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更新日:2022/01/28 Fri 18:19:37
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セブンスカラー
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「急いで!!シズクちゃんが言う祭壇はどこにあるの!?」
龍那がそう言いながら塔を走る。シズクは龍那に答える。
「祭壇はここの最上階にあるの!」
そうして五人が階段を駆け上がろうとした瞬間。目の前の壁をぶち抜いて首なしライダーがその姿を現す。
所々に傷があるもののピンピンしており、鯉昇の新車の犠牲は時間稼ぎにしかならなかったようだ。
「ここは私に任せて!!」
そう言ってススムは天使、ミカエルに変身すると首なしライダーを掴んで抱き合うように壁を破壊しながら引き離す。
「迫水さん!」
「今は進むのよ!!」
龍那に言われ、一瞬龍香ときゅーばんちゃんは逡巡するが、すぐに前に進もうとする。
しかしほんの一瞬、きゅーばんちゃんの鼻腔をあの異臭がくすぐる。
「!」
直感的に危険を感じたきゅーばんちゃんが止まる。すると、部屋の角から彼女の目の前を青いナイフのような舌が突き出される。
「んなっ」
そして青い煙と共に猟犬がその姿を現す。猟犬は悪臭が混じった吐息と涎を垂らしながらきゅーばんちゃんに向けて右脚を振るう。
彼女は振るわれた右腕を屈んで避ける。避けられたことで目標を失った右腕は後ろにあった壁をまるで飴細工のように容易く粉砕する。
「きゅーばんちゃん!」
「行って!」
またもや振るわれる脚をかわしながらきゅーばんちゃんが叫ぶ。
「時間稼ぎは出来るから!早く!」
「ごめんなさい……行くわよ!」
シズクはそう言うと駆け出す。龍那も流石に彼女一人置いていくのは気が引けたようだが、すぐに龍香の手を引き走り出す。
後ろ髪を引かれる思いで走り出し、そしてとうとう祭壇と思しき石櫃がある最上階に辿り着く。
「つ、着いた……!」
「早く、やらなきゃ…!」
シズクが青いペンダントを持って祭壇に近づこうとした瞬間。
「おおっと。そうはさせないザマス。」
何処からともなくそう声がしたかと思うと目の前に蜘蛛の脚が突き刺さる。
「うっ、」
「鬼ごっこはここまでだ嬢ちゃん。」
そう言って龍の仮面をつけた少女、ブレスと女郎蜘蛛が三人の前に立ちはだかる。
「くっ。邪魔をしないで!!」
シズクが叫ぶ。すると女郎蜘蛛は不思議そうに首を捻りながら、言う。
「……?よく分からないザマスねぇ。なんで生き返れるチャンスをフイにしたがるザマスか?」
「え……?」
「シズクちゃん、それはどういう……?」
女郎蜘蛛の発言に龍那と龍香の二人が目を見開いて驚く。苦渋の顔を浮かべるシズクの様子を見て察したのかブレスが続ける。
「なんだ?ソイツから聞いてなかったのか?ソイツの父親はあのイース。そして俺達の儀式の最終目的は、ソイツを生き返らせること、だ。」
龍那がそう言いながら塔を走る。シズクは龍那に答える。
「祭壇はここの最上階にあるの!」
そうして五人が階段を駆け上がろうとした瞬間。目の前の壁をぶち抜いて首なしライダーがその姿を現す。
所々に傷があるもののピンピンしており、鯉昇の新車の犠牲は時間稼ぎにしかならなかったようだ。
「ここは私に任せて!!」
そう言ってススムは天使、ミカエルに変身すると首なしライダーを掴んで抱き合うように壁を破壊しながら引き離す。
「迫水さん!」
「今は進むのよ!!」
龍那に言われ、一瞬龍香ときゅーばんちゃんは逡巡するが、すぐに前に進もうとする。
しかしほんの一瞬、きゅーばんちゃんの鼻腔をあの異臭がくすぐる。
「!」
直感的に危険を感じたきゅーばんちゃんが止まる。すると、部屋の角から彼女の目の前を青いナイフのような舌が突き出される。
「んなっ」
そして青い煙と共に猟犬がその姿を現す。猟犬は悪臭が混じった吐息と涎を垂らしながらきゅーばんちゃんに向けて右脚を振るう。
彼女は振るわれた右腕を屈んで避ける。避けられたことで目標を失った右腕は後ろにあった壁をまるで飴細工のように容易く粉砕する。
「きゅーばんちゃん!」
「行って!」
またもや振るわれる脚をかわしながらきゅーばんちゃんが叫ぶ。
「時間稼ぎは出来るから!早く!」
「ごめんなさい……行くわよ!」
シズクはそう言うと駆け出す。龍那も流石に彼女一人置いていくのは気が引けたようだが、すぐに龍香の手を引き走り出す。
後ろ髪を引かれる思いで走り出し、そしてとうとう祭壇と思しき石櫃がある最上階に辿り着く。
「つ、着いた……!」
「早く、やらなきゃ…!」
シズクが青いペンダントを持って祭壇に近づこうとした瞬間。
「おおっと。そうはさせないザマス。」
何処からともなくそう声がしたかと思うと目の前に蜘蛛の脚が突き刺さる。
「うっ、」
「鬼ごっこはここまでだ嬢ちゃん。」
そう言って龍の仮面をつけた少女、ブレスと女郎蜘蛛が三人の前に立ちはだかる。
「くっ。邪魔をしないで!!」
シズクが叫ぶ。すると女郎蜘蛛は不思議そうに首を捻りながら、言う。
「……?よく分からないザマスねぇ。なんで生き返れるチャンスをフイにしたがるザマスか?」
「え……?」
「シズクちゃん、それはどういう……?」
女郎蜘蛛の発言に龍那と龍香の二人が目を見開いて驚く。苦渋の顔を浮かべるシズクの様子を見て察したのかブレスが続ける。
「なんだ?ソイツから聞いてなかったのか?ソイツの父親はあのイース。そして俺達の儀式の最終目的は、ソイツを生き返らせること、だ。」
「ふぅん!」
「どぁっ!?」
イースが振るう拳が鯉昇を殴り飛ばす。地面を転がる鯉昇だが、すぐに立ち上がって構える。その様子を見てイースは呆れたように呟く。
「……無駄にタフだな。」
「頑丈さだけは昔からの取り柄でね……!」
ふらふらと覚束ない足取り、血が滲む口元を拭いながらそう言う鯉昇にイースは尋ねる。
「……言ったハズだ。貴様も親ならば、私の気持ちが分かるだろう?」
イースはそう言って鯉昇との距離を一瞬で詰めると拳を繰り出す。
「シズクは私の宝だった!!希望だったんだ!それを突然失った!」
イースの攻撃に鯉昇はまたも地面に倒れる。
「娘を失った私の想いが!悲しみが!何もない虚無が!」
イースの悲痛な叫びを聞きながら、鯉昇はゆっくり立ち上がる。
「……そりゃ、まぁ。お前の気持ちは分かるよ。俺も龍賢や龍香がいなくなったら、と思うと想像出来ない位辛くなるってのは分かる。親なら何をしてでも子に生きてほしいって思うだろうな。」
「ならば!私の邪魔をしないで貰おうか!」
「けどよ。そいつは俺の気持ちだ。龍賢達の気持ちじゃない。」
「……何?」
首を傾げるイースに鯉昇は言う。
「あの子の気持ちを、お前は汲んでいるのか?」
「ッ」
鯉昇の問いにイースが詰まる。
「確かに、生きてて欲しいと思うのが親だ。だがよ、子の願いを汲んでやるのも親だろう。」
「……シズクはまだ幼いから、分からないのだ。」
「いや、あの子はちゃんと分かってるよ。分かってるからお前達から離れたんだろ。」
「………!」
イースを鯉昇は真正面から睨みつける。だが、その睨みを鯉昇は見つめ返して諭すように言う。
「目を覚ませよ。ホントはお前も分かってんだろ。」
「……分かったような口を聞くな!!」
イースはそう言うと光弾を発射して鯉昇を吹っ飛ばす。吹っ飛ばされて倒れる鯉昇にイースは息を荒くさせながら。
「ならば……!貴様にも味わせてやる!子を失う辛さを!怒りを!虚無を!」
そう言うとイースは飛び上がって塔の上へと消える。
「痛ぁ……!あの分からず屋……!」
痛む身体を押さえながら鯉昇もイースを追いかけて塔を登り始めた。
「どぁっ!?」
イースが振るう拳が鯉昇を殴り飛ばす。地面を転がる鯉昇だが、すぐに立ち上がって構える。その様子を見てイースは呆れたように呟く。
「……無駄にタフだな。」
「頑丈さだけは昔からの取り柄でね……!」
ふらふらと覚束ない足取り、血が滲む口元を拭いながらそう言う鯉昇にイースは尋ねる。
「……言ったハズだ。貴様も親ならば、私の気持ちが分かるだろう?」
イースはそう言って鯉昇との距離を一瞬で詰めると拳を繰り出す。
「シズクは私の宝だった!!希望だったんだ!それを突然失った!」
イースの攻撃に鯉昇はまたも地面に倒れる。
「娘を失った私の想いが!悲しみが!何もない虚無が!」
イースの悲痛な叫びを聞きながら、鯉昇はゆっくり立ち上がる。
「……そりゃ、まぁ。お前の気持ちは分かるよ。俺も龍賢や龍香がいなくなったら、と思うと想像出来ない位辛くなるってのは分かる。親なら何をしてでも子に生きてほしいって思うだろうな。」
「ならば!私の邪魔をしないで貰おうか!」
「けどよ。そいつは俺の気持ちだ。龍賢達の気持ちじゃない。」
「……何?」
首を傾げるイースに鯉昇は言う。
「あの子の気持ちを、お前は汲んでいるのか?」
「ッ」
鯉昇の問いにイースが詰まる。
「確かに、生きてて欲しいと思うのが親だ。だがよ、子の願いを汲んでやるのも親だろう。」
「……シズクはまだ幼いから、分からないのだ。」
「いや、あの子はちゃんと分かってるよ。分かってるからお前達から離れたんだろ。」
「………!」
イースを鯉昇は真正面から睨みつける。だが、その睨みを鯉昇は見つめ返して諭すように言う。
「目を覚ませよ。ホントはお前も分かってんだろ。」
「……分かったような口を聞くな!!」
イースはそう言うと光弾を発射して鯉昇を吹っ飛ばす。吹っ飛ばされて倒れる鯉昇にイースは息を荒くさせながら。
「ならば……!貴様にも味わせてやる!子を失う辛さを!怒りを!虚無を!」
そう言うとイースは飛び上がって塔の上へと消える。
「痛ぁ……!あの分からず屋……!」
痛む身体を押さえながら鯉昇もイースを追いかけて塔を登り始めた。
「……私が生き返るのに世界が滅びたら、意味がない。」
シズクは二人を睨みながら声を絞り出す。
「分からねぇなぁ。世界がどうなろうが、生きていればそれだけで儲けもんだろ?」
ブレスがため息まじりに言う。
「仮に私が生き返って世界が滅びたら、大勢の人が死ぬわ。それは沢山の私を、お父さんを生むだけ。私は、生きていた世界が好き。その世界で生きていた友達も好き!世界や他の人の命を奪ってまで生き返りたくない!」
「あっ、そ。別にお前がどう思おうが俺達はやることをやるだけだ。」
「そうザマス。アイツから時空の秘術を学ぶために、お前を生き返らせないといけないザマスからねぇ。」
どうやらこれ以上の押し問答は面倒だと感じた二人が殺気を持って三人に各々の武器を向ける。
だがそんな二人を前にして、龍那がシズクと龍香の前に庇うように立つ。
「龍那さん?」
「お母さん?」
「……シズクちゃん。あなたの想い、分かったわ。龍香、シズクちゃんを頼むわよ。」
龍那はそう微笑むと、迫る二人を見据える。そんな彼女を見て二人はふっふっと笑う。
「あらあら、一般人が私達に勝てると思ってるザマスかぁ?」
女郎蜘蛛は鈍く輝く鋭い脚をチラつかせながら、龍那を脅す。しかしそれで龍那が怯むことはない。
「確かに。私じゃ貴方達に勝てないかもしれない。でもね。一つ覚えておきなさい。」
龍那は二人を睨みつけ言った。
「子を守る時の親は、強いわよ。それが子供のしたいことを手助けする時なら、尚更。」
「言いたいことはそれだけか!」
そう言うと女郎蜘蛛は背中の脚を龍那目がけて放つ。放たれた鋭い突きは一寸の迷いも無く龍那の心臓めがけて飛んでいく。
それが見えた龍香は祈るように叫んだ。
「カノープスッ!!」
龍香が叫ぶと、龍那の目の前に紫色の光が現れる。それは徐々に紫色の恐竜の形になり、女郎蜘蛛の攻撃を弾くとパクリ、と龍那が食べられる。
「た、食べられた!?」
シズクが驚くと、恐竜はひび割れて完全に砕け散る。そこには紫と黒のドレスに恐竜の頭蓋骨を模したような装甲を身に纏った龍那の姿があった。
「……あれ?」
《待たせたな龍……あれ?》
カノープスは何故か目の前にいる龍香を見てキョトンとする。一方の龍香は何故か母が変身していることにびっくりしていた。
「……あら?えっ、何この格好?」
しかし一番キョトンとしているのは龍那だった。何の前触れもなくいきなり変身させられたのだから当然と言えば当然だが。
《え!?って言うか龍那!?なんで!?》
ようやく現状が読み込めたのか、驚くカノープス。龍那は勝手に頭に付いているカノープスを取り外すと目の前に持ってくる。
「あら?私を知ってるの?」
《え?あ、うん。いや、知っているというか……》
カノープスが言葉を濁していると後ろからブレスと女郎蜘蛛が龍那に襲い掛かる。
「なんだか知らないけど!」
「さっさと始末させて貰うザマス!」
二人の襲撃に気づいた龍那はすぐに腰にかけてある6本の刀の内二本を取ると、それを振るって二人の攻撃を受け止める。
「なっ」
「ふっ!!」
そして一息入れるとブレスを蹴り上げて仰け反らせ、女郎蜘蛛の脚に乗って一気に距離を詰める。
「はァッ!?」
女郎蜘蛛が残りの脚で攻撃を仕掛けるが龍那はそれを跳んでかわすと刀を女郎蜘蛛に投げつける。
「ぐっ!」
女郎蜘蛛がそれをかわそうと右に避けた瞬間、目の前に龍那が広がる。
「たぁっ!!」
「ぐぶぅえっ!?」
さらに拳が女郎蜘蛛に炸裂し、女郎蜘蛛は壁に叩きつけられて倒れる。
「ふぅ。いきなりでビックリしたけど、意外と何とかなるもんね…。」
「あ、あなたのお母さんかなり強いのね…。」
「い、いや。こんな強いなんて今初めて知った……。」
二人が龍那の強さに唖然としていると、龍那に向けて女郎蜘蛛が脚を伸ばす。
「っ!」
龍那はすぐさま刀で防御するが、一瞬動きが止まる。その一瞬の隙を逃さず、ブレスが龍香達に襲いかかる。
「まずはガキどもからだ!!」
「シズクちゃん!危ない!」
二人はもつれ合うように転んで、ブレスの攻撃を何とか避ける。
しかしブレスは龍香達の目の前に立ちはだかり、尻尾を目の前で叩きつける。
