SCP-471-JP

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SCP-471-JP - (2021/11/22 (月) 02:06:40) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/06/25 (日) 21:11:40
更新日:2024/03/23 Sat 11:29:36
所要時間:約 7 分で読めます





確保、収容、保護。ヤツはその理念の意味を実感させてくれた。-とあるエージェント



SCP-471-JPは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスはEuclid。
項目名は「噂が呼んだ怪人」。


特別収容プロトコル

ざっくりまとめると、

  • 性質の関係で完全収容は出来ません
  • SCP-471-JPか、SCP-471-JP-1を発見するために、全国の学校を定期的に調査します
  • さらに午後4時44分を中心に地域パトロールを行います
  • ネット管理部門はSCP-471-JPを構成するセンテンスを発見した場合、それを削除して閲覧者を追跡・特定します
  • 新たに発生したSCP-471-JPは発生源を確認後、SCP-471-JP-1の出現イベントの後、内容を知った一般人にBクラス記憶処理を行います
  • SCP-471-JPの内容は担当職員のみが閲覧可能です
  • 新任の担当者が来たら、着任から4日後の午後4時44分までにSCP-471-JP-1の対処法を伝えます

こんな感じ。つまり、何かの実体を呼び出す情報災害だということがわかる。
時刻の数字から緋色の鳥を思い出した人も多いだろうが、ここで一風変わっているのは収容違反時の対処。
それは、

  • 収容違反が発生した場合、SCP-471-JPを知らない職員には可能な限りその内容を伝達し、カバーストーリー「気のせい」を適用します

というもの。
情報災害系のオブジェクトの場合、普通は収容違反が起きたら記憶処理や情報閉鎖で「知らせない」のが常道だが、コイツに限ってはそれとは逆に「広める」ことが対処法。
一体どういうオブジェクトなのか?


概要

コイツが何かというと、SCP-471-JP-1と特定される人型実体に関連する、一連の情報である。つまり概念系のオブジェクトということになる。
出所がどこかというと、1970年代当時の子供たちの間である。つまり、一種の噂・都市伝説なのだ。
当時の財団は記憶処理の後、カバーストーリーの一環として「口裂け女」などの噂を流して収容を試みており、これはおおむね成功している。
しかし、情報の内容が単純であるため、現在でも偶発的に発生することがあり、警戒が続けられている。

で、肝心要のSCP-471-JP-1、項目名にもある「怪人」は、この情報の内容を認識してから4日後の午後4時44分に出現する人型実体である。
黒いシルクハットとマントを身に着けたいかにもな怪人の扮装の男性型実体で、SCP-471-JPの内容を認識した「被験者」に視覚で認識されると、その被験者を捕獲しようとする。
この時、被験者が44分間逃げ切れば消失し、その後同じ人物のもとに出現することはない。記憶処理の後もう一回内容を教えても出てこないため、本当に一生一度のみである。

抵抗の意志を持たない被験者を捕獲した場合、いずこかに連れ去って消失する。この手のオブジェクトにはよくあることだが、GPSなどを用いても行先は特定できていない。
財団世界でGPSが役に立つ事例は数えるほどだが、「役に立たない」という情報がわかるだけマシか?

ちなみに肝心のSCP-471-JPの内容だが、こんな感じ。
  • 異次元からやってきた、黒いマントとシルクハットをかぶったタキシード姿の男。そいつは人間を捕まえて異次元に攫う。そして、この噂を聞いた4日後の午後4時44分に現れる。助かる方法は44分間逃げ切ることだ。
この内容を流布する際、付け加えたり削ったりするとSCP-471-JPとして成立しない。本当にこの内容をまんま伝達することで「怪人」が出現するのだ。






とまあ、ここまでだと「一定の条件で現れて人を連れ去る人型実体」と見ることが出来る。
それは確かに正しい。しかし、このオブジェクト、というかこのオブジェクトが呼ぶ「怪人」には、他の人型実体と決定的に異なる点がある。それは、初期収容時の状況が物語っている。

最初に財団が「怪人」を発見したのは1970年代のある時のことである。
この時、巡回していたエージェントが、SCP-471-JP-1が子供たちに暴行されているのを発見しており、これが最初のSCP-471-JPに関するインシデントである。


