パーマン1号/須羽ミツ夫

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パーマン1号/須羽ミツ夫 - (2022/01/02 (日) 19:07:46) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2019/05/20 (月曜日) 02:54:06
更新日:2023/02/26 Sun 11:25:09
所要時間:約 11分で読めます




パーマン1号/須羽ミツ夫は『パーマン』の主人公である少年。
一応正式には須羽満夫だが作中の表記に従ってミツ夫とする。
名前の由来はスーパーマン*1

声優は三輪勝恵。
68年のアニメ版から近年のわさドラ客演まで一貫して演じ続けているタフなお方である。


●目次

【人物】

小学5年生の少年。
前髪を左右に分け、右側にツノがついているという独特の髪形をしている。
『四畳半SL旅行』の主人公ヒロミに瓜二つだが多分特に関係はない。
服装は藤子・F・不二雄作品の主人公に多いTシャツに半ズボンというオーソドックスなもの。ちなみにTシャツの柄は何気に豊富。

のび太の存在もあってあまり目立たないが勉強もダメ、スポーツもダメ、というとりえのない少年。
だがバカにされてこそいるが、案外ガキ大将のカバ夫やスネ夫ポジのサブから特にいじめられていることはない。その代わり思いを寄せているミチ子も含めて周りの人間は彼のことを「ミツ夫は弱虫なんだからいたわってあげなくちゃ」とデフォで思っている。
……弱い者いじめされているのび太と、ほぼ全員から弱いもの扱いされているミツ夫、どっちもどっちなひどい境遇である。
背格好服装含めて似ているミツ夫がパーマンとバレないのは、周囲が「あの弱虫がパーマンのはずがない」と思っているからという見方もできる。

簡単には不条理に屈しようとしない強い意志を持った正義感の強い性格。
だがその性格のために明らかに喧嘩の強そうな中学生に注意をして返り討ちにあったり、自分の不利益になると分かっていて困っている人を放っておけないなど損をすることも少なくない。本人もそれについて自覚しているが辞めることができない。
実力の伴なわない正義感であるため、周囲の人間がそれを顧みてくれることはほとんどない。
というかパーマン仲間以外でミツ夫が正義感の強い人物であると気が付いている者は少ない。
……だが、それでもあきらめずに根性と精神力で正義の味方として戦おうとするのがミツ夫の魅力である。

その性格がちゃんと実を結ぶことも結構あり、コツコツ野球の練習を続けていった結果ちゃんと活躍できるようになったり、強い決心で徹夜の勉強に臨みいい点数を取ったりなどやるときはやる。
要するに「やれば出来る子」である。

しかし不条理に対しては強い意志を持つが、自分に対しては意志軟弱な面もあり、おこづかいはほとんど買い食いに使ってしまったり、ついパーマンのパトロールをさぼってしまったりしている。

アイドル歌手星野スミレの大ファン。スミレがどのCMに出演するかわざわざ調べて視聴し続けるなど熱の入りようはいろいろな意味ですさまじい*2
まあのび太、ドラえもん含めF作品で彼女のファンでない人物の方が珍しいけど。

また平成劇場版ではゲームが大好きという設定が追加された。PS2やGBっぽいハードを所有している。2対1でも圧倒できる程度には得意であるらしい。
暇なときはコピーと一緒に遊んでいる。

そしてそんな彼のもうひとつの姿がパーマン1号である。
とある正月に空き地でたまたまバードマンに出会ったこと、そしてバードマンが地球への長旅で居眠りをしてしまいパーマン選定に時間をかけられなかったこと、ふたつの要因が重なって無理矢理ミツ夫はパーマンに任命されることになる。
こうして地球ではじめてのパーマンが誕生することとなった。

パーマンとして意識しているのか、変身中のミツ夫はいつもと比べるとちょっとヒーロー然とした言動が増えている。実際ミツ夫よりもおおらかで凛とした姿は結構カッコイイ。
そのおかげかミチ子をはじめとして同年代の女の子たちから絶大な人気を誇っている
とある会社がパーマンのCMをつくろうという話になった際、スミレのコネで真っ先に作ったパー子の次にCMの依頼が来ていることからも、彼の人気が高いことがうかがえる。
この時のミツ夫は他者のピンチを救う存在である為、のび太よりドラえもん寄りの立ち位置と言える。

