ビッグ5(大量絶滅)

「ビッグ5(大量絶滅)」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

ビッグ5(大量絶滅) - (2023/12/20 (水) 11:07:50) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2014/08/18(月) 01:19:23
更新日:2024/03/31 Sun 15:45:51
所要時間:約 ? 分で読めます




地球、この類まれなる宇宙の宝石は46億年に渡り多彩な生命を育んできた宇宙のゆりかごである。
しかし、時にゆりかごは今まで育ててきた子らを滅す地獄にもなる。
その中でも、特に破滅的な5つの大絶滅をビッグ5と呼ぶ。
この項目ではその5つを順に紹介していく。

<目次>


オルドビス紀末~宇宙からの贈り物~

4億4000万年前頃に発生した筆石や三葉虫らが巻き込まれた大絶滅で、当時の生物種の内85%が絶滅したと言われる。
ここで命脈を完全に絶たれた生物にメジャーどころはあまりいないが、三葉虫や筆石あたりは大半の種が滅び多様性を失い、この時期までの勢いを削ぎ落とされた。
そしてこの次の時代に魚類が一気に発展、海を埋め尽くしていくことになる。

原因については寒冷化やそれに伴う海退で環境が変わったからと言われるが、近年になりNASAとカンザス大学により、6000光年ほどの距離で超新星爆発が起こり、それに伴うガンマ線バーストを浴びて絶滅が起こったという説が出された。
ガンマ線バーストによりオゾン層が一瞬で破壊され、回復までの数年太陽風などの宇宙線や紫外線に晒され続けた結果、あっという間に生態系が崩壊してしまったという仮説である。



デボン紀後期~海洋無酸素事変~

3億7000万年前頃に発生した板皮類などの甲冑魚と呼ばれる初期の魚類が致命的打撃を受けた大絶滅であり、今回も82%ほどの生物種が絶滅したとされる。
次の時代である石炭紀からは現代にも生きる軟骨魚類や硬骨魚類がこの大絶滅を凌ぎ、甲冑魚からニッチを奪い尽くし、そして陸へも進出していく。

この大絶滅が起こった理由としてあげられるのは寒冷化と海洋無酸素事変。
海洋無酸素事変とは温暖化で極地の氷が溶けて海流が止まり、海水が澱むことで起きる全地球規模の赤潮みたいなもの。
寒冷化は温暖化及び海流が止まる海洋無酸素事変からの揺り戻しで極地の氷が発達することで起こる、いわばワンセットの事象である。
温暖化と寒冷化は大規模火山活動と連動することが多いが、この絶滅でも火山活動が絡んでいるのかははっきりしていない。他にも大型の天体が衝突した痕跡が残されているが、因果関係は不明。



ペルム紀末期~P-T境界、史上最悪の大絶滅~

2億5000万年前頃に起こった掛け値なしに地球史上最大最悪の大絶滅。この事件で絶滅した生物種は全体で90~95%と推測される。
原因については海退による環境変化が招いたとされてきたが、プレートテクトニクス論やプルームテクトニクス論の発達により、超大陸パンゲアが完成した影響で、地球内部のマントルの大きな流れであり、本来地表に届かず内部で対流するはずの「スーパープルーム」と呼ばれるモノ(マントル内の高熱流)が地表で噴出した=超大規模火山の噴火が最大の要因という説が最有力視されるようになった。
今でもシベリアのど真ん中に広大な玄武岩質の台地を残すほどの破滅的な火山活動により短期的には寒冷化、その後温室効果ガスで強烈な地球温暖化が発生し、更に火山ガスが充満し酸性雨で植物は枯れ酸素濃度が著しく減少したとみられる。

海ではスーパープルームの噴出に先んじて再び無酸素事変が発生したが、この時はなんと1000万年以上*1の間酸欠状態となった。
前回の無酸素事変でも大量の犠牲を払ったのに今回は1000万年、10倍の期間の酸欠である。
こうして地上は凄まじい酷暑と火山ガスの坩堝、海は循環が止まり澱みきった中で1000万年以上に渡る酸欠が続く。地球は逃げ場のない地獄と化した。
そりゃゴジラムートーも尻尾巻いて逃げるというものである。地球怖い。

