GODZILLA ゴジラ

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GODZILLA ゴジラ - (2021/07/09 (金) 14:41:38) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2014/09/20(土) 22:56:22
更新日:2024/02/04 Sun 21:13:31
所要時間:約 21 分で読めます







――人類が傲慢なのは、自然は人間の支配下にあり、その逆ではないと考えている点だ――

(生物科学者:芹沢猪四郎)




世界が終わる、

ゴジラが目覚める。






『GODZILLA ゴジラ』とは、2014年に公開された映画。
マグロ食ってる爬虫類とは一味違った「怪獣映画」である。

監督は低予算怪獣映画「モンスターズ/地球外生命体」で名を上げたイギリス人ギャレス・エドワーズ。
制作は「ダークナイト」や「パシフィック・リム」でお馴染みの特撮専門映画会社レジェンダリー・ピクチャーズ。
配給はワーナー・ブラザース映画(日本は東宝が担当)。

2019年に続編「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」が公開された。


あらすじ

1999年、とある理由から設立された特務研究機関MONARCH所属の芹沢猪四郎、ヴィヴィアン・グレアム両博士は、
フィリピンにある炭鉱で、巨大生物の化石、それに寄生していたと思われる繭のようなもの、
そして何かが洞窟に穴を開けて這い出した跡を発見した。

同年、日本のジャンジラ原子力発電所では異変が起こっていた。
謎の振動と電磁波の危険を重大視するジョー・ブロディの訴えに発電所員たちも危機感を覚えつつあったある日、
一際巨大な振動が起こり原発が倒壊。ジャンジラ市は制限区域として向こう数十年以上封印されることとなった。
この事故で、炉心の調査に向かっていたジョーの妻で原発技師であったサンドラは猛烈な放射線に晒され命を落としてしまうのであった……。

2014年、ジョーとサンドラの息子であの日ジャンジラ市にいたフォードは、成長し米海軍で爆発物処理のスペシャリストとして活躍していたが、
久しぶりの休暇が取れたという時に、日本に住み原発事故の真実を追い続けていた父が、
原発事故で制限区域となったジャンジラ市に侵入し逮捕されたという知らせを受け、日本に飛ぶ羽目になった。

未だに根拠に乏しいことを追い続ける父に辟易しつつも、
あの日の真実を追うために二人でジャンジラ市に潜り込んだ彼らが見たものは、全く放射線に侵されていないジャンジラであった。
しかし彼らは逮捕され、原発跡地に作られた謎の施設に連行される。

そこは、MONARCHにより作られた1999年に原発を襲って破壊し、
放射性物質を全て喰らい成体へ成長しつつあった怪生物・M.U.T.O.の研究と封印を目的とした施設だった。
そう、人災による原発事故の隠蔽ではなく何か違うものが関わっていると確信し調べていたジョーの直感は正しかったのだ。

そうこうしている内にM.U.T.O.は覚醒。MONARCHはいざという時用の殺害装置を起動するが見事失敗。
施設を破壊して多数の人々を殺し太平洋へと飛び立った。ジョーもこれに巻き込まれて亡くなってしまう。

父を失ったフォードは半ば巻き込まれつつも、追討のため空母サラトガを率いて太平洋に出撃したステンツ提督ら米海軍第7艦隊、
この手の生物のスペシャリストとして参加した芹沢博士らとM.U.T.O.を追う。
時を同じくして、MONARCH設立のきっかけとなった怪獣の王―ゴジラも覚醒。過去の因縁に引き寄せられ、彼もまたM.U.T.O.を追う。

ハワイ、もう一つの繭の覚醒により通り道になったラスベガス、
そしてフォードの家族の暮らすサンフランシスコを舞台に、ペルム紀からの因縁を持つ二種の怪獣の決戦が繰り広げられる。