ちなみに世間的には1号とミツ夫は大の親友ということになっている。
もっとも周囲はなぜ冴えないミツ夫と正義のヒーローである1号に縁があるのか首をかしげているが。
パーマンがどこに住んでいるのか隠している(という設定である)ために用がある場合はミツ夫に訪れるのが基本となっている。実際パーマンの家=ミツ夫の家というように扱われている。だがそのためかミツ夫の家が悪人に狙われてしまうということも1度や2度ではなく、特にミツ夫のママは1号のことを若干疎んでいる。


【戦闘能力】


主人公らしくオールマイティで可もなく不可もないくらいの能力。
……しかし動物らしいワイルドな戦い方をするブービー男らしい戦い方を好むというか脳筋であるパー子頭脳戦に長けたパーやんとほかの仲間たちが何か特技を持っていることもあり、基本的にはイマイチパッとしないというか器用貧乏な場面が目立つ。ついでにミツ夫自身の性格のためか、悪人の対応が後手に回りやすいこともそれに拍車をかけている。
本人(正確にはコピー)も「4番目に優秀なパーマン」という自虐をしている。

ただそれぞれのパーマンに劣るため相対的に器用貧乏になってしまっているというだけであり、決して1号のスペックが低いというわけではない。少なくとも人一倍は高い。
実際頭脳面だけ見てみても……

  • ゴリラにマスクを奪われる→仲間になった温厚なゾウにマスクを被って戦ってもらう
  • 暴走する破壊ロボットを止める方法を知る唯一の博士が昏睡状態に→コピーした博士に止めてもらう
  • マントを奪われた状態で火の海に囲まれる→足の力も6600倍になっていることに気が付きジャンプして逃げる
  • 毒ガスを吸わされそうになる→バッジの中の酸素タンクを使うことによって回避
  • 悪のロボットがパーマンのマスクとマントを追う自動追尾ミサイルを射出する→マスクとマントをロボットの頭に置いて自分は飛び降りる。
  • パー子の正体を知るために彼女のコピーをつくる(コピーロボットは基本的*3にパーマンに逆らえない)
  • 雪原で悪人にマントを奪われ、つかず離れずのなぶり殺しにされる→雪だるまにマスクを被せた囮をつくり後ろから倒す
  • 正確な狙いで心臓を打ち抜くキューピッド・ジムと戦うことになる→その特技を逆利用し、バッジを心臓の上に装着して銃弾を防御する。

……など決してバカではなく、むしろかなり柔軟な思考ができることが分かる。特にコピーロボットの使い方は非常に上手い。
あまり目立たないのは本当にパーやんがこれ以上の化け物だからである。
のび太に近い道具の応用方法を見るとやはり彼もF作品の主人公なのだと思わされる。

てかこの頭脳戦の巧みさと腹を括った時の戦闘センスの高さのおかげで、本気を出した時のミツ夫はやたらと強い
前述の「やればできる子」なところもあり、潜在能力はパーマンの中でもトップクラス。
というかミツ夫の持ち味はたとえ弱虫であったとしても正義感と勇気で困難に立ち向かう精神力であるため、「本気を出せば強い」はある意味道理と言える。
特に平成劇場版は割と人間を辞めている。

なんだかんだで仲間たちもそれを理解しているのか、表面上は彼のことをバカにしながらもミツ夫のことをリーダーとして認めている。

【パーマンとミツ夫の間で】


そんなこんなで町内のヒーローとして活躍するミツ夫。だがパーマンとしての活動を続けていくうちに、彼の中でひとつの葛藤が芽生えることになる。
それは「いくら頑張ったとしても評価されるのは1号であって、ミツ夫ではない」というもの。

もともとミツ夫は取り柄がなく、褒められることのない少年であった。
そんな彼がパーマン1号の力を手に入れてはじめて周囲に評価されるようになったのだった。
しかしどんなに精いっぱい頑張ったとしても1号は1号。ミツ夫はミツ夫。世間的には全くの別人であり、いくら頑張ったとしてもミツ夫は褒められることはない。
特にミチ子はミツ夫の気持ちに気が付くことなく1号に熱をあげていく。
しかも正体を言ってしまえばバードマンに動物にされると脅されている。
そんな誰にも言えないジレンマにミツ夫は苦しめられていく。