「死ね!!」
ブレスの殺気は凄まじく、龍香は一瞬怯むがそれと同時にシズクを守らなくては、せめて一矢報いようという気持ちが湧き上がる。
「こ、のー!!」
龍香はそう叫ぶとガブリとブレスに噛み付く。それと同時に龍香は目を見開き、ブレスがニヤリと笑う。
「ははははっ!バカめ!よりによって私に噛み付くなんてな!私は、ドラゴン・ブレス!!唐辛子のリビングスイーツだ!お前みたいな一般人が私に触れるどころか噛み付けばどうなるか、その身を持って思い知れ!」
「龍香!」
シズクが悲痛な声を上げる。龍香は黙ってそのまま噛み付いており、何回か確かめるように口をモグモグさせる。
「……い」
「はぁ?声も出せないくらい喉がやられたか?」
「…おいしい。」
「「…………は?」」
ブレスとシズクが龍香の言葉に間の抜けた声を出す。しかし龍香は目を輝かせるとまたガブリと噛み付く。
「美味しい!美味しい!」
「は?ちょっと待て常人なら近付くだけで悶絶するんだぞ!?や、おいホント待てぎゃあああめっちゃ齧られてる!!」
一心不乱に尻尾を齧られて慌てるブレス。尻尾に食らいつく龍香にブレスが気を取られていると、どうやら女郎蜘蛛の攻撃を全て捌き切った龍那が慌てた様子で思い切りブレスを蹴り飛ばす。
「どぁ!?」
そして龍香の肩に手を添えて真剣な様子で叫ぶ。
「龍香!?ばっちぃからぺっ!しなさいぺっ!」
「いや、でも……」
「でもじゃないの!」
口の周りを真っ赤に染めて、少し名残惜しそうにしながらも龍香は龍那に従う。
「もう、口をこんなに汚しちゃって……」
服の裾で龍香の口の周りを拭う龍那。そのことにちょっと嫌そうな顔をしながらもカノープスは唖然とした様子で呟く。
《おいおい……どうなってんだ?俺は龍香を辿って来たつもりなのに…?》
「いや、これには深いわけが……」
なんてやり取りをしていると、シズクがハッと我に帰り、ペンダントを持って操作盤へと走り出す。
「させるか!!」
「こっちのセリフよ!」
何とか体勢を立て直した二人がシズクを止めようも駆け出すが、そうはさせじと龍那が立ちはだかる。
「行きなさいシズクちゃん!」
「……!ありがとう!」
龍那が足止めし、龍香がどうしようかと考えあぐねていると。
「龍香ちゃん危なーい!!」
「へっ?うわっ!?」
屋上への出入り口から飛び出したきゅーばんが倒れ込むと同時に青い舌が龍香に飛んでくる。
何とかそれを避けるが、入り口からあの猟犬が躙り寄る。
「ご、ごめんね龍香ちゃん。も、もう限界!」
「きゅーばんちゃん…!」
流石に避け続けるには体力の消耗が激し過ぎたようで、きゅーばんちゃんも肩で息をする。
どうしたものか、龍香が猟犬の動きを注意深く観察している時だった。
猟犬がいる床をぶち抜いて二人の影が飛び出す。それはミカエルと首なしライダーの二人だった。突然の出来事に猟犬はビックリしながら吹き飛ばされる。
「てぇやっ!!」
ミカエルが空中で首なしライダーを蹴り飛ばすと追い打ちの光弾を発射する。
「!」
しかし、ライダーが焔の右腕を翳すと光弾はグニャリと捻じ曲がってあらぬ方向へ飛んでゆく。
「くそーっ!やっぱ厄介だなあの炎!」
ミカエルが歯噛みする。きゅーばんちゃんと龍香が一旦危機を逃れてホッとしたと思ったその時。
塔の上空から殺気を感じる。龍香が顔を上げるとそこには今にも光弾を発射しようと構えるイースがいた。
「イース!!」
「貴様らも、思い知るがいい!!」
そう言ってイースは龍香ときゅーばんちゃんに光弾を放つ。きゅーばんちゃんは女児符号を使い、技を見切って避けようとするが既に体力が限界なのか動けない。
龍香も突然のことに咄嗟に反応出来ず、立ち尽くしてしまう。
「龍香!!」
龍那の悲痛な叫びが響く。あわやその光弾が龍香に直撃せんとしたその時。
「おいおい!誰か忘れちゃあいないか!?」
そう叫びながら入り口から一人の傷だらけの男性……鯉昇が飛び出すと龍香ときゅーばんちゃんを抱える。
「こっちには無敵のパパがいることをな!」
「何!?」
「お父さん!?」
鯉昇はそのまま走り出し、光弾をかわす。
「だ、大丈夫なの!?」
鯉昇は二人を抱えて走るが、その身体はボロボロ、足元は震えており、さらには息も荒い。
しかし鯉昇は笑みを浮かべると。
「心配するな龍香!それに、龍香達が頑張ってるのに俺が寝てちゃいかんだろう!?」
「きっさまぁぁぁぁぁ!!」
その姿に激昂したイースが光弾を放とうとした瞬間、気づく。カチカチと何かを操作しながらこの祭壇を破壊しようとするシズクに。
「や、やめろシズク!!お前は、俺の希望なんだ!生きていて欲しい!子供に生きて欲しいと願ってるんだぞ!?」
「……その気持ちは嬉しいよ。お父さん。でも私もお父さんを想う気持ちは一緒。私のために、お父さんを人殺しになんてさせない!!」
焦るイースにシズクは涙を浮かべてそう決意をつけたように、諭すように微笑みかける。
その表情に何を感じたのか。イースは一瞬、止まってしまった。
その一瞬、ほんの一瞬が運命を分けた。シズクがペンダントを押し込んだ瞬間、装置が、祭壇が光始める。
そしてゴゴゴという音と共に崩壊を始める。
「し、シズク!!」
イースが慌ててシズクに駆け寄るが、シズクの身体が徐々に白い光に包まれて、粒子となって溶けていく。
「これでいいの。お父さん。これで。」
「シ、シズク……私は……!」
狼狽するイースの顔にシズクは手を添えると、顔を近づけてその頬に優しく口づけする。
「ありがとう。私のために。でも、私は望んでないの。私が望むのはお父さんの……」
シズクが何かを呟く。その言葉を聞いたイースは目を見開く。それと同時にシズクの身体は崩れて完全に粒子となり、空へと昇っていく。
「おいおいどうなってんだ!?」
「よく分かんないけどマズイことになってるザマス!?」
「……!」
女郎蜘蛛達も崩壊する祭壇を見て状況が不利と見たか、龍香達への攻撃を止めて、様子見に徹している。
「シズクちゃん……」
会って間もない少女の消滅にきゅーばんちゃんと龍香が呆然としていると、その足元にコロンと青いペンダントが転がって来る。
きゅーばんちゃんがそれを拾い上げると一旦休戦状態ということでミカエルと龍那が戻ってくる。
「シズクがやってくれたのか!?」
「うん。……そうみたい。」
ミカエルときゅーばんちゃんがそう話す一方、龍那はギュッと鯉昇を抱き締める。
「流石だわ鯉昇さん!龍香達を助けるとこ、カッコ良かったわよ!」
「あ、あぁ。ありがとうママ。と言うか、それよりその格好が気になるんだけど……」
鯉昇は龍那の服装に目を落とす。そのことに気づいた龍那は軽く回って、服をひけらかせる。
「え?これ?良いでしょ?昔見た漫画の魔法使いみたいでしょ?このペンダントの子がやってくれたのよ?」
「う、うん?……え?おもちゃ?」
《……おもちゃじゃねえ。》
「うわ喋った!?」
そう鯉昇が興味深そうに見ていると、龍那の変身が解かれて龍香の頭にカノープスは戻る。
「あ、消えちゃった。」
「お帰り、カノープス。」
《……あぁ。どうやら迷惑かけたみたいだな。悪い。》
「ううん。大丈夫。……それより、カノープスどうしたの?なんか歯切れが悪いけど。」
《……なんでもねぇよ。》
龍香とカノープスがそう会話をしている時だった。今度は龍香、ミカエル、きゅーばんちゃんの身体が光となって消えていく。
「あ、あれ!?か、身体が!」
「もしかして、祭壇壊したから私達が元いた時代に戻るのかな?」
二人がそう推察する中、龍香は少し気まずそうにして何かを言い淀む。話すべきか、話さないべきか。そう悩んでいるとカノープスが話しかけてくる。
《……言いたいことは言っとけ。今以外にチャンスはない。》
カノープスの言葉に龍香はうん、と頷くと鯉昇と龍那に向き直る。
「あ、あの!」
「何かしら?」
「わ、私、実は未来から来た、貴方達の娘なんです!!」
勇気を出して龍香がそう言うと、二人は顔を見合わせてポカンとした顔をした後龍香に言う。
「「え?知ってたよ(わよ)?」」
「……へ?」
逆に今度は龍香がポカンとする中、二人は屈んで龍香と目線を合わせる。そして龍香の頭にポンっと鯉昇が手をやる。
「だってこんなにもママにそっくりで。俺達の名前を聞いたら狼狽えちゃってたから何かあるなー、とは思ったよ。」
「そ。なんとなーく分かっちゃうものなのよ。」
二人はそう言って微笑む。そして鯉昇が尋ねる。
「けど、多分反応を見るに俺とママのこと、あんまり知らないんだろう?」
「……それは、その」
「……うーん。せめて龍香が結婚……いや、それは見たいような見たくないような……まぁ、そんくらいまでは生きてやりたかったけどなぁ。」
鯉昇が少し寂しそうに言う。しかしそうする間にも龍香の身体はドンドン消えていく。それを見た二人は。
「あまり時間がないようだから一つずつ龍香に言わせて貰うか。俺からで良いかい?」
「ええ。どうぞ。」
「龍香。こんな事言うのもアレだが、過去を否定しないでくれ。」
「え?」
「多分今まで忘れたい位辛い事、悲しい事があったと思うし、これからもしていくと思う。けど、前を向いて歩いていればそれ以上に楽しいことがあったハズだ。それは今の龍香を見ていれば分かる。沢山の出来事や出会いがあったんだろう。それは必ずかけがえのないお前の宝になる。時には回り道をしたっていい。立ち止まったって良い。しっかり前をむいて歩いていくんだぞ。龍香。」
「……うん。」
龍香がコクリと頷くと、鯉昇は微笑んで髪をわしゃわしゃさせながら撫でる。
そして今度は龍那が優しく語りかける。
「龍香。これだけは忘れないで。私達はずっと貴方達を愛して、見守っているわ。未来で龍賢によろしくね。」
そう言うと龍那は龍香に額に優しく口づけをする。そして微笑む二人を見て、龍香の中で何かが堰を切ったように溢れて、気づくと涙ぐみながら、龍香は喋り出していた。
「私は…私は!私は元気でやってるから!友達も沢山出来たの!かおりに雪花ちゃんに藤正君、学校の皆、黒鳥さん、赤羽さんや“新月”の皆、お兄ちゃんとばぁやもいるし、龍斗お兄ちゃんとも色々あったけど仲直りしたし、それにご飯だってちゃんと食べてるから!私、辛いのが好きで、特に……竹田さんの拉麺は辛くて、美味しくて……お父さんとお母さんにも……!」
そこまで言うと、龍香はもう嗚咽しか出せなくなっていた。肩を震わせて泣く龍香の涙を二人は拭うときゅーばんちゃんとミカエルに言う。
「この子のこと!よろしく頼むわ!」
「……あぁ!」
「はい。」
二人の返事を聞き、二人は龍香の肩に手を置いて言う。
「「行ってらっしゃい。龍香。」」
「うん……行ってきます。」
二人の顔が、世界が滲んで霞むように消える。そして三人の視界が一瞬白に包まれると、三人は採石場のような場所に座っていた。
「……戻ってきた?」
きゅーばんちゃんが携帯を確認すると、通信アンテナがちゃんと伸びており、時間が正確に動き始めているのが分かる。
「も、戻ったぞー!!やったーっ!」
「は、はわわわ…」
ミカエルが嬉しそうに喜んできゅーばんちゃんを抱えてぐるぐる回る。
龍香は少し俯いていたが、すぐに目元拭うと顔を上げる。
《大丈夫か?》
「うん。……スッキリしたから。」
龍香がそう答えると、カノープスはそうか、とだけ短く言う。
そしてどうやら現代に戻ったのは、龍香達だけでなく、イース達も戻っていた。しかし目の前で計画が破綻したのを見た女郎蜘蛛達は焦った様子で。
「お、おいイース。どうするザマスか?」
「こりゃあご破産って奴か…?」
「……」
と膝をつき地面を見つめるイースに話しかけたその時。イースがボソリも呟く。
「……い。」
「?」
「認めない。認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない!!シズクがいない世界に何の意味がある!!価値がある!?私は、私はァァァァァァァ!!」
イースが激昂すると、背後の空間が割れ玉虫色の空間が広がったかと思うとそこから落とし子を始めとした様々な怪物達がその姿を現す。
「げっ、今まで私達が倒してきた怪獣まで!?」
「シードゥス達まで…!」
ミカエルと龍香が焦燥に駆られる。一体一体ならともかくこの数を相手にするのは流石に無理がある。
龍香が変身出来る様になったとは言え、ミカエルのカラータイマーは鳴り始めており、きゅーばんちゃんもボロボロだ。
「私の計画を潰した貴様らは許さない!!この場で始末してくれるぅ!!」
そうイースが叫ぶと怪物達が怒号を上げながら三人に走ってくる。
万事休す。どうやってこの場をやり過ごすか、龍香が思案していると。
後ろからミサイルや様々な光線が飛んでいき、怪物達の先頭の集団を一掃する。
「何!?」
「な、なんだなんだ!?」
突然の介入に全員が何事かと慌てて攻撃が飛んできた方を見る。そこにいたのは。
「お待たせ!龍香ちゃん!きゅーばんちゃん!」
「愛歩ちゃん!」
「全く心配をかけるな君は。」
「滅茶苦茶心配しましたのよ!?」
「ははっ、わりぃわりぃ。」
愛歩とウリエル、ラファエルが二人に駆け寄る。そのままラファエルは自身の能力でミカエルを回復させるとミカエルのカラータイマーが青い輝きを取り戻す。
そして、龍香の元に雪花が来る。雪花は龍香に近づくと軽く小突く。
「全く、勝手に消えたと思ったら今度は怪獣大軍団を連れてくるとはね。」
「ご、ごめん。」
龍香が凄い申し訳なさそうな顔をすると、雪花はフッと笑うと。
「いいわ。今回は無事に帰ってきただけでも褒めてあげる。さっさとアイツ片付けて帰るわよ。」
「うん!」
雪花はそう言うと銃を構え、龍香もそれに続くように変身し、ティラノカラーへと姿を変える。
「たかが七人で何が出来るぅ!」
イースがそう言うと、雪花はニヤリと笑う。
「誰が七人だけだって言ったかしら?」
「行けぇ!貴様ら!」
イースが号令をかけると、またも怪物軍団が襲いかかってくる。
「お前らは!ここで殺してやるザマス!」
「アンタ達には好き放題されたからねぇ!」
