ヴァン・ホーエンハイム(鋼の錬金術師)

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ヴァン・ホーエンハイム(鋼の錬金術師) - (2021/09/01 (水) 07:24:38) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/04/14(木) 00:46:05
更新日:2024/04/16 Tue 17:33:52
所要時間:約 8 分で読めます




漫画「鋼の錬金術師」の登場人物。

CV:石塚運昇浪川大輔(若年期)

エドワード(エド)およびアルフォンス(アル)の実父。
トリシャとは籍を入れていないため、妻、息子達とは姓が異なる。
かなりやり手の錬金術師であり、エルリック兄弟は彼の本や研究成果を見て錬金術を学んだ。
名前の由来は錬金術師「パラケルスス」の本名であると思われる。

なおアニメ第一期版は「ホーエンハイム・エルリック」という名前で、設定もかなり異なる。
詳しくはこちらの項目で。


エドとアルの幼年期はリゼンブールで家族と仲睦まじく生活していたが、ある日突然失踪して以降消息不明となる。
その見た目から屈強な肉体と知性を持つシリアスなキャラかと思いきや、実際はかなり天然の入った飄々としたおっさん。
過ちを犯したエドを叱責したりと時には「大人」として描写されることもあるが、基本的には超マイペースに行動している。

だがその一方で、何十年経っても老ける様子が見られない、銃撃を食らってもピンピンしているなど色々おかしい仕様。
時折見せる厭世的な表情や意味深な台詞も特徴的。
ホムンクルスたちの長である「お父様」と瓜二つの見た目をしているため、当初は同一人物ないしは二重人格という考察もあったが…

趣味は鎧の収集で、アルの魂が定着している鎧も彼のコレクションの一つである。


以下ネタバレにつき閲覧注意












実は鋼の錬金術師の中でも最重要クラスの人物で、物語の全ての発端となった張本人。
事実上もう一人の主人公と言っても過言ではなく、特にFA(アニメ二期)では初代OPの冒頭から登場したりとその傾向が顕著。
64話がエドのための最終回なら、63話は彼のための最終回とも言われている。
FAの最終ED『RAY OF LIGHT』は、中川翔子が彼の為に制作した曲である。

結論から言ってしまえば「お父様」とは完全な別人。
彼は不老不死であり、作中では軽く460年以上(アメストリス建国から数えて)は生きている。
公式ガイドの年表ではクセルクセス王国が「有史以前」とされることから、数千年単位である可能性もある。
前述の老けない理由・死なない理由はこれ。
ホーエンハイム自身は自分を「化物」と呼んでおり、イズミたちに真実を語る際には「ヴァン・ホーエンハイムという入れ物の賢者の石」と自称している。
無論これは後述する自身の経歴から自嘲を込めたもの。


元はクセルクセス王国の一奴隷で、実験用に抜かれた血から「ホムンクルス」こと「フラスコの中の小人」(=後の「お父様」)が生まれる。
ホムンクルスに話しかけられても驚く様子もない「物怖じしない性格」を気に入られ、意気投合。
奴隷ゆえに名前を持たず、23号と呼ばれていたが、それでは素っ気がないということでホムンクルスから「ヴァン・ホーエンハイム」という名を付けられる。*1
文字の読み書きや錬金術の知識を教えてくれるホムンクルスと友好を深めていくホーエンハイムだったが、
年老いて死を恐れたクセルクセス国王が不老不死の法をホムンクルスに請うたことで、徐々に運命の歯車が狂い始める。

不老不死の法として「賢者の石」の錬成を国王に吹き込み、錬成陣を作らせたホムンクルスは、密かに錬成した「賢者の石」を自分自身が奪おうと企んでいたのだ。
そして、ホムンクルスは自分が入ったフラスコを持つホーエンハイムをそうとは知らせずに錬成陣の本当の中心に立たせた上で錬成陣を起動。
ホーエンハイム以外のクセルクセス国民は「賢者の石」に錬成され、ホムンクルスはホーエンハイムの血液から得た情報でフラスコの外で活動できる肉体を錬成する。
同時に、ただ一人生き残ったホーエンハイムは、ホムンクルスが錬成した「賢者の石」の半分を取り込まされたことで、望まずして不老不死の肉体を手に入れてしまった。
一日で同胞と故郷を失ったホーエンハイムはそのままホムンクルスと別れ、死なない身体と悲しみを引きずりながら各地を放浪することとなった。

