重装機兵ヴァルケン

登録日:2025/10/25 Sat 23:37:00
更新日:2025/10/26 Sun 02:05:35NEW!
所要時間:約 26 分で読めます






俺が太平洋連邦合衆国海兵隊に徴兵されたのは、22歳の時だった。
不運なことに俺がアサルトスーツの訓練を終える頃には戦争はすでに地球全土へと広がっていた。
開戦のきっかけは、もう誰も覚えてはいない。
ただ、残り少ない化石燃料と月面の領土権を奪うためだけに戦争を続けている。
指導者たちには、限られた富を敵と分配する気はないのだ。

俺が戦うのは、愛国心や正義のためではない。
俺が兵士だからだ。
兵士が生き残るためには、戦って敵をたおすことしか道はないのだから。



戦争にヒーローはいらない。


ASSULT SUIT

VALKEN


重装機兵ヴァルケン』とは、1992年12月18日に発売されたスーパーファミコンのゲームである。
『ラングリッサー』シリーズや『超兄貴』シリーズを擁するゲームブランド「メサイヤ」の作品として発売された。




【概要】

メサイヤのロボットアクションシューティングゲーム『重装機兵』シリーズ第2作。
前作『重装機兵レイノス』の前日譚に相当するが、直接的なストーリー上の繋がりは希薄で、本作単体でも十分楽しめる。

『レイノス』は作りこまれた世界観をバックに繰り広げられる重厚で悲哀にあふれたストーリーや、こだわりの演出、自機の重量感を強く感じられる良い意味で「重い」操作性などでコアゲーマーやリアルロボット愛好家から熱狂的な人気を得たが、高い難易度から一般受けしたとは言い難かった。
本作はこうした声を踏まえて製作され、快適性をより高める新システムを多数実装。
難易度もだいぶ抑えられ、じっくりと腰を据えて取り組めばライトゲーマーでも十分クリア可能な、程よくマイルドな塩梅になった。
流石に『レイノス』をやりこんだプレイヤーからは「物足りない」という声も上がったものの、これによってより幅広い層へのアピールに成功した、シリーズを語る上では外せない一本である。

『レイノス』でも好評だった演出もパワーアップ。
鉄と硝煙の臭い漂う硬派な世界観が当時最新鋭だったSFCのマシンパワーで描かれ、往年の名作ロボットアニメを連想させるようなパロディやオマージュもふんだんに盛り込まれている。
たわし原うるし原智志氏渾身のキャラクターデザインや、名曲揃いのBGMも、手に汗握るバトルをより鮮やかに彩った。

ストーリーも、『レイノス』のようなどんでん返しこそないものの、あちらにも劣らず重厚な仕上がり。
ゲーム本編のストーリーだけでも十分楽しめるのだが、公式ガイドブックでは細部まで詳細に作りこまれた世界観設定やメカニック設定が紹介されている。これを読み込んでから遊べば新しい発見もあることだろう。

後年には本作の影響を強く受けた、いわばヴァルケンライクとでも言うべき横スクロールロボットアクションゲームも何本もリリースされており、コアなロボゲーファンの間では現在でも聖典的存在として認知されている

SFCの旧式化によって長らく遊ぶハードルが高い問題があったが、現在ではNintendo Switch向けに移植されており(詳しくは後述)、気軽に手に取れるようになった。



【ストーリー】


2050年代、枯渇しつつある石油などの化石燃料をめぐって、世界には不穏な空気が立ちこめていた。
そんな中で、欧州アジア連邦と環太平洋合衆国という、世界を2分する巨大陣営が、先を争って月面軍事基地開発を急いだ。
月面の表面に建設される戦術ビーム砲が、地球表面の任意の場所を的確に攻撃できるためである。

2101年。ついに月面での鉱石採掘利権と大ビーム砲建造に絡んだ紛争が発展し、月、衛星軌道、大気圏、陸上、そして海へと広い領域に戦火が広まっていった。
環太平洋合衆国兵隊の装甲機兵小隊に所属する主人公は、1兵士として重装機兵(アサルトスーツ)AS117に乗り込み、戦火の中へ身を投じる。
(説明書より抜粋)



【ゲームシステム】


体力制、の横スクロールアクションシューティング。
残機は3機で、ミスするとエリアの最初からやり直し。エクステンドはなく、4回死んだらゲームオーバー*1
アサルトスーツ「AS117 ヴァルケン」を操作してステージを進み、ボスを倒せばステージクリアとなる。