主な登場人物


  • フォード・ブロディ 演:アーロン・テイラー=ジョンソン(吹替:小松史法) 幼少期:C・J・アダムス(吹替:青木柚)
核物理学者のジョーと原発技師のサンドラの息子。海軍の特殊部隊で爆発物処理のスペシャリストとして働く。階級は大尉。
幼少期は日本のジャンジラ市で育つが、原発事故で母を失う。事故を偏執的に原発事故を追う父とは距離をおいていた。
日本で逮捕された父を迎えに行ったのも、妻のエルに背中を押されて嫌々ながらのことである。
ところが件の原発跡地でM.U.T.O.の羽化を目の当たりにして父の主張が正しかったことを理解し、
瀕死の重傷を負った父と最後の最後で和解した。

その後は半ば巻き込まれる形で芹沢博士らとともにM.U.T.O.、そしてゴジラを追い、怪獣達の驚異を目の当たりにする。

爆発物処理の手腕を評価されて核ミサイルの運搬にも携わるが、
相手が余りにも悪すぎたこともあって劇中ではその腕前をほとんど披露できずに終わった。

とはいえ特殊部隊で培った空挺降下技術を駆使してゴジラとM.U.T.O.の戦いの合間への着陸を敢行し、
M.U.T.O.の巣を発見して卵をまとめて爆破するという大戦果を挙げている。
そのためM.U.T.O.♀の怒りを買って危うく殺されそうになるが、ゴジラによってM.U.T.O.♀が止めを刺されたために紙一重で助かる。

最後は疲労と怪我によって動けなくなりM.U.T.O.の巣から奪還した核ミサイルを積んだ船と危うく運命を共にするところであったが、
寸前でヘリに救出されてエルやサムとの再会を果たした。

  • エル・ブロディ 演:エリザベス・オルセン(吹替:波瑠)
サンフランシスコ総合病院のERに務める医師で、フォードの妻。中の人が未経験なためか吹替が棒気味。
夫婦仲は非常に良好で、ニュースでハワイのゴジラ上陸を知り、日本に向かったまま連絡の取れない夫の身を案じ続ける。
しばらくしてM.U.T.O.暴走による数多くのけが人の搬送や手当に追われる最中にようやく電話による連絡が取れたフォードと再会を誓い合う。
その後はゴジラとM.U.T.O.の激突や墜落する戦闘機を目の当たりにしたり、
避難先の地下シェルターが怪獣同士の激突で崩落して生き埋めになりかけたりとこちらも大変な目に遭うが、
戦いの決着後に無事救出される。
某アメコミヒーロー映画の現実改変魔女とは関係ない。
中の人の姉はフルハウスのおちびたんを演じていた(現在は女優業を引退)。

  • サム・ブロディ 演:カーソン・ボルド(吹替:櫻井優輝)
フォードとエルの息子。両親にもよくなついている。
ゴジラ出現時にはエルの判断で彼女の友人とともに避難用のイエローバスに乗せられる。
避難の道中のゴールデンゲートブリッジで突然姿を現したゴジラや、
パニックを起こして橋にミサイルをぶっ放す米海軍によって命の危機に晒されるが、運転手の奮闘の甲斐あって難を逃れた。
しかし数多くのアメリカ兵や民間人がいた中で橋がゴジラに破壊されたため犠牲者が出たことは想像に難くない。
両親同様に危ないところであった*1

  • ジョー・ブロディ 演:ブライアン・クランストン(吹替:原康義)
フォードの父でジャンジラ原子力発電所に勤めていた核物理学者。
1999年に勤務先の原発が謎の地震で倒壊し、妻サンドラや多くの同僚が死亡する大惨事が起きてしまう。
残酷にもその日は彼の誕生日であり、多忙ゆえか事故直前にサンドラに伝えられるまで本人はすっかり忘れていた。

妻を失った事故に大きな疑問を感じており、原発倒壊直前に発生した謎の振動と電磁波の謎を追い続ける。
皆に荒唐無稽と思われながらも、専門外であった反響測位に関する知識を得るなど生活の全てを謎の追求に費やしていたため、
息子たちとは疎遠になり気味であった。

