雪影村殺人事件(金田一少年の事件簿)

登録日:2012/07/12(木) 02:17:58
更新日:2020/05/14 Thu 03:26:16
所要時間:約 18 分で読めます





―こんな寂しいところで‥‥‥‥君はなんで絵を描いてるんだい?―


雪影村殺人事件とは、金田一少年の事件簿での事件の1つであり、かつて金田一少年が解決した事件のうちの一件。全9話。
テレビドラマでは第4シーズン(neo)第7話として2014年9月6日に、テレビアニメでは第111話~第114話として1999年11月15日~12月6日にかけて放送された。

本作は、金田一の中でも屈指の異色なエピソード。
その最大の特徴は、兎に角繊細である事。

金田一であるので、殺人とミステリーには変わりないのだが、それ以上に繊細な心理表現、物悲しいモノローグ、寂れた港町の描写、と、
他のエピソードとは全く別のベクトルを向いた作品である。

また、美雪や剣持などのレギュラーキャラクターが一切登場しない(準レギュラーでも登場したのは二三のみで、佐木や明智も登場しない)
その為、今事件では一がたった一人で事件に挑む事になる。

作画担当のさとう先生は単行本の中で「マンネリに陥りつつあった中、今回はいつもと違う毛色でスラスラ描けた」という旨のコメントを残している。


ドラマ版においてこのエピソードは1話完結形式、大人の事情による一以外のレギュラー陣出演となってしまったので、
原作版のこのエピソードの魅力を十分実写化できてはいない点が悔やまれる点である。

アニメ版の容疑者リストの順番は上段が左から綾花、都、冬美で下段が今井、立石、島津、魚住でバックは白。

以下、ネタバレにご注意下さい。


【あらすじ】

桜の様に降る雪の中、絵を書く少女の夢を見た朝、一に一本の電話がかかる。
それは5年前に2週間のみ滞在した雪影村の友人から、仲良しだった少女の1人春菜の自殺を告げる内容であった。

1人葬式の為、秋田県雪影村に向かう一はかつての友人達との再会を果たすものの、その誰もが「昔」とは変わり始めており、冷たい影が潜んでいた。

そんな中、メンバーの1人が、春菜の棺に納められた筈の「上送りの矢」を首に刺され、死体となって発見される。


【登場人物】

若者達は全て一の友人で、地元雪影高校の生徒。中学生時代に偶然村を訪れた一と意気投合し、非常に親密な関係を築いていた。
そしてタイムカプセルを皆で埋め、5年後になったらみんなで開けよう。そんな約束を交わしていた。

主人公。
今回、春菜の葬儀の為、5年ぶりに雪影村を訪れる。かつての友人達との再会するが、そこで哀しい事件に遭遇してしまう。
友人達を次々と殺害していく犯人に対し、強い怒りをあらわにしていたが、真相が明らかになった時にはもの悲しげな表情を見せていた。

  • 太刀川 都(たちかわ みやこ)
CV:坂本千夏/演:山下リオ
一の母親と彼女の母親は学生時代からの親友であり、太刀川家は一の宿泊先である。一より背が高いデカ女。
全エピソードの全登場人物の中でも数少ない、一を下の名前で呼ぶ人物。
丸眼鏡にカチューシャ、方言丸出しと正統派田舎娘といったところ。だがそれがいい
小説家希望を自負しているらしく、今回の事件にも率先して関わろうとする。今回登場しない美雪代理の役目を果たす。最後には一との別れで号泣する。健気。

  • 島津 匠(しまづ たくみ)
CV:千葉一伸/演:須賀健太
一に電話をした張本人。
野球少年でありかつてはスカウトがかかるほどの投手だったが、高校1年の夏に無理をして肩を壊してしまい、野球部を引退。どこか寂しい目をする少年。
ドラマ版での中の人は、フォーゼの教え子にしてイナズマンでもある。