僕はパーマンとしてじゃなく、ミツ夫として褒められたいんだ!」という言葉が彼の想いを強く表していると言えるだろう。
わざわざこんな環境をつくりあげたバードマンが一番悪い? おっしゃる通りです。

……というかヒーローものの宿命と言えることだが、ミツ夫がパーマンを続けるのは完全な善意であり別に彼が得することもない。

83年版アニメが顕著であり、ミツ夫が自身のコンプレックスについて深く描写したオリジナルエピソードが増えている。パーマンと絶交したフリをしようとしたり、家族のコピーをつくって彼らに正体を教えようとしたり、ミチ子が1号=ミツ夫だと気が付きかけたのにパーマンのルールから必死で違うことを証明しなければならなかったり、生身でパーマン並みの力を手に入れるがいいところで失ってしまったり……。

だが悩みに悩んで、それでもミツ夫がパーマンを辞めずに人々に救いの手を差し伸べるのは「けれども困っている人を放っておけない」という彼の中の正義感のためである。

それが特に表れているのは「パーマンはつらいよ」というエピソード。

パーマンの仕事に疲れ始め、授業中に居眠りをするなどミツ夫はミスが増え始めていた。
しかも大好きなミチ子にまで「あたしお友だちとして忠告させていただきたいの。教室でいねむりするくせだけはやめたほうがいいわよ」と言われてしまう始末。

その後バードマンに知り合いだけでいいからパーマンの秘密を打ち明けたい、と言うが強い口調で止められてしまった。

だってそれじゃあんまりだ。つらいおもいをしたって何のとくにもならないし。だれひとりぼくに感謝してくれるわけでもないし
「そんなことないよ。みんなパーマンには感謝してるさ」
それは須羽ミツ夫とは関係ないもの
「いいかい、じぶんのとくにならなくてもほめられなくてもしなくちゃいけないことがあるんだよ」

そして口論になった末にミツ夫はついに「パーマンを辞める」と宣言してしまう。

バッジが鳴ってもパーマンにならなくてもいいし、いつだって自分のしたいことをしていられる、何より秘密を守るジレンマに悩まされなくてもいい。正義のヒーローなんてもっと早くにやめてしまえばよかったとまで考えるミツ夫。


しかしその日、とある街で洪水事故が起こる。
もうパーマンを辞めた自分には関係ない、と最初は関わらずにいようとしていた。
しかし洪水事故の被害者のことばかりが頭に浮かんできてしまい、寝ようとしても眠れない。

考えた末にミツ夫はパーマン1号として事故現場に向かうことを決心するのだった。

出動すると家の屋根にはバードマンがたたずんでいた。
「出かけるの? なんのとくにもならず、人に褒められもしないのに、なぜいくんだい?」
わからない…………でも、いかずにはいられないんです。わけはあとで考えるよ。いそがなくちゃ

そんな彼にバードマンは「だれがほめなくても、わたしだけはしっているよ。きみがえらいやつだってことを」と温かい言葉をかけるのだった。


【関連人物】


コピーロボット
もうひとりのミツ夫であり、彼が一番本音を言える相手。事件がないときは一緒に遊んでいる。
もうひとりのミツ夫ではあるのだが、同時に本人はミツ夫のコピーであることを割としっかり理解しているため、本人が気にしていることをズケズケ言うことも多い。
83年版アニメでは山岸ユキというオリジナルキャラクターと交際をしている。あくまでコピーとの交際であるため本物と話すと会話がかみ合わないことも。

◇ガン子
ミツ夫の妹。原作・アニメでは小学一年生で、平成劇場版では幼稚園児。名前が示す通り頑固で面倒くさい性格であり、ミツ夫がへまをするとすぐにそれをママに告げ口しようとする。告げ口をするためにミツ夫の買い食いをわざわざ記録するなどもはやブラコン+ヤンデレに近いものになっている。