  • 攻撃
読んで字の如く。
以下の武器から一つを選ぶ。
パワーアップアイテムを一定数取得することで、最大3までのレベルアップが可能。

+ 頼れる武器達
  • バルカン
初期装備その1。
実弾式の手持ちバルカンポッド*2で、狙った方向に低威力の弾を連射する。
地形に当たると跳弾するため、室内ではこれを利用して小型敵を殲滅したり、遮蔽物の向こうから攻撃することも出来る。
一定数撃ち尽くしてゲージが空になるとマガジン交換のために一瞬隙が生まれる。リロードはないが、弾切れも発生しないので、ゲージが減ってきたら捨て撃ちで回復させておくべし。
初期装備のお手本と言うべきバランスの取れた性能で、レベルアップさせれば火力も上々。慣れたプレイヤーならこれ一丁でやっていけないこともない。
実弾なので発射中は排莢演出があるが、空薬莢が重力下では放物線を描いて落下するのに対し、無重力地帯ではちゃんと横に飛んでいく。

  • パンチ
初期装備その2。
炸薬カートリッジを利用して腕を伸ばして殴りつける、所謂アームパンチ。正式名称は「ハードナックル」。
威力自体は高いが、一度使うと暫くエネルギーを貯めなければならず、連射した場合の威力はバルカン以下と、かなり癖が強い仕様。
効率だけを求めるならあまり出番はないが、フルチャージ(特にレベル3)で撃ち込んだ時の威力は凄まじく、練習を積んだうえで好んで使う上級者も多い。中には拳1つで全クリしてしまう猛者もいるのだから凄いものである。
カートリッジを用いている設定上、使うとバルカンと同じように排莢される。
6面の坑道では使用不能。

  • ミサイル
2面で入手。
狙った方向に誘導ミサイルを発射する。
単発火力は高いが、連射が効かないためDPSはバルカンに劣り、全武器で唯一弾切れも発生する。
また、敵が多いとロックオンが迷子になって却って当てにくくなることも多い。
総じて癖の強い武器だが、誘導性能自体はそれなりなので、動き回るボスとサシで戦う時には便利。

  • レーザー
5面で入手。
狙った方向に強力なレーザーを照射する。
高火力な上に敵を貫通するため非常に強力。
射角を動かしながら撃って広範囲を薙ぎ払ったり、射角を少しだけ下に向けて撃ちながら前進することで前方から出てくる敵に先制攻撃をかけたりも出来、何かとウザい歩兵や小型兵器相手にも心強い。
撃った後でチャージ時間が発生するのが弱点…とされるが、バルカンと違って捨て撃ちしなくてもチャージしてくれる上、一瞬で終わるのでほとんど問題にならない。
通常プレイで入手できる武器の中では文句なしに最強である。
ただし、6面の坑道では半透明エフェクトをフラッシュライトに使っている関係で使用不能。

  • ナパーム
隠し武器。雑魚を一切倒さずに1面をクリアすると2面から装備される。
放物線を描いて飛ぶ爆発系武器で、隠し武器だけあってレーザー以上のぶっ壊れ火力を発揮する。
ただしコンティニューすると消滅する。
最初から強いため、唯一レベルの概念がない。


  • 射角固定
Lボタンを押し続けることで武装の射角を固定できる。
これを使うことで、激しい攻撃を回避しながら常に正面に弾をばら撒いたり、間合いを保ちながら引き撃ちすることも可能になった。
グラフィック上は8方向だが、実際はそれ以上の細かい調整が可能になっており、死角はほぼ存在しない。

  • シールド
盾を構え、敵の攻撃を防ぐ。
使用中は移動と攻撃が出来なくなり、空中での使用も不可。
グラフィック上は正面に向いているが、背後や上方からの攻撃もバッチリ防げる。プレイヤーからすれば便利な仕様だが、見た目的にはヘンなことはしばしば突っ込まれる。
公式もここは気にしていたのか、ガイドブックでは「機体周囲に電磁フィールドを張っている」と解説された。

  • ダッシュ
足裏のホイールを作動させ、短距離を走り抜ける。
持続時間は数秒で、どちらかと言うと緊急回避のような感覚で使うことが多い。
使用後は慣性で少しだけ移動する。そのため、使用後にそのまま歩行すると一瞬だけ早歩き状態になる。
一部のシーンでは画面が強制スクロールになり、常時ダッシュ状態で走り抜けることになる。この時はシールドが使えないため、被弾には特に注意すべし。