女郎蜘蛛とブレスが先陣を切って七人に襲いかかろうとした瞬間。上空から黒い影と白い影が二人を止める。
「また邪魔をするザマスか猫ォォッ!」
「トーゼン!やられっぱなしは性に合わないんでのお!」
「チッ!?またテメェか!?」
「リターンマッチ、ってとこかしら。」
のじゃロリ猫、エフィが二人を抑えて道を開く。
「のじゃちゃん!エフィちゃん!」
「ありがとう!」
二人に礼を言うと七人は進む。今度は怪獣達を引き連れ、首なしライダーが迫る。
「ここは私達に任せろ!」
「他の方は先に!」
「一度倒した相手など!」
ウルトラガールの三人が首なしライダーと怪獣達に立ち向かっていく。しかし何体かは三人を無視して龍香達を狙う。龍香達が迎え撃とうとすると。
「ライトレコード、セット。スペシウムシュート!!」
その声と共に放たれた光線が怪獣達を一掃する。
「この光線…」
「ジブリール!」
「お待たせしました!」
水色の髪の天使、ジブリールがガブリールホンを持って三人に合流する。
「いよぉし、四人なら敵なしだぁ!」
「!」
そう言うと四人と首なしライダー達が激突する。
四人がさらに進むと、目の前にバカデカい50mはあろうかという怪物2体と落とし子が立ちはだかる。
「キライ〜!!」
「何よこのデカブツ〜!?」
奇怪な雄叫びをあげながら迫る怪物達に龍香達が狼狽えた瞬間。さらには後ろから声がする。
「ちょぉっと待った〜!」
その声と共に二人の人影が怪物を蹴り飛ばす。
「今度は何!?」
蹴り飛ばした二人の人影はくるくると回転しながら綺麗に着地する。そこにいたのはまるで絵本から出てきた魔法少女のようにキュートなドレスをした二人の女児だった。
「輝きの使者、ピュアゴダイ!」
「輝きの使者、ピュアテンゴウ!」
「「私達、ジョジピュア!!」」
二人の少女はそう叫ぶと怪物に向けて構える。
「古代さん!天降さん!」
「そこの青い髪の子に頼まれてね。来ちゃったわ!」
「奇雷獣は私達に任せて!」
そう言うと二人は怪物…奇雷獣に向かって飛び上がる。今度は落とし子が四人の前に立ちはだかり、叩き潰そうと拳を振り上げる。
「おぉっと!ウチもおるでー!!」
そう言うと巨大な白髪をポニーテールにし、赤いセーラー服に蟹のアクセサリーをつけた少女が落とし子を殴り飛ばす。
「お前……!」
「むらサメちゃん!」
「おう!愛歩に藍!待たせたなぁ!ウチも力を貸すでぇ!見とき、こんなタコ速攻叩き潰してタコ焼きにしたる!」
そう言うとむらサメは落とし子と取っ組み合う。
「任せたわよ!」
雪花はそう言うと他の三人と一緒に前に進む。すると今度は再生したシードゥス達が立ちはだかる。
「シードゥス相手なら私に任せなさい!」
雪花が“マタンII”を引き抜き、シードゥス達を切り伏せて行く。龍香も襲い掛かるシードゥス達から愛歩ときゅーばんちゃんを守るために“タイラントアックス”を振るう。
しかし数の多さは圧倒的で、龍香達が防戦一方になりかけた瞬間。
ボゥと天から放たれた豪炎がシードゥス達を焼き払う。
「!この炎は……!」
龍香が空を見上げると、そこには炎の翼をはためかせる赤い少女……アルタイルがいた。
「アルタイルちゃん!」
「苦戦しているみたいね。そこの青い子に言われたから来てあげたけど……邪魔だったかしら?」
「ううん!助かった!」
龍香がそう答えると、アルタイルは龍香達の隣に降り立つ。
「行って。ここは私とそこの白いのがいたら充分だと思うから。」
「白いのと何よこの焼き鳥!」
「は?」
「あ?」
「こ、ここは任せたよ!二人とも仲良くしてね!」
何故か目線から火花を散らす二人にそう言うと三人はさらに前へと進む。そしてとうとうイースの姿が見えて来る。
「もう少し…!」
三人がそろそろ到達する、と思った瞬間何処からともなく飛んできた青い線がきゅーばんちゃんを捕らえる。
「きゃっ」
「きゅーばんちゃん!?」
見ればその線……というより舌の先にはあの悪臭漂う猟犬がおり、その後ろから魑魅魍魎の化け物達が空間から滲むように這い出て来る。
「コイツ!」
龍香が慌ててその舌を切断しようとすると、魍魎の一体が龍香に襲い掛かって邪魔をする。
「うわっ!?」
龍香はすぐに引き剥がして地面に叩きつけると思い切り踏みつけるがその間にも猟犬は舌を巻き取り、きゅーばんちゃんを引き摺り込もうとする。
「危ない!」
「愛歩ちゃん!」
愛歩が引き摺られるきゅーばんちゃんの手を取って耐えようとするが、力の差は圧倒的ですぐに二人とも引き摺られる。
そんな二人を助けようと龍香が駆け寄ろうとしたその瞬間だった。
「邪気よ鎮まれ……流動!」
次の瞬間水流のような光が魑魅魍魎達を洗い流す。さしもの猟犬もこれは効いたのかきゅーばんちゃんから舌を離して悲鳴をあげながらそのまま地面に転がる。
「この光…!」
きゅーばんちゃんが目を輝かせると、ザッと一人の少女が隣に立つ。
「待たせたな、我がシュヴェスター。怪我はないか?」
「お姉ちゃん!うん、大丈夫。」
きゅーばんちゃんのお姉さんことエルフがその場に立っていた。
エルフはきゅーばんの様子を見てホッとしたように微笑むと、光の不意打ちから体勢を立て直した猟犬を睨みつける。
「私のシュヴェスターが随分と世話になったみたいだな。お礼は……この私がたっぷりと返させてもらう!」
エルフが目に手を当てて構える。すると何体かの魑魅魍魎がエルフに向けて駆け出す。
エルフがそれに照準を向けた瞬間、何処からともなく飛んできた針が魑魅魍魎達に突き刺さる。そして爆発。
それと同時にスタッと一人の少女……赤羽が降り立つ。
「赤羽さん!」
「次から次へと……アナタといるとホントに退屈しないわね。」
赤羽がそう言って刀を構える。そして目の前の敵を睨みつけるが、何かを感じ取ったのか急に顔を顰める。
「どうしたんですか?」
「……この娘、何?」
赤羽が隣にいる……何故か目を輝かせるエルフを指差す。エルフは目を輝かせながら、赤羽の右眼に付いている三つの目を組み合わせたかのような造形の“サダルメリクの瞳”を見ながら赤羽に尋ねる。
「……そ、その右目は……?」
「……何?“サダルメリクの瞳”が気になる訳?」
赤羽がそう言うとエルフは益々嬉しそうな顔をして眼に手を添えてカッコつける。
「そうか!なら君も選ばれし聖眼使いという訳か!フフ!通りで君を見た時からこの眼が疼く訳だ…!」
「ねぇもしかして私この娘に同類と思われてる?」
「お、お姉ちゃん……」
きゅーばんちゃんが若干引くが、同族を見つけたエルフのテンションは爆上がりのようで。
「フッ!奴らに奏でてやろう!選ばれし聖眼使いのデュエットから織りなすレクイエムを!」
「クッソ、すっごく一緒にしてほしくないけど取り敢えずここは私達が抑えるから行きなさい!」
「は、はい!」
龍香が答えて駆け出そうとすると、愛歩が龍香を呼び止める。
「龍香ちゃん!」
「何?」
愛歩はグッと拳を握って前に出すと。
「頑張って!」
きゅーばんちゃんもコクリと頷くと龍香に青いペンダント……今となってはシズクの形見を手渡す。
「シズクちゃんの分も。よろしくね。」
二人にそう言われて、龍香は…力強く頷いてペンダントを受け取ると二人に背を向けながら走り出す。
「任せて!!」
シズクは二人を睨みながら声を絞り出す。
「分からねぇなぁ。世界がどうなろうが、生きていればそれだけで儲けもんだろ?」
ブレスがため息まじりに言う。
「仮に私が生き返って世界が滅びたら、大勢の人が死ぬわ。それは沢山の私を、お父さんを生むだけ。私は、生きていた世界が好き。その世界で生きていた友達も好き!世界や他の人の命を奪ってまで生き返りたくない!」
「あっ、そ。別にお前がどう思おうが俺達はやることをやるだけだ。」
「そうザマス。アイツから時空の秘術を学ぶために、お前を生き返らせないといけないザマスからねぇ。」
どうやらこれ以上の押し問答は面倒だと感じた二人が殺気を持って三人に各々の武器を向ける。
だがそんな二人を前にして、龍那がシズクと龍香の前に庇うように立つ。
「龍那さん?」
「お母さん?」
「……シズクちゃん。あなたの想い、分かったわ。龍香、シズクちゃんを頼むわよ。」
龍那はそう微笑むと、迫る二人を見据える。そんな彼女を見て二人はふっふっと笑う。
「あらあら、一般人が私達に勝てると思ってるザマスかぁ?」
女郎蜘蛛は鈍く輝く鋭い脚をチラつかせながら、龍那を脅す。しかしそれで龍那が怯むことはない。
「確かに。私じゃ貴方達に勝てないかもしれない。でもね。一つ覚えておきなさい。」
龍那は二人を睨みつけ言った。
「子を守る時の親は、強いわよ。それが子供のしたいことを手助けする時なら、尚更。」
「言いたいことはそれだけか!」
そう言うと女郎蜘蛛は背中の脚を龍那目がけて放つ。放たれた鋭い突きは一寸の迷いも無く龍那の心臓めがけて飛んでいく。
それが見えた龍香は祈るように叫んだ。
「カノープスッ!!」
龍香が叫ぶと、龍那の目の前に紫色の光が現れる。それは徐々に紫色の恐竜の形になり、女郎蜘蛛の攻撃を弾くとパクリ、と龍那が食べられる。
「た、食べられた!?」
シズクが驚くと、恐竜はひび割れて完全に砕け散る。そこには紫と黒のドレスに恐竜の頭蓋骨を模したような装甲を身に纏った龍那の姿があった。
「……あれ?」
《待たせたな龍……あれ?》
カノープスは何故か目の前にいる龍香を見てキョトンとする。一方の龍香は何故か母が変身していることにびっくりしていた。
「……あら?えっ、何この格好?」
しかし一番キョトンとしているのは龍那だった。何の前触れもなくいきなり変身させられたのだから当然と言えば当然だが。
《え!?って言うか龍那!?なんで!?》
ようやく現状が読み込めたのか、驚くカノープス。龍那は勝手に頭に付いているカノープスを取り外すと目の前に持ってくる。
「あら?私を知ってるの?」
《え?あ、うん。いや、知っているというか……》
カノープスが言葉を濁していると後ろからブレスと女郎蜘蛛が龍那に襲い掛かる。
「なんだか知らないけど!」
「さっさと始末させて貰うザマス!」
二人の襲撃に気づいた龍那はすぐに腰にかけてある6本の刀の内二本を取ると、それを振るって二人の攻撃を受け止める。
「なっ」
「ふっ!!」
そして一息入れるとブレスを蹴り上げて仰け反らせ、女郎蜘蛛の脚に乗って一気に距離を詰める。
「はァッ!?」
女郎蜘蛛が残りの脚で攻撃を仕掛けるが龍那はそれを跳んでかわすと刀を女郎蜘蛛に投げつける。
「ぐっ!」
女郎蜘蛛がそれをかわそうと右に避けた瞬間、目の前に龍那が広がる。
「たぁっ!!」
「ぐぶぅえっ!?」
さらに拳が女郎蜘蛛に炸裂し、女郎蜘蛛は壁に叩きつけられて倒れる。
「ふぅ。いきなりでビックリしたけど、意外と何とかなるもんね…。」
「あ、あなたのお母さんかなり強いのね…。」
「い、いや。こんな強いなんて今初めて知った……。」
二人が龍那の強さに唖然としていると、龍那に向けて女郎蜘蛛が脚を伸ばす。
「っ!」
龍那はすぐさま刀で防御するが、一瞬動きが止まる。その一瞬の隙を逃さず、ブレスが龍香達に襲いかかる。
「まずはガキどもからだ!!」
「シズクちゃん!危ない!」
二人はもつれ合うように転んで、ブレスの攻撃を何とか避ける。
しかしブレスは龍香達の目の前に立ちはだかり、尻尾を目の前で叩きつける。
「死ね!!」
ブレスの殺気は凄まじく、龍香は一瞬怯むがそれと同時にシズクを守らなくては、せめて一矢報いようという気持ちが湧き上がる。
「こ、のー!!」
龍香はそう叫ぶとガブリとブレスに噛み付く。それと同時に龍香は目を見開き、ブレスがニヤリと笑う。
「ははははっ!バカめ!よりによって私に噛み付くなんてな!私は、ドラゴン・ブレス!!唐辛子のリビングスイーツだ!お前みたいな一般人が私に触れるどころか噛み付けばどうなるか、その身を持って思い知れ!」
「龍香!」
シズクが悲痛な声を上げる。龍香は黙ってそのまま噛み付いており、何回か確かめるように口をモグモグさせる。
「……い」
「はぁ?声も出せないくらい喉がやられたか?」
「…おいしい。」
「「…………は?」」
ブレスとシズクが龍香の言葉に間の抜けた声を出す。しかし龍香は目を輝かせるとまたガブリと噛み付く。
「美味しい!美味しい!」
「は?ちょっと待て常人なら近付くだけで悶絶するんだぞ!?や、おいホント待てぎゃあああめっちゃ齧られてる!!」
一心不乱に尻尾を齧られて慌てるブレス。尻尾に食らいつく龍香にブレスが気を取られていると、どうやら女郎蜘蛛の攻撃を全て捌き切った龍那が慌てた様子で思い切りブレスを蹴り飛ばす。
「どぁ!?」
そして龍香の肩に手を添えて真剣な様子で叫ぶ。
「龍香!?ばっちぃからぺっ!しなさいぺっ!」
「いや、でも……」
「でもじゃないの!」
口の周りを真っ赤に染めて、少し名残惜しそうにしながらも龍香は龍那に従う。
「もう、口をこんなに汚しちゃって……」
服の裾で龍香の口の周りを拭う龍那。そのことにちょっと嫌そうな顔をしながらもカノープスは唖然とした様子で呟く。
《おいおい……どうなってんだ?俺は龍香を辿って来たつもりなのに…?》
「いや、これには深いわけが……」
なんてやり取りをしていると、シズクがハッと我に帰り、ペンダントを持って操作盤へと走り出す。
「させるか!!」
「こっちのセリフよ!」
何とか体勢を立て直した二人がシズクを止めようも駆け出すが、そうはさせじと龍那が立ちはだかる。
「行きなさいシズクちゃん!」
「……!ありがとう!」
龍那が足止めし、龍香がどうしようかと考えあぐねていると。
「龍香ちゃん危なーい!!」
「へっ?うわっ!?」
屋上への出入り口から飛び出したきゅーばんが倒れ込むと同時に青い舌が龍香に飛んでくる。
何とかそれを避けるが、入り口からあの猟犬が躙り寄る。
「ご、ごめんね龍香ちゃん。も、もう限界!」
「きゅーばんちゃん…!」
流石に避け続けるには体力の消耗が激し過ぎたようで、きゅーばんちゃんも肩で息をする。
どうしたものか、龍香が猟犬の動きを注意深く観察している時だった。
