さくらの季節/まじょっ子ぱらだいす

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さくらの季節/まじょっ子ぱらだいす - (2020/03/23 (月) 21:52:07) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2020/03/22 Sun 17:52:19
更新日:2021/06/15 Tue 17:51:33
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「さくらの季節」「まじょっ子ぱらだいす」とは、かつて存在したブランド「ティアラ」が1996年に発売した問題作美少女ゲームである。
本稿では、後述の事情によりひとつの項目として取り扱う。

■さくらの季節

タイトル さくらの季節
発売日 1996年4月26日
開発 ティアラ
販売 JAST
対象機種 PC-9801シリーズ、Windows95
※要HDD、GS音源MIDI機器対応
レーティング 18才未満購入禁止

◆ストーリー

今年も、桜が咲いた。

「俺たちが出会った時も、こんな風に桜が咲いていたよな。」

俺は、傍らにいる彼女に語りかける。

彼女は、ただ微笑むだけだ。幸せそうに。

俺はもう一度桜を見上げると、独り言のように続けた。

「そうだよ…あの時に、全てが始まったんだ…」

(オープニングより)

◆概要(さくらの季節)

1990年代に主流であった、コマンド選択式の恋愛アドベンチャーゲーム。8人のヒロインによる学園ラブコメで、行事やデートなどをこなしながらそれぞれの女の子と仲を深めていく。下記の登場人物一覧にもあるようにヒロインの性格も様々で、期間も入学からホワイトデーまでの1年間ということもあってボリュームも大きめなだが、主人公が完璧超人かつモテやすいあたりは人を選ぶ可能性がある。

システムとしてはスタンダードな選択肢タイプ。選択肢が多いため、フラグ管理や好感度管理がなかなか難しいうえ、告白したいヒロインのところへ行く前に、それまで好意を向けてくれたヒロインたち全員を振りに行く必要があり、そのうえで告白の成否が決まるというなかなか精神的にクる構成となっている。

CGモード・回想モードは搭載されていない。1996年当時はまだ搭載しているゲームもほぼ見受けられなかったため致し方ないところか。総じて、当時ではスタンダードな美少女ゲームと言える。Windows95版も出ているが、ベタ移植なうえに動作が重くフォントも見づらいため、PC-9801版でのプレイを薦める。もう入手困難だけど。

◆問題点

さて、このゲームはひとつの大きな、そして致命的な問題点を抱えている。

どう見ても、キャラクターのデザインが人気アニメの登場人物そのものということだ。

どう見ても異世界に召喚された美少女中学生3人組に、どう見ても人型決戦兵器に乗せられそうな一人目と二人目の女の子、そしてどう見ても迷える子羊を救う怪盗少女とその協力者といった作品のキャラクターで、一部は髪色が変えられているが、見た目も性格もひと目で「それ」とわかるキャラクターデザインになっている。どれくらいきわどいのかは、画像検索などで各自探していただきたい。

今となっては何を思ってこのキャラデザにしたのかはわからないが、話題を呼んだのは確かなようで、インターネットの前身である当時のパソコン通信やレトロ美少女ゲームのレビューサイトでは『売りたいからといってここまでするか』『見た目は同じでも名前が違っていれば別人ということか』『シナリオはいいのにキャラを見てると元ネタがちらつく』と物議を醸した。加えて、各ルートにサブタイトルが付けられているが、そのレイアウトとノリはどう見ても太字明朝体をいろんな形で配置していたあの作品そのものと言われた。

驚くことに、そのままのキャラデザで小説化され、書店にも並んだりもした。中身ももちろんそういう描写が満載。各アニメの関連作品と間違って買ってしまった少年がいるのではないかと、いらん心配をしてしまう。というか、よく無事に発売できましたね?*1

◆登場人物

●山神 修司 高等部1年A組
主人公。学問・運動神経ともに抜群だが、高校入学を機におとなしくしようと考えている。

●沢村 鈴子 高等部3年A組 身長166cm 体重??kg B85-W59-H86 血液型:A型
世話好きの優しいお姉さん。オリンピックでの金メダルを目指して水泳に打ち込み、修司も水泳部へ入れようとする。
どう見ても異世界に召喚された水の魔法騎士