迎えに来た息子フォードを連れて立ち入り禁止区域に潜入し、日本政府の発表とは裏腹に放射能が全くないことを突き止める。
その後、親子ともども秘密組織MONARCHに連行されて原発跡地に幽閉されるが、マジックミラー越しに芹沢らに真実を公開するよう訴え続けた。

そして彼が懸念した通りにM.U.T.O.が繭から羽化し、
電磁パルスによる攻撃で電子ロックが壊れたため脱出するも建物の倒壊により転落し致命傷を負う。
最期は和解したフォードに家族を守るよう言い残して息を引き取った。

疎遠になりながらも息子夫婦や孫を大切に思い続けていたことがよくわかる場面である。
彼が残したデータ・知識が、M.U.T.O.の生態や目的を知る上で最大の手がかりとなった。

  • サンドラ・ブロディ 演:ジュリエット・ビノシュ(吹替:山像かおり)
ジョーの妻。ジャンジラ原子力発電所の技師として活躍していたが、
炉心の安全確認に向かった時にM.U.T.O.の襲撃を受け、撤退出来ず高濃度の放射線の只中に閉じ込められ死亡した。
ジョーが悲痛な思いを胸に自ら防護扉を閉める場面は序盤の見せ場であり、涙腺崩壊必至。
最期はジョーに父親としてフォードを守るよう言い残した。
彼女の死はジョーの思いを駆り立て、以後彼は15年間真実の追究に奔走する。


  • 芹沢猪四郎 演:渡辺謙(吹替:本人)
MONARCHに所属する生物科学者。放射線が生物に及ぼす影響を専門にしている。
フィリピンの一件以降、ジャンジラのM.U.T.O.研究施設で彼の研究と封印に当っている。
広島への原爆投下で父が被曝し、その後原爆症で亡くなったこともあり怪獣相手への核兵器の使用には最後まで反対した。
放射能を摂取しているゴジラやM.U.T.O.の生態について研究を続け、主人公であるフォードやステンツ提督(及び観客)への解説役となっている。
一方で危機管理上仕方ないとはいえ日本の原発にM.U.T.O.が寄生していた事実を15年間隠蔽し続けていた張本人でもあり、
真相を追い続けていたジョーからは国民を騙し続けていたと非難されている。
長年間近で観察していながらM.U.T.O.の羽化や脱走を許してしまったり、
都市への被害は考慮せずに怪獣同士を戦わせることを主張したりした点だけを見れば無能とも取れる。
しかし長年の観察や研究、そしてジョーの残したデータを基に核兵器ではゴジラもM.U.T.O.も倒せないことや、ゴジラの力こそ解決の糸口であることを導き出し、
当初は軍から荒唐無稽だと退けられたが結果的に彼の主張通りの事態となる。
最後は海に帰っていくゴジラの後ろ姿を羨望と畏怖の入り混じった表情で見送っていた。

この項の冒頭に提示している彼の発言は劇中で武力でゴジラを倒せると信じ込んでいたステンツ少将への苦言を呈した時のものであり、
公式の映画パンフレットでも冒頭に記載されていることから、この映画の大きなテーマであることがわかる。
エドワーズ監督自身が怪獣=自然の驚異であるとインタビューで発言しており、人間側のやることなすことがことごとく通用しないという映画全体の流れを踏まえると、
前述の無能ともとれる描写も専門家の知識や経験、技術が全く役に立たないほど重大な脅威に直面していると観客に知らしめるためのものと捉えたほうがよいだろう。
それは爆発物処理という面ではほとんど活躍できなかった主役のフォードについても同じ事が言える。