  • ジャンプ
その場で跳躍。
ボタン長押しによって5秒までブーストを作動させることが出来る。
ブーストと言ってもそれほど高高度まで飛べるわけではないが、落下を遅らせることは出来るため、ジャンプで攻撃を避けてから着地のタイミングを調節したり、普通に飛び降りるとショックアブソーバーが作動して隙が出来るような高度から安全に飛び降りることが出来る。



【登場人物】

・ジェイク・ブライン

主人公。階級は中尉。
名前はオプションで変更可能。
合衆国海兵隊第68アサルトスーツ隊「デスワスプ」隊長で、AS操縦技術は一流。
情熱的な性格をしている一方で、指揮官としての冷静さも併せ持つ。
項目冒頭のモノローグにもある通り、ただ生き残るために受け身で戦っていた*3が、死闘と哀しい別れの中で「戦争を終わらせたい」という意志を得ていく。

・ハーマン・シンガー

デスワスプ隊のASパイロット。階級は中尉。
皮肉屋で、ジェイクとは訓練学校時代の同級生にしてライバルだった。
操縦技術は優秀だが、何かと突出して無鉄砲な行動を取りがちなのが欠点。

+ ネタバレ
アーク・ノバ落下の後、バーシスを襲撃したベルダークをカーツと共に迎え撃つが、あっさりと撃墜され戦死する。
ジェイクがリックを助けた直後の出来事だったため、恩を仇で返されたかのような無情な光景に、ジェイクはただ「ちくしょう!」と叫ぶことしか出来なかった。
しかし、これをきっかけにジェイクの心境は変化していった。

・カーツ・モートン

デスワスプ隊のASパイロット。階級は少尉。
眼鏡がトレードマークで、撃墜マークは付けない主義。
真面目かつ几帳面な男で、ジェイクやハーマンのサポート役として活躍する。

・クレア・コーラル

バーシスのオペレーター。階級は曹長。
優しくおっとりした性格からバーシス男性クルーの間で人気抜群だが、多忙なオペレーターの仕事を完璧にこなす才女でもある。
物語を通してジェイクとの仲を深めていった。

・チャック・ジョンストン

バーシス艦長。階級は大佐。
いかつい見た目の叩き上げ軍人だが、結構人情家で、クルーからの人望も厚い。
PS4版『レイノス』のEDでは戦艦ロイアックの艦長代理としてチラッと登場する。

・アルフ・ベルダーク

連邦宇宙軍海兵隊のASパイロット。階級は少佐で、乗機を赤いパーソナルカラーで塗っている
軍人としての誇りの強さと、自身に厳しく他人に優しい性格で部下から慕われているが、敵に対しては冷酷そのもので、相手が大気圏突入中だろうが、部下を救った相手だろうが容赦なく襲い掛かる。
ジェイクに敗走したことでプライドを傷つけられ、その後ゾアフレムでの再戦にも敗れたことで本格的に暴走していく…
コミカライズ版によると、かつて合衆国のシャトルを襲撃した際にジェイクのヴァルケンに撃退されたことがあり、それ以来デスワスプ隊に執着していたという。

・リック・ブリザース

ベルダークの部下。階級は少尉。
新兵であり、ベルダークに対して強すぎるほどの尊敬の念を抱く。
大気圏に突入したバーシスを追撃中に機体に不調が発生し、ジェイクに救出されるが…

・ゲルツ将軍

連邦宇宙軍の軌道要塞アーク・ノバの司令官。
任務のためなら部下や民間人を犠牲にすることすら厭わない冷血動物であり、部下からの評判も悪い。
ジェイクを迎え撃つべく自らグランビアで出撃した際も、部下をブースター噴射に巻き込んで殺しており、アーク・ノバ落としについても「核を使うよりはマシ」と一切悪びれなかった。
最終的にはジェイクに倒されて戦死したが、仮に生き残ったとしてもアーク・ノバ喪失の責任を問われて処罰されたことだろう。

・シェルマーク大統領

欧州アジア連邦最高権力者であり、全軍の指導者。
合衆国からは「悪の枢軸」扱いされているが、彼も積極的に戦争を望んでいたわけではなく、「時代が我々を戦争に導いた」という、半ば諦めにも近いスタンスを取っている。

+ ネタバレ
オペレーション・ソルジャーソウルによってブリュッセルは陥落し、彼もまた議事堂に突入したジェイクに追い詰められた。
ジェイクからはこれまで死んでいった人々への責任を取るよう促されたが、「今の私にできることはこれくらいだ」とその場で拳銃自殺する。
…しかし、戦場で死んでいった敵味方双方の兵士達を嫌というほど見てきたジェイクの眼には、彼の選択は単なる自己満足の死に逃げとしてしか映らなかった。

…こんなことで…
…こんなことで責任を取ったつもりなのか!?

