マチルダ(1996年の映画)

登録日:2025/07/11 Fri 13:56:46
更新日:2025/10/08 Wed 07:40:17
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大人のくせに。 子供のくせに。


概要


マチルダ』(原題:Matilda)は、 1996年8月2日にアメリカで公開されたファンタジー・コメディ映画である。
我が国では同年12月21日に公開された。
監督をダニー・デヴィ―トが務め、脚本をニコラス・カザンとロビン・スウィコードが手掛けた。

原作はロアルド・ダール*1著の児童向け小説『マチルダは小さな大天才』(クェンティン・ブレイク挿絵、宮下峰夫訳)。
無知で愚かな大人たちに立ち向かう子どもの姿をユーモラスに描いた文学作品で、後にミュージカル化もされている。


あらすじ


アメリカのとある田舎町。マチルダ・ワームウッドという女の子が、両親や兄と一緒に暮らしていました。
マチルダは赤ちゃんの時に早々とアルファベットを理解し、わずか4歳で高尚な英文学を読みこなし、数学に関しても大人顔負けな頭脳を発揮する天才少女でした。
ですが、中古車販売業者を務める両親のワームウッド夫妻は、お金儲けの事しか頭になく、実の娘に関心を寄せようとはしなかったばかりか、邪険に扱っていたのです。

6歳半になったある日、マチルダは両親に「小学校に行きたい」と訴えるものの、相手にしてもらえず、それ以来家族から虐げられるようになりました。
そうした中で、マチルダは虐げられるたびに小さな報復を行っていました。

ある日、クランチェムホール小学校の女校長のミス・トランチブルがハリーの経営する自動車販売店にやってきます。
父親は彼女の「クソガキは熱いうちに打て」という教育方針に賛同し、「マチルダの性根をそこで叩きなおしてもらおう」ともくろみ、マチルダをその学校に入学させました。

憧れの学校生活に胸をときめかし、友達にも恵まれるマチルダでしたが、トランチブル校長の暴力支配に脅かされている学校の実態を目の当たりにします。
そんな中、マチルダは数少ない自分の理解者となってくれた心優しい担任の教師ミス・ハニーと心を通わせていきます。

ある日、トランチブルから理不尽な理由で叱責を受けたとき、マチルダは自身に超能力が備わっていることに気が付きます。
そのことをミス・ハニーに打ち明け、実践してみようとするのですが、なかなかうまくいきませんでした。
そうして、ミス・ハニーと語らう中で、マチルダは驚愕の事実を知らされます。
大好きな担任のため、マチルダは立ち上がるのでした…。


登場人物


※ネタバレを含みます。

  • マチルダ・ワームウッド
演:マーラ・ウィルソン
CV:矢島晶子

ワームウッド家の長女で、赤ちゃんの頃にはすでにアルファベットを書けるようになり、4歳で高尚な英文学を読みこなし数学にも抜群の才能を発揮するほどの天才少女。あの両親からどうやったらこんないい子が生まれる
家族や校長などの理不尽な仕打ちをする大人たちへの怒りから、超能力に目覚め、持ち前の頭脳と超能力で仕返しをしていく。
性格は年相応に明るく、自身の頭の良さをひけらかしたりもしないため、学校ではすぐにクラスメートたちと打ち解けている。

原作では「泣いても何の意味もない」と悟りきり決して涙を流さなかった鋼メンタルの持ち主だが、映画版では仲の良い親子連れを羨ましそうにに見ていたり、独りぼっちであることにさみしさを感じて独り泣くなど、親に疎まれる極普通の年相応の子供らしい心情が掘り下げられている。
最終盤で父親の不正の証拠が露見し、一家でグアムへの高飛びが決まった際、担任教師のミス・ハニーに養子にしてくれるように頼む。母親の養子縁組申請書のサインを得て、マチルダとミス・ハニーは親子として暮らすこととなったのであった。


  • ハリー・ワームウッド
演:ダニー・デヴィート
CV:樋浦勉

マチルダの父親。中古車販売業者であるが、狡猾な商売方法がFBIに露見し、目をつけられている。事あるごとにマチルダを馬鹿にして怒鳴り散らす。そうして、マチルダから報復を受ける*2が、それがマチルダによるものとは全く気付いていない様子。一方で長男のマイケルは非常にかわいがっており、ゆくゆくは自分の仕事を引き継がせたいと考えている。

原作では痩せた体躯の小男といった具合で、マチルダに対してもせいぜい怒鳴り散らすか拒絶するかのどちらかだったが、映画版では小太りな体躯で、自身の職場や外食にマチルダを必ず連れて行くなど、一応わずかながら父親らしいところは見せている。