名前の由来は初代ゴジラのキーマン・芹沢博士と監督の本多猪四郎から取っている。
とはいえ人物像や作中の立ち位置はゴジラの驚異的な生命力に注目して探究心に駆られているなど山根博士に近い。
いずれにせよ初代ゴジラのストーリーを強く意識した登場人物であることに変わりはない。
渡辺謙自身は由来の重みをあまり理解していなかったので、ゴジラマニアでパンフレットにも寄稿した佐野史郎(吹替で参加)にこっぴどく怒られたとか。

尚、劇中の登場人物は芹沢博士以外総じてゴジラの事を英語読みである「GODZILLAガッジィーラ)」と呼ぶのだが(ハリウッド制作なので当たり前だが)、
芹沢博士だけは吹き替え版どころか原語版でも一貫して日本語読みである「GOJIRA(ゴジラ)」と呼んでいる。
これは渡辺謙の日本人としての誇りをかけたアドリブであり、監督から「英語風の発音をしてくれ」と要求されても頑なに拒否し、「GOJIRA」読みで演じ切った。
そして、アメリカで行われたプレミア上映会では渡辺のこの発音に観客から拍手喝采が送られ、監督も「素晴らしいアドリブだった」と後に語っている。


We call him・・・“ゴジラ”


  • ヴィヴィアン・グレアム 演:サリー・ホーキンス(吹替:高橋理恵子)
MONARCH所属の古生物学者。芹沢博士の助手。本編では彼と同じく解説ポジである。
ゴジラを生態系の頂点に立つ存在、いわば神(God)と捉え畏敬の念を抱いている。
芹沢同様に放射能の管理に関しては細心の注意を払っており、
放射能漏れを防ぐという観点から日本の原発に寄生していたM.U.T.O.の排除を行わずに監視と研究を続け、
フィリピンで発見されたM.U.T.O.の繭をネバダ州の核廃棄物処理施設に投棄するというアメリカのぞんざいさを非難した。
核兵器で怪獣を殺そうとするステンツ少将に対しては、放射能を摂取する怪獣相手には無意味だと忠告するが退けられる。
しかし作戦の失敗という形で彼女の忠告が正しかったことが証明されてしまう。



  • ウィリアム・ステンツ 演:デヴィッド・ストラザーン(吹替:佐々木勝彦)
米海軍第7艦隊提督で、階級は少将。
座乗艦は空母サラトガ(名称は1946年にビキニ島の核実験で標的艦として沈没した空母サラトガCV-3に由来すると考えられる。同艦はシスターサラの愛称で有名)。
日本の原発から逃げ出したムートーを探すために大捜索網を張るが結局発見できず、
ロシア原潜の襲撃やハワイでの暴走を許してしまう。

その後怪獣を一箇所におびき寄せて核で吹き飛ばすという脳筋丸出しの作戦を立てる。
前述の通り芹沢やグレアムは核を使用する作戦に反対するが、無視して作戦を強行した。
ところが核ミサイル運搬列車がM.U.T.O.♀に襲撃されて実行部隊がフォード以外全員死亡し、作戦は実行前に頓挫してしまう。
この時用意された二発の核ミサイルのうちの一発は列車襲撃時にM.U.T.O.♀が美味しくいただき、
もう一発は何とか海上まで運搬できたものの、M.U.T.O.♂に奪われて奥さんへのプレゼント兼生まれてくる子どもへの備蓄食料という散々な結果である。
ゴールデンゲートブリッジに姿を現したゴジラに対しては陸軍や空軍と合同で総攻撃を仕掛けるが、
何発もの水爆に耐えたゴジラに戦車の砲撃やミサイルなど全く通用せず、橋の一部を破壊されてしまう。
なお、サム・ブロディの項にもあるように、この時橋の上には逃げ遅れた数多くの民間人がいた。
豪雨等の影響や大勢の避難者による交通機関の混乱など時間的な余裕がなく周囲の状況も最悪な中で作戦が実行されたことが伺える。