・歩兵

3面と7面で登場し、小銃で撃ってくる連邦軍歩兵の皆さん。
1人1人の攻撃力は大したことないが、舐めていると微細ダメージの蓄積で体力を大きく削られてしまうので油断は禁物。
3面ではバルカン跳弾で、7面ではレーザー薙ぎ払いで一掃すべし。



【登場メカニック】

・環太平洋合衆国

・ヴァルケン

グランパシフィック社が開発した合衆国主力ASであり、本作の主役機。
連邦のAS開発計画を聞きつけた合衆国が、来るべき連邦新型機との対決に備えて開発を命じた。
支援機としての運用が主だったヒューズ8から大幅なスペックアップを果たし、人間とほぼ変わらない行動自由度を獲得。その優れた機動性能と汎用性でASの時代を築いた傑作機である。
単体ではごく短時間の飛行しかできないが、ブースターユニットを装着すれば高高度での空中戦も可能になる。
カラーリングは、パッケージでは銀、タイトル画面とOPデモでは緑、ゲーム中ではライトブラウンとばらつきが激しく、後にPLUMから発売されたプラモデルはジェイク機がライトブラウン、ブースターユニット装着型が緑、という形で表現されている。
戦争末期には後継機シュペル・ヴァルケンの開発計画も進んでおり、オペレーション・ソルジャーソウルの際に試験を兼ねて数機が投入されたが、調整不足が祟って思うような戦果を挙げられなかった。
結局次期主力機はレイノスに決定し、シュペル・ヴァルケンは特殊部隊用として少数が配備されるに留まった。

・バーシス

合衆国宇宙軍の強襲揚陸艦であり、ジェイク達の母艦。
小さいが、その分小回りが利き、更にコロニーの隔壁を体当たりで突き破れるほど頑丈。
『レイノス』にも同名の艦が登場するが、見た目は大幅に異なる上に分類も降下艇のため「名前だけ受け継いだ別の艦」という説が有力。メタなことを言えばファンサービスの一環として名前だけ『レイノス』から引っ張ってきたのだろう。

・サラトガ

バーシスと同型の僚艦。OPムービーに登場。
サーキエル破壊作戦のためにバーシスと共に出撃したが、高出力ビームと思しき砲撃をまともに喰らい、作戦開始前に轟沈してしまった。
かの悪名高きPS2版0面で無音轟沈するシーンがネタにされている影響で「PS2版で勝手に名前が付けられた」と勘違いされがちだが、実は「サラトガ」という名前自体は当時の攻略本『重装機兵ヴァルケンのすべて』が初出であり、後述の海外版でもOPムービーで言及されている。
更にもう一隻同型艦が映っているものの、そちらの詳細は不明。

欧州アジア連邦

+ AS

・マシヌティ

フロッシュ社が開発した、連邦軍初の量産型AS。
拿捕したヒューズ8の分析データと、連邦軍が元々研究していた人型兵器の技術を組み合わせて建造された。
性能自体は低いが、作業メカとして働きながら集めた稼働データはヴェクサル開発に大いに役立てられた。
その後、簡易モデルが実際に民間用作業メカとしても生産されている。
ゲーム中では盾を持った非武装の機体のみ登場するが、設定上は武装を施された警備タイプも存在し、中には3機編成の部隊でヴァルケンを撃破する大金星を挙げたケースもあるとか。

・ヴェクサル

両腕にバルカン砲を固定装備した旧型AS。
ごつい見た目に反して装甲はさほど厚くなく、攻撃も散漫。
現在はコロニーなどで警備用にのみ用いられている。

・シュメルツ

連邦軍主力機…だが、出番は4面のみ。
流線型のフォルムがスタイリッシュ。
連邦が合衆国のヴァルケン開発計画を聞きつけたことで開発された機体であり、対AS戦を主眼に置いている。
高度な飛行能力を備え、空戦能力もヴァルケンより勝る。
その優れた性能でヒューズ8の後継機ヒューズ9をボコボコに叩きのめして開戦初期の連邦軍を優勢に導き、合衆国兵士から恐れられた。
設定上は豊富なバリエーションが存在するようだ。

・オラクルα/オラクルβ

シュメルツのフレームを転用して開発された宇宙用AS。ミサイル搭載型がαで機銃搭載型がβ。
下半身をブースターに換装し、両腕も武装としての機能のみ持たせた簡易なものに変更してある。実質的には宇宙戦闘機のようなもの。
ちまちま動くので狙いをつけにくいが、重なって撃ち込むと楽。

