鋼の錬金術師

登録日:2010/04/04(日) 20:32:04
更新日:2020/02/13 Thu 23:51:42
所要時間:約 6 分で読めます




荒川弘作の少年漫画。

少年ガンガンで2001年8月号より連載開始、2010年7月号にて連載終了。
単行本は全27巻。
最終巻では読んでいると前がよく見えなくなるらしい。
…みんな視力を持ってかれたのだろう。
2003年にオリジナルストーリーでアニメ化、2009年には『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』の題で原作準拠で再びアニメ化された。
(偶然だと思うが、主要キャラの多くがかつての監督が製作した『ガンダム00』と似た人選だったりと面白い。)
劇場版作品も2作上映されている。


ちなみに「荒川弘」というペンネームのせいで勘違いされやすいが、作者は女性である。



■ストーリー

幼き日に母親を亡くした兄・エドワードと弟・アルフォンスのエルリック兄弟は、母親を生き返らせようと錬金術における最大の禁忌、人体錬成を行う。
しかし錬成は失敗し、エドワードは左脚を、アルフォンスは自らの身体全てを失ってしまう。
エドワードは自身の右腕を代価として、アルフォンスの魂を鎧に定着させることに辛うじて成功した。
その後エドワードは自ら失った右腕と左脚に機械鎧(オートメイル)を装着し、一時的に手足を取り戻す。
12歳となったエドワードは国家錬金術師となり二つ名「鋼」を授けられ、アルフォンスと共に元の体に戻る為、絶大な力を持つという『賢者の石』を探す旅に出る。


■主な登場人物

エドワード・エルリック
主人公。通称「エド」。
史上最年少で国家錬金術師の資格を得た錬金術師で、右手と左足が機械鎧(鋼の義肢)なことから「鋼の錬金術師」の二つ名を与えられた。
性格は喧嘩っ早く短気だが、根は優しく弟想いの良いお兄ちゃん。
一般的な錬金術師と違い、錬成陣を使わず、両手を合わせるだけで錬金術が使える。

錬金術師としての才覚は本物で、喧嘩っ早い性格に似つかわしくないほど鋭い洞察力と深い知識量を持ち、
その中でも集中力は人並み外れていて、一度読書や研究に没頭し始めると周囲がまったく見えなくなるほど集中する。
身長が低いことを気にしていて、「チビ」「豆」という単語に過剰反応する。


アルフォンス・エルリック
エドの弟で、通称「アル」。
人体錬成のリバウンドにより肉体の全てを失ってしまうが、エドが自らの「右腕」を対価にアルの魂を錬成し、鎧に定着させたことで一命を取り留める。
体術に関してはエドより強く、喧嘩で負けたことがない。
性格は基本的に優しく大人しいが結構黒い。鎧の中には女性と猫しか入れないと決めている。


ウィンリィ・ロックベル
メインヒロイン。
両親を亡くし、ばっちゃんと愛犬デンと暮らしている。
エルリック兄弟とは幼馴染の機械鎧技師で、エドの機械鎧の製作者。
機械類には目がなく、エドから「機械オタク」といわれる。
アニメ第1期では割とひどい扱いだったが、原作やアニメ第2期ではちゃんとヒロインしている。


ロイ・マスタング
「焔の錬金術師」の二つ名を持つ国家錬金術師。軍人でもあり、階級は大佐。
扱う錬金術の性質上雨の日は無能だが、20代で大佐に上り詰めた実力は相当のもの。
内乱での経験を経て大総統になるという野望を抱いている。

エルリック兄弟に国家錬金術師試験を受けるよう勧めた張本人。
その後もちょくちょく兄弟に世話を焼いており、腐れ縁のような気安い間柄。


リザ・ホークアイ
マスタングの側近の軍人で階級は中尉。
腕利きのスナイパーでもあり「鷹の目」の異名を持つ。
冷静でかなり手厳しいが、根は優しい。
愛犬にブラックハヤテ号という名の黒柴がいる。