あくまで住民の安全が第一という姿勢を貫いた点は特筆に値し、高い志を持った高潔な軍人といえる。
一方で核が通用する相手でないことが判明していたにも拘らず、
核使用こそ唯一の解決策と思い込んでいることから現状認識力にかなり難があるのは間違いない。
この司令官として致命的な欠点により不条理極まりない作戦を強行したため部下や民間人を大勢犠牲にする結果となった。
ちなみに核使用に断固反対する芹沢やグレアムには「他に作戦があるならぜひ聞かせて欲しい」と高慢な振舞いをみせているが、
これは作戦を立てる権限が自分にあることを忘れたものであり、司令官としてあるまじき言動である。
ある意味でミサイルでゴジラを退治できたハリウッド版の前作のアンチテーゼを担っている登場人物と言える。
なお、父が広島に落とされた原爆・リトルボーイの輸送に携わっていたらしいが本編ではそこに言及するシーンはカットされている。
また吹き替えを担当した佐々木勝彦氏は、何度か俳優として日本のゴジラ映画に出演している他、祖父や父も出演経験がある。
……ジェットジャガーを作った張本人と言えば分かりやすいかもしれない。


  • ラッセル・ハンプトン 演:リチャード・T・ジョーンズ(吹替:乃村健次)
米海軍第7艦隊所属の軍人。階級は大佐でステンツ少将の副官。
1954年のものとは核の威力が違うから怪獣は跡形もなくなると主張するなど核兵器を過信し怪獣を侮った見方をしていることから、
彼もまた現状認識力に乏しい人物といえよう。
冷静な性格で上官の指示を忠実に実行するが、裏目に出るばかりなのは前に書いた通りである。
とはいえ核ミサイル奪還作戦に従事するフォードに救助を出せないことをあらかじめ知らせるなど、
上官としての責務はきちんと全うしている。


登場怪獣

詳しくは項目参照。10年ぶりに帰ってきた怪獣王。マグロ大好きな彼と違いミサイルや戦車の砲撃ではかすり傷ひとつつかないほど頑丈で、圧倒的脅威。
今回は中生代の動物≒恐竜ら絶滅爬虫類が核実験の放射能により変異したものではなく、それ以前の古生代ペルム紀に生息しており、
強い放射線下にあった環境に適応した「怪獣類」とでも言うべき生物の末裔で人類が核を使い出して放射線が強まりだしたために再び地上に進出するために現れたと設定されている。

そのため、「核実験の被害者じゃないのか」「またアメリカが自分の業から逃げたのか」などの否定的意見が噴出した。
これはゴジラマニアのみならず、英国のクオリティペーパーであるガーディアン紙も「腹立たしいリブート」と、婉曲表現大好きな英国なのにこの設定に対しド直球で非難している。

とはいえ水爆実験名目で何十発も水爆を喰らわせても全く効かず、
逆に外皮などが強化されより化け物らしく進化させてしまったのはゴジラ殺害を目論んでいた米ソ両国にとっては面木丸つぶれの大失態である。
秘密組織MONARCHがアメリカを含む各国政府の援助を受けてゴジラの存在を隠し続けていたのはそうした大失態を隠蔽する目的もあったのは容易に想像できる。
すなわちこのゴジラの存在そのものがアメリカ政府にとっては絶対に隠しておきたい機密であり、
水爆実験だと嘘をついて世界を騙すという業に手を染めても倒せなかった脅威であるといえよう。
また、水爆さえ全く通用しない存在という意味では核兵器そのものへのアンチテーゼである。
世界最大の核保有国アメリカの攻撃をものともせず逆に甚大な被害を与えることで、
核兵器は保有するだけで安全保障になるという核抑止論を根本から否定しているのも見逃せない。
作中では一貫して核兵器は役立たず(むしろ事態の悪化に貢献している)という扱いであることも踏まえると、
切り口が違うだけで初代ゴジラ同様の反核主張を背負った存在と言えるだろう。
初代ゴジラが『核兵器による悲劇』を象徴する存在であるなら、
こちらは『核兵器が無意味』であることを象徴する存在といったところか。