この時期の地上の覇者であった単弓類や爬虫類は多様性を大きく削がれ、二度の大絶滅を何とか凌いだが種としてはすでに瀕死に等しかった三葉虫はこの大絶滅でついに命脈を絶たれた。
他にもウミユリやアンモナイト、腕足類などの古い時代から生きてきた種に強烈なダメージを与えた。
特筆すべき点は昆虫が大絶滅に巻き込まれた点である。デボン紀にはすでに陸に上がっておりデボン紀後期の大絶滅にも巻き込まれたのだが他に比べると影響を少なくして乗り切っていたし、この後にも目単位で2つ失うくらいで済んでいた*2くらい環境変動に強い生物種であり、この時すでに22目を誇る地上最大勢力だった。しかしこの時に全目の35%以上にあたる8目もが消滅、5目が多くの種を失い壊滅的打撃を受けた。当時から地上で最も繁栄しており、今も繁栄し続けている昆虫すらこのありさま。
地上から95%の生物種が消えるということは、これほどまでに凄まじいものなのである。

しかし、この大破局からも立ち上がり進化する者達がいた。
ペルム紀の王者単弓類、単弓類にやや後れを取ったがこの大絶滅を期に一気に大勢力を築き上げた主竜類などなど。
残された5%である彼らの進化・適応放散が、新たな時代を形作っていくのである。



三畳紀末~早すぎる襲来~

ペルム紀末の災厄は非常に強烈であった。生き残った者たちが立ち直り、新たな種が増加に転じるまでなんと1000万年を要した。*3
あまりに他の生物がいないので捕食者に弱すぎて他の生物がいないところにしか住めないストロマトライトが大繁栄したくらいである。*4

それでも1000万年経つと、今でも生きている種で言うとワニに代表されるクルロタルシ類など爬虫類が猛烈な勢いであらゆるニッチに飛び込んでいった。
爬虫類のイルカこと魚竜や、空を駆ける翼竜、恐竜、単弓類からより哺乳類に近づいた獣弓類や哺乳形類。
様々な生物が現れ、新たな時代を作っていった。

このように豊かな生物相の復興が成し遂げられた三畳紀の末、大体2億年前ごろに前回からのインターバルがたったの5000万年という短いスパンでまたも大絶滅がやって来た。
1000万年立ち直りにかかったことを考えれば実質4000万年で次が来てしまったという、当時の地上の覇者たちに取っては不幸以外の何物でもないイベントである。

この絶滅は主竜類の大半に壊滅的なダメージを与え、かつてテコドントで括られた主竜類のメインストリームを構成していた多くの種を滅ぼした。
そして、獣弓類や哺乳形類として進化し生き延び、主竜類と競い合っていた単弓類は勢力の殆どを失い、真の哺乳類に進化したグループなど僅かな生き残りのみが細々と生きることになる。
海ではペルム紀末期を瀕死になりつつ生き延び、再び繁栄を始めたアンモナイトはまた古い形質を残した多くの種を絶たれ、アンモナイト亜綱を構成する内アンモナイト目のみが生き残るほどに痛めつけられた。
ただ、今回は前回に比べると優しい?方だったようで絶滅した種の総計は全体の75%くらいだという。
…ペルム紀のアレがどれだけ規格外かお分かりいただけるであろう。

原因としては、現在の大西洋辺りで起こった火山活動や、カナダのマニクアガン・クレーターを作った天体衝突が候補として挙げられている。
この絶滅の時、当時大繁栄していた主竜類でも傍流の位置にいた恐竜はしっかり生き延び、一気に地球の覇者となっていく。



白亜紀末~K-Pg境界、宇宙からの贈り物Part2~

6500万年前に起こった、最もメジャーな大絶滅。これにより恐竜はもちろんモササウルス類・首長竜・海棲ワニ・翼竜・アンモナイト・淡水サメ類らが絶滅した。
…んだが、失われた種の割合でいうと最もメジャーな割に70%に留まる。ペルム紀のアレと比べると小物もいいところに見えるような気さえしてくるのが怖い。&footnote(割合で見ると少ないものの、この頃には種の総数が大分増えてはいるので、実数で言えばかなり多い部類に入る
なおK-Pg境界とは白亜紀のドイツ語表記Kreideと古第三紀Pa。)
leogeneの中間の時期を指す。
かつては第三紀*5の英語表記TertiaryからK-T境界と呼ばれていたが、現在はK-Pg境界が正式な名称。

最もメジャーな古生物である恐竜がいなくなったイベントなだけあって原因は多数挙げられた。
それを列挙するだけで項目になるくらいである。本当。
その中でも恐竜とそれ以外の生物、特に水棲生物の絶滅を説明でき、地層からも裏付けが取れる天体衝突説と、当時の大規模なクレーターが見つからないこと、インドのデカン高原を形成した大規模な火山活動がちょうど白亜紀末期に当たることから対抗として提出された火山活動説。
この2つがしばらく反目しあっていたのだが、1991年にユカタン半島北部沖合にある直径170kmに及ぶ「凹み」が、6500万年前頃の天体衝突により形成された巨大なクレーターであると推定され、天体衝突説が最有力視されるようになった。
以前から当地の石油採掘会社などが調査し、凹みがあるのはわかっていたのだがほんの一部にしか知られておらず、白亜紀末期・K-Pg境界と関連付けられることはそれまでなかったのである。

