつく。龍賢は目を丸くし、言い淀むが。
《諦めろ龍賢。こりゃ勝てん。》
カノープスが諭すように龍賢に言う。それを聞いてハァとため息をつくと、苦笑いを浮かべて。
「……疲れた。正直、立つのもしんどい。」
「よく言えました。」
深春は立ち上がると、龍賢に手を差し出す。
「龍賢君はさ、一人で何でも抱え過ぎ。龍斗君や嵩原さんにもっと頼ったっていいんじゃない?」
「…肝に銘じておく。」
龍賢はそう言って深春の手を取ると、立ち上がる。そして深春の肩を借りて二人は歩き出す。
「今日だって勝手に一人で戦って。皆心配してたんだよ?」
「すまない。……それでも、俺は皆を守りたい。龍斗も。龍香も。皆も。……君も。」
龍賢の言葉に深春が龍賢を振り返る。その顔は夕焼けのせいか──酷く朱に染まって見えた。
深春は少しポカンとするが、クスッと笑うと龍賢の背中を叩く。
「そう。ありがと。皆、守ってくれるんだね。」
「………約束だ。」
「うん。約束。」
二人はそう言いながら夕焼けに染まる道を歩いて帰った。
「……あのさ、スゴいムカつく話だけど。あの魚野郎に気絶させられてから記憶がないんだけど。」
「う、うん。」
疲労のせいか気絶し、休憩室で寝込む龍賢以外が集合したミーティングルームで復活した雪花が龍香にヒソヒソと話し掛ける。
ヒソヒソ話す二人……と言うか全員の視線の先には火元が出した紅茶を啜る長い三つ編みの少女と機械の鳥がいた。
「……誰?コイツ。」
「誰とは随分な挨拶だな!!だが聞かれてしまったからには答えねばなるまいて!」
「うるさっ。」
雪花の質問にその少女は仰々しく立ち上がると。
「私の名前は結衣月乃助。これから君達と共に戦う天才の名前だ。そしてこっちがパートナーのピーコック。よろしく頼むよスノーガール。」
「ねぇなんかウザいんだけどコイツ!!言葉だけじゃなくて立ち振る舞いも!」
「また随分と濃いのが来たな……。」
皆がジト目で月乃助を見る中、山形が尋ねる。
「貴方のことは海原さんから聞いたけど…。ところで……さっきからその海原さんから通信が来ているんだけど。出ないの?」
山形が視線を下ろすとさっきから振動しっぱなしの通信機が机に置いてあった。
しかし月乃助はフン、と鼻を鳴らすと。
「その通信に私は出ないよ!十中八九怒られるからね!」
「あっ、はい海原さん?山形ですけど。」
「ちょちょっわーっ!?」
通話に出る山形。月乃助が全力で止めようとするが、山形はヒョイとそれをかわす。
『月乃助!何故何回も連絡したのに通話に出ない!?』
案の定と言うべきか、珍しく怒ってる様子の海原に月乃助は冷や汗を流しながらも、髪をかき上げて。
「いい加減、裏方に徹するのは飽き飽きしてきたのでね!丁度良い機会だから我らも参戦させて貰うことにしたのだ!」
《そう言うこと。》
『君達は勝手にいなくなられると困る立場の人間ということを自覚してくれ!?』
何故か怒られてるのに偉そうな一人と一機。それよりも海原の発言に疑問を覚えたのか、赤羽が山形に尋ねる。
「ねぇ、彼女そんなに上の立場の人間なの?」
その質問に山形は少し言い淀んで。
「あー、……その、信じられないかもしれないけど雪花の“デイブレイク”の武装と赤羽の装備一式作成したのこの娘よ。」
「「えっ」」
雪花と赤羽が驚きのあまり声を出す。その様子に彼女はフフンと胸を張り。
「そうだ!君達の装備を作成したのは何を隠そうこの私だ!!もっと敬いたまえ!」
「嘘でしょコイツが!?」
《まぁ、正しくはワタクシとの共同制作だがね。》
今度は機械の鳥が翼を広げてアピールする。
「……あの、この鳥さんは?」
《私はピーコック。かつてシードゥスだったものさ。肉体を失くして今はこの通り機械の身体だがね。》
龍香の質問にピーコックは自分の身体をこれでもかと見せつけるようにアピールする。
《……お前、随分と変わったな……。》
《それはこっちの台詞だが?ヘアアクセになってるじゃないか君。》
どうやら肉体があった時代に面識があったようで、カノープスがピーコックに話し掛ける。
「とにかく、今回の一件で私がどれだけ天才かは分かってくれたハズだ。何せ初の実戦でシードゥス一体を撃破、今この場にいないがドラゴンボーイの支援!私がいなければもっと損害が出たかもしれぬ!」
「うっ、」
「そう言われると……。」
アルレシャにぶっ飛ばされて伸びていた二人が苦虫を噛み潰したような顔になるが、実際彼女の支援のおかげで早めに龍賢が救援に来れたのだ。
「そういう訳だ。何なら一週間の猶予でもくれればそれに見合った戦果をあげ」
「いや……君は戻るべきだ。」
突然割って入った声に全員の視線が集まる。そこには頭に包帯を巻き、壁に寄りかかる龍賢がいた。
「お兄ちゃん!大丈夫なの!?」
「龍賢さん、まだ安静にしていないと。」
「……大丈夫だ。この程度……。」
龍香と火元が龍賢に駆け寄る。だが、大丈夫だと言う龍賢に月乃助は少しつまらなさげに尋ねる。
「大丈夫なら問題ないが、私に戻れ、と言ったか。」
「あぁ。君が万が一倒れた場合、我々“新月”にどれだけの損失か考えるまでもない。海原さんの考えは正しい。それにいざとなれば俺が……」
「その割には随分と傷だらけに見えるがね。」
龍賢の言葉を遮り、月乃助は龍賢から視線を落とし、自分の三つ編みを指でくるくると回すように弄りながら言う。
「それに、君は随分と嘘が下手だな。正直に言ったらどうだ?君は私に妹を重ねているのだろう?」
「!」
その言葉に龍賢の目が見開かれる。知られざる兄の過去の一端に龍香は尋ねる。
「妹?」
「……二年前まで、龍賢君、龍斗君と親友だった娘だよ。二年前の騒動で、亡くなったけど…。」
「お兄ちゃんの……」
林張が少し言いにくそうに龍香に伝える。
「言っておくが、私は君に気をかけられるほど弱いつもりはないんだがね。」
「…それは、君がシードゥスとの実戦経験が浅いからそう言えるだけだ。勿論今日の君の支援には感謝している。だが、もう君が戦場に」
「……はぁ、妹から頭の固い奴とは聞いていたがね。ここまでとは正直思わなかったよ。」
頭を抱えながら月乃助は龍賢を見る。そして、ハァとため息をついて立ち上がると。
「良い機会だから言っておくが。私は別に君の事を恨んじゃいないよ。無論、妹もだ。手紙や電話でちょくちょく君のことは聞いていたが実際会って、まぁ真面目な奴だと、妹が信頼するのも無理はない、位は思ったがね。」
「……何?」
困惑気味の龍賢に近づき、月乃助はその瞳を覗き込む。
「君はいつまでその焦げついた約束に拘るんだい?」
「…。」
「お兄ちゃん……。」
黙り込む龍賢。月乃助は続ける。
「一人で何でも背負い込んだって解決しなきゃ意味がない。そんなことをしたところで、いつか潰れる。」
月乃助はそう言うとポンっと龍賢の肩に手を置く。そして諭すように。
「……人に頼るのは弱さじゃない。強さだよ。」
そう言うと月乃助はミーティングルームを後にする。月乃助が出ると、ピーコックもそれに続くように出る。
「……。」
「お、お兄……ッ!」
兄に声をかけた龍香がその顔を見て驚いて目を丸くし、声が途切れる。
「お兄ちゃん……泣いてるの?」
「え……?」
龍賢は慌てて目を擦り、涙を拭う。手の甲に乗った水粒に龍賢は困惑する中、龍賢の携帯にピロリン、着信が入った音が聞こえる。
見れば二件メッセージが入っており、一つはばぁやこと、冴子さんから、夕食が出来たのでいつでも帰って来て欲しい、もう一見は雲原より、龍賢の仕事の分を全員で分担して終えたので少しゆっくり休息してほしい、との連絡だった。そのメッセージを見た時、龍賢の目からさらに涙が溢れ落ちる。
「………おかしいな。何でもないことのはずなのに。涙が止まらない……。」
「……それくらい、アナタが疲れてたってことよ。」
山形が涙を流し続ける龍賢に言う。
「そうねー。ケンケン最近働き詰めだったし。気づかない内に溜め込んでたんじゃないの。」
「考えてみればボクが龍賢君の頃は遊び呆けてたし、すごく立派にやれてるとは思うけど…。」
「身体も以前と比べてやつれてる気がしますー。」
「ってか、社長と“新月”の二足のわらじでしょ?そりゃどこかぶっ壊れるわよ。」
「……やはり、一度休まれた方が。」
「えぇ。その方が良いと思う。」
皆が続々と自分に労いの言葉をかけてくる。龍賢が呆然としていると龍香が自分を見上げる。
《なぁ、俺が言えた義理じゃねぇけどよ。……もう、自分を許してやったらどうだ?お前は立派にやれてるよ。》