●新藤 清美 高等部1年A組 身長156cm 体重??kg B82-W58-H84 血液型:B型
おしとやかでのんびりとした修司のクラスメイト。弟が修司に助けられたことでマネージャーを務める野球部へ入れようとする。
どう見ても異世界に召喚された風の魔法騎士

●鈴木 美緒 中等部3年A組 身長150cm 体重??kg B77-W55-H82 血液型:O型
陽気で活発な後輩。天才的なテニスプレイヤーで日本一を目指している。修司の運動才能を目の当たりにして、テニス部へ勧誘する。
どう見ても異世界に召喚された火の魔法騎士

●西野 祥子 高等部3年A組 身長155cm 体重??kg B83-W59-H85 血液型:AB型
右脳だけで思考する独特な女の子。一目惚れした修司を神出鬼没で狙ってくる。鈴子が苦手。

●白水 瑠璃 高等部1年A組 身長157cm 体重??kg B83-W58-H85 血液型:?
誰とも打ち解けず、ひとり過ごしている修司のクラスメイト。口数も少なくクラスから浮いてしまっている。
どう見てもチャーシュー抜きのニンニクラーメンを食べそうな女の子

●雛菊 亜希 中等部3年A組 身長155cm 体重??kg B不明-W不明-H不明 血液型:O型
美緒のクラスメイトで、同じテニス部に所属する自称ライバル。天上天下唯我独尊な性格で、美緒を負かした修司に目を付ける。
どう見ても「あんたバカぁ?」と言ってきそうな女の子

●中野恵依美 高等部1年A組 身長151cm 体重??kg B80-W55-H83 血液型:O型
サーカスでスターを務める母親を持つ男勝りな女の子。意地っ張りで修司とはよくケンカしている。
どう見てもタネも仕掛けもないことに主へ許しを乞う怪盗少女そのもの。

●吉田 星亜 高等部1年A組 身長150cm 体重??kg B不明-W不明-H不明 血液型:B型
シスター見習いながら、抜け目のない物言いで人を煙に巻くのが得意な女の子。クラス委員として修司が気になる様子。
何故か登場人物紹介では3年A組所属になっている。
どう見ても怪盗少女の協力者な見習いシスターそのもの。

●小林今日子 高等部1年A組担任教師 身長163cm 体重??kg B不明-W不明-H不明 血液型:A型
お祭り大好きでお姉さんチックな、修司たちの担任。とにかくお酒が大好きで、飲んできだビールは5万本。一升瓶の一気飲みもお手の物。主人公へレッスンを施す。
酒好きとか某26話での担任とかそのまますぎませんかね?

●島崎 誠 高等部1年A組 身長168cm 体重52kg 血液型:O型
修司の親友。性格は普通だが、趣味のパソコンやミリタリー、サバイバルゲームに関わると目の色を変える。
もはや本人。

●山神伸幸 身長169cm 体重72kg 血液型:O型
駅前で小さな電器店を構えている修司の父。覗きが趣味で、2階にある息子の部屋の窓から帰宅してきたりするほどに常識で縛られることが苦手。
どう見てもたくさんの女性に好かれる主人公の親父

●山神英美 身長162cm 体重??kg 血液型:AB型
家族が大好きな修司の母。どれくらい好きかというと、息子である修司にも平気でムーンサルトプレスをしながらキスを迫るぐらい。
たぶん上の親父の映画版での亡き奥さん。性格はまったく違うけど。

●斎藤 達彦 身長180cm 体重72kg 血液型:AB型
修司たちが通う学校の校長。一見ナイスミドルでダンディだが、正義・熱血・世界平和を好む性格とズレたセンスをもっている。
どう見ても子供っぽい警視総監

おわかりいただけただろうか。

ストーリーとしては前述のとおり、スタンダードな王道ラブコメで楽しめるのだが、キャラクターデザインについてはひとりの登場人物として受け入れられるか、元ネタのキャラが頭にちらついて離れないかはプレイする人次第。リメイク? できるわけがないでしょうが!