そして、放浪する中訪れた砂漠で行き倒れた際にシンの商人に助けられたホーエンハイムはそのまま東へ渡り、その先のシンで錬金術を医療技術として普及させる。
そのエピソードはシンで今も「金の瞳と髪を持つ西の賢者」として語られており、その医療特化の錬金術は龍脈と結びつき、『錬丹術』となっている。


人間には永い年月を過ごしたことで厭世的になったホーエンハイムだったが、友人であるピナコの紹介でトリシャと出会い、彼女に一目惚れしたことで彼の人生は再び変わる。
縁あってトリシャと実質的な夫婦になることができ、彼女との間に2人の息子を授かったホーエンハイムは、「妻や子供と一緒に老いて死にたい」と切望するようになったのだ。
その方法を研究していくが、「フラスコの中の小人」の更なる暗躍に気づく。最愛の妻と子供達と離れてでもその計画を阻止するべく、何より家族をその陰謀から遠ざけ、守るべく、旅へ出ることを決める。

妻であるトリシャにだけは事前に旅立つ目的を説明し、「顔見たら俺泣いちゃうかも」という理由で息子たちには何も言わずに去ろうとするも、
出発するタイミングでエドとアルが偶然起き出してきたため、息子たちに去り際の姿を見られてしまう。
前述の理由で泣きそうになったホーエンハイムはその激情を抑えようとして意図せず険しい表情を浮かべてしまい、エドに「家も母親も捨てた」と誤解されてしまう。
このことと、後にトリシャが流行病に掛かって死んでしまったことで、エドはホーエンハイムを恨み、確執が生まれることとなった。

ちなみに、作中では人間への情が欠けているような描写があるが、実際は感情表現が苦手なだけであり、息子たちには親バカで妻にはメロメロである。
その愛妻家と親バカっぷりはヒューズと同等かそれ以上。
コミックス14巻末の短編は必見。
一方で自分は不老不死の化物であり、人間としての真っ当な生を過ごしていいのかと苦悩をし、愛する我が子へ触れることすら躊躇していたほどだった。
しかし全てを知ってなおも自分を愛し受け入れた妻の言葉から「共に老いて死にたい」と切望するようになる。
ちなみに作中、家族4人で写った写真があるがホーエンハイムの顔の部分だけ破れてしまっており、どのような表情をしていたか長らく謎であったが、
回想において子供たちを抱きながら涙を流していたことが明らかになった。
人なのか怪しい自分を父と慕う子どもたちの笑顔と、サプライズを入れてまで積極的な家族団らんを勧める妻トリシャの優しさに触れての感動の涙である。

作中きっての涙腺キラーとしても名高く、特に19巻で彼の過去が明かされて以降は人気が高い。 

前述通り錬金術師としての腕前自体が相当高く、また体内には莫大な「賢者の石」を抱えているため、ノーコスト・ノーモーションでの錬成が可能。
突っ立ったまま意図を察したプライドが逃げ切れないほど巨大なドームを錬成するなど、錬成スピードもトップクラス。
賢者の石込みと分かっていたエドでさえ「(はやっ……!?)」と瞠目するあたり相当なもの。
更に傷を負っても即座に回復したりと、その戦闘能力は間違いなく作中トップクラスだろう。
ちなみに本人曰く戦闘は苦手。性格が向いてない。
また、ホーエンハイムは永い年月をかけて自身の「賢者の石」の材料とされた全てのクセルクセス国民の魂(『お父様』との決戦でのセリフから少なくとも53万6329人。)と対話し、荒ぶる彼らをなだめ、信頼関係を結んでいる。
クセルクセス国民の中には善良なものはもちろん、中には死刑囚の極悪人もいたが、
その全員が元凶である『お父様』を倒すこと、後世の者達を自分たちと同じ目を合わせないという目的で一致団結している。
そのためか、『お父様』がホーエンハイムから「賢者の石」を奪おうとした際、『お父様』は何かを感じて奪うのを断念している。

「入れ物」である肉体を破壊すれば「ホムンクルス」は死ぬと思い込んでいたが、対話を済ませた自分同様に対策を立てていた『お父様』の術中に嵌ってしまい、
結果としては人柱として計画通りに国家錬成陣の贄にされてしまう。

が、ホーエンハイムは最悪の事態に対する対抗策を備えていた。
国家錬成陣が発動した際、その一瞬のうち。錬成陣の主要な部分に「賢者の石」である自身の血肉(クセルクセスの国民達)を埋め込み、
錬成陣の効果を無効化し、魂を元の体に戻すように仕掛けていたのである。
『お父様』の計画は無に帰したものの、一瞬と言え「星の真理の扉」を開けたことによってパワーアップした『お父様』の反撃を許してしまい、
結果として残っていた賢者の石も消費してしまい…。