チクシュルーブ・クレーターと名付けられたその凹み、詳しい調査がされた結果直径200km、深さ最大25kmというかなりの規模のもので、結構なサイズの天体が衝突したことで出来たクレーターであることが判明した。
今まではあやふやな仮定だったものだったが、ここからより精確な推察が為された。
そこからこの絶滅の実態が鮮明に推測された。起こった事象は様々だが、主な要因についてかいつまんで書くと
  • 粉塵による衝突の冬で急速に寒冷化していく環境の激変
  • 衝突の際に発生した物質による強烈な酸性雨により植物や植物性プランクトンが死滅することによる酸欠状態
この2つが決定打になったと推定されている。ただ、粉塵による遮光や酸性雨の程度については議論になる所も多く、確かなところはまだ完全には解明されたわけではない。
このチクシュルーブ・クレーターの発見や、デカン高原を構成するデカントラップの噴出時期が6600万年前頃、大絶滅にやや先駆けて起こったということがわかったことなど様々な事実の積み重ねから、2010年には40人の研究者によりK-Pg境界の大絶滅は直径10kmほどの天体が地球に衝突したことにより発生した可能性が最も高いとついに結論付けられた。

今ではユリ花粉の痕跡から、衝突したのは6月ごろとまで推定出来るくらいに研究が進んでいるのでゲシェンクが寄生した卵の化石や、ゲッター線が降り注いだ痕跡キングギドラによる大量殺戮の証拠などこれをひっくり返すような決定的証拠でも出ない限り、恐らく確定であろう。
…と書いてしまったが、デカントラップの流出と隕石の衝突が前後5万年程度*6で同時多発的に起こったという調査結果が発表された。
まさかの火山と隕石のダブルパンチ説が真実味を帯びてきた。

恐竜は、ペルム紀末期の大絶滅の際に気嚢を備えることにより酸欠に適応することで生き延びた者たちの子孫であり、酸欠はそう問題ではなかったと思われるが、気温の低下や餌の減少は応えたであろう。温血動物となっていた場合は少ない食料では維持が厳しいし
変温動物的な面を備えていたならば、寒冷化と日照時間の減少で外気で温める事ができないということは行動を起こせないということと同義である。
三畳紀以降はペルム紀末期の超地球温暖化や破滅的火山活動の残滓が残っていたのか火山活動も非常に活発で温室効果ガスが多量に排出されたこともあり、平均気温が非常に高く急速な寒冷化はほとんどの生物にとっての致命傷になったと考えられている。
植物の枯死による食料枯渇と極寒、この合わせ技で恐竜ら大型爬虫類・アンモナイトなど古い形質を残した生物たちは滅んでいった。

この絶滅の後、中生代ですでに恐竜から分化し空の王の座を翼竜らと争っていた鳥類が再び地上に舞い戻り、単弓類の末裔である哺乳類と苛烈な生存競争を繰り広げ、それに勝利した哺乳類が地上を征し、なんやかやあって生まれたのが我々人類である。

余談になるが、恐竜の絶滅というポイントについては天体衝突で急速に滅んだというよりは、種の限界点が近づいており、天体衝突以前にすでに衰退期でありどうあれ緩やかに滅んでいたという説もある。
北米では6500万年前に近づくに連れ、化石の多様性が失われていっているという研究結果から、ある程度の支持を得ている。
ただし、ティラノサウルストリケラトプスなど進化の極限とも言える種は6500万年前に近い時期に出現しており、全盛期が過ぎたとは言い難いところもある。
また、天体衝突説以前からインドのデカン高原を形成した大規模火山活動がこの時期に重なっていることを指摘する説があり、「種の限界点を過ぎた」という具体性を欠くものより、この火山活動で生態系がかなり痛めつけられていたタイミングで隕石が落ちて来てしまった、という方が正しい解釈なのかもしれない。ちなみに長きにわたるジュラ紀、白亜紀の中でも何度も大規模火山による環境の激変はあったようで、恐竜や海棲爬虫類などは数度にわたり刷新されている(かのティラノサウルスやトリケラトプスにしてもそうである。これらの恐竜の祖先は小型で目立たない存在に過ぎなかったが、かつて栄えた大型種の絶滅により大型化しメジャーな存在になれたのである)。
竜脚類の一種であるアラモサウルスのある化石は、年代測定にかけたところ暁新世のごく初期の化石と鑑定されたという研究結果も存在する。*7
これが正しければ、白亜紀以降も100万年程度生き延びていたという事になる。
とどめを刺したのは天体衝突でほぼ間違いはないが、恐竜という種の最期には未だ謎は多い。
余談ながら、このクラスの大量絶滅を引き起こす巨大隕石の衝突する確率は、約一億年に一回ほどである。