最終的にはぼったくり商法の動かぬ証拠をFBIに発見され、一家でグアムに高飛びしようとする。マチルダのミス・ハニーとの養子縁組の際にはこれを了承する
。原作ではマチルダを放置したりせずにわざわざ迎えに来てやるという意外なところもあるが、妻の「先生に引き取ってもらえれば面倒ごとが減って助かる」という提案に「その子が残りたければ残ればいい。」と最終的に言い放っており、結局最後までブレなかった*3



  • ジニア・ワームウッド
演:レア・パールマン
CV:一城みゆ希

マチルダの母親。細身の体躯で、まだ幼いマチルダの面倒をろくに見ようともせず、毎日派手な服装に身を包みビンゴ大会に行き、夕食もいつも何かしらの簡単な冷凍食品やお惣菜で済ませるような怠惰な性格。
原作では肥満体で、夫ほどではないものの、娘に対して無関心な態度を取る点では映画版とそう変わらない。
原作では一家でグアムに高跳びしようとする際にマチルダがミス・ハニーとの養子縁組を望んだことに対して「面倒ごとが減って助かる」と最後まで無関心であった。
一方、映画版では「あなたのことをどうしても全く理解できない」とこれまでマチルドに対して取ってきた無関心にも見える態度の理由を寂しげに語った後、娘の希望を汲んで自ら養子縁組書にサインし、手を振りながら笑顔で去っていった。


  • マイケル・ワームウッド
演:ブライアン・レビンソン
CV:不明

マチルダの兄。両親と一緒になってマチルダを「バカ」呼ばわりしていじめて楽しんでおり、意地の悪い性格である。まさにあの親にしてこの子あり
原作では大人しい性格でマチルダを馬鹿にすることは一切なく、別れ際には家族で唯一、去り際にマチルダの方に振り返って手を振ってくれた。
しかし、映画同様、父親の詐欺商売の説明を興味津々な様子で聴いているので、やはりこの親にしてこの子ありであった。

  • ミス・ハニー
演:エンベス・ダビドス
CV:佐々木優子

クランチェムホール小学校の若い女性の教師で、1年クラスの担任を務める。フルネームはジェニファー・ハニー。温厚な性格で、生徒たちに優しく寄り添うため、生徒たちから非常に好かれている。遅れて入学しながらも、天才性を発揮したマチルダの能力を高く評価し、よき理解者となる。


  • ミス・トランチブル
演:パム・フェリス
CV:吉田理保子

クランチェムホール小学校の女校長。本名はアガサ・トランチブル。
自称「元オリンピックの槍投げ・砲丸投げ・ハンマー投の選手」で、筋骨隆々としたたくましい肉体を持ち、後述する生徒の髪の毛をひっつかんで振り回したのち、放り投げるほどの怪力の持ち主である。
極端な子供嫌いで、苛烈な暴言と暴力で子供たちに対して恐怖政治を敷いている。原作でも「私が子供だったのはほんの一瞬」「子供が誰もいない学校が私の夢だ」とのたまい、ミス・ハニーにも心の中で「この人は頭がおかしい」と呆れられているなんでこの人が小学校の校長になったんですかね…

更に原作では、子供たちの親に子供が受けた仕打ちが事実だったと信じさせないよう、非現実的な手段で痛めつける*5などの計算高い一面も持ち合わせている。
元々はハリー・ワームウッドを「素晴らしい人物」と評していたが、ハリーに不良品の中古車を売りつけられてからはハリーを憎んでおり、その憎悪は娘のマチルダにも向けられている*6


  • ラベンダー・ブラウン
演:キアミ・ダバエル
CV:こおろぎさとみ

マチルダのクラスメートであり親友。川遊び中に見つけたイモリを利用してトランチブル校長にイタズラを仕掛ける事を思いつき、それを実行するが、それがマチルダがトランチブル校長から理不尽な叱責を受ける原因になってしまう。
しかし、物語全体を見てみれば、ある意味ではマチルダに超能力が眠っていることを気付かせた立役者でもあるといえる存在である。


  • ブルース・ボッグトロッター
演:ジミー・カーツ
CV:水原リン(現:真山亜子)

マチルダとは同学年だが、クラスが異なる。食いしん坊で肥満体の少年。
クッキー(後述)特製のトランチブル校長のチョコケーキを盗み食いした罰で、巨大なチョコレートケーキの完食を強要されるが、マチルダと全児童の応援で無事に完食。まさかこの少年が巨大ケーキを完食するとは思っていなかったトランチブル校長は激高し、ケーキの乗っていたお皿をブルースの頭部に叩きつけるが通用せず、「地獄に落ちろ」と捨て台詞を吐いて去った。