猟犬がいる床をぶち抜いて二人の影が飛び出す。それはミカエルと首なしライダーの二人だった。突然の出来事に猟犬はビックリしながら吹き飛ばされる。
「てぇやっ!!」
ミカエルが空中で首なしライダーを蹴り飛ばすと追い打ちの光弾を発射する。
「!」
しかし、ライダーが焔の右腕を翳すと光弾はグニャリと捻じ曲がってあらぬ方向へ飛んでゆく。
「くそーっ!やっぱ厄介だなあの炎!」
ミカエルが歯噛みする。きゅーばんちゃんと龍香が一旦危機を逃れてホッとしたと思ったその時。
塔の上空から殺気を感じる。龍香が顔を上げるとそこには今にも光弾を発射しようと構えるイースがいた。
「イース!!」
「貴様らも、思い知るがいい!!」
そう言ってイースは龍香ときゅーばんちゃんに光弾を放つ。きゅーばんちゃんは女児符号を使い、技を見切って避けようとするが既に体力が限界なのか動けない。
龍香も突然のことに咄嗟に反応出来ず、立ち尽くしてしまう。
「龍香!!」
龍那の悲痛な叫びが響く。あわやその光弾が龍香に直撃せんとしたその時。
「おいおい!誰か忘れちゃあいないか!?」
そう叫びながら入り口から一人の傷だらけの男性……鯉昇が飛び出すと龍香ときゅーばんちゃんを抱える。
「こっちには無敵のパパがいることをな!」
「何!?」
「お父さん!?」
鯉昇はそのまま走り出し、光弾をかわす。
「だ、大丈夫なの!?」
鯉昇は二人を抱えて走るが、その身体はボロボロ、足元は震えており、さらには息も荒い。
しかし鯉昇は笑みを浮かべると。
「心配するな龍香!それに、龍香達が頑張ってるのに俺が寝てちゃいかんだろう!?」
「きっさまぁぁぁぁぁ!!」
その姿に激昂したイースが光弾を放とうとした瞬間、気づく。カチカチと何かを操作しながらこの祭壇を破壊しようとするシズクに。
「や、やめろシズク!!お前は、俺の希望なんだ!生きていて欲しい!子供に生きて欲しいと願ってるんだぞ!?」
「……その気持ちは嬉しいよ。お父さん。でも私もお父さんを想う気持ちは一緒。私のために、お父さんを人殺しになんてさせない!!」
焦るイースにシズクは涙を浮かべてそう決意をつけたように、諭すように微笑みかける。
その表情に何を感じたのか。イースは一瞬、止まってしまった。
その一瞬、ほんの一瞬が運命を分けた。シズクがペンダントを押し込んだ瞬間、装置が、祭壇が光始める。
そしてゴゴゴという音と共に崩壊を始める。
「し、シズク!!」
イースが慌ててシズクに駆け寄るが、シズクの身体が徐々に白い光に包まれて、粒子となって溶けていく。
「これでいいの。お父さん。これで。」
「シ、シズク……私は……!」
狼狽するイースの顔にシズクは手を添えると、顔を近づけてその頬に優しく口づけする。
「ありがとう。私のために。でも、私は望んでないの。私が望むのはお父さんの……」
シズクが何かを呟く。その言葉を聞いたイースは目を見開く。それと同時にシズクの身体は崩れて完全に粒子となり、空へと昇っていく。
「おいおいどうなってんだ!?」
「よく分かんないけどマズイことになってるザマス!?」
「……!」
女郎蜘蛛達も崩壊する祭壇を見て状況が不利と見たか、龍香達への攻撃を止めて、様子見に徹している。
「シズクちゃん……」
会って間もない少女の消滅にきゅーばんちゃんと龍香が呆然としていると、その足元にコロンと青いペンダントが転がって来る。
きゅーばんちゃんがそれを拾い上げると一旦休戦状態ということでミカエルと龍那が戻ってくる。
「シズクがやってくれたのか!?」
「うん。……そうみたい。」
ミカエルときゅーばんちゃんがそう話す一方、龍那はギュッと鯉昇を抱き締める。
「流石だわ鯉昇さん!龍香達を助けるとこ、カッコ良かったわよ!」
「あ、あぁ。ありがとうママ。と言うか、それよりその格好が気になるんだけど……」
鯉昇は龍那の服装に目を落とす。そのことに気づいた龍那は軽く回って、服をひけらかせる。
「え?これ?良いでしょ?昔見た漫画の魔法使いみたいでしょ?このペンダントの子がやってくれたのよ?」
「う、うん?……え?おもちゃ?」
《……おもちゃじゃねえ。》
「うわ喋った!?」
そう鯉昇が興味深そうに見ていると、龍那の変身が解かれて龍香の頭にカノープスは戻る。
「あ、消えちゃった。」
「お帰り、カノープス。」
《……あぁ。どうやら迷惑かけたみたいだな。悪い。》
「ううん。大丈夫。……それより、カノープスどうしたの?なんか歯切れが悪いけど。」
《……なんでもねぇよ。》
龍香とカノープスがそう会話をしている時だった。今度は龍香、ミカエル、きゅーばんちゃんの身体が光となって消えていく。
「あ、あれ!?か、身体が!」
「もしかして、祭壇壊したから私達が元いた時代に戻るのかな?」
二人がそう推察する中、龍香は少し気まずそうにして何かを言い淀む。話すべきか、話さないべきか。そう悩んでいるとカノープスが話しかけてくる。
《……言いたいことは言っとけ。今以外にチャンスはない。》
カノープスの言葉に龍香はうん、と頷くと鯉昇と龍那に向き直る。
「あ、あの!」
「何かしら?」
「わ、私、実は未来から来た、貴方達の娘なんです!!」
勇気を出して龍香がそう言うと、二人は顔を見合わせてポカンとした顔をした後龍香に言う。
「「え?知ってたよ(わよ)?」」
「……へ?」
逆に今度は龍香がポカンとする中、二人は屈んで龍香と目線を合わせる。そして龍香の頭にポンっと鯉昇が手をやる。
「だってこんなにもママにそっくりで。俺達の名前を聞いたら狼狽えちゃってたから何かあるなー、とは思ったよ。」
「そ。なんとなーく分かっちゃうものなのよ。」
二人はそう言って微笑む。そして鯉昇が尋ねる。
「けど、多分反応を見るに俺とママのこと、あんまり知らないんだろう?」
「……それは、その」
「……うーん。せめて龍香が結婚……いや、それは見たいような見たくないような……まぁ、そんくらいまでは生きてやりたかったけどなぁ。」
鯉昇が少し寂しそうに言う。しかしそうする間にも龍香の身体はドンドン消えていく。それを見た二人は。
「あまり時間がないようだから一つずつ龍香に言わせて貰うか。俺からで良いかい?」
「ええ。どうぞ。」
「龍香。こんな事言うのもアレだが、過去を否定しないでくれ。」
「え?」
「多分今まで忘れたい位辛い事、悲しい事があったと思うし、これからもしていくと思う。けど、前を向いて歩いていればそれ以上に楽しいことがあったハズだ。それは今の龍香を見ていれば分かる。沢山の出来事や出会いがあったんだろう。それは必ずかけがえのないお前の宝になる。時には回り道をしたっていい。立ち止まったって良い。しっかり前をむいて歩いていくんだぞ。龍香。」
「……うん。」
龍香がコクリと頷くと、鯉昇は微笑んで髪をわしゃわしゃさせながら撫でる。
そして今度は龍那が優しく語りかける。
「龍香。これだけは忘れないで。私達はずっと貴方達を愛して、見守っているわ。未来で龍賢によろしくね。」
そう言うと龍那は龍香に額に優しく口づけをする。そして微笑む二人を見て、龍香の中で何かが堰を切ったように溢れて、気づくと涙ぐみながら、龍香は喋り出していた。
「私は…私は!私は元気でやってるから!友達も沢山出来たの!かおりに雪花ちゃんに藤正君、学校の皆、黒鳥さん、赤羽さんや“新月”の皆、お兄ちゃんとばぁやもいるし、龍斗お兄ちゃんとも色々あったけど仲直りしたし、それにご飯だってちゃんと食べてるから!私、辛いのが好きで、特に……竹田さんの拉麺は辛くて、美味しくて……お父さんとお母さんにも……!」
そこまで言うと、龍香はもう嗚咽しか出せなくなっていた。肩を震わせて泣く龍香の涙を二人は拭うときゅーばんちゃんとミカエルに言う。
「この子のこと!よろしく頼むわ!」
「……あぁ!」
「はい。」
二人の返事を聞き、二人は龍香の肩に手を置いて言う。
「「行ってらっしゃい。龍香。」」
「うん……行ってきます。」
二人の顔が、世界が滲んで霞むように消える。そして三人の視界が一瞬白に包まれると、三人は採石場のような場所に座っていた。
「……戻ってきた?」
きゅーばんちゃんが携帯を確認すると、通信アンテナがちゃんと伸びており、時間が正確に動き始めているのが分かる。
「も、戻ったぞー!!やったーっ!」
「は、はわわわ…」
ミカエルが嬉しそうに喜んできゅーばんちゃんを抱えてぐるぐる回る。
龍香は少し俯いていたが、すぐに目元拭うと顔を上げる。
《大丈夫か?》
「うん。……スッキリしたから。」
龍香がそう答えると、カノープスはそうか、とだけ短く言う。
そしてどうやら現代に戻ったのは、龍香達だけでなく、イース達も戻っていた。しかし目の前で計画が破綻したのを見た女郎蜘蛛達は焦った様子で。
「お、おいイース。どうするザマスか?」
「こりゃあご破産って奴か…?」
「……」
と膝をつき地面を見つめるイースに話しかけたその時。イースがボソリも呟く。
「……い。」
「?」
「認めない。認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない!!シズクがいない世界に何の意味がある!!価値がある!?私は、私はァァァァァァァ!!」
イースが激昂すると、背後の空間が割れ玉虫色の空間が広がったかと思うとそこから落とし子を始めとした様々な怪物達がその姿を現す。
「げっ、今まで私達が倒してきた怪獣まで!?」
「シードゥス達まで…!」
ミカエルと龍香が焦燥に駆られる。一体一体ならともかくこの数を相手にするのは流石に無理がある。
龍香が変身出来る様になったとは言え、ミカエルのカラータイマーは鳴り始めており、きゅーばんちゃんもボロボロだ。
「私の計画を潰した貴様らは許さない!!この場で始末してくれるぅ!!」
そうイースが叫ぶと怪物達が怒号を上げながら三人に走ってくる。
万事休す。どうやってこの場をやり過ごすか、龍香が思案していると。
後ろからミサイルや様々な光線が飛んでいき、怪物達の先頭の集団を一掃する。
「何!?」
「な、なんだなんだ!?」
突然の介入に全員が何事かと慌てて攻撃が飛んできた方を見る。そこにいたのは。
「お待たせ!龍香ちゃん!きゅーばんちゃん!」
「愛歩ちゃん!」
「全く心配をかけるな君は。」
「滅茶苦茶心配しましたのよ!?」
「ははっ、わりぃわりぃ。」
愛歩とウリエル、ラファエルが二人に駆け寄る。そのままラファエルは自身の能力でミカエルを回復させるとミカエルのカラータイマーが青い輝きを取り戻す。
そして、龍香の元に雪花が来る。雪花は龍香に近づくと軽く小突く。
「全く、勝手に消えたと思ったら今度は怪獣大軍団を連れてくるとはね。」
「ご、ごめん。」
龍香が凄い申し訳なさそうな顔をすると、雪花はフッと笑うと。
「いいわ。今回は無事に帰ってきただけでも褒めてあげる。さっさとアイツ片付けて帰るわよ。」
「うん!」
雪花はそう言うと銃を構え、龍香もそれに続くように変身し、ティラノカラーへと姿を変える。
「たかが七人で何が出来るぅ!」
イースがそう言うと、雪花はニヤリと笑う。
「誰が七人だけだって言ったかしら?」
「行けぇ!貴様ら!」
イースが号令をかけると、またも怪物軍団が襲いかかってくる。
「お前らは!ここで殺してやるザマス!」
「アンタ達には好き放題されたからねぇ!」
女郎蜘蛛とブレスが先陣を切って七人に襲いかかろうとした瞬間。上空から黒い影と白い影が二人を止める。
「また邪魔をするザマスか猫ォォッ!」
「トーゼン!やられっぱなしは性に合わないんでのお!」
「チッ!?またテメェか!?」
「リターンマッチ、ってとこかしら。」
のじゃロリ猫、エフィが二人を抑えて道を開く。
「のじゃちゃん!エフィちゃん!」
「ありがとう!」
二人に礼を言うと七人は進む。今度は怪獣達を引き連れ、首なしライダーが迫る。
「ここは私達に任せろ!」
「他の方は先に!」
「一度倒した相手など!」
ウルトラガールの三人が首なしライダーと怪獣達に立ち向かっていく。しかし何体かは三人を無視して龍香達を狙う。龍香達が迎え撃とうとすると。
「ライトレコード、セット。スペシウムシュート!!」
その声と共に放たれた光線が怪獣達を一掃する。
「この光線…」
「ジブリール!」
「お待たせしました!」
水色の髪の天使、ジブリールがガブリールホンを持って三人に合流する。
「いよぉし、四人なら敵なしだぁ!」
「!」
そう言うと四人と首なしライダー達が激突する。
四人がさらに進むと、目の前にバカデカい50mはあろうかという怪物2体と落とし子が立ちはだかる。
「キライ〜!!」
「何よこのデカブツ〜!?」
奇怪な雄叫びをあげながら迫る怪物達に龍香達が狼狽えた瞬間。さらには後ろから声がする。
「ちょぉっと待った〜!」
その声と共に二人の人影が怪物を蹴り飛ばす。
「今度は何!?」
蹴り飛ばした二人の人影はくるくると回転しながら綺麗に着地する。そこにいたのはまるで絵本から出てきた魔法少女のようにキュートなドレスをした二人の女児だった。
「輝きの使者、ピュアゴダイ!」
「輝きの使者、ピュアテンゴウ!」
「「私達、ジョジピュア!!」」
二人の少女はそう叫ぶと怪物に向けて構える。
「古代さん!天降さん!」
「そこの青い髪の子に頼まれてね。来ちゃったわ!」
「奇雷獣は私達に任せて!」
そう言うと二人は怪物…奇雷獣に向かって飛び上がる。今度は落とし子が四人の前に立ちはだかり、叩き潰そうと拳を振り上げる。
「おぉっと!ウチもおるでー!!」
そう言うと巨大な白髪をポニーテールにし、赤いセーラー服に蟹のアクセサリーをつけた少女が落とし子を殴り飛ばす。
「お前……!」
「むらサメちゃん!」
「おう!愛歩に藍!待たせたなぁ!ウチも力を貸すでぇ!見とき、こんなタコ速攻叩き潰してタコ焼きにしたる!」
そう言うとむらサメは落とし子と取っ組み合う。
「任せたわよ!」
雪花はそう言うと他の三人と一緒に前に進む。すると今度は再生したシードゥス達が立ちはだかる。
「シードゥス相手なら私に任せなさい!」
雪花が“マタンII”を引き抜き、シードゥス達を切り伏せて行く。龍香も襲い掛かるシードゥス達から愛歩ときゅーばんちゃんを守るために“タイラントアックス”を振るう。