  • 社 冬美(やしろ ふゆみ)
CV:石塚理恵/演:藤原令子
かつては神経質そうな地味眼鏡少女だったが、一と再会した時には美人になっていた。
東京の芸能プロダクションを目指していたが、桜雪の降った朝、首を矢で刺されて殺される。
亡くなる直前、部屋で自分を責めて泣いていたようだが…。
ドラマ版では東京の芸能プロダクションの社長が自分と同じ女優志望の少女達を騙してタダ働きをさせていたため、
騙された少女達の代表となって、集団訴訟を起こそうとしていた。
その矢先に事件に巻き込まれ殺されてしまったため、
剣持警部は「集団訴訟を起こされるのを恐れた芸能プロダクションの社長が、冬美を口封じのために殺害した可能性が高い」と判断し、雪影村にやってきた。

  • 蓮沼 綾花(はすぬま あやか)
CV:宇和川恵美/演:平祐奈
明るく可愛らしいタイプの少女。昔はウィンブルドンを目指すテニス少女だったが、高校になるとテニス部がなく、テニスから離れる。
何かに怯えた表情を浮かべる。深夜に忘れ物を取りに来た中学校のテニス部室にて首を矢で刺されて殺される。

  • 魚住 響四郎(うおずみ きょうしろう)
CV:岡野浩介/演:上遠野太洸
ギターを愛しプロを目指していたが、1年前に1か月程失踪。その後突然ギターを辞めると宣言し、漁師の父親の手伝いを始める。
春菜に告白して玉砕し、仙台で1ヶ月間オーディションを受けまくっても玉砕したことがギターを辞めた理由だった。
校庭で倒れている冬美が発見された時、彼だけ合流が遅れており、疑いの目を向けられるが…
ドラマ版での中の人は、後にプロトドライブから死神、そして3人目の仮面ライダーへと転身を遂げた

  • 立石 直也(たていし なおや)
CV:西村朋紘/演:入江甚儀
かつてキャッチャーとして島津とバッテリーを組んでいたが、島津の引退と共に引退。東京の大学へ出て弁護士を志すようになる。
一と同じくスケベであり、ベッドの下に隠す派。一と共に飲酒したりとリアル高校生。
が、ドラマ版ではそれとは真逆のイケメンで真面目な高校生として描かれている。ちなみに中の人はリメイク版ジローだったりする。

  • 葉多野 春菜(はたの はるな)
CV:矢島晶子/演:小川涼
故人。仲良しグループの中では一歩引いていたおとなしい子であり、絵を書くことが好きだった。
いつもはあまり喋らない方だったが、7人で集まって一の話をしているときはよく喋っていた。金田一との絵を描いていたことから、以前は金田一に好意を寄せていたことが窺える。
うれしい色だったはずが許されない色だったなんて、もうだめ死ぬしかない」と謎めいた遺書を、離婚し別れた父親に向けて残し、
海辺でリストカットして自殺した。彼女の死が事件の発端となる。

  • 今井 龍矢(いまい たつや)
CV:宗矢樹頼
春菜の父親。頬に傷があるという大男。離婚後も娘である春菜とはたびたび会っていた模様。
今回の事件に犯人かと疑惑を掛けられるが…?

  • 鷲尾 鉱三(わしお こうぞう)
CV:金子由之
秋田県警の刑事。アニメでのみ本名が設定されている。
捜査に口だしする一のことを最初は快く思っていなかったが、捜査が進むうちに彼がただ者でない事を見抜く。
アニメでは剣持警部の知り合いという設定が追加され、剣持から一の功績を聞かされていた。

【その他】

ヒロイン。…だが原作では登場しない。
アニメ版やドラマ版では一と喧嘩していた為同行しなかったが、いずれもラストで一を迎えに現れる。












【以下、悲しい真相…】









冬美たちばかりのせいじゃない‥‥わかってたのさ!

あの時気付いてやれなかった‥俺のせいでもあるってことを!!

だからこの3本目の矢は、俺を罰するためにとっておいたんだ!!