「カノープス……俺は。」
「お兄ちゃん……一緒に帰ろ。冴子さんがご飯を作って待ってる。」
龍香にそう言われた時、龍賢の感情が決壊する。ガクリ、と膝をつくと龍香を思い切り抱き締める。
抱きしめられて、龍香はちょっと驚くがすぐに微笑んで受け入れる。
「あぁ……そうだ。そうだな……。帰ろう。龍香。」
「うん。帰ろう。」
「う、うん。」
疲労のせいか気絶し、休憩室で寝込む龍賢以外が集合したミーティングルームで復活した雪花が龍香にヒソヒソと話し掛ける。
ヒソヒソ話す二人……と言うか全員の視線の先には火元が出した紅茶を啜る長い三つ編みの少女と機械の鳥がいた。
「……誰?コイツ。」
「誰とは随分な挨拶だな!!だが聞かれてしまったからには答えねばなるまいて!」
「うるさっ。」
雪花の質問にその少女は仰々しく立ち上がると。
「私の名前は結衣月乃助。これから君達と共に戦う天才の名前だ。そしてこっちがパートナーのピーコック。よろしく頼むよスノーガール。」
「ねぇなんかウザいんだけどコイツ!!言葉だけじゃなくて立ち振る舞いも!」
「また随分と濃いのが来たな……。」
皆がジト目で月乃助を見る中、山形が尋ねる。
「貴方のことは海原さんから聞いたけど…。ところで……さっきからその海原さんから通信が来ているんだけど。出ないの?」
山形が視線を下ろすとさっきから振動しっぱなしの通信機が机に置いてあった。
しかし月乃助はフン、と鼻を鳴らすと。
「その通信に私は出ないよ!十中八九怒られるからね!」
「あっ、はい海原さん?山形ですけど。」
「ちょちょっわーっ!?」
通話に出る山形。月乃助が全力で止めようとするが、山形はヒョイとそれをかわす。
『月乃助!何故何回も連絡したのに通話に出ない!?』
案の定と言うべきか、珍しく怒ってる様子の海原に月乃助は冷や汗を流しながらも、髪をかき上げて。
「いい加減、裏方に徹するのは飽き飽きしてきたのでね!丁度良い機会だから我らも参戦させて貰うことにしたのだ!」
《そう言うこと。》
『君達は勝手にいなくなられると困る立場の人間ということを自覚してくれ!?』
何故か怒られてるのに偉そうな一人と一機。それよりも海原の発言に疑問を覚えたのか、赤羽が山形に尋ねる。
「ねぇ、彼女そんなに上の立場の人間なの?」
その質問に山形は少し言い淀んで。
「あー、……その、信じられないかもしれないけど雪花の“デイブレイク”の武装と赤羽の装備一式作成したのこの娘よ。」
「「えっ」」
雪花と赤羽が驚きのあまり声を出す。その様子に彼女はフフンと胸を張り。
「そうだ!君達の装備を作成したのは何を隠そうこの私だ!!もっと敬いたまえ!」
「嘘でしょコイツが!?」
《まぁ、正しくはワタクシとの共同制作だがね。》
今度は機械の鳥が翼を広げてアピールする。
「……あの、この鳥さんは?」
《私はピーコック。かつてシードゥスだったものさ。肉体を失くして今はこの通り機械の身体だがね。》
龍香の質問にピーコックは自分の身体をこれでもかと見せつけるようにアピールする。
《……お前、随分と変わったな……。》
《それはこっちの台詞だが?ヘアアクセになってるじゃないか君。》
どうやら肉体があった時代に面識があったようで、カノープスがピーコックに話し掛ける。
「とにかく、今回の一件で私がどれだけ天才かは分かってくれたハズだ。何せ初の実戦でシードゥス一体を撃破、今この場にいないがドラゴンボーイの支援!私がいなければもっと損害が出たかもしれぬ!」
「うっ、」
「そう言われると……。」
アルレシャにぶっ飛ばされて伸びていた二人が苦虫を噛み潰したような顔になるが、実際彼女の支援のおかげで早めに龍賢が救援に来れたのだ。
「そういう訳だ。何なら一週間の猶予でもくれればそれに見合った戦果をあげ」
「いや……君は戻るべきだ。」
突然割って入った声に全員の視線が集まる。そこには頭に包帯を巻き、壁に寄りかかる龍賢がいた。
「お兄ちゃん!大丈夫なの!?」
「龍賢さん、まだ安静にしていないと。」
「……大丈夫だ。この程度……。」
龍香と火元が龍賢に駆け寄る。だが、大丈夫だと言う龍賢に月乃助は少しつまらなさげに尋ねる。
「大丈夫なら問題ないが、私に戻れ、と言ったか。」
「あぁ。君が万が一倒れた場合、我々“新月”にどれだけの損失か考えるまでもない。海原さんの考えは正しい。それにいざとなれば俺が……」
「その割には随分と傷だらけに見えるがね。」
龍賢の言葉を遮り、月乃助は龍賢から視線を落とし、自分の三つ編みを指でくるくると回すように弄りながら言う。
「それに、君は随分と嘘が下手だな。正直に言ったらどうだ?君は私に妹を重ねているのだろう?」
「!」
その言葉に龍賢の目が見開かれる。知られざる兄の過去の一端に龍香は尋ねる。
「妹?」
「……二年前まで、龍賢君、龍斗君と親友だった娘だよ。二年前の騒動で、亡くなったけど…。」
「お兄ちゃんの……」
林張が少し言いにくそうに龍香に伝える。
「言っておくが、私は君に気をかけられるほど弱いつもりはないんだがね。」
「…それは、君がシードゥスとの実戦経験が浅いからそう言えるだけだ。勿論今日の君の支援には感謝している。だが、もう君が戦場に」
「……はぁ、妹から頭の固い奴とは聞いていたがね。ここまでとは正直思わなかったよ。」
頭を抱えながら月乃助は龍賢を見る。そして、ハァとため息をついて立ち上がると。
「良い機会だから言っておくが。私は別に君の事を恨んじゃいないよ。無論、妹もだ。手紙や電話でちょくちょく君のことは聞いていたが実際会って、まぁ真面目な奴だと、妹が信頼するのも無理はない、位は思ったがね。」
「……何?」
困惑気味の龍賢に近づき、月乃助はその瞳を覗き込む。
「君はいつまでその焦げついた約束に拘るんだい?」
「…。」
「お兄ちゃん……。」
黙り込む龍賢。月乃助は続ける。
「一人で何でも背負い込んだって解決しなきゃ意味がない。そんなことをしたところで、いつか潰れる。」
月乃助はそう言うとポンっと龍賢の肩に手を置く。そして諭すように。
「……人に頼るのは弱さじゃない。強さだよ。」
そう言うと月乃助はミーティングルームを後にする。月乃助が出ると、ピーコックもそれに続くように出る。
「……。」
「お、お兄……ッ!」
兄に声をかけた龍香がその顔を見て驚いて目を丸くし、声が途切れる。
「お兄ちゃん……泣いてるの?」
「え……?」
龍賢は慌てて目を擦り、涙を拭う。手の甲に乗った水粒に龍賢は困惑する中、龍賢の携帯にピロリン、着信が入った音が聞こえる。
見れば二件メッセージが入っており、一つはばぁやこと、冴子さんから、夕食が出来たのでいつでも帰って来て欲しい、もう一見は雲原より、龍賢の仕事の分を全員で分担して終えたので少しゆっくり休息してほしい、との連絡だった。そのメッセージを見た時、龍賢の目からさらに涙が溢れ落ちる。
「………おかしいな。何でもないことのはずなのに。涙が止まらない……。」
「……それくらい、アナタが疲れてたってことよ。」
山形が涙を流し続ける龍賢に言う。
「そうねー。ケンケン最近働き詰めだったし。気づかない内に溜め込んでたんじゃないの。」
「考えてみればボクが龍賢君の頃は遊び呆けてたし、すごく立派にやれてるとは思うけど…。」
「身体も以前と比べてやつれてる気がしますー。」
「ってか、社長と“新月”の二足のわらじでしょ?そりゃどこかぶっ壊れるわよ。」
「……やはり、一度休まれた方が。」
「えぇ。その方が良いと思う。」
皆が続々と自分に労いの言葉をかけてくる。龍賢が呆然としていると龍香が自分を見上げる。
《なぁ、俺が言えた義理じゃねぇけどよ。……もう、自分を許してやったらどうだ?お前は立派にやれてるよ。》
「カノープス……俺は。」
「お兄ちゃん……一緒に帰ろ。冴子さんがご飯を作って待ってる。」
龍香にそう言われた時、龍賢の感情が決壊する。ガクリ、と膝をつくと龍香を思い切り抱き締める。
抱きしめられて、龍香はちょっと驚くがすぐに微笑んで受け入れる。
「あぁ……そうだ。そうだな……。帰ろう。龍香。」
「うん。帰ろう。」
《おう、ちったぁマシな顔つきになったじゃねぇか。さっきよりか断然男前だぜ?》
「……。」
心の世界。龍賢の中で、トゥバンが笑いながら座り込む龍賢の肩を叩く。
「……俺は、強くなくてはいけないと思っていた。」
《あ?》
トゥバンが疑問符を浮かべた声を出すが、龍賢は構わず続ける。