しかし数の多さは圧倒的で、龍香達が防戦一方になりかけた瞬間。
ボゥと天から放たれた豪炎がシードゥス達を焼き払う。
「!この炎は……!」
龍香が空を見上げると、そこには炎の翼をはためかせる赤い少女……アルタイルがいた。
「アルタイルちゃん!」
「苦戦しているみたいね。そこの青い子に言われたから来てあげたけど……邪魔だったかしら?」
「ううん!助かった!」
龍香がそう答えると、アルタイルは龍香達の隣に降り立つ。
「行って。ここは私とそこの白いのがいたら充分だと思うから。」
「白いのと何よこの焼き鳥!」
「は?」
「あ?」
「こ、ここは任せたよ!二人とも仲良くしてね!」
何故か目線から火花を散らす二人にそう言うと三人はさらに前へと進む。そしてとうとうイースの姿が見えて来る。
「もう少し…!」
三人がそろそろ到達する、と思った瞬間何処からともなく飛んできた青い線がきゅーばんちゃんを捕らえる。
「きゃっ」
「きゅーばんちゃん!?」
見ればその線……というより舌の先にはあの悪臭漂う猟犬がおり、その後ろから魑魅魍魎の化け物達が空間から滲むように這い出て来る。
「コイツ!」
龍香が慌ててその舌を切断しようとすると、魍魎の一体が龍香に襲い掛かって邪魔をする。
「うわっ!?」
龍香はすぐに引き剥がして地面に叩きつけると思い切り踏みつけるがその間にも猟犬は舌を巻き取り、きゅーばんちゃんを引き摺り込もうとする。
「危ない!」
「愛歩ちゃん!」
愛歩が引き摺られるきゅーばんちゃんの手を取って耐えようとするが、力の差は圧倒的ですぐに二人とも引き摺られる。
そんな二人を助けようと龍香が駆け寄ろうとしたその瞬間だった。
「邪気よ鎮まれ……流動!」
次の瞬間水流のような光が魑魅魍魎達を洗い流す。さしもの猟犬もこれは効いたのかきゅーばんちゃんから舌を離して悲鳴をあげながらそのまま地面に転がる。
「この光…!」
きゅーばんちゃんが目を輝かせると、ザッと一人の少女が隣に立つ。
「待たせたな、我がシュヴェスター。怪我はないか?」
「お姉ちゃん!うん、大丈夫。」
きゅーばんちゃんのお姉さんことエルフがその場に立っていた。
エルフはきゅーばんの様子を見てホッとしたように微笑むと、光の不意打ちから体勢を立て直した猟犬を睨みつける。
「私のシュヴェスターが随分と世話になったみたいだな。お礼は……この私がたっぷりと返させてもらう!」
エルフが目に手を当てて構える。すると何体かの魑魅魍魎がエルフに向けて駆け出す。
エルフがそれに照準を向けた瞬間、何処からともなく飛んできた針が魑魅魍魎達に突き刺さる。そして爆発。
それと同時にスタッと一人の少女……赤羽が降り立つ。
「赤羽さん!」
「次から次へと……アナタといるとホントに退屈しないわね。」
赤羽がそう言って刀を構える。そして目の前の敵を睨みつけるが、何かを感じ取ったのか急に顔を顰める。
「どうしたんですか?」
「……この娘、何?」
赤羽が隣にいる……何故か目を輝かせるエルフを指差す。エルフは目を輝かせながら、赤羽の右眼に付いている三つの目を組み合わせたかのような造形の“サダルメリクの瞳”を見ながら赤羽に尋ねる。
「……そ、その右目は……?」
「……何?“サダルメリクの瞳”が気になる訳?」
赤羽がそう言うとエルフは益々嬉しそうな顔をして眼に手を添えてカッコつける。
「そうか!なら君も選ばれし聖眼使いという訳か!フフ!通りで君を見た時からこの眼が疼く訳だ…!」
「ねぇもしかして私この娘に同類と思われてる?」
「お、お姉ちゃん……」
きゅーばんちゃんが若干引くが、同族を見つけたエルフのテンションは爆上がりのようで。
「フッ!奴らに奏でてやろう!選ばれし聖眼使いのデュエットから織りなすレクイエムを!」
「クッソ、すっごく一緒にしてほしくないけど取り敢えずここは私達が抑えるから行きなさい!」
「は、はい!」
龍香が答えて駆け出そうとすると、愛歩が龍香を呼び止める。
「龍香ちゃん!」
「何?」
愛歩はグッと拳を握って前に出すと。
「頑張って!」
きゅーばんちゃんもコクリと頷くと龍香に青いペンダント……今となってはシズクの形見を手渡す。
「シズクちゃんの分も。よろしくね。」
二人にそう言われて、龍香は…力強く頷いてペンダントを受け取ると二人に背を向けながら走り出す。
「任せて!!」
そして、とうとう龍香はイースと対峙する。イースはまだ怒りが収まらないのか、凄まじい怒気で龍香を威圧する。
「イース!そこまでだよ!もうこんなことはやめて!」
「目障りな小娘め!」
龍香の叫びを合図にイースは手から時計の針のような光線を龍香に放つ。
「っ!」
すぐさま龍香はカノープスに触れて“トリケラカラー”になると、掘削機兼盾の“ホーンパーフォレイター”で防ぐ。
「何故邪魔をする!?私はただもう一度家族に会いたいだけだ!貴様はそうではないのか!?家族にもう一度会いたいと!過去を変えたいとは思わないのか!?」
イースの悲痛な叫びを受け、龍香は悲しそうな顔をする。だが、龍香は。
「私を否定しないで。」
「……何?」
龍香の言葉にイースが聞き返す。
「今の私があるのは、過去があるから。お父さんとお母さんと会いたい気持ちはあるよ。けど過去があるから、私は皆と会えた!色んなこともあった!この思い出を、私は捨てたくない!一緒に歩んで行きたいの!」
「子供が、世迷言を……!」
龍香は長剣“タイラントブレイド”を構える。
「必ずアナタを止める!行くよカノープス!」
《おう!任せろ!》
龍香は最強形態ティラノカラー•アトロシアスになると、イースへと立ち向かって行った。
「イース!そこまでだよ!もうこんなことはやめて!」
「目障りな小娘め!」
龍香の叫びを合図にイースは手から時計の針のような光線を龍香に放つ。
「っ!」
すぐさま龍香はカノープスに触れて“トリケラカラー”になると、掘削機兼盾の“ホーンパーフォレイター”で防ぐ。
「何故邪魔をする!?私はただもう一度家族に会いたいだけだ!貴様はそうではないのか!?家族にもう一度会いたいと!過去を変えたいとは思わないのか!?」
イースの悲痛な叫びを受け、龍香は悲しそうな顔をする。だが、龍香は。
「私を否定しないで。」
「……何?」
龍香の言葉にイースが聞き返す。
「今の私があるのは、過去があるから。お父さんとお母さんと会いたい気持ちはあるよ。けど過去があるから、私は皆と会えた!色んなこともあった!この思い出を、私は捨てたくない!一緒に歩んで行きたいの!」
「子供が、世迷言を……!」
龍香は長剣“タイラントブレイド”を構える。
「必ずアナタを止める!行くよカノープス!」
《おう!任せろ!》
龍香は最強形態ティラノカラー•アトロシアスになると、イースへと立ち向かって行った。
「ハハハ!ハハハハハハ!性懲りも無く!また腹を抉られに来たザマスか!?」
「いや、その不細工な顔面をぶっ壊しにきたのじゃ!」
「ほざけ!」
女郎蜘蛛は背中の4本の脚を使い、のじゃロリ猫を潰そうとする。だがのじゃロリ猫はそれらを華麗に避けると蹴りを一発お見舞いする。
女郎蜘蛛はそれを両腕をクロスさせることで防御し、後ろへと跳びながら四本の脚の先端から糸を出して糸の玉を作っていく。
「くらいな!」
またもや放たれた糸玉。それはまたもやのじゃロリ猫の少し手前で弾ける。
「笑止!ソイツはもうワシに通用せん!」
「何?」
女郎蜘蛛にのじゃロリ猫はニヤリと笑う。
「お主のこの技の種は簡単……その糸玉、直接当てるのではなく空中に見えない糸を散布する技じゃな?」
ピクっと女郎蜘蛛の眼が動く。
「そしてその中でお主が何故動けるのか、それは表面に糸が絡みつかない液体を分泌させていたからじゃ。」
「……流石ザマスね。けど、分かったところでどうにもならんザマス!」
女郎蜘蛛は脚を伸ばして、のじゃロリ猫に向けて放つ。しかし彼女は後ろで何やらゴソゴソしたかと思うと何か変な液体の入った容器を取り出す。
「これがお主の秘策を破る必勝アイテムよ!」
そう言うとのじゃロリ猫は容器の蓋を開けてダバァと何か妙に粘り気のある液体を頭から被る。
「なにザマスその液体?」
「行くぞ!」
そう言うとのじゃロリ猫は地面を蹴って女郎蜘蛛の懐に飛び込んでくる。すぐさま4本の脚が迎撃せんと襲い掛かるがスルスルとのじゃロリ猫はそれらを避けて行く。
「させるか!蜘蛛糸•巣掻!」
格子状の糸を繰り出し、のじゃロリ猫を捕らえようとするが、それも素早い動きで軽くかわされてしまう。
「くらわんよ!」
縦横無尽に動くのじゃロリ猫を見ながら、女郎蜘蛛は訝しむ。彼女の言う通り蜘蛛の糸が前の時とは違い全く機能しておらず、動きが遅くなる様子が見えない。
「貴様……何をしたザマスか!」
「フフッ。教えてやろう蜘蛛。ワシがさっき被った液体……それは……ローションじゃ。」
「……は?」
のじゃロリ猫の言葉に女郎蜘蛛はポカンとなる。が、状況を飲み込むとピキリとこめかみに血管が浮く。
「ふざけるな!そんなもので私の糸が……!」
女郎蜘蛛が激昂するが、女郎蜘蛛の四つの眼が実際問題糸は全くのじゃロリ猫に絡み付かず流れて行くのが見えた。
「ウオオオオオオオオ!おおおお!?」
「隙ありじゃ!」
こんな単純な事で破られるとは思っていなかったのかショックで一瞬動きが止まった隙を見逃さずのじゃロリ猫がとうとう懐に入り込む。
「しまっ」
「チェックメイトじゃ!」
のじゃロリ猫が振り上げた拳が女郎蜘蛛を捉える。ピキッという音と共に女郎蜘蛛の顔にヒビが入る。さらに間髪入れずに振るわれた拳のラッシュが女郎蜘蛛を破壊する。
そして、とうとう最後の一撃が女郎蜘蛛の胸を貫通する。
「ゴフゥ」
「決まりじゃ!」
「ぶっ…く、いやぁ……それはどうザマスかねぇ。」
拳押し込むのじゃロリ猫の腕を掴み、女郎蜘蛛がニヤリと笑うと胸の下部にあった服の装飾とおぼしき部分が動き、それは分かれて先端から紫色の液体を垂れ流す毒手となる。
「隠し腕じゃとぉ!?」
「ハハァ!残念ザマスねぇ!最後に笑うのは奥の手を隠していたわた」
笑いながら女郎蜘蛛がトドメを刺そうとした瞬間背後から無数の弾丸が撃ち込まれ、鮮血が飛び散る。
「……は?」
女郎蜘蛛は一瞬何が起こったのか分からずポカンとする。
後ろを振り返ると、そこには機械の鳥……“ピーコック”がおり、その機銃の銃口から硝煙が登っている。
「き、さ」
女郎蜘蛛がピーコックに脚を伸ばそうとした時、上空から一人の少女が降って来る。
「おっと!そうはいかない!」
少女…月乃助が振るった剣が女郎蜘蛛の脚を次々と切断していく。
目を見開く女郎蜘蛛が最後の悪足掻きで残った最後の隠し腕をせめてのじゃロリ猫に突き刺さそうとするが、のじゃロリ猫は腕を引き抜くと最後と言わんばかりに女郎蜘蛛に思い切り拳骨を喰らわせる。
最後の一撃にさしもの女郎蜘蛛も意識が途切れたのか、仰向けになるように地面に倒れた。
「ふぅ……まぁ、死んじゃいないじゃろうけど流石にもう動けんじゃろ。」
倒れた女郎蜘蛛を見下ろしていると、月乃助が敵を倒したのを確認しにこちらに来て、のじゃロリ猫を見つける。
「むっ、何やら珍妙な格好している黒猫君!大丈夫か!」
「お主に言われたくはないんじゃが?」
のじゃロリ猫はドカッと座り込むと、顎で先を行くように促す。
「先に行っとれ。ワシはコイツを見張っとく。」
「ふむ。まぁ良いだろう。では頼んだぞ!」
そう言うと月乃助はピーコックを背中に装着して飛翔する。
飛んでいく月乃助を見送り、のじゃロリ猫はふと視線を気絶している女郎蜘蛛を見てポツリと。
「……にしても、随分と増えたのぉ。」
溢すように呟いた。
「いや、その不細工な顔面をぶっ壊しにきたのじゃ!」
「ほざけ!」
女郎蜘蛛は背中の4本の脚を使い、のじゃロリ猫を潰そうとする。だがのじゃロリ猫はそれらを華麗に避けると蹴りを一発お見舞いする。
女郎蜘蛛はそれを両腕をクロスさせることで防御し、後ろへと跳びながら四本の脚の先端から糸を出して糸の玉を作っていく。
「くらいな!」
またもや放たれた糸玉。それはまたもやのじゃロリ猫の少し手前で弾ける。
「笑止!ソイツはもうワシに通用せん!」
「何?」
女郎蜘蛛にのじゃロリ猫はニヤリと笑う。
「お主のこの技の種は簡単……その糸玉、直接当てるのではなく空中に見えない糸を散布する技じゃな?」
ピクっと女郎蜘蛛の眼が動く。
「そしてその中でお主が何故動けるのか、それは表面に糸が絡みつかない液体を分泌させていたからじゃ。」
「……流石ザマスね。けど、分かったところでどうにもならんザマス!」
女郎蜘蛛は脚を伸ばして、のじゃロリ猫に向けて放つ。しかし彼女は後ろで何やらゴソゴソしたかと思うと何か変な液体の入った容器を取り出す。
「これがお主の秘策を破る必勝アイテムよ!」
そう言うとのじゃロリ猫は容器の蓋を開けてダバァと何か妙に粘り気のある液体を頭から被る。
「なにザマスその液体?」
「行くぞ!」
そう言うとのじゃロリ猫は地面を蹴って女郎蜘蛛の懐に飛び込んでくる。すぐさま4本の脚が迎撃せんと襲い掛かるがスルスルとのじゃロリ猫はそれらを避けて行く。
「させるか!蜘蛛糸•巣掻!」
格子状の糸を繰り出し、のじゃロリ猫を捕らえようとするが、それも素早い動きで軽くかわされてしまう。
「くらわんよ!」
縦横無尽に動くのじゃロリ猫を見ながら、女郎蜘蛛は訝しむ。彼女の言う通り蜘蛛の糸が前の時とは違い全く機能しておらず、動きが遅くなる様子が見えない。
「貴様……何をしたザマスか!」
「フフッ。教えてやろう蜘蛛。ワシがさっき被った液体……それは……ローションじゃ。」
「……は?」
のじゃロリ猫の言葉に女郎蜘蛛はポカンとなる。が、状況を飲み込むとピキリとこめかみに血管が浮く。
「ふざけるな!そんなもので私の糸が……!」
女郎蜘蛛が激昂するが、女郎蜘蛛の四つの眼が実際問題糸は全くのじゃロリ猫に絡み付かず流れて行くのが見えた。
「ウオオオオオオオオ!おおおお!?」
「隙ありじゃ!」
こんな単純な事で破られるとは思っていなかったのかショックで一瞬動きが止まった隙を見逃さずのじゃロリ猫がとうとう懐に入り込む。