・ウンタート

レーザー砲を搭載した移動砲台的機体。
火力は高いが機動性は著しく悪く、接近戦でヴァルケンに撃墜されまくった不遇なヤツ。ゲーム中でもさしたる脅威ではない。
ASの強みである汎用性を捨てたことで、格闘能力の重要性を逆説的に証明した存在といえる。

・ツヴァイ・バイニヒ

対艦用の重火器を搭載した純陸戦用の大型機。
一応分類上はASだが、見た目は殆ど脚付き戦車。
火力は単純比較でヴァルケンの60倍もあるが、デカい見た目通り機動性は劣悪で、現場でも持て余されていたという。

・デッケン

空戦用の飛行AS。
胴体に大型の翼を備えており、単独で1万2千フィートまで上昇可能。
武装は小口径のライトレーザーキャノンしかないものの、空中でシールドを展開できないヴァルケンにとっては大きな脅威となる。

・レベンディック

シュメルツの後継機。
ズングリムックリで一見あまり強そうには見えないが、性能を高めつつ、極力少ないパーツで組み上げることでシュメルツ以上のコストパフォーマンスも確保した優秀な機体。
ASの課題だった中・長距離移動力の低さも、カーセルとの連携によって解消されている。
量産のために大規模な生産ラインも用意されていたが、ロールアウトした頃には既に連邦の敗色が濃厚であり、資源不足と終戦によって大量生産が頓挫した悲運の名機。
最終的に製造された200機はブリュッセル防衛に投入された。

・ゾアフレム

連邦軍不利の戦況を覆すべく、急ピッチで開発された最新鋭の大型機。
浮遊砲台アンファン・システム2基と専用の60㎜ガンポッドで武装する。
肩には特殊金属が用いられており、ショルダータックルでヴァルケンの電磁シールドをぶち抜ける。
性能自体はヴァルケンを遥かに凌ぐが、ハイコストな上に操縦性が劣悪で、ベルダーク以外には使いこなせなかったという。
ロールアウトしたのも3機だけであり、しかもうち2機はデータ取り用だったので、実戦投入されたのはたったの1機。いくら高性能機でも、1機では如何ともしがたかった。
こんなもん作るくらいならレベンディック量産に資源を回した方が良かったのでは

・ヴォルカーノ

連邦首都国会議事堂の地下工場で、天文学的費用を投じて開発されていた実験機。
武装にも装甲にも新技術が大量に用いられているが、あくまで技術実証のための機体なので戦闘能力は低い。
武器のレーザーは射角が限定的で、懐に潜り込んでしまえば楽に凌げる。
ただし戦闘は強制スクロールエリアから始まり、取り巻きのムスティークや道を塞ぐ隔壁にも同時に対処せねばならないため、油断は禁物。


+ 航空機

・フラミッシュ

小型攻撃機。
搭載したミサイルは誘導性能こそ低いが、破壊力は抜群。

・ベルリノ

低空巡航地上制圧爆撃機。
爆弾3発を搭載し、広範囲を焼き払う。
撃墜演出のバリエーションが地味に多いので、色々な倒し方を試してみよう。

・シュネーブルッヒ

アルプス山脈の対空砲陣地に配備された大型対地攻撃機。見た目は小さいガロイシュっぽい。
光弾で激しく空爆してくる他、機首の拡散型リニアスパークを用いた体当たりも可能。
こいつ自身の耐久力はそれほど高くなく、レーザーがレベル3になっていればすぐに倒せるが、ステージ内の対空砲を一定時間内に全滅させないとバーシスが撃沈されてゲームオーバーになってしまう。

・カーセル

終戦間近になって投入された輸送機。
レベンディックを空中から投下する。


+ 車両

・235号戦車

局地戦用のホバータンク。
主砲の射角が狭く、正面しか撃てないため、段差の上から狙い撃ちすれば一方的に倒せる。

・フロテール

次期主力戦車として開発された市街戦用ホバータンク。
火力、装甲共に優れており、ブリュッセル防衛戦で絶大な戦果を挙げたという。
撃墜されるとまず砲塔が破壊されてから、時間差で本体も爆発する。

・アジール

小型高速の地上用対AS兵器…と言えば聞こえはいいが、その実態は砲乗っけただけのジープ
戦果は意外に優れており、「コスパだけを考えれば最も優秀な対AS兵器」とされているが、言うまでもなく損耗率は滅茶苦茶高い。殆ど動く棺桶も同然である。