人類に対しては終始無関心であり、
度重なる水爆攻撃で有り余るエネルギーを得てわざわざ地上に出てくる必要もなくなったのか結局2014年まで本格的に姿を現すことはなく、
ミサイルや砲撃を受けてもこれといった反撃はしていない。
M.U.T.O.と違って直接人を殺す描写もなくゴールデンゲートブリッジでは逃げ遅れた子どもをミサイルから庇うように見える場面もあるため人類の味方だと捉える人も少なくない模様。
しかし上陸時には津波を彷彿とさせる大波を起こしてハワイに甚大な被害を与え、
大勢の人がいることもお構いなしにゴールデンゲートブリッジを破壊するなど人類の味方どころか重大な脅威なのは確実である。
そういえば初めてゴジラの全身が登場する場面で背後が火の海になっていたが、その直前にゴジラの脚のそばにいた大勢の民間人は・・・。
なお、オープニングに登場する軍の秘密文書によるとメイン号なる米軍艦を爆沈させているようだ。
(実物の米軍艦メイン号は1898年に謎の爆発事故を起こして沈没し、米西戦争のきっかけになっている。)

公式パンフレットなどの情報によると、
デザイン面ではグリズリー(ハイイログマ)や猟犬のフォルムを参考に、鷲の眼や象の後脚も意匠として取り入れたようだ。
また日本のゴジラとは異なり陸上では肺、水中では鰓で呼吸するという設定で、首筋には鮫に酷似した鰓孔がある。
この鰓がある設定や、目が小さく首と胴体の境界が不鮮明でずんぐりむっくりに見える姿には否定的な声もあるようだ。
しかしいろんな意味でみんな大好きなアイツと比較すると直立に近い姿勢になったり皮膚も鱗が半分溶けてただれたケロイド状になっていたりとオリジナルにかなり近い姿になっており、
咆哮も日本のゴジラを強く意識したものになっている。
なお、エドワーズ監督のインタビューによるとデザイン案を練る際に水中の生物であることを強調するためにヒレをつける案もあったが、
強くなさそうなので止めたとのことである。


詳しくは項目参照。ゴジラと同じ時代、ペルム紀に生息していた怪獣。
空を駆ける雄と巨体と槌のような前腕が武器の雌がおり、卵生であることなどから昆虫など節足動物が放射線下で巨大化したものと思われるが詳細は不明。
核物質を喰う性質がある。そのため昔は体内に核反応炉を持つゴジラは獲物だったらしく、
ゴジラはM.U.T.O.に対し激しい敵愾心を持っており人類そっちのけで襲う。
M.U.T.O.も餌であり敵であるゴジラに襲い掛かってくるが、現代では人類の持つ原子力発電所や原子力潜水艦、核ミサイルなどを喰うほうが手っ取り早かったり。
光線を吐いたりはしないが、電磁パルスを放ち周囲数百キロに渡りコンピュータをダウンさせるなど現代文明に多大なダメージを与える。
この性質ゆえ、航空支援は一切出来ずミサイル攻撃も実質無効という厄介さ持つが、ゴジラと違い生物にダメージを与えられる手段でちゃんとダメージを受ける程度には脆い。

超然的で不死身の怪獣王のゴジラと対をなす、定命かつ人間が越えられそうな試練としてのクリーチャー的怪獣としてデザインされている。


その他トピック

  • 企画は、ゴジラ対ヘドラの監督である坂野義光氏が、ゴジラ休止後に東宝から獲得したIMAX 3D向け短編映画の制作権が元になっている。それをアメリカのPと共同でレジェンダリーに持ち込んだことからプロジェクトが始まったという。