  • 島津 匠
この事件の真犯人。実は自殺した春菜とは付き合っており、春菜は彼の子供を身ごもっていた
(すなわち、春菜の遺書にあった「うれしい色だったはずが許されない色」とは、妊娠検査薬の反応色のことであった)
そんな中、密かに島津に想いを寄せていた冬美と綾花が、島津と春菜の父親が偶然にも同姓同名であった事を利用し、
「「島津匠」と「葉多野春菜」は異母兄妹であった」と春菜に嘘をつく。
(春菜の妊娠を知らない冬美達は失恋の腹いせにちょっとした意地悪をしただけのつもりであり、春菜が自殺を選ぶまで追い詰められるとは思っていなかった)
結果、春菜は実の兄の子を孕んだと勘違いし、絶望して自殺してしまい、その話を聞いた彼は、嘘をついた2人の殺害を行う。
更に最後の最後で春菜の苦しみに気付けなかった自身への罰として自殺を図るが、彼を心配して密かに現場に来ていた立石らによって阻止。
一たちの説得によって自首した。
犯行に使ったトリックは野球が出来なくなっていた直後、春菜によって励まされ書き始めた小説のトリックだった。
(その為、復讐が動機の犯行にしては、実行までの期間が過去最速である)
なお、長編では珍しく、金田一恒例となる真犯人の二つ名がない。
さらに、殺人の被害者が女性のみの事件も長編では数少ない(他はオペラ座館殺人事件ぐらい)。

  • 社 冬美
部屋で泣いていたのは春菜を自殺に追いやった自覚があったから。
春菜の自殺の原因を綾花に知らされた際、「勝手に勘違いした春菜が悪い」と強がるところを偶然島津に見られてしまったことが自らの死を招いてしまった。
島津の自首後にタイムカプセルが開封され、5年前から島津に思いを寄せていたことも判明した。
実の子供達ですら知らなかった同姓同名の件をどこで知ったのかは不明。

  • 蓮沼 綾花
春菜が妊娠検査薬を買っていたのを目撃しており、後に自分達の嘘が自殺の原因になったことを悟った。
何かに怯えていたのはこれが誰かに知られることを恐れたから。
なお、殺された時にテニス部室にいたのは探し物をしていたためだったが、何を探していたのかは最後まで明かされず。
(その際「誰かにあれを拾われたらあたし…」と言っており、どうやら「他人に知られたくないもの」のようではあるが…)

いずれにせよ、冬美も綾花も自分達が好意を寄せていた島津から殺されてしまった(しかも、島津は春菜の事しか考えておらず、二人には全く興味が無かった)のだから、何とも皮肉なものである。

  • 葉多野 春菜
おとなしかった彼女だが、彼女なりに仲間との時間を楽しんでいたことがタイムカプセル開封によって判明。
仲間全員がそれぞれ一番輝いている姿を絵に描いてタイムカプセルに収めていた。

  • 今井 龍矢(×2)
演:小木茂光(島津の父親の方のみ)
いつの間にか子供が自分と同姓同名の男の子供と恋仲になっていて、それが原因で最悪の結果を迎えた人達。
彼ら自身は事件には直接関わっていないが、もし彼らがもっと子供達と交流できていれば名前の一致が判明する機会はいくらでもあったはずであり、
そういう意味では彼らが2人とも子供達と交流出来なかった事こそ、悲劇の連鎖の始まりと言えるかもしれない。
島津の父親は海岸で、春菜の父親は帰りの列車の中で一と遭遇した。







春菜の自殺はふられた腹いせの軽い嘘が原因で、冬美と綾花に貶める意図はない。
(「これをきっかけに島津と春菜の間が気まずくなって破局してしまえばいい」という程度の悪意はあっただろうが、
春菜を死なせるつもりなどまったくなかっただろう。
もし春菜が妊娠していなければ、母親に相談することですぐに誤解は解けていたはずである。)
2人は表向きこそ知らん顔だが、内心では自殺に追いやった罪の重さを理解している。
島津も2人の苦しみを知っていれば殺害を決意しなかったかもしれない。
ドラマ版では、単なるジョークのつもりで言った(下記の『ドラマ版との相違点』も参照)嘘が春菜を自殺に追い詰めたという、
原作版とは別の意味で深刻な状況であり、春菜の自殺後の会話や様子からはこの2人は多少の罪悪感は持っていたようである。
が、この罪悪感に苛まれる描写が原作版と比較して軽薄なせいか、
友人を自殺に追い詰めたことがバレることによる身の破滅を恐れていただけという保身に走っているようにも見えるため、
原作版と比較するとこの2人への同情の度合は薄れる。