「しまっ」
「チェックメイトじゃ!」
のじゃロリ猫が振り上げた拳が女郎蜘蛛を捉える。ピキッという音と共に女郎蜘蛛の顔にヒビが入る。さらに間髪入れずに振るわれた拳のラッシュが女郎蜘蛛を破壊する。
そして、とうとう最後の一撃が女郎蜘蛛の胸を貫通する。
「ゴフゥ」
「決まりじゃ!」
「ぶっ…く、いやぁ……それはどうザマスかねぇ。」
拳押し込むのじゃロリ猫の腕を掴み、女郎蜘蛛がニヤリと笑うと胸の下部にあった服の装飾とおぼしき部分が動き、それは分かれて先端から紫色の液体を垂れ流す毒手となる。
「隠し腕じゃとぉ!?」
「ハハァ!残念ザマスねぇ!最後に笑うのは奥の手を隠していたわた」
笑いながら女郎蜘蛛がトドメを刺そうとした瞬間背後から無数の弾丸が撃ち込まれ、鮮血が飛び散る。
「……は?」
女郎蜘蛛は一瞬何が起こったのか分からずポカンとする。
後ろを振り返ると、そこには機械の鳥……“ピーコック”がおり、その機銃の銃口から硝煙が登っている。
「き、さ」
女郎蜘蛛がピーコックに脚を伸ばそうとした時、上空から一人の少女が降って来る。
「おっと!そうはいかない!」
少女…月乃助が振るった剣が女郎蜘蛛の脚を次々と切断していく。
目を見開く女郎蜘蛛が最後の悪足掻きで残った最後の隠し腕をせめてのじゃロリ猫に突き刺さそうとするが、のじゃロリ猫は腕を引き抜くと最後と言わんばかりに女郎蜘蛛に思い切り拳骨を喰らわせる。
最後の一撃にさしもの女郎蜘蛛も意識が途切れたのか、仰向けになるように地面に倒れた。
「ふぅ……まぁ、死んじゃいないじゃろうけど流石にもう動けんじゃろ。」
倒れた女郎蜘蛛を見下ろしていると、月乃助が敵を倒したのを確認しにこちらに来て、のじゃロリ猫を見つける。
「むっ、何やら珍妙な格好している黒猫君!大丈夫か!」
「お主に言われたくはないんじゃが?」
のじゃロリ猫はドカッと座り込むと、顎で先を行くように促す。
「先に行っとれ。ワシはコイツを見張っとく。」
「ふむ。まぁ良いだろう。では頼んだぞ!」
そう言うと月乃助はピーコックを背中に装着して飛翔する。
飛んでいく月乃助を見送り、のじゃロリ猫はふと視線を気絶している女郎蜘蛛を見てポツリと。
「……にしても、随分と増えたのぉ。」
溢すように呟いた。
「あぁ!テメェは相変わらずすばしっこいなクソガキ!」
「アナタが遅いだけよ。」
ブレスは叫びながらエフィに向けて火焔を放つ。しかしエフィはそれらを空を跳びながらかわしていく。
「ナルカミ!」
「はァッ!」
エフィが投擲した雷の槍とブレスの火焔がぶつかり、爆発が起こる。
「ハハァ!言っとくが、遠距離攻撃じゃ俺を倒せねぇぞ!でも近づけないよなぁ!?攻撃すればオマエがダメージを受けるんだからなぁ!」
ブレスの全身を流れる血液は強烈な辛味を含んでおり、それのダメージはエフィも前の戦いで把握している。
だが、エフィは呟く。
「なら、血液に当たらなきゃ良いんでしょ。」
「は?」
エフィがそう言った瞬間、その姿が消えたかと思うと気づいたらブレスは斬られていた。
「なっ」
「要するに血に当たるより先に離脱すればいい。」
流れる血液を見ながら唖然とするブレスにエフィはさらに一撃離脱の追撃を仕掛ける。
“春ハヤテ”を使用し、爆発的な加速度を得たエフィは縦横無尽に動くとブレスを翻弄する。
「お、おおお!?俺が?押されてる?こんな小娘に?」
次々と来る刃からかろうじて致命傷を避けることで精一杯になるブレス。そしてエフィの剣がどんどんと緋色に染まっていくのを見た瞬間、本能的に危険を察知する。
(アレを直に喰らうのはヤバい!!)
そう判断すると、すぐさま強烈な辛性のガスを噴出して自身を覆う。
「チッ」
毒ガスのバリアに気づいたエフィは距離を取って遠巻きに構える。
「クハハハ!これでテメェは俺が見えないし近づけない!だが、俺にはオマエの姿が見える!」
そう言うとガスの中からエフィに向けて火焔が放たれる。その火焔をエフィが横に飛んで避けると、上空から声がする。
「あのガスは、私がなんとかしよう。」
その声が聞こえた次の瞬間突風が吹き荒れ、ガスが霧散する。
「は!?」
突然の事で困惑するブレスとエフィが地面を蹴り、距離を詰めたのは一瞬だった。
次の瞬間エフィのすれ違い様の一閃がブレスを切り裂く。
「ごっ…ふっ」
その一撃がトドメとなり、ブレスは倒れる。エフィが一息つき、剣を納めると同時に空を見上げると、そこには黒い翼をはためかせる黒鳥の姿があった。
黒鳥は軽く手を上げて感謝のジェスチャーを示すと、そのまま何処かへと飛び去ってしまう。それを見届けるとエフィはふぅと一息つき。
「あともう一踏ん張りするか。」
そう言って黒鳥を追いかけるように駆け出した。
「アナタが遅いだけよ。」
ブレスは叫びながらエフィに向けて火焔を放つ。しかしエフィはそれらを空を跳びながらかわしていく。
「ナルカミ!」
「はァッ!」
エフィが投擲した雷の槍とブレスの火焔がぶつかり、爆発が起こる。
「ハハァ!言っとくが、遠距離攻撃じゃ俺を倒せねぇぞ!でも近づけないよなぁ!?攻撃すればオマエがダメージを受けるんだからなぁ!」
ブレスの全身を流れる血液は強烈な辛味を含んでおり、それのダメージはエフィも前の戦いで把握している。
だが、エフィは呟く。
「なら、血液に当たらなきゃ良いんでしょ。」
「は?」
エフィがそう言った瞬間、その姿が消えたかと思うと気づいたらブレスは斬られていた。
「なっ」
「要するに血に当たるより先に離脱すればいい。」
流れる血液を見ながら唖然とするブレスにエフィはさらに一撃離脱の追撃を仕掛ける。
“春ハヤテ”を使用し、爆発的な加速度を得たエフィは縦横無尽に動くとブレスを翻弄する。
「お、おおお!?俺が?押されてる?こんな小娘に?」
次々と来る刃からかろうじて致命傷を避けることで精一杯になるブレス。そしてエフィの剣がどんどんと緋色に染まっていくのを見た瞬間、本能的に危険を察知する。
(アレを直に喰らうのはヤバい!!)
そう判断すると、すぐさま強烈な辛性のガスを噴出して自身を覆う。
「チッ」
毒ガスのバリアに気づいたエフィは距離を取って遠巻きに構える。
「クハハハ!これでテメェは俺が見えないし近づけない!だが、俺にはオマエの姿が見える!」
そう言うとガスの中からエフィに向けて火焔が放たれる。その火焔をエフィが横に飛んで避けると、上空から声がする。
「あのガスは、私がなんとかしよう。」
その声が聞こえた次の瞬間突風が吹き荒れ、ガスが霧散する。
「は!?」
突然の事で困惑するブレスとエフィが地面を蹴り、距離を詰めたのは一瞬だった。
次の瞬間エフィのすれ違い様の一閃がブレスを切り裂く。
「ごっ…ふっ」
その一撃がトドメとなり、ブレスは倒れる。エフィが一息つき、剣を納めると同時に空を見上げると、そこには黒い翼をはためかせる黒鳥の姿があった。
黒鳥は軽く手を上げて感謝のジェスチャーを示すと、そのまま何処かへと飛び去ってしまう。それを見届けるとエフィはふぅと一息つき。
「あともう一踏ん張りするか。」
そう言って黒鳥を追いかけるように駆け出した。
「とぉー!」
ミカエルの蹴りが怪獣達を打ち据える。ウリエル、ラファエル、ジブリールの四人も各々武器を活かし、次々と再生した怪獣達を打ちのめしていく。
そして爆発と共に怪獣軍団は四人の前に倒れる。
「へへっ!楽勝!」
「た、倒せたね。」
ミカエルとジブリールが敵を蹴散らしてホッと一息ついていると。
「あぶない。」
そう言うが早いかウリエルは二人を蹴り飛ばす。
「いったー!?」
「な、何を」
二人が抗議の声を上げると、さっきまで二人がいた場所に火焔弾が着弾し、爆発が起こる。
「ま、まだいたんですの!?」
ラファエルが焔が飛んできた方に構える。そこには首と右腕から緑色の焔を滾らせる首無しライダーの姿があった。
「…!」
ライダーはまたもや右腕を振るって焔弾を横なぎに放つ。
「私に任せて!」
ジブリールは皆の前に立つと紫色の五角形の腹が特徴的な鳥が描かれたディスクをセットする。
「アブソーブレコード、セット!ベムスターバリア!」
すると目の前に五角形の盾が現れ、焔弾を次々と吸収して無効化してしまう。
「おぉ!やるじゃねぇーか!」
「いやぁ、それ程でも……」
ミカエルの賞賛にジブリールが照れていると、どうやら首なしライダーは遠距離では埒があかないと踏んだようで下半身をバイクに変形させると、そのまま四人に向けて高速で突進して来る。
「危ない!」
四人はその突進を散り散りになって避ける。しかしどうやら既に狙いを絞っていたようで、ライダーはそのまま振り向くとジブリールに向かっていく。
「わ、私!?」
ライダーはウィリー走行のように前輪を浮き上げると、それをジブリールに叩きつけるように振り下ろす。
「ジブリール!!」
ミカエルが叫ぶ。しかし、振り下ろされた前輪はジブリールに直撃することは無かった。
「むぐぐぐ……間一髪…ですわ!」
「ラファエル!」
ラファエルが間一髪でライダーの前輪を受け止めていたからだ。
しかしライダーもさっさと倒したいようで受け止められている車輪を思い切り回転させてラファエルを削り潰そうとする。
「が、あああああああ!?」
「ラファエルさん!」
「早めに決める!」
「ああ!」
二人が一気に決めようと必殺技を放つ体勢になる。
「行くぞ!ジブリール!」
「はい!」
「「スペシウムツインシュート!!」」
二人が放った光線がライダーに向かっていく。しかしそのエネルギーの奔流はライダーが焔の右腕を翳すとグニャリとねじ曲がり、弾かれてしまう。
「光線を捻じ曲げた!?」
「くっ、ツインシュートでも駄目か!」
「でも脚は止まった!」
ジブリールが剣を振り下ろす。しかしライダーは左腕の装甲でその剣を受け止める。
「くっ、受け止めた!?」
「諦めんな!押し込め!」
ミカエルの一声で、全員がさらに力を込める。さしものライダーも流石に三方向に力を分散させるのはどうにも分が悪いようで四人に押されていく。
そして、とうとうそのパワーバランスが崩れると同時に二人の光線とウリエルの一閃がライダーに直撃する。
「………!!」
ライダーは次の瞬間大爆発を引き起こし、焔と共に消える。
それを確認した四人はその場にへたり込む。
「よ、ようやく倒せました……。」
ジブリールがそう呟くと、ラファエルが膝をつくと同時に変身が解除される。
「ラファエル!?」
「……すみません。どうやら私はここでリタイアですわ。」
ボロボロになって申し訳なさそうに謝るルミ。
「……そう。」
「坂田さん……」
「…待ってろ!私達が必ず残りも片付けてくるから!ルミはゆっくり休んでな!」
ミカエルはそう言うと、二人に目配せし、意図を察した二人と共にミカエルは飛び立つその後ろ姿を見上げながらふぅと一息つくとバタンと大の字に倒れた。
ミカエルの蹴りが怪獣達を打ち据える。ウリエル、ラファエル、ジブリールの四人も各々武器を活かし、次々と再生した怪獣達を打ちのめしていく。
そして爆発と共に怪獣軍団は四人の前に倒れる。
「へへっ!楽勝!」
「た、倒せたね。」
ミカエルとジブリールが敵を蹴散らしてホッと一息ついていると。
「あぶない。」
そう言うが早いかウリエルは二人を蹴り飛ばす。
「いったー!?」
「な、何を」
二人が抗議の声を上げると、さっきまで二人がいた場所に火焔弾が着弾し、爆発が起こる。
「ま、まだいたんですの!?」
ラファエルが焔が飛んできた方に構える。そこには首と右腕から緑色の焔を滾らせる首無しライダーの姿があった。
「…!」
ライダーはまたもや右腕を振るって焔弾を横なぎに放つ。
「私に任せて!」
ジブリールは皆の前に立つと紫色の五角形の腹が特徴的な鳥が描かれたディスクをセットする。
「アブソーブレコード、セット!ベムスターバリア!」
すると目の前に五角形の盾が現れ、焔弾を次々と吸収して無効化してしまう。
「おぉ!やるじゃねぇーか!」
「いやぁ、それ程でも……」
ミカエルの賞賛にジブリールが照れていると、どうやら首なしライダーは遠距離では埒があかないと踏んだようで下半身をバイクに変形させると、そのまま四人に向けて高速で突進して来る。
「危ない!」
四人はその突進を散り散りになって避ける。しかしどうやら既に狙いを絞っていたようで、ライダーはそのまま振り向くとジブリールに向かっていく。
「わ、私!?」
ライダーはウィリー走行のように前輪を浮き上げると、それをジブリールに叩きつけるように振り下ろす。
「ジブリール!!」
ミカエルが叫ぶ。しかし、振り下ろされた前輪はジブリールに直撃することは無かった。
「むぐぐぐ……間一髪…ですわ!」
「ラファエル!」
ラファエルが間一髪でライダーの前輪を受け止めていたからだ。
しかしライダーもさっさと倒したいようで受け止められている車輪を思い切り回転させてラファエルを削り潰そうとする。
「が、あああああああ!?」
「ラファエルさん!」
「早めに決める!」
「ああ!」
二人が一気に決めようと必殺技を放つ体勢になる。
「行くぞ!ジブリール!」
「はい!」
「「スペシウムツインシュート!!」」
二人が放った光線がライダーに向かっていく。しかしそのエネルギーの奔流はライダーが焔の右腕を翳すとグニャリとねじ曲がり、弾かれてしまう。
「光線を捻じ曲げた!?」
「くっ、ツインシュートでも駄目か!」
「でも脚は止まった!」
ジブリールが剣を振り下ろす。しかしライダーは左腕の装甲でその剣を受け止める。
「くっ、受け止めた!?」
「諦めんな!押し込め!」
ミカエルの一声で、全員がさらに力を込める。さしものライダーも流石に三方向に力を分散させるのはどうにも分が悪いようで四人に押されていく。
そして、とうとうそのパワーバランスが崩れると同時に二人の光線とウリエルの一閃がライダーに直撃する。
「………!!」
ライダーは次の瞬間大爆発を引き起こし、焔と共に消える。
それを確認した四人はその場にへたり込む。
「よ、ようやく倒せました……。」