もう一度言う、SCP-471-JP-1子供たちボコボコにされていたのをエージェントが発見したのである。
そう、この「怪人」、無茶苦茶弱いのである
発見したエージェントは相当混乱しただろうが、ともかくSCP-471-JP-1を子供たちから保護。が、その直後にもう一回子供たちに襲い掛かろうとした。
結局この怪人、駆けつけた警察に連行される途中で消失。エージェントはこれが何かの異常な現象の産物だと考えて子供たちにインタビューを行い、その結果SCP-471-JP、例の噂の存在を突き止めた。
これを受けた財団日本支部はカバーストーリーとして「口裂け女」「人面犬」を流布。現在までの尽力により、SCP-471-JPの内容は財団内部にとどめられている。

が、何分出所が子供たちなので、何かのはずみで「たまたま」同じ内容が広まる可能性はある、というか数は減れどもいまだに起きている。


実験記録

とにもかくにも噂の封じ込めを行った財団だが、出てくる人型実体の能力がよくわからないのでは話にならない。
というわけで恒例、データ取りのための実験開始である。
いずれも内容を知らないDクラスに噂を伝え、4日後の午後4時44分にDクラスを様々な状況に置くことで、人型実体の反応や能力を観察する、という内容となっている。

  • 実験その1
まずは運動能力に優れたDクラスを用いて、44分の間逃げ切らせる実験。念のために武装警備員2名が待機している。
結果はというと、「怪人」は追跡を開始したもののあっさり振り切られ、44分後に消失。
立ち会った博士が色々と計算してみたところ、1970年代当時の小学生より若干劣る身体能力であることが判明した。
SCP-471-JP-1の身体能力が低くなっている可能性としては、SCP-471-JP自体が子供たちでも生還することができる前提の噂であるためではないだろうか。しかし、万一に備えて武装した警備員は実験中常につけるべきである。
子供たちがこういう噂を流すのは、いわゆる疑心暗鬼に陥らせて怖がらせるのが目的なので、当たり前といえば当たり前である。


  • 実験その2
今度はDクラス二人を用いて、それぞれ別々の場所で待機させてみた。
結果は、「怪人」はまず片方のDクラスの前に現れたが22分で消失、残りの22分はもう片方のDクラスの前に出現した。
この「怪人」、どうも全ての事例において同一の個体らしい。
さらに追加の実験の結果、条件を満たした人数が増えた場合、一人当たり44÷該当人数分だけ出現する、というデータが取れた。これが現在の収容プロトコルの基礎となっている。


  • 実験その3
今度は出現タイミングに合わせてDクラスを走行中の車に乗せてみた。
結果、「怪人」はDクラスが向いていた車の正面に出現して跳ね飛ばされた。そのまま倒れて動かなくなり、44分後に消失した。
今までの観察からどのような状況でもSCP-471-JP-1は必ず被験者の視線の先に出現するようだ。今回は被験者が前方を向いていたために跳ね飛ばされたが、横に向いていた場合はおそらくその場に置いていかれるのだろう。
なんて融通の利かない怪人なんだ。


  • 実験その4
これは実験その3の追記として記されている。
その3で得られたデータを検証するために、今度は出現タイミングでDクラスを崖の近くに連れて行ってその向こうに視線を向けさせてみた。
結果、「怪人」は出現と同時に悲鳴を上げながら崖の下に落ちて行った。
出現位置に足場の有無は関係ないようだ。


  • 実験その5
これも同様のデータの検証。必ず視線の先に「怪人」が現れるのなら、人が存在できない壁を見続けていればどうか? という実験。Dクラスには出現イベント中壁を注視させ続けた。
結果、「怪人」はDクラスの背後に出現。ところが攻撃に移る気配がなかったため、そのまま壁を見続けるよう指示した。
その間、「怪人」は出現位置で自分の存在をアピールし続けたがDクラスは全く気付かず、最終的に「怪人」は泣きが入ったまま消失した。ここまで来るといっそ哀れである。