「父と約束したんだ。家族を大切にしろって言われて。だから俺は家族を守れるくらい強くなろうと思った。母を、妹を、龍斗を守れる位強く。……だが結局何も残らなかった。……きっと俺は勘違いをしていたんだ。本当に父が言いたかったのは……。」
龍賢は言う。父と最後の会話。玄関先での父の言葉の真意を。
それを黙って聞いていたトゥバンは成る程ね、と嘆息すると龍賢の横に座り込む。
《俺達は案外似た者同士なのかもしれないな。》
「何?」
トゥバンの言葉に龍賢が疑問の意を示すと。
《前に話したろ。俺に恋人がいたけど無視したって話。》
「あぁ…。言っていたな。」
《アイツの真意には気づいていた。それでも気づかないフリをしたんだ。なんて言うかよ、どう接していいかわかんなくなったんだ。……俺は生まれてこの方、戦いしか知らない。どうやって甘えればいいのかも分からない。こんな不器用な奴に付き合わせる必要がないと思ってた。》
トゥバンは頬杖をつき、どこか遠くを見つめてため息をつき。
《だがこの想いをアイツにちゃんと伝えておけば、良かったかもしれないと今でも思うよ。》
「……そのシードゥスは死んだのか?」
《いや、生きてる。》
トゥバンがそう答えると龍賢はフッと笑い。
「なら今度会った時に伝えたら良いんじゃないか。まだ話せるんだ。遅くないだろう。」
《そうだな。って言っても今は敵同士だから素直に聞いてくれるかどうか。》
「確かにな。」
二人でそんな風に話しているとなんとなく可笑しくなってきて、二人して笑い始める。
《案外面白い奴だよ。お前。》
「……お前程じゃない。」
そう言うとまた二人して笑う。二人の笑い声が心の世界に響際立った。
「……。」
心の世界。龍賢の中で、トゥバンが笑いながら座り込む龍賢の肩を叩く。
「……俺は、強くなくてはいけないと思っていた。」
《あ?》
トゥバンが疑問符を浮かべた声を出すが、龍賢は構わず続ける。
「父と約束したんだ。家族を大切にしろって言われて。だから俺は家族を守れるくらい強くなろうと思った。母を、妹を、龍斗を守れる位強く。……だが結局何も残らなかった。……きっと俺は勘違いをしていたんだ。本当に父が言いたかったのは……。」
龍賢は言う。父と最後の会話。玄関先での父の言葉の真意を。
それを黙って聞いていたトゥバンは成る程ね、と嘆息すると龍賢の横に座り込む。
《俺達は案外似た者同士なのかもしれないな。》
「何?」
トゥバンの言葉に龍賢が疑問の意を示すと。
《前に話したろ。俺に恋人がいたけど無視したって話。》
「あぁ…。言っていたな。」
《アイツの真意には気づいていた。それでも気づかないフリをしたんだ。なんて言うかよ、どう接していいかわかんなくなったんだ。……俺は生まれてこの方、戦いしか知らない。どうやって甘えればいいのかも分からない。こんな不器用な奴に付き合わせる必要がないと思ってた。》
トゥバンは頬杖をつき、どこか遠くを見つめてため息をつき。
《だがこの想いをアイツにちゃんと伝えておけば、良かったかもしれないと今でも思うよ。》
「……そのシードゥスは死んだのか?」
《いや、生きてる。》
トゥバンがそう答えると龍賢はフッと笑い。
「なら今度会った時に伝えたら良いんじゃないか。まだ話せるんだ。遅くないだろう。」
《そうだな。って言っても今は敵同士だから素直に聞いてくれるかどうか。》
「確かにな。」
二人でそんな風に話しているとなんとなく可笑しくなってきて、二人して笑い始める。
《案外面白い奴だよ。お前。》
「……お前程じゃない。」
そう言うとまた二人して笑う。二人の笑い声が心の世界に響際立った。
冴子さんが作った料理を囲み、遅めの夕食を龍賢と龍香の二人が取る。
「……ありがとう、冴子さん。」
「いえいえ、お気になさらず。これが私が好きでやっていることですから。」
「そう言えばばあや。何で私達を?」
龍香が問いかけると、冴子はフフッと微笑み。
「昔、貴方のお母様とお父様にお世話になっていたこともありましてね。それに実は、お二人に教鞭を取らせて頂いたこともあるのですよ。」
「ばあやが!?」
《初耳だぞそれ。》
龍香だけでなく龍賢も目を丸くして驚く。そんな二人に冴子は苦笑しながら。
「えぇ。と言っても随分昔の話ですし。」
そう言う冴子に、ふと龍香は思い出したかのように尋ねる。
「あ、そう言えばばあや冬崎さん、って人知ってる?」
龍香がその名前を出すと、冴子は驚きの表情を浮かべる。
「お嬢様、どうしてその名前を?」
「えっ、いや前にその人の孫のシオンちゃんって子と知り合って、その時にちょっとお話したんだけど。」
龍香がそう言うと、冴子は首を傾げる。
「その方は、確かに以前私と同じくお二人に教鞭を取られていた、同僚の方でしたが……確かその方の息子夫婦は事故で亡くなられてたと聞いておりましたが。まさか、お孫さんがいたとは。」
冴子さんがそう言うと、龍香は。
「そっか……シオンちゃんも。」
何処となく寂しそうに言う龍香に龍賢が謝る。
「龍香。お前には寂しい想いをさせっぱなしだな。すまない。」
「えっ、いや、でもそれはお兄ちゃんのせいじゃ…」
そう言う龍香に龍賢は続ける。
「……聞いてくれ、龍香。俺はお前を信頼していると嘘をついていた。二年前の時もお前や龍斗に心配をかけさせまい、守るためだと嘯いて何も伝えなかった。頼らなかった。だが、今になって思う。何も変わらないかも、心配をかけ、巻き込んでしまうかもしれないが。」
龍賢は龍香の目を見て言う。
「父の言う通り、ちゃんとお前達を頼り、伝えておけば、今のようにはならなかったのではないか、と。」
「お兄ちゃん……。」
《龍賢…。》
龍賢はそう言うと立ち上がる。
「明日、俺は龍斗と決着をつける。アイツがああなってしまったのは俺の責任だ。だから頼む龍香。一対一でアイツと戦わせて欲しい。」
そして頭を下げる龍賢。龍香は少し黙った後、龍賢に言う。
「うん、任せて。私信じてる。龍斗お兄ちゃんと一緒に帰ってくるのを。」
龍香の言葉に龍賢は顔を上げ、どこか憑き物が落ちたかのような凛とした表情で返す。
「あぁ。約束する。アイツは俺が連れて帰る。」
「……ありがとう、冴子さん。」
「いえいえ、お気になさらず。これが私が好きでやっていることですから。」
「そう言えばばあや。何で私達を?」
龍香が問いかけると、冴子はフフッと微笑み。
「昔、貴方のお母様とお父様にお世話になっていたこともありましてね。それに実は、お二人に教鞭を取らせて頂いたこともあるのですよ。」
「ばあやが!?」
《初耳だぞそれ。》
龍香だけでなく龍賢も目を丸くして驚く。そんな二人に冴子は苦笑しながら。
「えぇ。と言っても随分昔の話ですし。」
そう言う冴子に、ふと龍香は思い出したかのように尋ねる。
「あ、そう言えばばあや冬崎さん、って人知ってる?」
龍香がその名前を出すと、冴子は驚きの表情を浮かべる。
「お嬢様、どうしてその名前を?」
「えっ、いや前にその人の孫のシオンちゃんって子と知り合って、その時にちょっとお話したんだけど。」
龍香がそう言うと、冴子は首を傾げる。
「その方は、確かに以前私と同じくお二人に教鞭を取られていた、同僚の方でしたが……確かその方の息子夫婦は事故で亡くなられてたと聞いておりましたが。まさか、お孫さんがいたとは。」
冴子さんがそう言うと、龍香は。
「そっか……シオンちゃんも。」
何処となく寂しそうに言う龍香に龍賢が謝る。
「龍香。お前には寂しい想いをさせっぱなしだな。すまない。」
「えっ、いや、でもそれはお兄ちゃんのせいじゃ…」
そう言う龍香に龍賢は続ける。
「……聞いてくれ、龍香。俺はお前を信頼していると嘘をついていた。二年前の時もお前や龍斗に心配をかけさせまい、守るためだと嘯いて何も伝えなかった。頼らなかった。だが、今になって思う。何も変わらないかも、心配をかけ、巻き込んでしまうかもしれないが。」
龍賢は龍香の目を見て言う。
「父の言う通り、ちゃんとお前達を頼り、伝えておけば、今のようにはならなかったのではないか、と。」
「お兄ちゃん……。」
《龍賢…。》
龍賢はそう言うと立ち上がる。
「明日、俺は龍斗と決着をつける。アイツがああなってしまったのは俺の責任だ。だから頼む龍香。一対一でアイツと戦わせて欲しい。」
そして頭を下げる龍賢。龍香は少し黙った後、龍賢に言う。
「うん、任せて。私信じてる。龍斗お兄ちゃんと一緒に帰ってくるのを。」