マース・ヒューズ
国軍中佐でマスタングとは士官学校以来の友人。
周囲がウザがるほどの愛妻家にして親バカだが、その人柄に支えられている者は多い。
物語序盤にしてある重要な事態に気付く。
しかし……。


アレックス・ルイ・アームストロング
名門・アームストロング家出身の国家錬金術師で階級は少佐。
厳つい外見に反し思わず引いてしまうぐらい暑苦しく涙もろい。
しかし、同時に頼れる実力者でもある。


オリヴィエ・ミラ・アームストロング
アレックスの姉で北方のブリッグズを守る女性少将。
弟とは対照的に苛烈な合理主義者。
だがそれは、国民を守る軍人としての強い意志の表れでもある。


イズミ・カーティス
エルリック兄弟の錬金術の師匠。そして最強の主婦。
人体錬成によって子供を蘇らせようとして失敗し、子宮などの一部内臓を持っていかれた。
その影響でよく吐血するが基本的にギャグ描写であり、日常生活を送る分にはあまり不自由はない模様。

母親をなくしたエルリック兄弟の二人目の母親のような立ち位置でもあり、
兄弟には恐れられつつも慕われている。


傷の男(スカー)
イシュヴァールの武僧。本名は不明。
褐色の肌と赤い瞳に加え、額にある十字の傷と錬成陣(錬金術と錬丹術)の刺青が彫られた腕を持つ。
イシュヴァール殲滅戦での恨みから、国家錬金術師を殺して回っていた。
しかし、多くの人々との出会いや隠された真実を知る中で考えを変化させていく。


リン・ヤオ
シン国の皇子。
次期皇帝になるため不老不死の法を求めてアメストリス国へとやってきた。
フーとその孫娘のランファンを護衛に従えている。
飄々とした世渡り上手だが、臣下や国民のことも真剣に考えている。


メイ・チャン
シン国の皇女。
リンとは腹違いの兄妹だが、家格では遥かに劣っている。
一族の地位を高めるため不老不死の法を探しにアメストリス国にやってくる。
道中ひょんなことから傷の男と行動を共にする。


ヴァン・ホーエンハイム
エルリック兄弟の父親。
金髪眼鏡に特徴的な顎鬚、つかみどころのない性格が特徴。
兄弟が幼いころに家を出て行き、長い間音信不通だった。
本作のカギを握る超重要人物。


■用語

アメストリスにおいて、発展した技術及び学問。
錬成陣を用いて、物質の構成や形を変えて別の物に作り変える技術とそれに伴う理論体系を扱う学問がある。
現実における錬金術とは一部の用語が共通する以外は全く関係がなく、むしろ魔法に近い(作品中では科学技術として位置付けられている)。
基本的に誰でも錬金術は使えるが、自身の力量に見合わぬ錬金術を行使しようとした場合はリバウンドが起こり、場合によっては命すら失ってしまうリスクも存在する。
また、自身の研究成果の盗作・乱用を防ぐ目的で、錬金術師は独自に暗号を考案し、第三者には錬金術とは無関係に見える書式*1で研究成果を記すのが一般的。

  • 等価交換
錬金術における最も根本的な原理。
特に「無から有は作れない(何かを得るには同等の代価が必要)」という点は錬金術に関わらず、
ハガレン世界の重要な思想信条だったりもする。

  • 錬丹術
シン国で発展し、医療方面に特化した錬金術。
錬成の際に必要なエネルギー源は、大地や生物の内にある気の流れ(龍脈)を利用しているという点が大きく異なる。
(アメストリスの錬金術の方は「地殻変動のエネルギーを利用しているらしい」と曖昧に設定されている)

  • 人造人間(ホムンクルス)
錬金術によって生み出された人造人間。
全部で7人おり、七つの大罪から
傲慢(プライド)
色欲(ラスト)
暴食(グラトニー)
嫉妬(エンヴィー)
強欲(グリード)
怠惰(スロウス)
憤怒(ラース)
と言う名をそれぞれ与えられている。

