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鋼の錬金術師

登録日:2010/04/04 Sun 20:32:04
更新日:2026/07/28 Tue 18:33:31
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痛みを伴わない教訓には意義がない
人は何かの犠牲なしに何も得ることなどできないのだから
*1




(はがね)錬金術師(れんきんじゅつし)
FULLMETAL ALCHEMIST


『鋼の錬金術師』とは、荒川弘作の少年漫画作品である。
略称は「ハガレン」
月刊少年ガンガンで2001年8月号より連載開始、2010年7月号にて連載終了。
単行本は全27巻。


概要

錬金術が存在する架空の19世紀ヨーロッパを舞台としたダーク・ファンタジー作品。

作者の荒川はエニックス21世紀マンガ大賞で久方ぶりの「大賞」を獲得し、デビュー時から大きな期待を受けていたが、
期待を裏切ることなく連載開始当初からガンガンの看板漫画を期待される人気を獲得していた。
さらに2003年から始まったTVアニメの大ヒットを受け、掲載紙である月刊少年ガンガンの売り上げに大いに貢献した。
その貢献度合いたるや、2002年までは年15万~16万部程度で低迷していたものが、いきなり42万部という、実に3倍近い売り上げ増を記録。
その後もアニメ放映中は30万部強の水準を維持し続けていたが、同時期の他の連載はむしろ本数が減っているほどで、
明らかに鋼の錬金術師のみでガンガンの売り上げが支えられている状態にまでなっていた(事実、ハガレン終了後のガンガンは出版不況も相まって7万部程度にまで落ち込む事になる)。

「月刊鋼の錬金術師」とまで一部で囁かれたほどの一極依存状態は最終話が掲載された2010年7月号で最後の爆発を迎える。
売り上げ増を予想して通常の2割増しの部数を発行したにもかかわらず、発売後3日程度で全国ほぼどこでも売切れてしまうという事態に。
終いには540円の定価の雑誌が3000円超えのプレミア価格でオークションで売り買いされるまでになり、事態を重く見た編集部は同年9月号に異例の再掲載を行うという対処を行った。
もっとも、このために紙質を薄いものに変えたり「鈍器」とまで揶揄された極厚の極み1000ページ超えなども相まってか、売り上げはむしろ赤字になってしまった様子。

因みに最終巻が発売されたのとほぼ同時に【完全版】の販売が始まった。
…単行本では完全足り得なかったのだろうか。
高価な紙質にカラーページの再現、ラフ画掲載など利点は多いが、代わりにカバー裏やオマケ漫画がなくなったりと一長一短である。
だが完全版5巻、6巻のイズミ師匠とラストのおっぱいは素晴らしいの一言なので一見の価値あり。

ちなみに「荒川弘」というペンネームのせいで勘違いされやすいが、作者は女性である。


メディア展開

アニメ版

2003年にアニメが放送されたが、この時点で連載は続いていたため、一部設定やストーリー展開、結末はアニメオリジナルとなっている。
原作が最終盤に差し掛かっていた2009年には、『鋼の錬金術師 FULLMETAL(フルメタル) ALCHEMIST(アルケミスト)』のタイトルで原作準拠の再アニメ化が行われた。
偶然だと思うが、主要キャラの多くがかつての監督が製作した『ガンダム00』と似た人選だったりと面白い。
劇場版作品も2作上映されている。
劇伴は2003年版では大島ミチル、2009年版は千住明が担当。どちらも放送局はTBS系列の毎日放送。


実写版

山田涼介(Hey!Say!JUMP)主演のシリーズとして全3作が製作されている。
原作最終話までをやや駆け足で描いている、非アジア圏でない登場人物の大半を日本人がウィッグを装着して演じている、
アームストロング少佐をはじめとした独特のマッチョキャラを特殊メイクで強引に再現しているなどの理由から、世間での評判は高い方ではないが、
シナリオや人物描写は、一部省略こそされているが原作に忠実になっている。


ストーリー

幼き日に母親を亡くした兄・エドワードと弟・アルフォンスのエルリック兄弟は、母親を生き返らせようと錬金術を学び始め、
数年間の修行の後、錬金術における「最大の禁忌」の一つ、「人体錬成」を行って亡母を蘇らせようとした。
しかし、人体錬成は失敗に終わり、その代償としてエドワードは左脚を、アルフォンスは自らの身体全てを失ってしまい、
エドワードは自身の右腕を代価としてアルフォンスの魂を錬成し、鎧に定着させることに辛うじて成功した。