番外~人類が当事者?~

さて、ここまで5つの大絶滅を見てきたが、他にも中規模?の絶滅はそれなりに存在した。
先カンブリア時代の終わりに起こり、エディアカラ動物群の殆どを滅ぼしたものなどがある。

そして、今現在も研究者によっては大絶滅の最中と定義されている。
1万年前の更新世末期、氷河期の終わりから現在に至るまでかなりの種が絶滅しているのは事実であり、特に最近は加速度的に絶滅が進んでいる。
原因は地球温暖化などの環境変動も一因とされているが、温暖化の発生原因も含めて*8人類という、たった一種の生物の野放図な活動が招いているという点で今までのものと決定的に異なる。

まだ上記5つとは規模で比べればまだまだ小さいものの、意味もない大殺戮で急速に滅ぼし次世代に繋ぐ因子を一切残さない*9絶滅があるという点で非常に質が悪く、人類の野放図な活動は生態系にこれまでにない致命的な悪影響を及ぼしているとする考えである。
とはいえ、ドモンが言ったように「人類も自然の一部」という論ももちろんある。人類により軽々と淘汰されるならそこまでの強さしか無い、いずれ敗北し滅ぶ種とする考えも出来なくはない。*10

しかし、破滅的な環境変動に依らずある一種の動物の裁量一つで無数の種を滅ぼすことが出来てしまう、というのは地球の歴史の中でも未曾有の出来事である。
その気になれば20億のリョコウバトを鏖殺し、遺伝子プールから痕跡すら消し去る事ができ、ヤマネコやオオカミを飼いならし品種改良という名の遺伝子改造でイエネコやイヌというまるっと違う種を作り出し、保護の名の下に一定の環境への依存度が高く脆弱な生物であるパンダを絶滅させないように振る舞う。
いままでの環境を征してきた生き物たちはそのようなことは出来なかったし考えもしなかったであろう。
自然淘汰から逸脱し、他の種に対し殺すも生かすも気分や思想次第。
生態系に対して勝手気儘に振る舞えてしまうというのは幸福なのか、不幸なのか。

いずれ人類も大絶滅に直面し、絶滅していくのかもしれない。
それが自ら生態系の多様さを奪った結果、発生した絶滅の連鎖による自爆的な最期でないことを祈りたいものである。
…その前に内ゲバで核兵器使って自ら消えそうでもあるが。



将来~最後の大絶滅~

人類の影響があろうがなかろうが、今後も大量絶滅は発生していくことだろう。
前述の通り、恐竜の絶滅を引き起きたような隕石は一億年に一回程度の確率で衝突すると考えられており、全球氷結や海洋の無酸素化といった地球環境の激変が再び発生するかもしれない。
それでも何らかの生命はしぶとく生き残り、次の時代にまた新たな発展を遂げていくことだろう。

だが、現在から6億年ほど経過した頃、今までとは一線を画す空前の大量絶滅が発生すると予測されている。
太陽が年齢を重ねることで、地球に降り注ぐ日光が次第に強くなっていくのだ。
これによって地球の気温は上昇するが、この時点ではまだ金星のような灼熱地獄に陥るほどのものではない。
では何が問題になるかというと、日照量の増加により岩石の風化が加速し、大気中の二酸化炭素を吸収してしまうのだ。
そして大半の植物が光合成を行えなくなるまでに二酸化炭素濃度が低下するのが約6億年後と見積もられているのである。

トウモロコシなどのように二酸化炭素濃度が低くても光合成を行える植物も存在するが、この能力を持つものは現在の植物種の1%程度に過ぎず、残る99%の植物は絶滅する運命にある。
食物連鎖の基盤となる植物と、それによって供給されていた酸素が失われた時、動物がどうなるかは……語るまでもないだろう。

低い二酸化炭素濃度での光合成が可能な植物にとっては繁栄のチャンスとなるため、それらの植物が迅速な勢力の拡大に成功すれば、酸素供給は維持され、動物への影響も最小限に抑えられるかもしれない。
しかしその後も太陽の光度が上昇を続けていく以上、二酸化炭素濃度の減少も止むことはなく、いずれはそれらの植物も光合成が不可能となって絶滅することとなる。
気温の上昇で地球が完全に死の星となるまでにはまだ数億年の猶予があるが、この時点で複雑な生物の殆どは退場することになると考えられている。



追記・修正はゴキブリのように3回の大絶滅を生き延びてからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/