肉体の一部にウロボロスの印を持ち、各々がそれぞれ固有の特殊能力を備えている。

賢者の石を核とする存在であり、賢者の石内の魂の数だけ命を持っているので、
小さな傷から致命傷まで、石に魂のストックがある限りすぐさま治癒する出鱈目な再生力も有する。

  • 機械鎧(オートメイル)
作中で発達している特殊な金属製の義肢。
神経と接続することで自由に動かすことができる、いわゆる「筋電義肢」の一種だが動きの精度が高く、
訓練を積めば生身の手足と全く遜色なく動かすことができる。
イシュヴァール戦争によって義肢の需要が急速に高まり、その関連技術だけがイビツに発達した結果生まれたという設定で、
現実と比べてもあからさまなオーバーテクノロジーである。

一見いいことずくめだが、
1.値段が高い
2.維持費も高い上に、専門家によるこまめなメンテが必要
3.生身の肉体と違って当然成長しないので、成長が終わった成人でない者が装着する場合、成長に合わせて定期的な新調が必要になる(当然出費がかさむ)
4.初回だけでなく、メンテのために取り外した後など、神経接続をするたびに独特の痛みを伴う。気候が変化すると付け根が痛くなる
5.装着には特殊な外科手術が必要な上、使いこなすには最低三年の訓練が必要
(エドは血反吐を吐くような想いをしたがそれでも一年かかった
と、一般の人が持つにはあまりにもハードルが高い代物である。




作者である荒川弘女史はエニックス21世紀マンガ大賞で久方ぶりの「大賞」を獲得し、デビュー時から大きな期待を受けていたが、期待を裏切ることなく連載開始当初からガンガンの看板漫画を期待される人気を獲得していた。
さらに2003年から始まったTVアニメの大ヒットを受け、掲載紙である月刊少年ガンガンの売り上げに多いに貢献した。
その貢献度合いたるや、2002年までは年15万~16万部程度で低迷していたものが、いきなり42万部という、実に3倍近い売り上げ増を記録。
その後もアニメ放映中は30万部強の水準を維持し続けていたが、同時期の他の連載はむしろ本数が減っているほどで、明らかに鋼の錬金術師のみでガンガンの売り上げが支えられている状態にまでなっていた(事実、ハガレン終了後のガンガンは出版不況も相まって7万部程度にまで落ち込む事になる)。

「月刊鋼の錬金術師」とまで一部で囁かれたほどの一局依存状態は最終話が掲載された2010年7月号で最後の爆発を迎える。
売り上げ増を予想して通常の2割増しの部数を発行したにも関わらず、発売後3日程度で全国ほぼどこでも売切れてしまうという事態に。
終いには540円の定価の雑誌が3000円超えのプレミア価格でオークションで売り買いされるまでになり、事態を重く見た編集部は同年9月号に異例の再掲載を行うという対処を行った。
最も、このために紙質を薄いものに変えたり「鈍器」とまで揶揄された極厚の極み1000ページ超えなども相まってか売り上げはむしろ赤字になってしまった様子。

因みに最終巻が発売されたのとほぼ同時に【完全版】の販売が始まった。
…単行本では完全足り得なかったのだろうか。
高価な紙質にカラーページの再現、ラフ画掲載など利点は多いが、代わりにカバー裏やオマケ漫画がなくなったりと一長一短である。
だが完全版5巻、6巻のイズミ師匠とラストのおっぱいは素晴らしいの一言なので一見の価値あり。


作中のBGMを担当している作曲家は野島ドラマで有名な『家なき子(日本テレビ系列)』『聖者の行進(TBS系列)』等、
高い視聴率を誇るドラマのBGM及び歌手の中森明菜の楽曲の編曲を担当している千住明。


お前の追記修正、半分くれ!

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