ラタの舟

登録日:2011/06/03(金) 10:35:11
更新日:2023/12/07 Thu 09:01:03
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『ラタの舟』とはニュージーランドの先住民マオリ族に伝わる伝説。



昔々、ラタという男がいた。


ラタ「戦に使う大型のカヌーを作りてーな。いい木ねーかな」

彼は森を歩き回り、ちょうどよさ気なトタラの大木を見つけた。

ラタ「……ふぅ。なんとか切り倒せた。作るのは明日だな」

ところが翌日。
切り倒したはずの木は、何事もなかったように、もとの場所にそびえていた。

ラタ「何これこわい。でもカヌー作らないと」

気味悪く思いながらももう一度その木を切り倒した。

さらに翌日。
木はまたもとの場所に立っていた。

ラタ「キツネにつままれたのかなぁ」

さらにもう一度木を切り倒し、今度はそのままカヌーを作るために削り始めた。
けれど途中で日が暮れてしまったので、作業を中断して家に帰った。

しかしラタは木のことが木になり、夜になってから森に戻ってみることにした。

こっそり現場に近づくと…



小鳥や虫たちが、切り屑を集め、その木を元通りにしていた。


ラタ「ごめんねトタラちゃん、俺が悪かった! もう二度と切り倒したりはしないから!」

と、倒れたトタラを抱きしめて謝った。
木を抱きしめて謝った。
大事なことなので(ry

すると、どこからともなく「いいんだよ」という声が聞こえた。

「切り倒してもいいけど、その時には前もって森の神様に許しを乞わないといけないよ」

声の聞こえてきた方を振り返ると、そこには完成した大きなカヌーが地面に横たわり、ラタを待っていた。


■トタラ

ニュージーランド原産のポドカルプス属(日本の表示ではイヌマキ属)の高木で、高さ30メートルくらいになる木。
トタラのシンボルは『尊重』

ニュージーランドのノースアイランドにあるプリオラ森林保護区には【ポウアカニの木】と呼ばれる現存する最古のトタラの木があり、
高さ約55メートル、樹齢はおよそ1800年と推定されている。

マオリ族の伝説によれば、トタラの霊とマオリ族は共通の先祖を持ち、その先祖は人間でありかつ神聖な木とされている。
(したがって、もしトタラの木を切り倒す必要がある時は、森のネ申から許可を得なくてはならない)

マオリ族は、式典のための彫刻物、カヌー、住居などを、昔からこの木で作ってきた。
そのために切り倒す木は何年も前に選ばれ、一本一本に名前がつけられるという。
19世紀にヨーロッパ人の製材会社が乱伐したため、トタラの森は壊滅状態になった。
1978年、ニュージーランドの環境保護団体による一連の樹上抵抗運動は、トタラの木を守る「プリオラ森林保護区」の制定に大きく貢献した。







追記・修正は森の神様に許しを乞うてからお願いします

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最終更新:2023年12月07日 09:01