まあ、さすがに次は普通の作品を出すだろう。

そんな風にユーザーたちが思いながら迎えた4ヶ月半後。

ティアラがまたやらかした。

■まじょっ子ぱらだいす

タイトル まじょっ子ぱらだいす
発売日 1996年9月12日
開発 ティアラ
販売 JAST
対象機種 PC-9801シリーズ、Windows95
※要HDD、GS音源MIDI機器対応
レーティング 18才未満購入禁止

◆ストーリー

…ふぅ。

ここ俺のが新しい学校か…悪くないな。

親父の転勤でコロコロと学校を変えられて、いいかげん頭に来てたけど、新しい街っていうのは新鮮な感じがするな。

…それにしても、どうしてこう毎日暑いんだ!

わけのわからない異常気象が日本を襲ってもう5年。

さすがに慣れはしたけど、毎日毎日こう強い日差しだと頭もバカになってくる。

セミはミンミンうるさいし、電気代はかかるし、いい事って言ったら、女の子が薄着してくるってくらいじゃないかっ!!

…まずい、愚痴ってばっかりいたら頭がクラクラして…早く学校に…

ん? ――あれは!?

光り輝く太陽の中に二つの影が舞う。

時間を止めたかのようにそれは光をバックに、眩しく映る。

俺は知らず知らずに、心奪われたまま空を見上げ、その場所に立ち止まっていた。

そう、この時から俺の新しい学園生活が始まったんだ――

(オープニングより)

◆概要(まじょっ子ぱらだいす)

ティアラはまったく懲りていなかった。

王道な学園ラブコメの次は、魔法少女を集めた学園ラブコメをお届け。果たしてその実態は、どう見てもお助け女神の末っ子だったり、どう見ても神秘の世界の王女様だったり、どう見ても天使なアイドル候補生だったり、どう見ても落ちこぼれ魔女だったり、どう見ても武闘派ウェイトレス世界一を目指していたり、どう見ても遥か昔の侍な魂を持っていそうだったり、どう見てもウェディングドレスからバトルスーツへ2段変身する愛天使や、どう見ても元祖スピンオフ魔法少女にそっくりな子がいたりと、前作以上によりどりみどりとなっている。魔法少女ではない子もいるのではというツッコミはなしで。

こうして見てみるとイロモノのようにも思えるが、ヒロイン9人のうち3人が王女様、6人が側近ポジションとなっていて、「普通の女の子と魔法少女の狭間の葛藤」「女王の位をめぐる魔法少女たちの事情」「魔法世界と人間世界の関わり」「人間である主人公との将来」といった感じにツボを押さえたシナリオづくりで、プレイする側を楽しませてくれる。もちろん、そういうシーンでは変身・非変身といったシチュエーションも用意されてはいるが、キャラによってはどちらか一方というのが惜しまれるところ。

システムは「さくらの季節」とほぼ同じ。セーブスロットが5個から10個に増えているのがありがたい一方で、オープニングは飛ばせずいちいちメッセージ送りと画面遷移を待たなくてはいけないのが玉に瑕。

◆登場人物

●蔵原 零 2年生
主人公。開星学園に転校してきて早々、まじょっ子の存在を知り彼女たちと関わっていくこととなる。
どう見ても最後の使徒

●羽田 綾 2年生
零のクラスメイト。転校したての零に学校のことを案内してくれたりと、なにかと親切にしてくれる。
どう見ても見た目は女神三姉妹の末っ子、性格は次女

●井上かすみ 3年生
美術部の部長。落ち着いた性格で、美術室でキャンバスに筆を走らせていることが多い。
どう見てもメガネをかけた異世界の王女様

●久川 瑞希 2年生
ピアノを好む零のクラスメイト。他の人と関わることが少なく、ひとりでいることが多い。
どう見ても魔女の森を追放されて人間界へやってきた女の子そのもの。