龍香の言葉に龍賢は顔を上げ、どこか憑き物が落ちたかのような凛とした表情で返す。
「あぁ。約束する。アイツは俺が連れて帰る。」
《おい、いつまでそうしてんだ?》
「……。良いだろう、別に。」
漆黒の帷が降りて辺りに蟲の鳴き声が染みる川の岸で龍斗は水面に映った自分を見続けていた。
《おいおい、今更ナーバスになったんじゃないだろうな?しっかり頼むぞ?お前は証明するんだろ?自分の方がアイツらより優れている、と。》
「……あぁ。元よりそのつもりだ。」
龍斗がそう言うと、アルレシャはなら、いいんだがな、とそれ以上追及するのをやめる。
「俺は、アイツを……」
そこまで言った時、ふと携帯に着信が入った音が聞こえる。
とっくの昔に電源などキレていたかと思っていたが、どうやらろくすっぽ触ってないお陰で微量ながらまだ電源が残っていたらしい。
誰からだ、と思い携帯を開くとそこには龍賢から、短いメッセージが一つ来ていた。
『待ち合わせの橋で待つ。』
ただ、それだけ。だがそのメールに龍斗は全身の血が沸き立つのを感じる。
《ほぉ、呼び出しとは、な。あんなにボコボコにしてやったのに今日動けるとは随分タフだな。》
アルレシャがケタケタと笑う。龍斗はその携帯をジッと見つめると、すぐにしまい込む。
「いいだろう、龍賢……決着の時だ!!」
龍斗が憤りながら、叫ぶ。だが、それを物陰で見つめる一人の少女、白龍香の姿がそこにはあった。
「……フフッ、成る程ね。なら、私がさらに盛り上げて上げるわ。」
「……。良いだろう、別に。」
漆黒の帷が降りて辺りに蟲の鳴き声が染みる川の岸で龍斗は水面に映った自分を見続けていた。
《おいおい、今更ナーバスになったんじゃないだろうな?しっかり頼むぞ?お前は証明するんだろ?自分の方がアイツらより優れている、と。》
「……あぁ。元よりそのつもりだ。」
龍斗がそう言うと、アルレシャはなら、いいんだがな、とそれ以上追及するのをやめる。
「俺は、アイツを……」
そこまで言った時、ふと携帯に着信が入った音が聞こえる。
とっくの昔に電源などキレていたかと思っていたが、どうやらろくすっぽ触ってないお陰で微量ながらまだ電源が残っていたらしい。
誰からだ、と思い携帯を開くとそこには龍賢から、短いメッセージが一つ来ていた。
『待ち合わせの橋で待つ。』
ただ、それだけ。だがそのメールに龍斗は全身の血が沸き立つのを感じる。
《ほぉ、呼び出しとは、な。あんなにボコボコにしてやったのに今日動けるとは随分タフだな。》
アルレシャがケタケタと笑う。龍斗はその携帯をジッと見つめると、すぐにしまい込む。
「いいだろう、龍賢……決着の時だ!!」
龍斗が憤りながら、叫ぶ。だが、それを物陰で見つめる一人の少女、白龍香の姿がそこにはあった。
「……フフッ、成る程ね。なら、私がさらに盛り上げて上げるわ。」
日が昇ったものの、黒い雲がどんよりと不安を煽るように立ち込める空の下、橋の真ん中で龍賢が佇んでいた。
目を閉じて静かに待っている、その時。
「俺をここに呼び出すなんてな。皮肉のつもりか?」
「……来たか。龍斗。」
目を開けて見れば龍斗が橋の手前に立っていた。龍斗は激る憎悪を隠す事もせず、龍賢を睨む。
「懐かしいな。あの時はよくここを待ち合わせにしたもんだ。」
「あぁ。そしてここを選んだのは皮肉じゃない。」
龍賢は稲妻と共に赤い龍の装甲を身に纏い、槍を構える。
「ここ以外に俺とお前が決着をつけるに相応しい場所がないからだ。」
「……ハハッ成る程なぁ。ロマンチストなお前らしいよ。」
水柱と共に魚のような怪物に変身した龍斗もかんざきを構える。
「はぁああああああ!!」
「うおおおおおおお!!」
そして二人はお互いに武器を構えるとどちらも走り出し、互いの武器を突き出す。
お互いの武器がぶつかり合い、そのまま二人が激突する。
「また俺にやられに来たのか龍賢!!」
「………。」
龍斗は憎悪を剥き出しにしながら猛攻を加える。一方の龍賢は無言のままそれらを受け止める。
「確かに!この場こそが俺達の決着の場に相応しいな!それは俺もそう思うよ!!」
「……。」
龍斗が放つ水滴の弾丸を龍賢は槍を回して全て弾く。
「ここで、彼女に詫びさせてやる!!お前の血で!」
龍斗が振るうかんざきを龍賢は屈んで避ける。そして返す刀で、斬りかかるが龍斗はそれを腕で防ぐ。
「お前を信じた俺がバカだった!彼女を任せたのも!間違いだった!」
龍斗の怒涛の連撃。だが前の時と違い、龍賢はそれらを冷静に受け止め続ける。
龍斗はかんざきに水のエネルギーを纏わせ、それを龍賢に叩きつける。
それを龍賢が槍で受け止める。それと同時に水が弾け、龍賢は大きく吹き飛ばされ宙を舞うが、クルリと空中で回転すると、華麗に着地する。
《チッ、当たる瞬間に自分も後ろに飛んで勢いを殺したか!》
「ならば!亡海刺毘突!!」
龍斗が地面に手をやると、橋の下の川が蠢いたかと思うと次々と水柱が上がり、それらはまるで生き物のように龍賢に向けて槍となって襲い掛かる。
しかし龍賢はそれらの軌道を見切ったように時に身体を捻らせ、ステップを踏み、必要最低限の動きでそれらを回避する。
《なっ》
「軽々と……!」
龍斗の攻撃をかわした龍賢は槍を構えると思い切り龍斗に向けてぶん投げる。
「うおっ!?」
龍斗が思わず槍を武器で受け止めると同時に赤黒い雷撃が走り、龍斗の動きが制限される。
「雷激貫爪脚!!」
龍賢の飛び蹴りが自身の槍の柄頭に当たると凄じい衝撃が龍斗を襲う。
「ぐぅ…おぉ!?」
そして龍斗は致命傷こそ免れるが、龍賢の強烈な一撃が炸裂し、吹き飛ばされて地面に倒れる。
「く、くそ……!」
追撃を恐れ、すぐに立ち上がる龍斗。しかし龍賢は追撃せずに黙ったまま龍斗を見つめる。
その態度が龍斗の神経を逆撫でする。
「お前……!何故追撃しない!!俺を、俺をバカにしているのか!?」
「龍斗……。」
激昂する龍斗に龍賢が歩み寄ろうとした瞬間、何処からともなく飛んできた光弾が地面を抉り、弾ける。
「!?」
《何だぁ!?》
龍賢が下がると、龍斗の後ろから一人の少女と三人の怪物が姿を現す。
「援軍到着♡ってね。」
「トゥバン……!アタシ達を裏切った代償は高くつくよ。」
「五人がかりか……俺はいらないと思うんだが。」
「裏切り者め!貴様は今日ここで仕留める!!」
白龍香を筆頭にツォディアの面々、アンタレス、ルクバト、レグルスがその姿を現す。
《お前ら…!》
アルレシャがまさかの集結に驚く中、龍賢もジリ……と間合いを見計らって構える。
「終わりだな……龍賢。」
「……それはどうかな。龍斗。」
何?と龍斗が疑問の声を上げると同時に援軍の前の地面が弾ける。
「何奴!!」
レグルスが吼える。見れば今度は龍賢の後ろに龍香、雪花、黒鳥、赤羽が立っていた。
「お兄ちゃん達の勝負の邪魔はさせない!」
「蠍野郎……今日ここで叩き潰してやるわ!」
「援護します!」
「ルクバト……!」
現れた援軍に、白龍香は顔を顰める。
「チッ、流石に私。考えることは一緒か。」
「皆!行くよ!」
龍賢と龍斗を越えて、援軍同士でぶつかり合う。そんな中で再び一対一に持ち直した二人は構え合う。
「……お前が援軍を用意しているなんてな。」
「……あぁ。昨日までの俺ならここで一人で来ていただろう。」
そう言うと龍賢は変身を解き、元の姿に戻る。
《おいおいマジでやんのか?》
「あぁ。」
変身を解いた龍賢に、龍斗は面食らいながらも叫ぶ。
「何のつもりだ龍賢!戦いはまだ……」
激昂する龍斗に龍賢は。
「すまない龍斗。お前の言う通りだ。俺が愚かだった。」
「……は?」
龍賢の突然の謝罪に龍斗は思考が停止する。だが、龍賢は続ける。
「俺はきっとあの時思い上がっていたんだ。俺がお前達を守る立場にいるんだと。一人でやらなければならない、と。……だがそれは間違いだった。あの時ちゃんとお前を頼っていたら、家族とは守る、守られるじゃなく共に支え合って進むものだと気づけていたら……お前をそこまで追い詰めることも、龍香が傷つくこともなかった。……彼女が死ぬ事もなかった。」
「な、に、を?」
「……今まで、口だけでしか信じてやれなかった俺が言っても何も伝わらないだろう。だが、一つだけ昔と変わらない、伝えたい想いがある。」
龍賢は呆然とする龍斗に歩み寄る。
「俺は家族を、お前を愛している。その気持ちだけは今も昔も変わらない。」
そして、龍賢は龍斗に手を差し出す。
「……もう一度、俺を信じてくれないか。龍斗。」