その後、エドワードはたまたま故郷を訪れたロイ・マスタングに出会い、自身と同じく「国家錬金術師」を目指すことを勧められる。
失意のどん底にあったエドワードは、失った右腕と左脚、そしてアルフォンスの身体を取り戻す足掛かりとしてまずは国家錬金術師になることを決め、
無くした右腕と左脚に、自身の本当の手足のように動かせる鋼の義肢・『機械鎧(オートメイル)』を装着する手術を行い、短期間で術後のリハビリを完了させると、
12歳という異例の若さで国家錬金術師試験を突破し、「鋼」の二つ名を持つ国家錬金術師となる。

こうして「鋼の錬金術師」となったエドワードは、魂が定着した鎧が実質的な身体となった弟・アルフォンスと共に、
自分たちの元の身体を取り戻すため、伝説によると「『等価交換の原則』を無視した錬金術の行使をも可能とする」という『賢者の石』を探す旅に出る。


主な登場人物

エドワード・エルリック
主人公。通称「エド」。
史上最年少で国家錬金術師の資格を得た錬金術師で、右腕と左脚が機械鎧(鋼の義肢)なことから「鋼の錬金術師」の二つ名を与えられた。
性格は喧嘩っ早く短気だが、根は優しく弟想いの良いお兄ちゃん。
一般的な錬金術師と違い、錬成陣を使わず、両手を合わせるだけで錬金術が使える。

錬金術師としての才覚は本物で、喧嘩っ早い性格に似つかわしくないほど鋭い洞察力と深い知識量を持ち、
その中でも集中力は人並み外れていて、一度読書や研究に没頭し始めると周囲がまったく見えなくなるほど集中する。
身長が低いことを気にしていて、「チビ」「豆」という単語に過剰反応する。


アルフォンス・エルリック
もう一人の主人公。エドの弟で、通称「アル」。
人体錬成のリバウンドにより肉体の全てを失ってしまうが、エドが自らの「右腕」を対価にアルの魂を錬成し、鎧に定着させたことで一命を取り留める。
以降は魂が定着した鎧が仮の肉体となっており、視覚・聴覚はあって普通に喋れる他、鎧を自身の肉体同然に動かせるが、
鎧の中身は空っぽなので、初めてそれを知った人には間違いなく驚かれる他、何かを食べたり飲んだりはできない。

兄のエド同様に錬金術が使えるが、あちらと違って錬成陣を書く必要がある。
反面、体術に関しては生身の肉体の頃からエドより強く、喧嘩で負けたことがないという。
性格は基本的に優しく大人しいが結構黒い。鎧の中には女性と猫しか入れないと決めている。


ウィンリィ・ロックベル
ヒロイン。エルリック兄弟とは幼馴染で、家族同然の間柄。
幼少期に両親を亡くしており、現在は祖母と愛犬のデンと暮らしている。
外科医兼機械鎧技師である祖母に師事する若き機械鎧技師で、エドの機械鎧もウィンリィが製作したもの。
仕事の関係もあって機械鎧を始めとする機械類に目がなく、エドから「機械オタク」といわれる。
2003年版のアニメでは設定やストーリー変更もあって、ヒロインとしてはあまり扱いが良くなかったが、
原作やそれに忠実な2009年度版アニメではヒロインとしての存在感を示し、ファンを喜ばせた。



ロイ・マスタング
「焔の錬金術師」の二つ名を持つ国家錬金術師。軍人でもあり、階級は大佐。
扱う錬金術の性質上雨の日は無能だが、20代で大佐に上り詰めた実力は相当のもの。
内乱での経験を経て大総統になるという野望を抱いている。

エルリック兄弟に国家錬金術師試験を受けるよう勧めた張本人。
その後もちょくちょく兄弟に世話を焼いており、腐れ縁のような気安い間柄。


リザ・ホークアイ
マスタングの側近の軍人で階級は中尉。
腕利きのスナイパーでもあり、「鷹の目」の異名を持つ。
仕事中は冷静沈着で、上司であるマスタングにも(サボっていたりすると)手厳しく接する場面が多いが、
根は優しい女性であり、ウィンリィとは姉妹のように仲が良い他、エルリック兄弟のことも(年長者として)気に掛けている。
引き取り手のいない黒柴の仔犬を引き取るなど動物にも優しいが、躾は厳しいらしい。
また、その仔犬に「ブラックハヤテ号」と名付けるなど、ネーミングセンスが壊滅的という欠点も。