ジブリールがそう呟くと、ラファエルが膝をつくと同時に変身が解除される。
「ラファエル!?」
「……すみません。どうやら私はここでリタイアですわ。」
ボロボロになって申し訳なさそうに謝るルミ。
「……そう。」
「坂田さん……」
「…待ってろ!私達が必ず残りも片付けてくるから!ルミはゆっくり休んでな!」
ミカエルはそう言うと、二人に目配せし、意図を察した二人と共にミカエルは飛び立つその後ろ姿を見上げながらふぅと一息つくとバタンと大の字に倒れた。
「ふっ!」
次々と刀で赤羽が魑魅魍魎を斬り伏せていく。そして一方のエルフは先程きゅーばんちゃんを攻撃した猟犬と対峙する。
「我がシュヴェスターを傷つけた礼はたっぷりとさせて貰うぞそこの犬!」
猟犬はグルルと唸ると素早く舌を伸ばしてエルフへ攻撃する。しかしエルフは右目の青い瞳を輝かせると水流の如き光でその舌を洗い流す。
「なんだか知らないが、貴様は我が聖目が苦手らしいな!」
エルフが目の照準を猟犬に合わせた瞬間、猟犬は煙となって石ころに吸い込まれるように消えていく。
「何?」
エルフが辺りを警戒すると、同時に背後の石から煙が立ち上り、鋭い青い舌が発射される。
「お姉ちゃん後ろ!」
きゅーばんちゃんの叫びに反応して、間一髪その攻撃を避ける。しかしまたもや猟犬は鋭角に姿を消して、奇襲のタイミングを伺う。
どうすれば、と見えない敵の攻撃にエルフが考えあぐねていると。
「お姉さん!私ときゅーばんちゃんとで奴の動きを見つけるから!私達の合図で攻撃を!」
「…何だと?」
愛歩からの提案にエルフは一瞬戸惑う。だが愛歩の案に続くようにきゅーばんちゃんがエルフに言う。
「信じて!!」
「!……愛しいシュヴェスターにそう言われてはな。信じるしかない!」
妹からの支援を受け、エルフは身構える。しかし、相手の意図を察した猟犬は魑魅魍魎達に二人を攻撃するよう指示を出す。
血に飢えた亡者達が一斉に二人に迫る。
が、次の瞬間鮮血が舞い、その返り血を全身に浴びながらも赤羽が立ち塞がる。
「赤羽さん!」
「…私を無視出来る余裕が貴方達にあると思ったの?」
軽く剣を振って血振るいすると、赤羽は“サダルメリクの瞳”を強く輝かせ、自身の分身を大量に作り出す。
「おおっ!?」
「これで多少は時間を稼げるわ。早く決めなさい。」
赤羽の援護を受けて三人は辺り一面を監視する。静寂が流れ、自身の心臓の音がやけに大きく聞こえる。永く感じられた刹那の時が過ぎたその時。
「お姉ちゃん!右!」
きゅーばんちゃんの放った一言に素早く反応したエルフが放った光の水流は……右の岩から滲み出るように現れた猟犬を見事に撃ち抜いた。
「!?」
光が直撃した猟犬はまるで絵の具を洗い流すかのように溶けて消えてしまう。
「お姉ちゃん!!」
きゅーばんちゃんと愛歩がエルフに駆け寄る。二人に駆け寄られ、エルフはポンと頭に手をやり微笑む。
「ありがとうね二人とも。お陰で助かった。」
「ううん!お姉ちゃんも無事で良かった!」
「はい!」
三人が一戦終わって和気藹々としていると。
「そっちは終わったようね。」
どうやら魍魎達を全員血祭りにでもしたのか返り血で全身真っ赤になった赤羽がこっちに歩いて来る。
「お、おわっ」
「……あぁ。悪かったわね。」
思わずビックリした愛歩の反応を見て赤羽は自身の血の汚れを自覚したのか近寄るのを止める。
「ジェッセル(同士)よ。今回の助太刀感謝するぞ。ここで会ったのも何かの縁。この戦いが終わったら勝利の美酒を酌み交わ」
「私、次行くから。後はよろしく。」
そう言うと赤羽は脱兎の如く逃げ出す。その様子を見て、エルフは。
「ふふっ、そんなに恥じらうことはないのに……」
どうやら赤羽が照れて逃げ出したと思ったのかフフッと微笑むエルフを見ながら愛歩がきゅーばんちゃんに言う。
「……面白いお姉さんだね。」
「…お姉ちゃんがすいません。」
次々と刀で赤羽が魑魅魍魎を斬り伏せていく。そして一方のエルフは先程きゅーばんちゃんを攻撃した猟犬と対峙する。
「我がシュヴェスターを傷つけた礼はたっぷりとさせて貰うぞそこの犬!」
猟犬はグルルと唸ると素早く舌を伸ばしてエルフへ攻撃する。しかしエルフは右目の青い瞳を輝かせると水流の如き光でその舌を洗い流す。
「なんだか知らないが、貴様は我が聖目が苦手らしいな!」
エルフが目の照準を猟犬に合わせた瞬間、猟犬は煙となって石ころに吸い込まれるように消えていく。
「何?」
エルフが辺りを警戒すると、同時に背後の石から煙が立ち上り、鋭い青い舌が発射される。
「お姉ちゃん後ろ!」
きゅーばんちゃんの叫びに反応して、間一髪その攻撃を避ける。しかしまたもや猟犬は鋭角に姿を消して、奇襲のタイミングを伺う。
どうすれば、と見えない敵の攻撃にエルフが考えあぐねていると。
「お姉さん!私ときゅーばんちゃんとで奴の動きを見つけるから!私達の合図で攻撃を!」
「…何だと?」
愛歩からの提案にエルフは一瞬戸惑う。だが愛歩の案に続くようにきゅーばんちゃんがエルフに言う。
「信じて!!」
「!……愛しいシュヴェスターにそう言われてはな。信じるしかない!」
妹からの支援を受け、エルフは身構える。しかし、相手の意図を察した猟犬は魑魅魍魎達に二人を攻撃するよう指示を出す。
血に飢えた亡者達が一斉に二人に迫る。
が、次の瞬間鮮血が舞い、その返り血を全身に浴びながらも赤羽が立ち塞がる。
「赤羽さん!」
「…私を無視出来る余裕が貴方達にあると思ったの?」
軽く剣を振って血振るいすると、赤羽は“サダルメリクの瞳”を強く輝かせ、自身の分身を大量に作り出す。
「おおっ!?」
「これで多少は時間を稼げるわ。早く決めなさい。」
赤羽の援護を受けて三人は辺り一面を監視する。静寂が流れ、自身の心臓の音がやけに大きく聞こえる。永く感じられた刹那の時が過ぎたその時。
「お姉ちゃん!右!」
きゅーばんちゃんの放った一言に素早く反応したエルフが放った光の水流は……右の岩から滲み出るように現れた猟犬を見事に撃ち抜いた。
「!?」
光が直撃した猟犬はまるで絵の具を洗い流すかのように溶けて消えてしまう。
「お姉ちゃん!!」
きゅーばんちゃんと愛歩がエルフに駆け寄る。二人に駆け寄られ、エルフはポンと頭に手をやり微笑む。
「ありがとうね二人とも。お陰で助かった。」
「ううん!お姉ちゃんも無事で良かった!」
「はい!」
三人が一戦終わって和気藹々としていると。
「そっちは終わったようね。」
どうやら魍魎達を全員血祭りにでもしたのか返り血で全身真っ赤になった赤羽がこっちに歩いて来る。
「お、おわっ」
「……あぁ。悪かったわね。」
思わずビックリした愛歩の反応を見て赤羽は自身の血の汚れを自覚したのか近寄るのを止める。
「ジェッセル(同士)よ。今回の助太刀感謝するぞ。ここで会ったのも何かの縁。この戦いが終わったら勝利の美酒を酌み交わ」
「私、次行くから。後はよろしく。」
そう言うと赤羽は脱兎の如く逃げ出す。その様子を見て、エルフは。
「ふふっ、そんなに恥じらうことはないのに……」
どうやら赤羽が照れて逃げ出したと思ったのかフフッと微笑むエルフを見ながら愛歩がきゅーばんちゃんに言う。
「……面白いお姉さんだね。」
「…お姉ちゃんがすいません。」
「「かがやけ日常 きらめく夢! 光あふれる 未来めざして!ジョジピュア シャイニング ピュリファイケイション!!」」
キュアテンゴウ、キュアゴダイの二人が片方の手を握り、もう片方の手を翳すとそこから光が放たれる。
「キラ、キライ……ダイスキー!!」
放たれた光は奇雷獣を綺麗に浄化し、消滅させる。
「どっせーい!!」
一方のむらサメは思いっきり飛び上がってもう一体の奇雷獣を蹴り飛ばす。
「へへ!一丁上がりや!」
むらサメが鼻の舌を擦っていると、今度は落とし子にむらサメがド突かれる。
「どあっ!ったく、なんやこの蛸!」
今度はむらサメが落とし子にド突き返すが落とし子は全く意に介しておらず、適当にむらサメをあしらうと今度はピュアテンゴウとピュアゴダイに狙いをつけたのか、ギョロッと目を動かす。
「うわっ、こ、こっちを見てる!」
「蛸のオバケ……!」
二人が異形の存在に戦慄している時だった。光線と火炎が落とし子に直撃し、よろけさせる。
「何?」
二人が攻撃が飛んできた方を見ると、そこには少女二人…雪花とアルタイルがいた。
「ったく、ムカつくシードゥス共を叩き潰したと思ったら、今度はデカい海産物とはね。」
「正直戦いたくないけど、まぁ乗りかかった舟ね。」
エネルギー砲“へオース”を構えた雪花と右腕から炎を滾らせるアルタイル。
「……また、デカブツ。」
氷の剣を持ったエフィが現れる。さらに黒鳥と月乃助、ミカエルとウリエル、ジブリールが揃い踏みをする。
「役者は揃ったって奴かな?」
月乃助がそう言うとウリエルが剣を構えながら皆に忠告する。
「ここにいる皆、気をつけて。奴は再生するし、切断した部分は魚の化け物に変化するわ。」
ウリエルの忠告を聞いたエフィは。
「なら、要は再生させなきゃ良いんでしょ。」
次の瞬間エフィが緋色の剣を振るう。すると無数の斬撃が落とし子を切り刻む。しかし、傷口が再生しない。
見ればその傷口は完全に凍ってしまっており、再生出来ない状態になってしまっていた。
「今よ!ありったけの火力を奴にぶち込んでやるわよ!」
そう言うと各々が最高火力の武装を構える。
雪花が“へオース”を、怪物へと変貌した黒鳥は翼を拡げ、月乃助はピーコックの機体後部のラックから虎の子兵器の円形武器“サークルソーサラー•フィナーレ”を取り出し、アルタイルは全身から焔を滾らせ、ピュアテンゴウとピュアゴダイは手を交差させる。
「……ボク達のエネルギーをミカエルに託す。」
「お願いします!」
ウリエルとジブリールのエネルギーを受け取ったミカエルの身体が光り輝く。
「力が、湧き上がる……!これなら!」
そう言うとミカエルは腕を十字にクロスさせる。
「「「「「「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」」」」」」
全員が叫ぶと同時に最高火力を放つ。放たれた攻撃は途中で合わさり、一つの光の奔流となると落とし子を包み込み崩壊させる。
そして、とうとう光の奔流によって落とし子はチリ一つ残さず消えていく。
大爆発が起き、粉塵が巻き上がる。そして落とし子を倒したのを確認すると、皆脱力してへたり込む。
「はぁ……疲れた。」
「お、終わった。」
皆が終わりを実感する中、雪花が呟く。
「……後は、アンタだけよ。龍香…。」
キュアテンゴウ、キュアゴダイの二人が片方の手を握り、もう片方の手を翳すとそこから光が放たれる。
「キラ、キライ……ダイスキー!!」
放たれた光は奇雷獣を綺麗に浄化し、消滅させる。
「どっせーい!!」
一方のむらサメは思いっきり飛び上がってもう一体の奇雷獣を蹴り飛ばす。
「へへ!一丁上がりや!」
むらサメが鼻の舌を擦っていると、今度は落とし子にむらサメがド突かれる。
「どあっ!ったく、なんやこの蛸!」
今度はむらサメが落とし子にド突き返すが落とし子は全く意に介しておらず、適当にむらサメをあしらうと今度はピュアテンゴウとピュアゴダイに狙いをつけたのか、ギョロッと目を動かす。
「うわっ、こ、こっちを見てる!」
「蛸のオバケ……!」
二人が異形の存在に戦慄している時だった。光線と火炎が落とし子に直撃し、よろけさせる。
「何?」
二人が攻撃が飛んできた方を見ると、そこには少女二人…雪花とアルタイルがいた。
「ったく、ムカつくシードゥス共を叩き潰したと思ったら、今度はデカい海産物とはね。」
「正直戦いたくないけど、まぁ乗りかかった舟ね。」
エネルギー砲“へオース”を構えた雪花と右腕から炎を滾らせるアルタイル。
「……また、デカブツ。」
氷の剣を持ったエフィが現れる。さらに黒鳥と月乃助、ミカエルとウリエル、ジブリールが揃い踏みをする。
「役者は揃ったって奴かな?」
月乃助がそう言うとウリエルが剣を構えながら皆に忠告する。
「ここにいる皆、気をつけて。奴は再生するし、切断した部分は魚の化け物に変化するわ。」
ウリエルの忠告を聞いたエフィは。
「なら、要は再生させなきゃ良いんでしょ。」
次の瞬間エフィが緋色の剣を振るう。すると無数の斬撃が落とし子を切り刻む。しかし、傷口が再生しない。
見ればその傷口は完全に凍ってしまっており、再生出来ない状態になってしまっていた。
「今よ!ありったけの火力を奴にぶち込んでやるわよ!」
そう言うと各々が最高火力の武装を構える。
雪花が“へオース”を、怪物へと変貌した黒鳥は翼を拡げ、月乃助はピーコックの機体後部のラックから虎の子兵器の円形武器“サークルソーサラー•フィナーレ”を取り出し、アルタイルは全身から焔を滾らせ、ピュアテンゴウとピュアゴダイは手を交差させる。
「……ボク達のエネルギーをミカエルに託す。」
「お願いします!」
ウリエルとジブリールのエネルギーを受け取ったミカエルの身体が光り輝く。
「力が、湧き上がる……!これなら!」
そう言うとミカエルは腕を十字にクロスさせる。
「「「「「「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」」」」」」
全員が叫ぶと同時に最高火力を放つ。放たれた攻撃は途中で合わさり、一つの光の奔流となると落とし子を包み込み崩壊させる。
そして、とうとう光の奔流によって落とし子はチリ一つ残さず消えていく。
大爆発が起き、粉塵が巻き上がる。そして落とし子を倒したのを確認すると、皆脱力してへたり込む。
「はぁ……疲れた。」
「お、終わった。」
皆が終わりを実感する中、雪花が呟く。
「……後は、アンタだけよ。龍香…。」
「うあっ」
「無駄だっ!オマエが私に勝てるものか!」
イースは龍香を光弾で吹き飛ばして叫ぶ。龍香は吹き飛ばされながらもすぐに体勢を立て直し、地面に跡を引きずりながら着地する。
「くっ、おぉ!」
龍香は“タイラントブレイド”を構えるとすぐ様距離を詰めて思い切り振り下ろす。