  • 坂野氏といえば、対ヘドラで空飛ぶゴジラというトンチキなアイデアを田中友幸Pに無断で通し、特撮映画の現場から叩きだされた過去を持つ。そんな彼がゴジラを復活させる契機となったのだから不思議なものである。

  • ゴジラ映画といえばこの人、とも言える俳優宝田明氏も入国監査官としてカメオ出演で出る予定であったが、尺の都合といくらカメオ出演とはいえ端役すぎるという理由で今回は見送られた。なお日本国内のPRでは大活躍でした。

  • それも含めて非常にカットし場面が多かったらしく(一説には撮り切った段階で合計時間が4時間越えだったとか)、公開版では背景設定等のいろいろな場面がカットされているとか。小説版ではそれも含めた描写が入っているため、気になった方は一読してみるのも良いと思われる。


  • おかげで続編制作が確定し、モスラやキングギドラ、ラドンといったライバルたちも出演する「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」が2019年に公開された。スターウォーズ新作を任せられて忙しかったのか、ギャレスは降板し、監督はマイケル・ドハティ氏に交代。更に2017年公開のキングコング新作「キングコング 髑髏島の巨神」が同世界観の作品であると発表され、2021年公開のシリーズ最終作はゴジラVSキングコングとなった。スカルアイランド(髑髏島)にはMONARCHの登場が示唆されている。一連の作品群は『モンスターバース』と公式に呼称されている。

  • 一時、ギレルモ・デル・トロが監督なのではないかという情報が流れたが、レジェンダリーが同時進行でパシフィック・リムを制作しており、それと混同されたと見られる。デル・トロのゴジラもちょっと見てみたい気はする。

  • 初期のティーザーではムカデやダイオウグソクムシっぽい怪獣が映されていたが、結局登場はしなかった。ジャンジラ市のデッカいムカデに名残がある…のだろうか。

  • 日本のジャンジラ市のモデルは恐らく、浜岡原子力発電所のある静岡県御前崎市。その表現はハリウッドおなじみ愉快なNIPPONであった。が、原発の絡んだ問題を実在の都市そのまんまでやる訳にもいかないし、妥当な判断だろう。ジャンジラ(雀路羅)を地名ではなく原発運営に携わっていた企業と思った方も多いのではなかろうか。

  • 一方で原発のそばの学校や一方的に日本国内の原発跡地を管理下に置く米軍といった現実の日本をかなり忠実に表現している場面もある。劇中でM.U.T.O.が日本の原発を襲撃した1999年は、現実に東海村原発で作業員が被曝死する臨界事故が起きた年である。

  • Blu-ray版では架空の報道番組が特典映像として収録されており、フィリピンの崩落事故で被爆した炭鉱夫の姿や、終盤の核爆発でサンフランシスコ沿岸が死の灰の恐怖に晒されていることを伝える映像を見ることができる。

  • 超兵器が登場しない・ゴジラが自然の均衡を保つ守護者である・ゴジラとムートーを徐々に交差させていく展開など「作風はゴジラというよりも平成ガメラに近い」という感想も散見される。ゴジラが橋に取り残された子供を庇ったように見えるシーンやムートーの電車襲撃シーンで「大怪獣空中決戦」を思い出した人も多いのでは。これについては平成三部作の監督である金子修介もぼやいていた。

  • 怪獣の見せ方・魅せ方に対して一定の評価がある一方で、「ゴジラの出番が少ない」という批判も少なくなかった。これに関してジョー役のブライアン・クランストンやギャレス監督はジョーズを例えに意図的だったらしきコメントも残している様子。

  • DVD及びBlu-rayにはバトルスピリッツのカードが付属している。パッケージ一つに3枚入っているため、これのために複数買いする必要のない親切設計。名前はズバリ「GODZILLA ゴジラ」。カードの性能としては正直あまり強くない。

  • カナダでの撮影も行っているが、渡航目的を告げたところ入国管理官から「 変なもの にするなよ」と言われたという。

荒らしが終わる、追記・修正が目覚める。

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