マース・ヒューズ
国軍中佐でマスタングとは士官学校以来の友人。
周囲がウザがるほどの愛妻家にして親バカだが、その人柄に支えられている者は多い。
物語序盤にしてある重要な事態に気付く。
しかし……。


アレックス・ルイ・アームストロング
名門・アームストロング家出身の国家錬金術師で階級は少佐。
筋骨隆々の偉丈夫で、立派な口ひげがトレードマーク。
錬金術や戦闘能力のみならず、実家に代々伝わる様々な技能を会得している頼れる実力者。
涙もろく情に篤い性格で、エルリック兄弟も時に暑苦しがりつつも信頼しているが、
それが「甘さ」となってしまうこともあり、後述の姉からは明確に「欠点(の一つ)」と指摘されている。


オリヴィエ・ミラ・アームストロング
アレックスの姉で北方のブリッグズを守る女性少将。
弟とは対照的に苛烈な合理主義者。
だがそれは、国民を守る軍人としての強い意志の表れでもある。


イズミ・カーティス
エルリック兄弟の錬金術の師匠。そして最強の主婦。
人体錬成によって子供を蘇らせようとして失敗し、子宮などの一部内臓を持っていかれた。
その影響でよく吐血するが基本的にギャグ描写であり、日常生活を送る分にはあまり不自由はない模様。

幼少期に母親を亡くしたエルリック兄弟にとっては二人目の母親のような存在でもあり、
兄弟からは、師匠としては恐れられつつも同時に慕われているだけでなく、
イズミも時に母親のような目線で兄弟に接している他、イズミの夫も我が子のように兄弟を可愛がっている。


傷の男(スカー)
イシュヴァールの武僧。本名は不明。
褐色の肌と赤い瞳に加え、額にある十字の傷と錬成陣(錬金術と錬丹術)の刺青が彫られた腕を持つ。
イシュヴァール殲滅戦での恨みから、国家錬金術師を殺して回っていた。
しかし、多くの人々との出会いや隠された真実を知る中で考えを変化させていく。


リン・ヤオ
シン国の皇子。
次期皇帝になるため不老不死の法を求めてアメストリス国へとやってきた。
フーとその孫娘のランファンを護衛に従えている。
飄々とした世渡り上手だが、臣下や国民のことも真剣に考えている。


メイ・チャン
シン国の皇女。
リンとは腹違いの兄妹だが、家格では遥かに劣っている。
一族の地位を高めるため不老不死の法を探しにアメストリス国にやってくる。
道中ひょんなことから傷の男と行動を共にする。


ヴァン・ホーエンハイム
エルリック兄弟の父親。
金髪眼鏡に特徴的な顎鬚、つかみどころのない性格が特徴。
兄弟が幼いころに家を出て行き、長い間音信不通だった。
本作のカギを握る超重要人物。

用語

  • 錬金術
アメストリスにおいて、発展した技術及び学問。
錬成陣を用いて、物質の構成や形を変えて別の物に作り変える技術と、それに伴う理論体系を扱う学問がある。
現実に即してザックリまとめると、物質そのものを変えることは出来ないが、それ以外であれば大体の化学反応に準じた現象を可能とする。
具体的には
  1. 鉄の塊の形を変えて槍や刃にする
  2. 空気中の水素と酸素を結合させ、その際の爆発で攻撃する
といった感じ。

現実における錬金術とは一部の用語が共通する以外は全く関係がなく、むしろ魔法に近い(作品中では科学技術として位置付けられている)。
基本的に誰でも錬金術は使えるが、自身の力量に見合わぬ錬金術を行使しようとした場合はリバウンドが起こり、場合によっては命すら失ってしまうリスクも存在する。
また、 死んだ人間を含めて人体を錬金術で生み出す『人体錬成』は特に禁じられている

錬金術の発展のために、国が公認した錬金術師。国家資格であり、エドワードはこれを史上最低年齢で合格している。
研究費として他の仕事をしなくても1年暮らしていけるくらいの予算やその他諸々の特権を貰えるが、年1回の査定をクリアしなければならない事と、戦時には軍の招集に応じなければならない事が義務として課される*2
軍にも国家錬金術師の資格を持つ者がおり、錬金術の力を戦力として扱っている他、査定を免除されている。
自身の研究成果の盗作・乱用を防ぐ目的で、錬金術師は独自に暗号を考案し、第三者には錬金術とは無関係に見える書式*3で研究成果を記すのが一般的。