しかし、イースは振り下ろされた刃を受け止める。龍香は思い切り力を込めて、イースに押し込もうとするがすぐにググッと押し返される。
「くっ、ぐっ、なんて力…!?アトロシアスなのに!」
「言ったハズだ!貴様のようなガキに!私が負けるか!」
イースはそう言うと拳を振り上げ、龍香を殴り飛ばす。
「うあっ…!?」
龍香はまたもや地面を転がる。そして怒りのあまり肩で息をするイースを前に、龍香は痛む身体を抑えながら立ち上がる。
「させ……ない!」
「ッ……!」
立ち上がりながらこちらを見据える龍香にイースは困惑する。
「……何故だ。何故私に構う!?何故私をそこまで止めようとする!?何故シズクを想う!?何故他人をそこまで想いやれる!?」
イースの叫び。それを聞きながら龍香は剣を構える。
「……貴方を、シズクちゃんの優しいお父さんのままでいてほしいから。それが、彼女の願いだから。」
龍香がイースに対して静かに言う。
「……だからあなたを止める。もう彼女を悲しませたくない!…親子の愛を、知っている二人が喧嘩終わりで、分かり合えないままなんて悲しいから!」
龍香が叫ぶ。すると青いペンダントが光り輝き始める。
「何!?」
イースどころか龍香も驚く中、シズクのペンダントはスッと龍香に吸い込まれるように消える。
その時、確かに聞こえた。シズクの声が。
《ごめんね。こんなことに巻き込んじゃって。けど…お願い。父を…止めて。》
すると青い光が身体に染み入り、さらに身体中に力が漲る。
「カノープス、これは…」
《…あぁ。スゴイ力だ!これは…!》
カノープスが驚愕混じりに言うと、次の瞬間龍香の身体が七色に輝き始める。
そしてドレスの装甲が徐々に色とりどりの多種多様な恐竜の装飾に変貌し、髪は長く伸びてマントを靡かせる。
完全に姿を変え、さらにマッシヴな姿になった龍香にイースは後ずさる。
「な、なんだその姿は……!?」
「カノープス、これは?」
《……このペンダント、時を越える力があったんだよな、多分俺達が辿る未来の一部から力を前借りしている状態……なのか?》
何やら小難しいことを呟くカノープスに龍香は単刀直入に聞く。
「よく分かんないけどつまり?」
《単刀直入に言うと今のオマエは無茶苦茶強くなってるってことだ。》
龍香はそれを聞くと剣を構え、イースを見据える。しかしイースはその姿を見ると龍香に時計の針のようなエネルギーの津波を龍香に向けて放つ。
「き、さま!その力は!」
龍香は剣を構えると、迫り来るエネルギーの奔流を真正面から睨み付ける。
「行くよカノープス!」
《あぁ!行くぞ!》
「《イリミネーター•エクステンション!!》」
そう叫びながら二人は剣を振り下ろす。振り下ろされた剣撃はイースのエネルギーの奔流とぶつかり、辺りに一面が衝撃の余波で破壊されていく。
しかし剣撃とエネルギーが拮抗したのはほんの一瞬のことであった。龍香が振ったその一撃はすぐにイースのエネルギーの奔流を切り裂き、そしてイースをその一撃の元に吹き飛ばす。
「ぐああああ!!?」
吹き飛ばされたイースが転がると同時にその身体から紫のオーラが放出されていき、そしてそのオーラが完全に出し切られると、そこには一人の冴えない、どこにでもいるような中年の男がいた。
「ぐっ、うぅ、ぐっ。」
男は何とか起きあがろうとするが、どうやら身体に力が入らないらしく、少し呻くと脱力して大の字に倒れる。
「……イース。」
変身が解けた龍香が彼に近寄る。そんな彼女を震える眼で見上げると、イースは自嘲気味に笑う。
「……負けたよ。完敗だ。シズクのことを真に理解し、考えていたのは君達の方だった。」
「……」
「君の父親の言う通りだ。私は、シズクに会いたい一心で闇に手を染めたが……結局私は…」
すると、龍香の身体から青い光が溢れて、それは段々と一人の少女の姿を形作る。
そこにいたのは。
「シズク……」
「……お父さん。もう、疲れたでしょ?一緒に帰ろう?」
「……そうだな。そうしようか、シズク。」
シズクが差し出した手をイースが取ると、二人の身体が徐々に光となって消えていく。最後にシズクがこちらに微笑みかけてきた。それに対して龍香が手を振って返すと、シズクはそのまま父と一緒に光となって天へと昇り、消えていった。
それを見送っているとカノープスが龍香に声をかける。
《…さぁ、俺達も帰るか。》
「うん、そうだね。」
龍香がそう言って振り返ると、向こうから一緒に戦ってくれた仲間達が手を振ってこちらに歩いてきていた。
(……お父さん、お母さん。見て。こんなに友達が出来たの。だから、少しは安心して見守っていてくれるよね。)
龍香は皆に手を振り返しながら、歩き出した。
「無駄だっ!オマエが私に勝てるものか!」
イースは龍香を光弾で吹き飛ばして叫ぶ。龍香は吹き飛ばされながらもすぐに体勢を立て直し、地面に跡を引きずりながら着地する。
「くっ、おぉ!」
龍香は“タイラントブレイド”を構えるとすぐ様距離を詰めて思い切り振り下ろす。
しかし、イースは振り下ろされた刃を受け止める。龍香は思い切り力を込めて、イースに押し込もうとするがすぐにググッと押し返される。
「くっ、ぐっ、なんて力…!?アトロシアスなのに!」
「言ったハズだ!貴様のようなガキに!私が負けるか!」
イースはそう言うと拳を振り上げ、龍香を殴り飛ばす。
「うあっ…!?」
龍香はまたもや地面を転がる。そして怒りのあまり肩で息をするイースを前に、龍香は痛む身体を抑えながら立ち上がる。
「させ……ない!」
「ッ……!」
立ち上がりながらこちらを見据える龍香にイースは困惑する。
「……何故だ。何故私に構う!?何故私をそこまで止めようとする!?何故シズクを想う!?何故他人をそこまで想いやれる!?」
イースの叫び。それを聞きながら龍香は剣を構える。
「……貴方を、シズクちゃんの優しいお父さんのままでいてほしいから。それが、彼女の願いだから。」
龍香がイースに対して静かに言う。
「……だからあなたを止める。もう彼女を悲しませたくない!…親子の愛を、知っている二人が喧嘩終わりで、分かり合えないままなんて悲しいから!」
龍香が叫ぶ。すると青いペンダントが光り輝き始める。
「何!?」
イースどころか龍香も驚く中、シズクのペンダントはスッと龍香に吸い込まれるように消える。
その時、確かに聞こえた。シズクの声が。
《ごめんね。こんなことに巻き込んじゃって。けど…お願い。父を…止めて。》
すると青い光が身体に染み入り、さらに身体中に力が漲る。
「カノープス、これは…」
《…あぁ。スゴイ力だ!これは…!》
カノープスが驚愕混じりに言うと、次の瞬間龍香の身体が七色に輝き始める。
そしてドレスの装甲が徐々に色とりどりの多種多様な恐竜の装飾に変貌し、髪は長く伸びてマントを靡かせる。
完全に姿を変え、さらにマッシヴな姿になった龍香にイースは後ずさる。
「な、なんだその姿は……!?」
「カノープス、これは?」
《……このペンダント、時を越える力があったんだよな、多分俺達が辿る未来の一部から力を前借りしている状態……なのか?》
何やら小難しいことを呟くカノープスに龍香は単刀直入に聞く。
「よく分かんないけどつまり?」
《単刀直入に言うと今のオマエは無茶苦茶強くなってるってことだ。》
龍香はそれを聞くと剣を構え、イースを見据える。しかしイースはその姿を見ると龍香に時計の針のようなエネルギーの津波を龍香に向けて放つ。
「き、さま!その力は!」
龍香は剣を構えると、迫り来るエネルギーの奔流を真正面から睨み付ける。
「行くよカノープス!」
《あぁ!行くぞ!》
「《イリミネーター•エクステンション!!》」
そう叫びながら二人は剣を振り下ろす。振り下ろされた剣撃はイースのエネルギーの奔流とぶつかり、辺りに一面が衝撃の余波で破壊されていく。
しかし剣撃とエネルギーが拮抗したのはほんの一瞬のことであった。龍香が振ったその一撃はすぐにイースのエネルギーの奔流を切り裂き、そしてイースをその一撃の元に吹き飛ばす。
「ぐああああ!!?」
吹き飛ばされたイースが転がると同時にその身体から紫のオーラが放出されていき、そしてそのオーラが完全に出し切られると、そこには一人の冴えない、どこにでもいるような中年の男がいた。
「ぐっ、うぅ、ぐっ。」
男は何とか起きあがろうとするが、どうやら身体に力が入らないらしく、少し呻くと脱力して大の字に倒れる。
「……イース。」
変身が解けた龍香が彼に近寄る。そんな彼女を震える眼で見上げると、イースは自嘲気味に笑う。
「……負けたよ。完敗だ。シズクのことを真に理解し、考えていたのは君達の方だった。」
「……」
「君の父親の言う通りだ。私は、シズクに会いたい一心で闇に手を染めたが……結局私は…」
すると、龍香の身体から青い光が溢れて、それは段々と一人の少女の姿を形作る。
そこにいたのは。
「シズク……」
「……お父さん。もう、疲れたでしょ?一緒に帰ろう?」
「……そうだな。そうしようか、シズク。」
シズクが差し出した手をイースが取ると、二人の身体が徐々に光となって消えていく。最後にシズクがこちらに微笑みかけてきた。それに対して龍香が手を振って返すと、シズクはそのまま父と一緒に光となって天へと昇り、消えていった。
それを見送っているとカノープスが龍香に声をかける。
《…さぁ、俺達も帰るか。》
「うん、そうだね。」
龍香がそう言って振り返ると、向こうから一緒に戦ってくれた仲間達が手を振ってこちらに歩いてきていた。
(……お父さん、お母さん。見て。こんなに友達が出来たの。だから、少しは安心して見守っていてくれるよね。)
龍香は皆に手を振り返しながら、歩き出した。
THE END
「がぁああ!あのクソガキ供!よくも私の計画の邪魔を……!」
人気のない森を満身創痍の女郎蜘蛛が歩く。いや、ボコボコにされ一歩も歩けない状態から短時間で動くまでに回復したその再生力を称賛すべきであろうか。
彼女が歩くたびにボロボロだった身体は徐々に不気味な音を立てながら再生していく。
「くっ、取り敢えず一旦身を隠して、いつかアイツらに」
女郎蜘蛛が目下の目標をどうするか、考えている時だった。
ゾクッと。女郎蜘蛛の身体に悪寒が走る。その気配の発する正体は、女郎蜘蛛の5.6メートル先の背景から滲み出るように現れた。
それは全身に菱形の眼のような装飾を施し、円形の被り物と民族衣装からまるで南米の祈祷師を思わせるような出立ちで、二つに束ねた長い薄紫色の髪に翡翠色の瞳をした女性だった。
突然の来訪者に女郎蜘蛛が警戒する。
「誰、ザマスか?」
「ふふ。私が誰とか別にいいじゃない。そんなことよりも、よくもやってくれたわね貴方達。もう少しで私達の計画がオジャンになるところだったのよ。」
笑顔でケラケラと笑っていた女性が、次の瞬間凄まじい殺気を放ちながら豹変する。
「ヒヤヒヤさせやがって。覚悟は出来てるんだろうな?」
その瞬間本能的に危険を感じた女郎蜘蛛は4本の脚を出現させるとすぐさま女性に攻撃を仕掛ける。
しかし、女性はそれを受け入れるように大きく腕を拡げて右手に身の丈ばかりはあろうかと言う錫杖を出現させ、ニヤリと嗤って。
「栄誉の葬送(エル•レイ•コンキスタ)。」
次の瞬間女性の身体の各部の眼が見開かれ、強い光を放ち辺りが白く包まれ───
人気のない森を満身創痍の女郎蜘蛛が歩く。いや、ボコボコにされ一歩も歩けない状態から短時間で動くまでに回復したその再生力を称賛すべきであろうか。
彼女が歩くたびにボロボロだった身体は徐々に不気味な音を立てながら再生していく。
「くっ、取り敢えず一旦身を隠して、いつかアイツらに」
女郎蜘蛛が目下の目標をどうするか、考えている時だった。
ゾクッと。女郎蜘蛛の身体に悪寒が走る。その気配の発する正体は、女郎蜘蛛の5.6メートル先の背景から滲み出るように現れた。
それは全身に菱形の眼のような装飾を施し、円形の被り物と民族衣装からまるで南米の祈祷師を思わせるような出立ちで、二つに束ねた長い薄紫色の髪に翡翠色の瞳をした女性だった。
突然の来訪者に女郎蜘蛛が警戒する。
「誰、ザマスか?」
「ふふ。私が誰とか別にいいじゃない。そんなことよりも、よくもやってくれたわね貴方達。もう少しで私達の計画がオジャンになるところだったのよ。」
笑顔でケラケラと笑っていた女性が、次の瞬間凄まじい殺気を放ちながら豹変する。
「ヒヤヒヤさせやがって。覚悟は出来てるんだろうな?」
その瞬間本能的に危険を感じた女郎蜘蛛は4本の脚を出現させるとすぐさま女性に攻撃を仕掛ける。
しかし、女性はそれを受け入れるように大きく腕を拡げて右手に身の丈ばかりはあろうかと言う錫杖を出現させ、ニヤリと嗤って。
「栄誉の葬送(エル•レイ•コンキスタ)。」
次の瞬間女性の身体の各部の眼が見開かれ、強い光を放ち辺りが白く包まれ───
「ふぅ。こんなもんかしらね。」
女性はポンポンとボールのように──切断した女郎蜘蛛の首を投げながら山を下りる。
全身を返り血で染めた女性は女郎蜘蛛を投げながら嘲笑う。
「分からないわねぇ?何で負けたのか?何をされたのか?混乱と恐怖に染まったアナタの顔、すっごく滑稽で素敵だったわ。」
そして、女性は一際高く女郎蜘蛛の首を投げると持っていた錫杖を振り、女郎蜘蛛を霧散させる。
「私は王だから。私の前ではどんなものでも頭を垂れ、ひざまづくのよ。」
女性の狂ったような笑い声が暗雲が月を隠す闇夜に響いた。
女性はポンポンとボールのように──切断した女郎蜘蛛の首を投げながら山を下りる。
全身を返り血で染めた女性は女郎蜘蛛を投げながら嘲笑う。
「分からないわねぇ?何で負けたのか?何をされたのか?混乱と恐怖に染まったアナタの顔、すっごく滑稽で素敵だったわ。」
そして、女性は一際高く女郎蜘蛛の首を投げると持っていた錫杖を振り、女郎蜘蛛を霧散させる。
「私は王だから。私の前ではどんなものでも頭を垂れ、ひざまづくのよ。」
女性の狂ったような笑い声が暗雲が月を隠す闇夜に響いた。
To be continued……
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