◇ミツ夫のママ
おこごとの多いママ。その多さはのび太のママに匹敵する。
特にガン子がいつも告げ口をするために、ミツ夫はいつもおこごとを受けている。だがガン子のやりすぎな告げ口には注意するなどわきまえるところはちゃんとわきまえている。
また親としてミツ夫のことを大切に想っており、彼がパーマンであるといううわさが流れたときには誇りに思う父親とは対照的に「噂が本当なら悪人と戦うなんて危険だからパーマンはやめてほしい」と諭していた。

◇沢田ミチ子
ミツ夫の友人。
ミツ夫は片思いをしているが当の彼女は彼のことを「ただのお友達」くらいにしか思っていない。だが同時に1号の大ファンであり彼の活躍をまとめたスクラップブックをつくっているほど。前述のミツ夫の悩みは半分くらい彼女のせい。
ミツ夫がミチ子と一緒に遊ばないかと誘うが断られる→パーマンになってもう一度誘ったら喜んで了承されるという流れはなかなか不憫。
……だが、ミツ夫は気が付いていないが、彼もとある少女に対して同じ仕打ちをしている。

◇パーマン2号/ブービー
ご存じ異様に賢いチンパンジーの子ども。
1号とコンビを組むことが多く、実質的な彼の相棒である。

パー子
パーマンの紅一点。
怪力かつ男勝りな性格であり、ミツ夫自身もあまり彼女を女扱いしていない。むしろ男友達と同じくらいの気持ちで接しており、パー子としては気が付かれまいとしているがかなり複雑な気分。
しかしラブコメを意識した83年版アニメでは実質相思相愛と言える関係になっている。

◇パーやん/大山法善
大阪のパーマン。
数少ない1号を先輩扱いする後輩。おいしいところはきちんと1号たちに譲るよく出来た後輩である。ただ精神年齢は一番高く(というか年齢は1号たちのひとつ上)であり不純なことをしようとする1号を諌めることもしばしば。

◇バードマン
ミツ夫をパーマンにした張本人。
ミツ夫に似ておっちょこちょいな部分もあるが、基本的には成熟した大人であり師としてまだ若い1号たちに親身となってアドバイスをしている。
それはそれとして彼らが悩む原因の大半はバードマンが彼らをパーマンに任命したことにあるのだが。










以下最終回のネタバレ








【最終回】

最終回「バード星への道」において、バードマンは世界各地のパーマン達の中から選ばれた一人ずつをバード星に留学させて正義のために育て上げるという計画を語った。
当然、日本のパーマン4人からも一人選出される事になるが、選ばれたのは力自慢のパー子でも、天才的発想力を持つパーやんでもなく、平凡な能力しか持たないはずのパーマン1号だった。
バードマンによると、ごくごく平凡な少年でありながらパーマンとして戦い続けた事が彼の目に留まったらしい。

弱虫だとしても、誰にも感謝されないとしても「困っている人を見捨てられない」と戦い続けてきたミツ夫の精神力がはじめて何かに繋がった瞬間であった。

そして旅立ちの朝…ミツ夫は愛する家族や故郷と離れ、遠い宇宙の彼方に旅立つ事を恐れていた。
しかし、バードマンや仲間達からの叱咤を受けてついに旅立ちを決意。
バードマンの能力で時の止まっていた母親を抱き締め、後の事をコピーロボットに託して家を出た。

別れの際、最後の最後にミツ夫はそれまで謎に包まれていたパー子の正体を見せてもらい、仮面の下の顔が憧れのアイドルである星野スミレだった事を知り、それを最高のプレゼントと称した。

そして、少年は旅立っていった…正義のヒーローとして成長するため、果てしない宇宙の彼方へ…

それを見送るコピーロボットのミツ夫が何も変わらない日常へ向かう中、物語は幕を閉じた…



【その後】

ミツ夫はその後短編『帰って来たパーマン』で訓練中の中休みとして一時日本に帰国しているものの、
他の藤子F作品への本人としての客演は行われていない。
しかし、『ドラえもん』において10年後の星野スミレは度々客演している。

彼女は、どこかミツ夫と雰囲気の似てる平凡な少年や、その少年と一緒にいた未来のロボットに自分の秘密や、未だ帰らないミツ夫を想い続けている事を打ち明けたのだが、それはまた別の話である…





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