・ムスティーク

20㎜機銃と搭載したホバークラフト。
大統領官邸で用いられていた移動用車両に間に合わせの武器を付けた代物と見られている。


+ 大型兵器

・ガロイシュ

宇宙の動力鉱石採掘場に配備されている、宇宙艇のような機動兵器。
「アンファン式岩石誘導装置」を搭載しており、武装として備える小型浮遊砲台の他に、隕石やデブリを操って即席の武器や盾にも出来る。
革新的な機体ではあるが、アンファン・システムがまだ未熟なため制御難易度は高く、完成当時はあまり注目されなかった模様。
正面から撃ち合うと浮遊砲台の弾幕と隕石の猛攻であっという間に押し負けてしまうが、左下に陣取り、右上に射角を固定して撃ちながら適度に避けていれば比較的楽に倒せる。

・グランビア

簡易型アンファン・システムを搭載した、近接格闘用の実験機。
アンファン・システムを使用して腕を飛ばす「ソリッド・アーム」を武器とするが、ASが主流となった本編時点では既に時代遅れの代物である。
ボスとしてもさほど強くなく、適度に避けながらミサイルを撃ち込んでいればあっさり沈む。さっさと片付けてアーク・ノバのブースターを壊しに行こう。

・サーペント

アルプス山脈の対空砲陣地でジェイクを襲撃した、ヘビのような大型マシン。
武装はなく、搭載したドリルで岩盤を掘り進む。恐らく元は採掘マシンだったのだろう。
触れただけで大ダメージを受ける上、弱点も先端部分だけであり、普通に戦うとかなり手ごわい。
が、実はこいつが出現する時点で自機が立っている位置がそのまま安置になっており、突っ立ったままバルカンをばら撒いていればハメ殺しに出来る。

・ビルドヴォーグ

全高55mの超巨大機。本作のラスボス。
馬鹿げた量の重火器によるすさまじい攻撃力を誇り、下半身には単独での大気圏離脱すら可能とする強力なブースターを搭載する。
しかし、その巨体から分かる通りコストパフォーマンスは最悪で、敗色濃厚な中で本機を作っていたことが却って連邦の首を絞める結果になった。
こんなもん作るくらいならレベンディック量産に以下略
とはいえゲーム中での強さには勿論コスパなど関係なく、適切なパターンを組まないと極めて対処困難な、ラスボスに相応しい難敵。
巨体と画面下部の噴射炎(当たり判定付き)のせいで回避スペースが狭いのも厄介。


+ 艦艇

・サーキエル

連邦軍が居住区に偽装したコロニーで開発を進めていた新造戦艦。
艦首に搭載した粒子砲はバーシスを一撃で沈められるほどの威力があるようだが、突入してきたデスワスプ隊の攻撃で大ダメージを負い、未接続だったエネルギーユニットもジェイクに破壊されて沈黙した。
このエネルギーユニットと護衛用砲台が1面ボスとなる。

・フレンツェ級

アーク・ノバに2隻停泊していた宇宙タンカー。
大砲数門と多数のレーザー砲台を備えており、特に後者は湾曲するホーミングレーザーを撃ってくるのが厄介。ただし多段ヒットはしないため、先端だけシールドで防いでしまえばOK。
艦自体は地形扱いのため破壊不能だが、砲台とタンクは破壊可能。

・エスポワール

連邦の輸送用大型シャトル。
護衛として多数のデッケンが用いられることが多く、これ自体もリニアレールガンで武装しているため油断はできない。
5面ボスだが、時間制限があり、撃墜成功はトゥルーエンドの条件。


+ その他

・シャンピニョン

円盤のような小型の無人浮遊砲台。
火力も装甲も貧弱。
ゲーム中で最初に遭遇する雑魚であり、概ね空中の敵への狙い撃ちを練習するための的みたいな存在である。

・ピュープル

鉱石加工場に配備された浮遊型の小型哨戒メカ。
誘導光弾を発射してくる。
こいつ自体は弱いが、障害物だらけの高速スクロールエリアで登場するため、地味に面倒。

・アレーネ

アーク・ノバの中に大量配備された四脚の小型哨戒メカ。
武装は貧弱だが、機動性は高い。
ゲーム中では背が低くて狙いにくいのも地味にめんどくさいところ。

・ハイッシャー

資源不足に陥り、ASの大量生産が難しくなった連邦軍が新たに開発した、ローコストの対AS用パワードスーツ。
AS以上の環境適応力を誇る上、操縦が簡単なので少ない訓練時間でも乗りこなせる。
小型軽量なため機動力に優れ、市街戦における集団戦で多数の合衆国ASを撃破して「ASキラー」の異名を取った。
しかし、単体での戦闘能力は低い上、新兵を乗せて前線に大量投入されたせいで損耗率も高く、本当に「コストパフォーマンスが良い」かは疑問視されたという。
基本的にはただの雑魚だが、6面の坑道では狭い場所で次々現れては弾をばら撒いてくるため、慣れないうちは意外と手ごわい。