差し出された手を、龍斗は肩を震わせながら、ジッと見つめる。
《お、おいおい!まさかと思うが今ので絆されたんじゃねぇだろうな!?こんな、馬鹿げた三文芝居で!?》
《黙ってろアルレシャ。コレはコイツらの問題だ。》
狼狽するアルレシャにトゥバンが釘を刺す。時間にしてほんの数秒。だが、二人にとっては久遠とも思える時間に感じた。
そして、その末に龍斗は………差し出された龍賢の腕を弾いた。
「!」
「今更……今更遅いんだよっ!!都合の良いこと言いやがって!一人で解決したつもりになりやがって!」
「龍斗……。」
龍斗はそのまま龍賢を突き飛ばすと、肩で息をしながら苦しげに言う。
「……戦え。俺と戦え龍賢!!もうそれしか俺達に無いんだ!!」
「……そうか。……分かったよ。」
龍斗の声に応えるように龍賢は再び鎧を纏う。そしてどちらともなく駆け出すと、お互い相手に向けて拳を振るった。
目を閉じて静かに待っている、その時。
「俺をここに呼び出すなんてな。皮肉のつもりか?」
「……来たか。龍斗。」
目を開けて見れば龍斗が橋の手前に立っていた。龍斗は激る憎悪を隠す事もせず、龍賢を睨む。
「懐かしいな。あの時はよくここを待ち合わせにしたもんだ。」
「あぁ。そしてここを選んだのは皮肉じゃない。」
龍賢は稲妻と共に赤い龍の装甲を身に纏い、槍を構える。
「ここ以外に俺とお前が決着をつけるに相応しい場所がないからだ。」
「……ハハッ成る程なぁ。ロマンチストなお前らしいよ。」
水柱と共に魚のような怪物に変身した龍斗もかんざきを構える。
「はぁああああああ!!」
「うおおおおおおお!!」
そして二人はお互いに武器を構えるとどちらも走り出し、互いの武器を突き出す。
お互いの武器がぶつかり合い、そのまま二人が激突する。
「また俺にやられに来たのか龍賢!!」
「………。」
龍斗は憎悪を剥き出しにしながら猛攻を加える。一方の龍賢は無言のままそれらを受け止める。
「確かに!この場こそが俺達の決着の場に相応しいな!それは俺もそう思うよ!!」
「……。」
龍斗が放つ水滴の弾丸を龍賢は槍を回して全て弾く。
「ここで、彼女に詫びさせてやる!!お前の血で!」
龍斗が振るうかんざきを龍賢は屈んで避ける。そして返す刀で、斬りかかるが龍斗はそれを腕で防ぐ。
「お前を信じた俺がバカだった!彼女を任せたのも!間違いだった!」
龍斗の怒涛の連撃。だが前の時と違い、龍賢はそれらを冷静に受け止め続ける。
龍斗はかんざきに水のエネルギーを纏わせ、それを龍賢に叩きつける。
それを龍賢が槍で受け止める。それと同時に水が弾け、龍賢は大きく吹き飛ばされ宙を舞うが、クルリと空中で回転すると、華麗に着地する。
《チッ、当たる瞬間に自分も後ろに飛んで勢いを殺したか!》
「ならば!亡海刺毘突!!」
龍斗が地面に手をやると、橋の下の川が蠢いたかと思うと次々と水柱が上がり、それらはまるで生き物のように龍賢に向けて槍となって襲い掛かる。
しかし龍賢はそれらの軌道を見切ったように時に身体を捻らせ、ステップを踏み、必要最低限の動きでそれらを回避する。
《なっ》
「軽々と……!」
龍斗の攻撃をかわした龍賢は槍を構えると思い切り龍斗に向けてぶん投げる。
「うおっ!?」
龍斗が思わず槍を武器で受け止めると同時に赤黒い雷撃が走り、龍斗の動きが制限される。
「雷激貫爪脚!!」
龍賢の飛び蹴りが自身の槍の柄頭に当たると凄じい衝撃が龍斗を襲う。
「ぐぅ…おぉ!?」
そして龍斗は致命傷こそ免れるが、龍賢の強烈な一撃が炸裂し、吹き飛ばされて地面に倒れる。
「く、くそ……!」
追撃を恐れ、すぐに立ち上がる龍斗。しかし龍賢は追撃せずに黙ったまま龍斗を見つめる。
その態度が龍斗の神経を逆撫でする。
「お前……!何故追撃しない!!俺を、俺をバカにしているのか!?」
「龍斗……。」
激昂する龍斗に龍賢が歩み寄ろうとした瞬間、何処からともなく飛んできた光弾が地面を抉り、弾ける。
「!?」
《何だぁ!?》
龍賢が下がると、龍斗の後ろから一人の少女と三人の怪物が姿を現す。
「援軍到着♡ってね。」
「トゥバン……!アタシ達を裏切った代償は高くつくよ。」
「五人がかりか……俺はいらないと思うんだが。」
「裏切り者め!貴様は今日ここで仕留める!!」
白龍香を筆頭にツォディアの面々、アンタレス、ルクバト、レグルスがその姿を現す。
《お前ら…!》
アルレシャがまさかの集結に驚く中、龍賢もジリ……と間合いを見計らって構える。
「終わりだな……龍賢。」
「……それはどうかな。龍斗。」
何?と龍斗が疑問の声を上げると同時に援軍の前の地面が弾ける。
「何奴!!」
レグルスが吼える。見れば今度は龍賢の後ろに龍香、雪花、黒鳥、赤羽が立っていた。
「お兄ちゃん達の勝負の邪魔はさせない!」
「蠍野郎……今日ここで叩き潰してやるわ!」
「援護します!」
「ルクバト……!」
現れた援軍に、白龍香は顔を顰める。
「チッ、流石に私。考えることは一緒か。」
「皆!行くよ!」
龍賢と龍斗を越えて、援軍同士でぶつかり合う。そんな中で再び一対一に持ち直した二人は構え合う。
「……お前が援軍を用意しているなんてな。」
「……あぁ。昨日までの俺ならここで一人で来ていただろう。」
そう言うと龍賢は変身を解き、元の姿に戻る。
《おいおいマジでやんのか?》
「あぁ。」
変身を解いた龍賢に、龍斗は面食らいながらも叫ぶ。
「何のつもりだ龍賢!戦いはまだ……」
激昂する龍斗に龍賢は。
「すまない龍斗。お前の言う通りだ。俺が愚かだった。」
「……は?」
龍賢の突然の謝罪に龍斗は思考が停止する。だが、龍賢は続ける。
「俺はきっとあの時思い上がっていたんだ。俺がお前達を守る立場にいるんだと。一人でやらなければならない、と。……だがそれは間違いだった。あの時ちゃんとお前を頼っていたら、家族とは守る、守られるじゃなく共に支え合って進むものだと気づけていたら……お前をそこまで追い詰めることも、龍香が傷つくこともなかった。……彼女が死ぬ事もなかった。」
「な、に、を?」
「……今まで、口だけでしか信じてやれなかった俺が言っても何も伝わらないだろう。だが、一つだけ昔と変わらない、伝えたい想いがある。」
龍賢は呆然とする龍斗に歩み寄る。
「俺は家族を、お前を愛している。その気持ちだけは今も昔も変わらない。」
そして、龍賢は龍斗に手を差し出す。
「……もう一度、俺を信じてくれないか。龍斗。」
差し出された手を、龍斗は肩を震わせながら、ジッと見つめる。
《お、おいおい!まさかと思うが今ので絆されたんじゃねぇだろうな!?こんな、馬鹿げた三文芝居で!?》
《黙ってろアルレシャ。コレはコイツらの問題だ。》
狼狽するアルレシャにトゥバンが釘を刺す。時間にしてほんの数秒。だが、二人にとっては久遠とも思える時間に感じた。
そして、その末に龍斗は………差し出された龍賢の腕を弾いた。
「!」
「今更……今更遅いんだよっ!!都合の良いこと言いやがって!一人で解決したつもりになりやがって!」
「龍斗……。」
龍斗はそのまま龍賢を突き飛ばすと、肩で息をしながら苦しげに言う。
「……戦え。俺と戦え龍賢!!もうそれしか俺達に無いんだ!!」
「……そうか。……分かったよ。」
龍斗の声に応えるように龍賢は再び鎧を纏う。そしてどちらともなく駆け出すと、お互い相手に向けて拳を振るった。
「ハァっ!」
白龍香の繰り出す斬撃を龍香は屈んで避ける。逆に龍香が振るう斬撃を白龍香は跳躍してかわす。
そして同じタイミングで互いに回し蹴りを放ち、それはお互いの胴を捉え、二人とも後退する。
「くっ……」
「ぐっ、考えることは一緒かァ。そりゃ、私だもんなぁ。」
不敵に笑う白龍香。目の前の自分と同じ顔をした敵に龍香は“タイラントアックス”を突きつける。
「……あなたは私じゃない!私はあなたみたいに人を傷つけるのを喜んだりしない!」
突きつけられた白龍香は一瞬ポカン、とした顔をした後クックックと笑い始める。
「ウヒャヒャヒャヒャ!!おいおいお前何言ってんの?良い子ぶるのも大概にしときなよ!」
笑いながら、白龍香は龍香に“タイラントアックス”を振るい、龍香がそれを防ぐと同時に顔を近づけ、囁く。
「自分に素直になれよ。皆私から奪っていく!!家族を!幸せ!平穏を!私を傷つけるモノが憎い!好きなモノは手元に置いておきたい!そうでしょう!?」
「何を言って」
「分かるのよ。私はお前なんだから。」
「黙れっ!」