●金井 優紀 1年生
いつもはおとなしく、男性の前に出るとすぐあがってしまうけど、歌が大好き。
どう見ても田舎から上京してアイドルを目指す女の子

●椎名 みか 2年生
強気で勝ち気。学校で禁止されているバイトをファミレスで懸命にこなしている。
どう見ても最強のウエイトレスを目指す格闘少女

●羽田 ちさ 1年生
綾の妹で、姉とは正反対に子供っぽく元気いっぱいに零を慕う。
どう見ても原作から魔法少女にスピンオフして大人気を得た女の子。

●三崎さとみ 1年生
ちさと同学年で、零を取り合おうとする小悪魔。きわめて積極的で男性を翻弄しようとする。

●皆口きらら 2年生
図書委員の2年生。清楚なお嬢様の見た目に反して、言いたいことはズバズバ言うタイプ。
あなた、今でいう北海道の遥か昔にいませんでした? エンディングにはもいますよね?

●宮村 遥 3年生
陸上部の部長で照男の姉。いつも元気で陽気なお姉さん。
どう見ても肉弾戦が得意な愛天使

●宮村照男 2年生
自称・まじょっ子探偵な遥の弟。零のクラスメイトでもあり、よく零をトラブルに巻き込む。

●大門源三 開星学園校長
校長。ことあるごとに零の前に現れては、意味深なことを言ってくる。
ポーズといいグラサンといい、取り繕いようがない程にあの髭の男。

誰がどう考えてもやり過ぎである。

「さくらの季節」とは若干変えてきたのか、見た目はそう見えても性格は一致させていないキャラもいるが、今回は「キャラの名字か名前のどちらか一方」にわかる人にはわかるネタを仕込んできた。誰か自重しようというスタッフはいなかったのか。……いや、いなかったから世に出てしまったのか。

さらに、本作にもルートごとにサブタイトルがつけられているが、3つある王女様ルートは「女神の樹」「この空にちかって」「神秘の世界へ」となっている。あの、どこからどう見てもそのまんますぎませんかね?*2

結局のところ、本作も「シナリオがよくてもグラフィックが既存キャラそのものじゃないか」ということで評価を落とした面もあり、その一方で魔法少女とのラブコメというシチュエーションを好む好事家もいたりと、作品に対する評価は定まらなかった。リメイク? 今やったら危険なんてものじゃ済まないですよ。

なお、本作も小説版がそのままのキャラデザと直接的な描写で発売。帯に書かれたキャッチコピーは「学園ファンタジーの傑作 衝撃的な恋の呪文!! ティアラの超人気恋愛ゲームを小説化」。これが中学・高校生向け小説売り場――今で言うライトノベル売り場に置かれていれば、間違って購入し道を踏み外してしまう少年も少なくとも一人はいるだろう。*3

◆余談

  • 「さくらの季節」の前作「迷走都市」までは、CGのタッチはどこか似たようなものながらもシリアスな作品を発売していたティアラだったが、この2作だけは何故かハジケてしまった模様。次作の「黄昏の境界」以降はこの作り方を控えるようになり、1999年8月13日発売の「JUSTICE SLAVE 〜星となれ!!悪組織〜」をもって活動を停止した。
  • メインブランドの「JAST」は黎明期の美少女ゲーム「天使たちの午後」シリーズを発売するなど活躍していたが、2001年に倒産。傘下ブランドのうちひとつは運営母体を変え、2020年現在も「Purple software」として活動している。
  • 「既存アニメ・ゲームのキャラクターデザインや設定を模倣した美少女ゲーム」は、本作の前後でも他メーカーにおいても開発・発売されていた。しかし、Infinite-Justiceの「EREMENTAR LEGION-創聖の戦記-」*4を始めとして、トラブルが発生した作品も少なくない。
  • 「さくらの季節」は米国でも現地法人「JAST USA」がローカライズして販売していたが、「JAST USA Classics」と称して「迷走都市」などの過去ゲームとまとめてブラウザゲームに移植され、2019年4月1日より無料でプレイできるように公開中。ご丁寧に、日本からのアクセスは弾いている。
    • 何を思ったか、インターネットアーカイブ(The Internet Archive)でもDOSエミュレータを使ったブラウザゲームとして英語版を公開している。現在は起動出来なくなっている模様。



追記・修正は、祥子とさとみの元ネタがわかる人にお願いします。

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