【謎解きについて】
推理面よりもストーリー面を重視したエピソードなだけあって、謎解きはかなり簡単。
しかし、トリックの前提になっている「法則性のある気象現象」が非現実的すぎて、ミステリーとしてはどうかという声も。
メインの足跡トリックはそれ自体は結構凝っているのだが、今ではヒントのおかげで検索エンジンを使えば一発でわかってしまう。

ちなみに、「雷祭殺人事件」とは、「法則性のある気象現象を利用した足跡トリック(いかにして足跡を残さずに現場から立ち去るかではなく、足跡を残す事が出来るか)」という点で共通点がある。
他にもこの二つの事件には、人里離れた過疎の村が舞台、はじめの過去の友人にまつわる事件、ゲストヒロインともいえるキャラが登場する、切ないラストなど共通点が多い。


【アニメ版との相違点】
  • 「桜雪神社」を「雪影神社」に、「桜雪祭」を「雪影祭」に変更。
  • 島津と立石は野球部を辞めていない。
  • 島津が肩を壊したことは謎解きの段階になるまで明言されないほか、冬美へのセクハラシーンが自重された。
  • 島津が肩を壊したのは秋の大会の時。
  • 魚住が警察の尋問を受けるのが綾花の葬儀の後に変更。
  • 謎解きの順序が「犯人特定の根拠→犯人判明→足跡のトリック」から「犯人判明→足跡のトリック→犯人特定の根拠」となっており、
    足跡のトリックが判明した時点で島津以外の3人も雪影中学に来る。
  • 島津の自殺を阻止するために立石が投げた物を石から野球ボールに変更。
  • 原作では美雪は登場しなかったが、アニメでは冒頭で一と美雪が喧嘩するシーンがあり(喧嘩の原因は不明)、その後美雪が顔出し程度に毎回登場して留守の一を気に掛け、最後は一の電話を受けて(自発的に)わざわざ雪影村まで迎えに現れる場面がある。
    (都の一に対する気持ちを考えるに「空気読め」って思った視聴者もいたとかなんとか)
  • 妊娠のくだりはすべてカットされ、触れられず。

【ドラマ版との相違点】
  • 放映時期の関係上、季節を夏に変更。お盆の3日間のみ雪が降る設定に。
  • 真壁と佐木が雪影村に同行。美雪は冒頭とラストのみ登場。
    • アニメ版と同じく、美雪は一と喧嘩しており、喧嘩の原因が「一が毎日、美雪の下着の色と絵柄を記録していた」になっている。
  • 島津たち6人の中には別の高校に通っている者もいる。
  • 春菜が自殺したのは事件のちょうど1年前。自殺方法は睡眠薬の大量摂取に。
  • 島津が肩を壊したのは中学3年の時。
  • 都は元漫研所属で絵本作家志望だった。そのほか、一を呼び捨てにせず君付けで呼ぶ。
  • 都の母に「節子」、春菜の母に「恵」という名前を追加。
  • 剣持警部が前述の件で雪影村に来ていたため捜査を担当。友人を殺された一を気遣い事件から手を引くよう促す。
  • 綾花が夜間にテニス部部室を訪れた理由は蛍光灯の交換のみ。
  • 「うれしい色」「許されない色」の意味は妊娠検査薬から、春菜が「これからどんな色にも染まる希望の色」という意図で編んでいた赤ん坊用の帽子の「白色」に。
  • 島津家は母子家庭のまま。島津は春菜の妊娠を知っていて、父親となって家族を築くことを新たな夢にしていた。
  • 冬美と綾花が島津を好きだった、魚住が春菜を好きだった設定はカット。
  • 春菜の父親の方の「今井龍矢」と一の遭遇は無し。
  • 同姓同名の件は、事件の謎解き時より以前、島津の父親の方の「今井龍矢」と一が遭遇した時点で明かされる。
  • 謎解きは雪影中学の校庭ではなく、校舎の中で行われている。
  • 島津の自殺を阻止するために立石が投げた物をアニメ版同様石から野球ボールに変更。
  • タイムカプセルに関しては完全にカット。


追記・修正はタイムカプセルを開けてからお願いします。

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