龍香は一瞬で“タイラントブレイド”を取り出すと、アトロシアスへと変貌し、白龍香を殴りつける。
「くっ、ハッハッ。図星か。だから怒る!」
白龍香は頬を拭いながらも、地面を蹴って一瞬で龍香との距離を詰める。
「くっ」
「いつまで“奪われる悲劇のヒロイン”気取りなの?もう“私達は奪う捕食者”になれるのに。」
「…ッ」
「私達は強者よ!!いつまでも望まれた、押し付けられた良い子ちゃんぶる必要ないのよ!」
「わ、私はそんなこと望んでない!」
「いいや、望んでる!私が存在すること!それが貴方が心の奥底で望んでいる確かな証拠よ!」
「このッ……!」
笑いながら話す白龍香に嫌悪感を覚えた龍香はその口を黙らせるべく拳を振るう。
しかし、白龍香は先程までとは打って変わってニヤリと笑うと、その拳を受け止める。
「えっ」
「ククク……残念ね。私はあなた…。あなたが攻撃衝動や隠していた感情が現れる度……私は強くなる!」
次の瞬間、一瞬光ったかと思うと白龍香の衣装がアトロシアスのような形状へと変化する。
「なっ、」
「名付けて……ティラノカラー•プリテンダーってとこかしら!」
そう言うと白龍香は拳を振るって今度は龍香を殴り返す。
「うあっ」
殴られた龍香が後退りする。
「言っとくけど、私以外も結構ピンチみたいよ?」
白龍香の言葉に龍香が辺りを見渡すと、アンタレスの尻尾の一撃が雪花を弾き飛ばす。
「ぐあっ!」
「邪魔よ小娘!私はトゥバンと決着をつけないといけないの!」
レグルスは黒鳥の攻撃をものともせず、突進してくれる。それに気づいて飛んで逃げようとするがレグルスの放つ衝撃波に黒鳥は撃墜される。
「くっ、なんて力だ……!」
「我が同胞の力を使って敵対するなど……断罪!」
ルクバトと赤羽が肉弾戦に持ち込むが、身体の負傷が癒えていない赤羽はルクバトに次第に追い込まれる。
「くっ、この!」
「……無駄だ。お前は俺には勝てん。」
皆、防戦一方で徐々に不利になっていく。
「皆!」
「残念ね。せっかくお兄様の援軍に来たのに、ここで全滅しちゃうんだから!」
そして龍香に白龍香が襲い掛かろうとした瞬間。白龍香の足元に手裏剣のような形状の何かが突き刺さる。
「は?」
そしてカチリ、と音がしたかと思うとそれは大爆発を引き起こし、白龍香を吹き飛ばす。
「うお、お?おおお!?」
「何!?」
突然の爆発に双方が驚いていると、上空から銃弾が雪花を襲うアンタレスに襲い掛かる。
アンタレスは一旦雪花から離れてその銃弾を防御しながら後退する。
「あ?今度は何!?」
「何と言われれば答えよう!!」
上空にいる一つの人影。それにいち早く気づいたルクバトが矢を放とうとした瞬間横から機械の鳥が飛び込み、唐突に体当たりを喰らわせる。
「!」
「私は天才!人類の叡智!」
上空から落下してきた人物……月乃助は体勢を崩したルクバトを蹴ると孔雀の尾のような剣を引き抜き、レグルスに斬りかかる。
「むぅ!」
「結衣月乃助だ!」
剣を受け止めたレグルスがお返しにと腕を振るうがそれを屈んでかわすと月乃助はレグルスの顎を蹴り上げた。
たまらず後退するレグルスに対峙しながら月乃助は全員に言う。
「皆安心するといい!この私が来たからには君達の勝利は約束されたものだ!」
「……気に入らないけど、助かったわ!」
「あ、あぁ。」
「………チッ。」
月乃助が場を乱したことで、体勢を立て直した三人が月乃助の元に集まる。
「なんだかよく分からない新入りね…!」
「ぐっ……小癪な。」
「俺を足蹴に…。」
奇襲を受けた三人も一旦仕切り直す姿勢を見せる。
「結衣さん……!」
龍香に月乃助は微笑みかけると、剣をシードゥス達に突きつけて言った。
「行くぞ皆の衆!勝利を我がものにするのだ!」
白龍香の繰り出す斬撃を龍香は屈んで避ける。逆に龍香が振るう斬撃を白龍香は跳躍してかわす。
そして同じタイミングで互いに回し蹴りを放ち、それはお互いの胴を捉え、二人とも後退する。
「くっ……」
「ぐっ、考えることは一緒かァ。そりゃ、私だもんなぁ。」
不敵に笑う白龍香。目の前の自分と同じ顔をした敵に龍香は“タイラントアックス”を突きつける。
「……あなたは私じゃない!私はあなたみたいに人を傷つけるのを喜んだりしない!」
突きつけられた白龍香は一瞬ポカン、とした顔をした後クックックと笑い始める。
「ウヒャヒャヒャヒャ!!おいおいお前何言ってんの?良い子ぶるのも大概にしときなよ!」
笑いながら、白龍香は龍香に“タイラントアックス”を振るい、龍香がそれを防ぐと同時に顔を近づけ、囁く。
「自分に素直になれよ。皆私から奪っていく!!家族を!幸せ!平穏を!私を傷つけるモノが憎い!好きなモノは手元に置いておきたい!そうでしょう!?」
「何を言って」
「分かるのよ。私はお前なんだから。」
「黙れっ!」
龍香は一瞬で“タイラントブレイド”を取り出すと、アトロシアスへと変貌し、白龍香を殴りつける。
「くっ、ハッハッ。図星か。だから怒る!」
白龍香は頬を拭いながらも、地面を蹴って一瞬で龍香との距離を詰める。
「くっ」
「いつまで“奪われる悲劇のヒロイン”気取りなの?もう“私達は奪う捕食者”になれるのに。」
「…ッ」
「私達は強者よ!!いつまでも望まれた、押し付けられた良い子ちゃんぶる必要ないのよ!」
「わ、私はそんなこと望んでない!」
「いいや、望んでる!私が存在すること!それが貴方が心の奥底で望んでいる確かな証拠よ!」
「このッ……!」
笑いながら話す白龍香に嫌悪感を覚えた龍香はその口を黙らせるべく拳を振るう。
しかし、白龍香は先程までとは打って変わってニヤリと笑うと、その拳を受け止める。
「えっ」
「ククク……残念ね。私はあなた…。あなたが攻撃衝動や隠していた感情が現れる度……私は強くなる!」
次の瞬間、一瞬光ったかと思うと白龍香の衣装がアトロシアスのような形状へと変化する。
「なっ、」
「名付けて……ティラノカラー•プリテンダーってとこかしら!」
そう言うと白龍香は拳を振るって今度は龍香を殴り返す。
「うあっ」
殴られた龍香が後退りする。
「言っとくけど、私以外も結構ピンチみたいよ?」
白龍香の言葉に龍香が辺りを見渡すと、アンタレスの尻尾の一撃が雪花を弾き飛ばす。
「ぐあっ!」
「邪魔よ小娘!私はトゥバンと決着をつけないといけないの!」
レグルスは黒鳥の攻撃をものともせず、突進してくれる。それに気づいて飛んで逃げようとするがレグルスの放つ衝撃波に黒鳥は撃墜される。
「くっ、なんて力だ……!」
「我が同胞の力を使って敵対するなど……断罪!」
ルクバトと赤羽が肉弾戦に持ち込むが、身体の負傷が癒えていない赤羽はルクバトに次第に追い込まれる。
「くっ、この!」
「……無駄だ。お前は俺には勝てん。」
皆、防戦一方で徐々に不利になっていく。
「皆!」
「残念ね。せっかくお兄様の援軍に来たのに、ここで全滅しちゃうんだから!」
そして龍香に白龍香が襲い掛かろうとした瞬間。白龍香の足元に手裏剣のような形状の何かが突き刺さる。
「は?」
そしてカチリ、と音がしたかと思うとそれは大爆発を引き起こし、白龍香を吹き飛ばす。
「うお、お?おおお!?」
「何!?」
突然の爆発に双方が驚いていると、上空から銃弾が雪花を襲うアンタレスに襲い掛かる。
アンタレスは一旦雪花から離れてその銃弾を防御しながら後退する。
「あ?今度は何!?」
「何と言われれば答えよう!!」
上空にいる一つの人影。それにいち早く気づいたルクバトが矢を放とうとした瞬間横から機械の鳥が飛び込み、唐突に体当たりを喰らわせる。
「!」
「私は天才!人類の叡智!」
上空から落下してきた人物……月乃助は体勢を崩したルクバトを蹴ると孔雀の尾のような剣を引き抜き、レグルスに斬りかかる。
「むぅ!」
「結衣月乃助だ!」
剣を受け止めたレグルスがお返しにと腕を振るうがそれを屈んでかわすと月乃助はレグルスの顎を蹴り上げた。
たまらず後退するレグルスに対峙しながら月乃助は全員に言う。
「皆安心するといい!この私が来たからには君達の勝利は約束されたものだ!」
「……気に入らないけど、助かったわ!」
「あ、あぁ。」
「………チッ。」
月乃助が場を乱したことで、体勢を立て直した三人が月乃助の元に集まる。
「なんだかよく分からない新入りね…!」
「ぐっ……小癪な。」
「俺を足蹴に…。」
奇襲を受けた三人も一旦仕切り直す姿勢を見せる。
「結衣さん……!」