だが、「星の真理」は『お父様』でも手に余るほどの力であったために自滅しはじめ、さらに息子たちの反撃によってとうとう消滅。
アニメでは『お父様』が消え去る直前にはかつて彼と過ごした日々を思い返し、僅かながらも同情を寄せている。

しかし、クセルクセス国民を生贄に錬成された賢者の石の命のストックは、ホムンクルスへの対抗術式や死闘によって大きく消耗しており、
ホムンクルス打倒後にはもはや「ちょうどひとり分」を残すのみとなっていた。
残りの命が一つとなったことで、死闘のダメージや長い人生の反動が体にきていたのか死期を感じたようで、
最後に父親らしいことをしようと、エドにこのひとり分の命、つまりは自分の命と引き換えにアルの肉体を取り戻すように提案する。
最終話で自らの想いを吐露し説得を進めるも、エドワードは自分の信念に加えて口調荒くもホーエンハイムを大切に思う気持ちを語りこの提案を拒否。
エドからようやく『クソ親父』と形はともあれ父親扱いしてもらえた時や、エドが別の方法で身体を取り戻したアルと握手した時は優しい笑顔を見せた。

戦いが終わり、アルの肉体が戻ったことに喜びあふれ、軍人たちが事後処理に動き出す中、
ホーエンハイムはブリッグズ兵から金を借りて一人ひっそりと最愛の妻が眠るリゼンブールの地に戻った。
トリシャの墓の前で息子達の成長や、彼らがたくさんの仲間に支えられていることを心から喜びつつ、
しかしやっぱり死にたくないなと望みつつも、愛する妻の元へと旅立った。


「バカたれが。なんて幸せそうな顔して死んでんだい」


その亡骸は明くる日、ピナコによって発見された。その顔はピナコが評した通り、心底幸せそうな安らかな笑顔だった。
友達がみんな先に逝ってしまうのが嫌、と語ったホーエンハイムであったが、最期にはようやく、友達であるピナコに「見送ってもらえた」と言えるだろう。


なお、彼が借りた金が息子たちによって返されたかは定かではない。






コミックスの最終巻では死後、最愛の妻トリシャと再会して兄弟の成長を喜ぶ姿が書き下ろしで掲載された。
どこまで涙腺キラーな父親なんだろうか……




◆名言集


「この身体色々便利だけど……友達が先に逝ってしまうのが嫌だな」

「うん 俺の一目惚れ。俺メロメロ」

「アル。下ばかり見てないで上を見上げろ。そうすれば見えてくるものもある」

「そうか。理由はなんであってもとりあえず一緒に戦ってくれるんだな」

「もうすぐだ トリシャ……」

「うん ゴリウスさんに聞いたよ」「ダリウスだ」

「俺の息子をバカにするな」

(ちょっとビビった……)

お前本当は 人並みに家族が欲しかったのではないか?

「感情を捨てたお前が『俺達』に簡単に勝てると思うなよ」

「確かに荒ぶる魂一人一人を相手にするのは気が狂いそうになったよ。だがこいつらと対話する時間はたっぷりあった。お前のくれた死ねない身体のおかげでな」
「俺の中にいる五十六万六千三百二十九人、全員と対話を終えている!!」

「邪魔をするかホーエンハイム!」 
「そのためにここに来たんだよ、フラスコの中の小人!」

「俺はもう十分生きた。最後くらい、父親らしいことをさせてくれ」
「バカ言ってんじゃねえよ、クソ親父!!二度とそんな事言うな!はっ倒すぞ!!」
「…はは。やっと親父って呼んで貰えた」


『人より長く生き過ぎるなんてしんどい事ばかりだと思ってた』
『だけどきみや子供達に会えて、生きててよかったと心から思うようになったよ』
『充実した人生だった。そうさ、十分だ』
『あぁ、くそ。でもやっぱり、死にたくねえなぁって思っちゃうな。ホント俺って……しょうがねえなぁ……』






「そうだトリシャ、聞いてくれよ! あいつら、俺の予想外の方法で体を取り戻したんだよ!」
「仲間もいっぱいいてさ! あいつらのために嬉し泣きしてくれる人もいるんだ!」

「もう、いいのね?」
「もう俺達の役目は終わった。あとはこの世界が子供達を強く育ててくれるさ」





「編集を捨てたお前が俺達に簡単に勝てると思うなよ」

「編集?」

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