・ゼネゲル

ハイッシャーの後期量産型…と言えば聞こえはいいが、機動性を活かして懐に飛び込み、至近距離から対アーマーキャノンで撃ち抜く危険極まりない戦法を前提にした、殆ど特攻兵器同然の代物。
投入されたのもブリュッセル防衛戦のみ。要はオッゴみたいなもんである。

・スノークス

スカウト部隊用のスノークラフト。
30㎜機関砲と榴弾砲で武装し、4機編成で行動する。
特に榴弾はバウンドして飛ぶため、慣れないうちは避けにくい。真っ直ぐ飛ぶ機関砲の方が避けやすいので、前方に回り込んで戦おう。




【用語】


・環太平洋合衆国

アメリカ、日本、オーストラリア、その他の太平洋周辺諸国で構成された経済共同体。
一応北米のワシントンD.C.に首都を置いているが、各国も強い自治権を持つ。
連邦との対立が深まる中で、次第に軍事同盟としての色が強くなっていった。

・欧州アジア連邦

ヨーロッパ、アジア、旧ソ連諸国で構成され、欧州共同体を前身とする経済共同体。
首都はベルギーのブリュッセル。
合衆国と同じく軍事同盟としての性質を強めていったが、こちらは各国の自治権を制限し、全体主義的な中央集権国家になっていった。
その性質上、合衆国からは独裁国家呼ばわりされているが、複雑極まりない政治的背景のあるユーラシア大陸を統一するためには、これはこれで必要なやり方だったのだろう。

・第四次世界大戦

本作中で繰り広げられている戦争。名前自体は本編では言及されない。
あらすじでも触れられている月面の領有権と、新エネルギー資源「動力鉱石」の奪い合いに端を発し、地球全土を巻き込んだ戦いが繰り広げられた。
開戦当初はASの有用性にいち早く気づいた連邦の快進撃が続いていたが、合衆国は宇宙に戦力を集中させることで宇宙での支配権を勝ち取り、逆に動力鉱石を始めとする資源の産出地を失った連邦はどんどん劣勢に立たされていった。
最終的に、合衆国が最終作戦「オペレーション・ソルジャーソウル」を発動してブリュッセルを制圧し、合衆国の勝利という形で終戦を迎えた。

+ ...
この戦いの最中、かつて地球を旅立った外宇宙探査艦隊に重大なトラブルが発生し、地球に救援要請が届いていた。
しかし、全面戦争の真っただ中だった地球には当然これに応える余力などなく、「自力で生き残れ」と宣告する。
その後送られてきた救援要請も全て黙殺され、これを受けた艦隊は地球への侵攻と帰還を決意させるのだった。
こうして、物語は『レイノス』に続く…

・アサルトスーツ

作中で広く普及している、全高6m前後の乗用ロボット兵器。通称AS。
動力鉱石エンジンで駆動する。
基本的には人型だが、中にはそこから逸脱した特殊な形態の機種もある。
月面の領有権争奪戦を見据えた合衆国が「月面と宇宙空間で戦える戦闘車両」を求めたところ、当時はまだ無名だったグランパシフィック社がこれに「人型ロボット」という全く新しいアプローチで売り込んだのが始まり*4
最初にロールアウトしたヒューズ8は、マニピュレーターによる武器持ち替えに時間がかかったり、歩行システムの制御が難しかったりと課題も多く、当初想定されていたほどの性能は発揮できなかったが、それでも支援兵器としては大いに活躍し、それまでは創作上の産物だった人型ロボット兵器のポテンシャルを示して見せた。
そして、合衆国ではヒューズ8をさらに発展させたヴァルケンがロールアウトし、連邦もマシヌティ開発を経てヴェクサルやシュメルツを完成させたことで、ASは「最強の陸戦兵器」という称号を決定的なものとした。
登場メカの項にもある通り対AS兵器も多数存在し、大きな戦果を挙げた機種もあるが、いずれも損耗が激しかったり、コストが高すぎたりといった運用上の問題を抱えており、総合力ではASの王座は揺らいでいない。「最強」という設定ではあるが、どちらかと言えば「最優」といったところか。