龍香に月乃助は微笑みかけると、剣をシードゥス達に突きつけて言った。
「行くぞ皆の衆!勝利を我がものにするのだ!」
「おおおおおおおお!」
「はあああああああ!」
二人が叫びながら繰り出した拳が互いの胸を抉る。その衝撃で二人は後退するが、すぐに互いに向けて走り出す。
龍賢が掴みかかるが、パワーではやはり龍斗とアルレシャの方が上なのかあっさり掴み返され、逆に柵に叩きつけられる。
「ぐっ!おおお!」
しかしトゥバンも掴みかかる龍斗に頭突きを喰らわせて怯ませると回し蹴りを叩き込む。
「ぐあっ!……このっ!」
《藪雨!!》
アルレシャの叫びと共に龍斗が腕を振るうと跳弾速の水が発射され、龍賢に炸裂する。
「ぐっ」
龍賢が一瞬怯む。
「激流葬渦!」
さらにその隙を見逃さず、龍斗が腕を前に突き出すと、そこから渦巻き状の水の塊が発射され、龍賢を吹き飛ばす。
「ぐおぁっ」
たまらず地面を転がる龍賢に、龍斗は勝ち誇ったように言う。
「言ったハズだ…!お前の動きは対策し尽くしてんだよ!」
《やっちまいな!》
龍斗はかんざき状の武器を拾い上げると龍賢に向かって近づき……それを振り下ろす。
「……」
龍賢はそれを避けて、立ち上がると龍斗に向かって駆け出す。
「無駄だと言ってるだろうが!」
龍賢に向かって、龍斗が武器を振るった瞬間龍賢は一瞬で距離を詰め、柄の部分を腕で受け止める。
「なっ」
「龍賢の動きが読める……ねぇ。」
そう言うと龍賢は紫色に染まる瞳の顔を上げる。
「なら俺の動きは読めるかなァッ!?」
意識の主導権を譲渡されたトゥバンが思い切り頭突きをかまし、怯ませるとヤクザキックで龍斗を蹴りつける。
「くぉっ!?」
《トゥバンに変わったか!》
アルレシャが叫ぶと同時にその背から水の槍が次々と飛び出し、トゥバンに襲い掛かる。
「龍賢!」
「おう!」
しかし、緑の瞳に戻った龍斗はその槍を踊るようにしてかわす。そして一気に距離を詰めると、再び紫色の瞳になり、思い切り殴りとばす。
だが、アルレシャもただでやられるハズもなくその腕を掴むと、膝をトゥバンに叩き込む。
怯んだその背に肘打ちを思い切りかまし、倒れたトゥバンをかんざきの一撃が打ち据えて、その身体を宙へと吹き飛ばす。
「ぐっ、はっ……!」
地面へと叩きつけられ、トゥバンが呻く。
《くはっ、ハハ。お前が、俺に敵うとでも思ったか!》
アルレシャが勝ち誇ったように叫ぶ。しかしトゥバンは口元を拭うと再び立ち上がる。
「やってくれるぜ…龍賢。」
《あぁ。確かに奴は言うだけはある。》
立ち上がったトゥバンは足元に落ちていた槍を蹴り上げて手に取る。
《……だが、今の俺達は一心同体だ。》
「そうだ。最強と最強が手を組んでんだ……負ける通りがねぇなぁ。」
そう言うとトゥバンは槍を構え、アルレシャを見据える。
「ふん…まだやる気のようだが……。いくら貴様が立ち上がったところで……」
「……構やがれアルレシャ。」
何?と疑問の声を上げるアルレシャに槍を構えるとトゥバンの目の色が変わる。
「……決着をつけよう。龍斗。」
「……望む所だ。」
その意図を察して、龍斗も構える。そして二人の間に一瞬流れる静寂。
そして、一陣の風が吹くと同時に二人は動いた。龍賢は思い切り槍をぶん投げて必殺技の体勢に入る。
「二度も同じ手は食うか!!」
しかしそれは龍斗のかんざきのような武器で弾き返される。
「!」
だが龍賢はさらに両肘のブレードを双剣のような形にして手に取ると、それを龍斗に投げつける。
「無駄だァッ!!」
だがそれを龍斗は弾き返す。しかし龍賢は跳躍して弾き飛ばされた槍を掴むとそれを振って、同じく弾かれた双剣を槍の切っ先に合体させる。
「織り込み済みだっ!」
「葬無死海•絶!」
龍斗が手を翳すと水柱が上がり、それらが鋭い牙を持つ闘魚となってうねりながら龍賢に襲い掛かる。その攻撃に全身を削られながらも、何とか身を捻って致命傷を回避しながら龍賢は龍斗の懐に潜り込む。
そして、お互いに武器を相手に向けて振るう。
「龍斗ォォッ!!」
「龍賢ッッ!!」
お互いの武器がそれぞれの軌道を描き、相手へと向かっていき──龍斗の一撃は龍賢の左肩を削ぎ、龍賢の一撃は龍斗の腹部を捉えていた。
「がっ……!」
「撃鉄雷龍徹甲弾!!」
次の瞬間トゥバンの槍の先端からゼロ距離で放たれた雷が龍斗を焼く。凄まじい衝撃と熱が二人を中心に放たれる。
《がっ、ガガががが!!?ぐっ、お、オオオオオオオオオオ!!》
だが、電熱で焼かれながらもアルレシャは吼え、龍賢の首を掴む。
《お、俺が!俺が負けるものか!貴様、貴様らなんぞにィィィィィ!!》
悪鬼の如き形相で、雷に焼かれながらも目の前の敵を倒そうとするその執念は凄まじいものだ。
「……龍、賢ッ!俺は!俺はァッ!!」
龍斗は叫ぶと龍賢の首から手を離し、水を纏った拳で思い切り自分に刺さった槍をへし折り、粉砕する。
「なっ」
「俺の勝ちだァッ!」
血を流しながら水を纏った手刀を繰り出す。龍賢も咄嗟にそれに対応しようとするが、身体が動かない。
だが、龍賢は叫ぶ。
「一人ではないッ!この戦い!」
次の瞬間片目が紫色に染まり、粉砕された槍の破片を握ると、龍斗の繰り出す手刀に脇腹を削がれながらもそれを思い切り振り下ろす。
「届けさせてくれぇぇぇぇ!」
《ウオオオオオオオオ!!》
振り下ろした破片が龍斗に突き刺さる。鮮血が飛び散り、グラリ、龍斗の体勢が崩れて橋の柵にもたれかかる。
《お、俺が、負ける?トゥバンに!?人間と手を組んだのにか!?》
《ったりめーだ。俺達は一心同体なんだからよ。》
「ごふっ」
龍斗が吐血した次の瞬間、戦いの衝撃で脆くなっていたのか、柵が壊れて、龍斗は宙へと身を投げる。
「龍斗!」
痛む身体に鞭打ち、龍賢が手を伸ばす。戦いの傷で意識が虚になっているのか龍斗も何となく手を伸ばす。
蓄積したダメージによって融合が解除されたのか、アルレシャと龍斗が完全に分離する。
龍賢が必死になって手を伸ばすがあと一歩足りない──と思ったその瞬間。
二人とも誰かに腕を掴まれた気がした。その腕を掴む人物は亜麻色の髪の少女で……晴れやかな笑顔で二人の腕を引き寄せ手を取り合わせる。
「君は……」
「……ぁ」
少女は二人が手を取るのを見ると、何処か満たされたような満足げな顔になり、また笑顔に戻って手を振って消える。
それは夢だったのか。それとも幻だったのか。しかし、二人の手はしっかりと握られていた。
「……君って奴は。本当に敵わないな…。」
龍賢の頬を一筋の涙が伝う。龍斗も今起こった出来事に放心状態のようだ。
《感極まってるところ悪ィけどよ!!コイツ引き上げるぞ!!全身痛ェし正直疲れてんだ!》
トゥバンの声に龍賢は、分かっている、と短く答えて龍斗を引っ張り上げる。
龍斗を引き上げると同時に下で大爆発が起こり、巨大な水柱が上がる。
「なっ」
「アルレシャがやられた!?」
「くっ……おのれ、ここは引くぞ!」
アルレシャが倒されたのを悟ったのかシードゥス達が撤収し始める。
「えっ、もう終わりぃ!?」
「お兄ちゃん…!」
白龍香はつまらなさそうに嘆息すると、兄の勝利に喜ぶ龍香に悪戯っぽく笑みを浮かべると。
「ま、いいや。今日はここまでにしといてあげる。また会う時をお楽しみに……」
そう言うと白龍香も引き上げる。その消えた後を見て、龍香は一抹の不安を覚えるが、すぐに駆け出す。
「お兄ちゃん……!」
「はあああああああ!」
二人が叫びながら繰り出した拳が互いの胸を抉る。その衝撃で二人は後退するが、すぐに互いに向けて走り出す。
龍賢が掴みかかるが、パワーではやはり龍斗とアルレシャの方が上なのかあっさり掴み返され、逆に柵に叩きつけられる。
「ぐっ!おおお!」
しかしトゥバンも掴みかかる龍斗に頭突きを喰らわせて怯ませると回し蹴りを叩き込む。
「ぐあっ!……このっ!」
《藪雨!!》
アルレシャの叫びと共に龍斗が腕を振るうと跳弾速の水が発射され、龍賢に炸裂する。
「ぐっ」
龍賢が一瞬怯む。
「激流葬渦!」
さらにその隙を見逃さず、龍斗が腕を前に突き出すと、そこから渦巻き状の水の塊が発射され、龍賢を吹き飛ばす。
「ぐおぁっ」
たまらず地面を転がる龍賢に、龍斗は勝ち誇ったように言う。
「言ったハズだ…!お前の動きは対策し尽くしてんだよ!」
《やっちまいな!》
龍斗はかんざき状の武器を拾い上げると龍賢に向かって近づき……それを振り下ろす。
「……」
龍賢はそれを避けて、立ち上がると龍斗に向かって駆け出す。
「無駄だと言ってるだろうが!」
