ファンタジア
ストーリー
概要
アニメーションに音楽を付けるのでは無く、クラシック音楽にアニメーションを融合し芸術性を追求した珍しいタイプの長編映画であり、全8曲が展開されるオムニバスとなっている。音楽を主軸にした短編アニメーションシリーズ『
シリー・シンフォニー』のコンセプトに近い。
当時はディズニーのスタジオが
バーバンク*に移転しており、複数の長編映画を同時制作する体制が整っていたため、前作『
ピノキオ』(1940年)からわずか9ヶ月後の公開を実現した。
ウォルトは演奏会形式の作品を目指し、席を予約制にすること、パンフレットを提供することなどを企画していた。また、作品の一部を別の作品に置き換えて、何度も新しいものとして公開していくアイデアもでていたが、没案となった。日本で行われた
メアリー・ブレア展*では『
ベイビー・バレエ*』という未公開パートの原画が公開された。
公開当初は映画としてではなく音楽作品として認識されていたことや、制作費が膨大であったこともあり、到底利益につながる興行成績は残せなかった。また、世界初のステレオ音声使用作品として、この作品用に
ファンタサウンド*という現在のサラウンドに近い音響システムを開発したが、導入できる映画館がほとんどなかったのも赤字の理由である。前述の公開のアイデアが没になったのもそのためである。
ウォルト・ディズニーは本作に関してあくまで芸術性を追求した結果であるとして、未来の人が楽しめる映画を作ったと考えていたという。
アメリカ映画ベスト100 (1998年):58位
アニメ映画ベスト10 (2008年):5位(ディズニーが、『シュレック』(ドリームワークス)を除く9枠を独占した)
『
2分の1の魔法』(2020年)の魔法表現を創作するにあたって、本作の魔法も研究の対象として使われたとされている。
歴史
1937年12月16日、ストコフスキーは5,000ドルでプロジェクトへ参加することとなり、演奏者を選ぶ権利を得た。演奏には85名のミュージシャンが参加し、1938年1月9日の深夜から3時間にわたって録音が行われた。
『魔法使いの弟子』の製作費が短編としては破格の125,000ドルにまで膨れ上がると、スタジオの財政を担当していた
ロイ・O・ディズニーは弟のウォルトに追加費用を抑えるように忠告したが、逆にウォルトは複数の曲のアニメーションと合わせて長編映画として公開するコンセプトを提案した。1938年2月、ディズニーはストコフスキーに8万ドルを支払い契約を延長した。ウォルトはラジオを聴いて解説役に作曲家・音楽評論家の
ディームズ・テイラーを起用した。9月3日、「できるだけ早くスタジオに来てほしい」と依頼されたテイラーは2日後に
ロサンゼルス*へ向かった。
1938年9月29日、ディズニーのアーティストたち60名が集まってピアノコンサートを開き、『魔法使いの弟子』のラフカット版が上映されたという。
映画は長らく、『Musical Feature』という仮名で呼ばれていたが、約1,800もの案の中からストコフスキーによる『ファンタジア』が採用された。
本作の楽曲において、ウォルトは従来の映画のようにスクリーンの裏から音が聞こえてくるのではなく、観客が指揮者のように立体的な音楽を楽しめるしくみを作りたかった。かねてから新しい技術を採り入れることに積極的だったストコフスキーはウォルトに賛同した。ディズニーと
RCA*のエンジニアは共同で、現在のステレオサラウンドシステムの元祖とも言える「
ファンタサウンド*」を開発。映画の膨大な予算の約5分の1が録音に費やされた。
他の作品同様再公開は行われているが、『ファンタジア』は再公開のたびに、毎回マイナーチェンジが加えられている。
1940年 |
初公開。 |
1941年 |
ステレオ音声の一部をモノラル音声に変更し、上映規模を拡大。 |
1946年 |
『トッカータとフーガ』と解説を全面的にカット。 |
1956年 |
ステレオ音声が一般化され、音響も向上したため、ステレオを再使用。 音声の磁気録音を実施した。 |
1969年 |
『田園』の差別的表現をカット。 当時の大学生を中心に広く受け入れられ、大ヒットを記録。公開から29年後にしてようやく利益を上げる。 |
1982年 |
スコアが劣化し、デジタル・リマスターが不可能であったため、音楽を再録。 それに関するナレーションをヒュー・ダグラス*が担当。 |
1985年 |
1982年をベースに、解説をティム・マシスンが新録。 |
1990年 |
オリジナルの指揮者であったレオポルド・ストコフスキーの協力のもと、公開当時の音源を復元し、デジタル・リマスター化。 |
2000年 |
1940年当時のほぼ全シーンをリマスター化。 実写パートのディームズ・テイラーのナレーション部分が劣化して残っていなかったため、コーリー・バートンが吹替。 |
2000年にはアメリカで『ファンタジア』と『
ファンタジア2000』(1999年)と特典映像をセットにした3枚組のDVDが発売されている。
日本において『ファンタジア』と『ファンタジア2000』がセット販売されたのは2011年。
アメリカ映画ベスト100 (1998年):58位
アニメ映画ベスト10 (2008年):5位(ディズニーが、『シュレック』(ドリームワークス)を除く9枠を独占した)
キャスト
※声のみ差し替え
※VHS・DVD版ではミッキーとストコフスキーの台詞は日本語吹き替え版でも英語(字幕なし)となる。また、VHS・DVD版とBlu-ray版では本編の構成が異なるため、VHS・DVD版のナレーションはBlu-ray版ではディームズ・テイラーの解説に差し替えられている。
- VHS・DVD版:1991年11月1日発売。
- Blu-ray版:2011年4月20日発売。吹替全編新録。
スタッフ
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楽曲
最終更新:2025年03月20日 00:47