  • 等価交換
錬金術における最も根本的な原理。
中でも「何かを得るには同等の代価が必要」「無から有は作れない」という点は、
錬金術だけに留まらず、この作品の世界観においても重要な思想信条だったりもする。

↑の等価交換の法則を無視して何でも錬成できてしまうと言われている都市伝説的な物体。
「母親を蘇らせる」ことから「元の体を取り戻す」ことに目的をシフトしたエルリック兄弟の当面の目標であり、物語序盤~中盤はこれを探し求める旅・終盤にかけてはこれが用いられる激戦が描かれている。

  • 真理(の扉)
禁忌となる人体錬成を行った術者が飛ばされる異空間。
術者を反映させた黒い扉と、当人を模したような『白い何か』が居座っている以外は全て真っ白な空間。

ココに飛ばされると、術者の“扉“が開き、奇妙な一つ目と黒い手が現れ、扉の奥に引き摺り込み、錬金術のあらゆる知識を脳が焼き切れる勢いで強制的に流し込む。

それにより、錬金術の本質を理解させられる事で、錬成陣無しでの『手合わせ錬金』が可能になる。*4

但し人体錬成の代償として、扉の『通行料』と称して術者の体の一部を【持って行かれる】。
これによって奪われた肉体等は、如何なる医療技術でも取り戻せず、取り返すには賢者の石や、生きた他人を『通行料(代価)』として犠牲にする必要が有る。

  • 錬丹術
シン国で発展し、医療方面に特化した錬金術。
錬成の際に必要なエネルギー源は、大地や生物の内にある気の流れ(龍脈)を利用しているという点が大きく異なる。
(アメストリスの錬金術の方は「地殻変動のエネルギーを利用しているらしい」と曖昧に設定されている)

錬金術によって生み出された人造人間
全部で7人おり、七つの大罪から
傲慢(プライド)
色欲(ラスト)
暴食(グラトニー)
嫉妬(エンヴィー)
強欲(グリード)
怠惰(スロウス)
憤怒(ラース)
と言う名をそれぞれ与えられている。

肉体の一部にウロボロスの印を持ち、各々がそれぞれ固有の特殊能力を備えている。

賢者の石を核とする存在であり、賢者の石内の魂の数だけ命を持っているので、
小さな傷から致命傷まで、石に魂のストックがある限りすぐさま治癒する出鱈目な再生力も有する。

  • 機械鎧(オートメイル)
作中で発達している特殊な金属製の義肢。
神経と接続することで自由に動かすことができる、いわゆる「筋電義肢」の一種だが、
動きの精度が高く、訓練を積めば生身の手足と全く遜色なく動かすことができる。
イシュヴァール戦争によって義肢の需要が急速に高まり、その関連技術だけがイビツに発達した結果生まれたという設定で、
現実と比べてもあからさまなオーバーテクノロジーである。

一見いいことずくめだが、
1.値段が高い
2.維持費も高い上に、専門家によるこまめなメンテが必要
3.生身の肉体と違って当然成長しないので、成長が終わった成人でない者が装着する場合、成長に合わせて定期的な新調が必要になる(当然出費がかさむ)
4.初回だけでなく、メンテのために取り外した後など、神経接続をするたびに独特の痛みを伴う他、気候が変化すると付け根が痛くなる
5.装着には特殊な外科手術が必要な上、使いこなすには最低三年の訓練が必要(エドは血反吐を吐くような思いをして短期間で終わらせたが、それでも一年かかった
と、一般の人が持つにはあまりにもハードルが高い代物で、普通の義手義足で済ませている者もいる。


余談

ガンガンの発行元であるスクエニが制作したゲーム『半熟英雄4 〜7人の半熟英雄〜』には
タガメの錬金術師」というエルリック兄弟をタガメの姿にしたパロディのエッグモンスターが登場する。
ちゃんと作者公認、しかも中の人もアニメ版と同じという「もはやパロディじゃなくて本物を出しても良いのでは?」というくらいのガチっぷり。
ただ、その技には月刊少年ガンガンを錬成して敵に叩きつけるという明らかに宣伝ものがあったためか、『半熟英雄4』は集英社などの漫画誌には記事が載らなかったと言われている。
まさにこれぞ等価交換


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最終更新:2026年07月28日 18:33

*1 原作漫画の第1巻冒頭より。

*2 軍人としては少佐相当の立ち位置が与えられる

*3 たとえばエドは旅行記、マスタングは女性とのデート予定表に見えるような暗号で研究成果を記している。

*4 手を合わせる事で手~肩で錬金術に必要な“円“を作る事で、錬成陣を省略する。