龍賢に向かって、龍斗が武器を振るった瞬間龍賢は一瞬で距離を詰め、柄の部分を腕で受け止める。
「なっ」
「龍賢の動きが読める……ねぇ。」
そう言うと龍賢は紫色に染まる瞳の顔を上げる。
「なら俺の動きは読めるかなァッ!?」
意識の主導権を譲渡されたトゥバンが思い切り頭突きをかまし、怯ませるとヤクザキックで龍斗を蹴りつける。
「くぉっ!?」
《トゥバンに変わったか!》
アルレシャが叫ぶと同時にその背から水の槍が次々と飛び出し、トゥバンに襲い掛かる。
「龍賢!」
「おう!」
しかし、緑の瞳に戻った龍斗はその槍を踊るようにしてかわす。そして一気に距離を詰めると、再び紫色の瞳になり、思い切り殴りとばす。
だが、アルレシャもただでやられるハズもなくその腕を掴むと、膝をトゥバンに叩き込む。
怯んだその背に肘打ちを思い切りかまし、倒れたトゥバンをかんざきの一撃が打ち据えて、その身体を宙へと吹き飛ばす。
「ぐっ、はっ……!」
地面へと叩きつけられ、トゥバンが呻く。
《くはっ、ハハ。お前が、俺に敵うとでも思ったか!》
アルレシャが勝ち誇ったように叫ぶ。しかしトゥバンは口元を拭うと再び立ち上がる。
「やってくれるぜ…龍賢。」
《あぁ。確かに奴は言うだけはある。》
立ち上がったトゥバンは足元に落ちていた槍を蹴り上げて手に取る。
《……だが、今の俺達は一心同体だ。》
「そうだ。最強と最強が手を組んでんだ……負ける通りがねぇなぁ。」
そう言うとトゥバンは槍を構え、アルレシャを見据える。
「ふん…まだやる気のようだが……。いくら貴様が立ち上がったところで……」
「……構やがれアルレシャ。」
何?と疑問の声を上げるアルレシャに槍を構えるとトゥバンの目の色が変わる。
「……決着をつけよう。龍斗。」
「……望む所だ。」
その意図を察して、龍斗も構える。そして二人の間に一瞬流れる静寂。
そして、一陣の風が吹くと同時に二人は動いた。龍賢は思い切り槍をぶん投げて必殺技の体勢に入る。
「二度も同じ手は食うか!!」
しかしそれは龍斗のかんざきのような武器で弾き返される。
「!」
だが龍賢はさらに両肘のブレードを双剣のような形にして手に取ると、それを龍斗に投げつける。
「無駄だァッ!!」
だがそれを龍斗は弾き返す。しかし龍賢は跳躍して弾き飛ばされた槍を掴むとそれを振って、同じく弾かれた双剣を槍の切っ先に合体させる。
「織り込み済みだっ!」
「葬無死海•絶!」
龍斗が手を翳すと水柱が上がり、それらが鋭い牙を持つ闘魚となってうねりながら龍賢に襲い掛かる。その攻撃に全身を削られながらも、何とか身を捻って致命傷を回避しながら龍賢は龍斗の懐に潜り込む。
そして、お互いに武器を相手に向けて振るう。
「龍斗ォォッ!!」
「龍賢ッッ!!」
お互いの武器がそれぞれの軌道を描き、相手へと向かっていき──龍斗の一撃は龍賢の左肩を削ぎ、龍賢の一撃は龍斗の腹部を捉えていた。
「がっ……!」
「撃鉄雷龍徹甲弾!!」
次の瞬間トゥバンの槍の先端からゼロ距離で放たれた雷が龍斗を焼く。凄まじい衝撃と熱が二人を中心に放たれる。
《がっ、ガガががが!!?ぐっ、お、オオオオオオオオオオ!!》
だが、電熱で焼かれながらもアルレシャは吼え、龍賢の首を掴む。
《お、俺が!俺が負けるものか!貴様、貴様らなんぞにィィィィィ!!》
悪鬼の如き形相で、雷に焼かれながらも目の前の敵を倒そうとするその執念は凄まじいものだ。
「……龍、賢ッ!俺は!俺はァッ!!」
龍斗は叫ぶと龍賢の首から手を離し、水を纏った拳で思い切り自分に刺さった槍をへし折り、粉砕する。
「なっ」
「俺の勝ちだァッ!」
血を流しながら水を纏った手刀を繰り出す。龍賢も咄嗟にそれに対応しようとするが、身体が動かない。
だが、龍賢は叫ぶ。
「一人ではないッ!この戦い!」
次の瞬間片目が紫色に染まり、粉砕された槍の破片を握ると、龍斗の繰り出す手刀に脇腹を削がれながらもそれを思い切り振り下ろす。
「届けさせてくれぇぇぇぇ!」
《ウオオオオオオオオ!!》
振り下ろした破片が龍斗に突き刺さる。鮮血が飛び散り、グラリ、龍斗の体勢が崩れて橋の柵にもたれかかる。
《お、俺が、負ける?トゥバンに!?人間と手を組んだのにか!?》
《ったりめーだ。俺達は一心同体なんだからよ。》
「ごふっ」
龍斗が吐血した次の瞬間、戦いの衝撃で脆くなっていたのか、柵が壊れて、龍斗は宙へと身を投げる。
「龍斗!」
痛む身体に鞭打ち、龍賢が手を伸ばす。戦いの傷で意識が虚になっているのか龍斗も何となく手を伸ばす。
蓄積したダメージによって融合が解除されたのか、アルレシャと龍斗が完全に分離する。
龍賢が必死になって手を伸ばすがあと一歩足りない──と思ったその瞬間。
二人とも誰かに腕を掴まれた気がした。その腕を掴む人物は亜麻色の髪の少女で……晴れやかな笑顔で二人の腕を引き寄せ手を取り合わせる。
「君は……」
「……ぁ」
少女は二人が手を取るのを見ると、何処か満たされたような満足げな顔になり、また笑顔に戻って手を振って消える。
それは夢だったのか。それとも幻だったのか。しかし、二人の手はしっかりと握られていた。
「……君って奴は。本当に敵わないな…。」
龍賢の頬を一筋の涙が伝う。龍斗も今起こった出来事に放心状態のようだ。
《感極まってるところ悪ィけどよ!!コイツ引き上げるぞ!!全身痛ェし正直疲れてんだ!》
トゥバンの声に龍賢は、分かっている、と短く答えて龍斗を引っ張り上げる。
龍斗を引き上げると同時に下で大爆発が起こり、巨大な水柱が上がる。
「なっ」
「アルレシャがやられた!?」
「くっ……おのれ、ここは引くぞ!」
アルレシャが倒されたのを悟ったのかシードゥス達が撤収し始める。
「えっ、もう終わりぃ!?」
「お兄ちゃん…!」
白龍香はつまらなさそうに嘆息すると、兄の勝利に喜ぶ龍香に悪戯っぽく笑みを浮かべると。
「ま、いいや。今日はここまでにしといてあげる。また会う時をお楽しみに……」
そう言うと白龍香も引き上げる。その消えた後を見て、龍香は一抹の不安を覚えるが、すぐに駆け出す。
「お兄ちゃん……!」
「龍斗!…っ!龍斗!」
上がった水柱が崩れ、雨のように降り注ぐ飛沫に濡れながら、傷だらけの龍賢の腕の中で、同じく傷だらけの龍斗が横たわる。龍斗は目を細め、叫ぶ龍賢をぼんやりと見つめる。
「……死なさんぞ龍斗。お前はまだ、皆に、龍香に謝らないといけないんだ。他にもお前がやるべきことは沢山ある。だから…」
「……許せなかった。」
龍賢を見上げながら、龍斗は涙を流して己の想いを少しずつ吐露する。
「いつも……俺の前を……いくお前を。……そんな、お前に…追いつけない、俺自身も。」
龍斗は傷だらけの手を龍賢に伸ばす。龍賢はその弱々しい手を強く握りながら、震える声で言う。
「……俺は。お前らを、家族を守れる強い人間になりたかったんだ。」
「あぁ……俺も、だ。でも……」
力なく笑う龍斗に龍賢も何処か肩の荷が降りたような顔で答えた。
「そうだ。……お互いそんなものは求められてなかった。俺達はただの兄弟で。家族で。それで充分だったんだ。」
龍賢がそう言うと、龍斗も何処か清々しそうな顔になり、再び目を閉じた。
飛沫が収まり、濡れた二人の上には朧げながらも、綺麗な──虹が掛かっていた。
上がった水柱が崩れ、雨のように降り注ぐ飛沫に濡れながら、傷だらけの龍賢の腕の中で、同じく傷だらけの龍斗が横たわる。龍斗は目を細め、叫ぶ龍賢をぼんやりと見つめる。
「……死なさんぞ龍斗。お前はまだ、皆に、龍香に謝らないといけないんだ。他にもお前がやるべきことは沢山ある。だから…」
「……許せなかった。」
龍賢を見上げながら、龍斗は涙を流して己の想いを少しずつ吐露する。
「いつも……俺の前を……いくお前を。……そんな、お前に…追いつけない、俺自身も。」
龍斗は傷だらけの手を龍賢に伸ばす。龍賢はその弱々しい手を強く握りながら、震える声で言う。
「……俺は。お前らを、家族を守れる強い人間になりたかったんだ。」
「あぁ……俺も、だ。でも……」
力なく笑う龍斗に龍賢も何処か肩の荷が降りたような顔で答えた。
「そうだ。……お互いそんなものは求められてなかった。俺達はただの兄弟で。家族で。それで充分だったんだ。」
龍賢がそう言うと、龍斗も何処か清々しそうな顔になり、再び目を閉じた。
飛沫が収まり、濡れた二人の上には朧げながらも、綺麗な──虹が掛かっていた。
To be continued……