ちなみにこの実験、続きとして壁の代わりにガラスの仕切りを注視させた場合を検証した。
結果、「怪人」はガラスの向こうに出現。結果は……お察しあれ。


  • 実験その6
これまでのところ、「怪人」は誘拐に成功していない。ならば、成功させた場合どこに連れて行かれるのか、というデータを求めての実験となった。
まず終了予定のDクラスを拘束して噂の内容を教えた。
しかしDクラスが「怪人」に対して強く抵抗したため、「怪人」は誘拐出来ず、これでは実験にならないのでDクラスを麻酔弾により眠らせた。
結果、出現した「怪人」は待機していたスナイパーに気付いたものの何もせず、困惑した様子を見せながらもDクラスを連れて消失。GPSの電波は途切れ、Dクラスの行方は不明のままである。
SCP-471-JP-1は動けない人物ではなく、抵抗しない人間のみを連れ去ることができるのだと思われる。また、発信機の状態から連れ攫われた人間が連れていかれる場所は今の科学ではわからないようだ。
要は「動けない」ではなく「抵抗しない」人物が正確なターゲットとなる模様。


事案記録

さて、この「怪人」だが、以上の記録を見てわかるとおり小学生ですらどうにか出来るほど弱い上に融通が利かない。
対処自体は非常に簡単であるが、問題は「被験者の視線の先に問答無用で現れる」という点。
場所も状況も一切問わないため、1990年の初期収容に至るまでに、収容違反による二次被害が相次いでいるのである。
具体的には、

  • 道路の真ん中に「怪人」が出現し、これを避けようとして起きた自動車の激突事故(201件)
  • 足場のない場所に「怪人」が出現したことによる落下事故(23件)
  • 落下事故のうち、「怪人」の落下に巻き込まれたことによる死亡事故と、「怪人」にぶつかっての死亡事故(計4件)
  • 線路の上に「怪人」が現れたことによる、鉄道人身事故における緊急停車とダイヤの遅延(8件。跳ね飛ばされた「怪人」を目撃したことによる精神的ストレスを訴えた事例あり)
  • 「怪人」の出現時に電線が切れたことによる停電(9件)
  • 飛行機の前に「怪人」が現れたことによる衝突事故と、エンジンに巻き込まれたことによる緊急着陸(各1件)
  • 自衛隊機の前に「怪人」が現れたことによる墜落事故(1件。なおパイロットは脱出、墜落による三次被害もなし)

と、「怪人」そのものは非常に弱いものの、社会的影響が大きすぎるのである。
詳細な被害は省くが、2ケタ億円に上る損害が出た模様。

この収容違反を引き起こしたSCP-471-JPはとある県の小学生が考えたものであり、仲間内で話したものが親のネットワークを通じて広まったものと考えられる。
この「親世代」は1970年代、最初の発見時にまさに小学生だった世代であり、「口裂け女」などのカバーストーリーの都市伝説に親しんでいたことから、「うちの子がこんな感じの話してたよ、懐かしいな」という感じで広めてしまったと推察される。


そしてもう一つ、2014年にまたも収容違反が発生した。
SNSを監視していたエージェントがSCP-471-JPを発見、直ちに削除したものの閲覧者は2400名を超えていた。
しかし、さすがにここまで来ると財団にも打つ手はあった。実験その2で得られたデータによれば、複数人が同時に条件を満たした場合、一人当たり44÷該当人数分の時間のみ「怪人」は出現する。

つまり、同時に条件を満たした人数が多ければ多いほど、一人あたりの「怪人」の出現時間は短くなるのだ。これを利用したのがカバーストーリー「気のせい」であり、財団は即座に噂を知らない職員29478名に内容を流布。
結果、「怪人」の出現時間を一人当たり0.082秒に抑えることに成功した。
それでも二次被害と思しき事故が8件起きたため、次回の収容違反ではもっとたくさんの人数に、それこそ「気のせい」だと思えるほどになるまでの人数に噂を流布する予定となっている。


ちなみに

財団が調査した限り、「怪人」が誘拐に成功したのは実験におけるDクラスただ一人である。


ところで

鎌倉ものがたりのエピソードの一つに誘拐魔(鎌倉ものがたり)というものがある。
ここに出てくる「怪人ワニ男」がまさにこのSCPとほぼ同様の特性を持っているので、興味があれば読んでみてはいかがだろうか。



追記・修正は怪人を目撃してからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-471-JP - 噂が呼んだ怪人
by Zenigata
http://ja.scp-wiki.net/scp-471-jp

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