・アーク・ノバ

連邦軍の宇宙機動要塞。
小惑星をくりぬいて作られており、AS等の兵器も多数搭載。補給や兵器開発なども行える。
搭載したブースターによって宇宙空間を自由に移動可能で、開戦当初の連邦有利を支えていた。
ゲルツ将軍の判断によって地球に落とされ*5、ジェイクはブースター破壊による阻止を試みることとなる。これに成功するのはグッドエンドのもうひとつの条件。
落下阻止に失敗すると合衆国の基地に落ち、都市複数を巻き込んで甚大な被害を出すことになるが、いずれにせよアーク・ノバ自体は失われるため、連邦の不利がこれで決定づけられることになった。



【移植】

・PS2版

厳密にはリメイク版だが、一応初の移植にあたる。
既にSFCも旧式化して久しかった中での発表だったためシリーズファンを歓喜させたが、いざ蓋を開けてみればオリジナルの魅力と言う魅力を極限までそぎ落とした超劣化移植であり、Switch版の公式プレイレポで「名状しがたい何か」呼ばわりされた真の黒歴史。
あまりの出来の悪さに怒り狂った一部のファンが開発元に脅迫状を送り付けたせいで重装機兵シリーズの展開自体も難しくなり*6、今なお色んな意味でシリーズに暗い影を落としている。
詳しくは当該項目参照。

・Wii版

バーチャルコンソールで配信された。
内容はSFC版のベタ移植で、特典や新要素は特にないものの、それでもPS2版でトラウマを背負ったファンを救済するには十分であった。
WiiショッピングとVCのサービスが終了したため、新規購入は出来なくなったが、当時買っていれば再DL可能。

・Nintendo Switch版

重装機兵ヴァルケン DECLASSIFIED』のタイトルで配信された。
Wii版と同じくベタ移植で、様々な名作を移植してきたM2が開発しただけあって再現度は抜群。
中断セーブやキーコンフィグなどで快適性が向上し、リプレイ動画の録画と保存も可能になった。
更に、
  • 初公開の画稿やうるし原氏による新規イラストを収録したビジュアルギャラリー
  • 本編楽曲のみならず92年のアレンジサントラも網羅したサウンドテスト機能
  • ゲーム中の素材を利用した新規映像付きのスタッフクレジット。閲覧することで裏技のアンロックも可能。
  • 当時の公式ガイドブックを電子書籍として丸ごと同梱
  • メインデザイナーを務めた仲居さとし氏のインタビュー
…と盛り沢山の特典も実装された、まさに決定版と言える超豪華仕様である。
既にSFC版やWii版を所有している方も、ファンアイテムとして購入しておいて損はない。



【余談】


  • 本作では『レイノス』で好評だった味方機との共闘シーンがないが、これは味方機を増やすと処理が重くなってしまうため、泣く泣く断念したのだという。
    他にも技術的な問題や納期の関係でカットされた要素はかなりあり、スタッフインタビュー等でもよく言及されている。

  • 海外では『CYBERNATOR』のタイトルでKONAMIから発売された。概ね同じ内容だが、幾つか削除された要素もある。
    その後、Switch版が英語対応でリリースされ、完全な状態の英語版『ヴァルケン』が30年越しに実現した



追記・修正はアジールでブリュッセル防衛戦を生き残れた方にお願いします

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最終更新:2025年10月26日 02:05

*1 ただし裏技で残機無制限のフリープレイモードも存在する

*2 口径は資料によって80㎜だったり40㎜だったりと安定しない。ゾアフレムの60㎜ガンポッドが「AS用バルカンとしては最大口径」とされているのを見るに、40㎜と見るのが妥当か

*3 外伝小説によると、軍人になった経緯も「何もかもが嫌になって自暴自棄になっていた頃に、社会から逃げ込むように入隊した」とのことで、生きる目的もなかったのでとりあえず「生き残ること」を目標にしていたという。

*4 このコンペ自体には他にもいくつもの企業が参加したが、どれも1台作るだけで戦艦並みのコストがかかる非現実的な代物だったという

*5 「ジェイクが司令センターに突入してきた際に「ここまでは計画通り」と発言しているので、追い詰められて自棄になったのではなく、最初からそのつもりだった模様

*6 下手なものを出すと当時脅迫してきたファンが実力行使に及ぶリスクがある、と判断されたため。