  • アマンダ・スリップ
演:ジャクリーン・スタイガー
CV:不明

マチルダのクラスメート。母親に長いおさげを結ってもらって登校しているが、このことでおさげを極端に嫌っているトランチブル校長に目を付けられ、ハンマー投げの如く投げ飛ばされてしまう。
幸い、落下した先が土の柔らかい花壇であったため重傷は免れたが、ミス・ハニーと相談し、トランチブルが担当を務める授業の前にハニーに髪を下ろしてもらうことにした。

原作では上級生ホルテンシアのトランチブルの悪行の説明の中で犠牲者の1人として挙げられるだけで、マチルダとクラスメートという設定ではない。


  • ホルテンシア
演:キラ・スペンサー・へッサー
CV:不明

上級生で、過去にトランチブル校長の懲罰*7を受けたことがあり、マチルダとラベンダーに彼女の恐ろしさについて教える。
マチルダたちと一緒にラベンダーが捕まえてきたイモリについてのマチルダの解説を嫌な顔一つせずに聞いてあげるなど、下級生に優しい性格である。一方やはり痛い目にあわされたことには相応の恨みはあったらしく、終盤で恐怖に発狂し逃げ惑うトランチブルが子供たちにボコボコにされながら必死で逃げるさまを見て手を叩いて笑いながら喜んでたりする。

なお、原作ではどんなに痛めつけられても懲りずにトランチブルにいたずらを仕掛ける反骨精神の持ち主であり、その英雄的行為にラベンダーから憧れられている(これがイモリのいたずらを仕掛けた動機だった)という設定だったが、映画版ではその辺りは割愛されている。


  • フェルプス夫人
演:ジーン・スピーグル・ハワード
CV:不明

マチルダが通う図書館の司書。マチルダが4歳足らずにして高尚な英文学を読んでいることに驚嘆し、以降はマチルダに読書について様々な助言を与える。
本作で数少ない、マチルダの理解者の一人である。


  • クッキー
演:マリオン・デュガン
CV:不明

毎日トランチブル校長に彼女専用のおやつを用意している給仕係のおばあさん。
トランチブル校長のケーキを盗み食いした罰として巨大ケーキを食べさせられているブルース・ボッグトロッターが吐きそうになっているのを、どこか恨めしそうな目で見ていた。


  • FBI捜査官ボブ・FBI捜査官ビル
演:ポール・ルーベンス/トレイシー・ウォルター
CV:清水明彦/仲野裕

映画版オリジナルキャラクター。ハリーの不正な商法の証拠を掴むために自宅を見張っていたFBI捜査官。マチルダの超能力と口八丁で言いくるめられ、証拠のビデオテープを奪われる。



余談

本作は、原作と比較してところどころ相違がみられる。
以下に、その相違点を列挙してみた。映画版と小説版を比較してみるのもまた一興だろう。

  • 原作の舞台はイギリスの田舎町だが、映画版ではアメリカの田舎町となっている。

  • ミス・ハニーの父親・マグナスの死因が原作では不明*8だが、映画版ではより一層「他殺」を匂わせる描写となっている。

  • マチルダがミス・ハニーの家に2度忍び込もうとするシーンは原作に存在しない映画オリジナルシーンである。
    • 鬼校長の恐怖と人間離れっぷりがより強調された名シーンとなっていて必見。

  • マチルダ以外の一家の逃亡先が原作ではスペインとなっているが、映画版ではグアムとなっている。

  • トランチブル失踪後、映画版ではミス・ハニーが新校長に任じられているが、原作では別の穏やかな男性教諭が校長に就任している。

  • マチルダの超能力は原作では一連の出来事が解決して以降は使い所がなくなって段々と失われていったが、映画ではその後も時々使用している。
    • また、映画では超能力覚醒の理由が明確にされていて「怒りの感情が引き金となった」とされているのに対し、原作では「行き場のない優秀な頭脳エネルギーの具現化」とされそれ自体も「あくまでも仮説の内」として曖昧にされている。

追記・修正は超能力に目覚めて愛する人の「敵討ち」を成し遂げてからお願いします。




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最終更新:2025年10月08日 07:40

*1 イギリスの小説家・脚本家(1916年~1990年)。多くの児童文学作品で知られており、『チャーリーとチョコレート工場』の原作も手掛けた御人。ちなみにかの007シリーズの生みの親であるイアン・フレミングとは友人であり、その縁で映画シリーズ第5作『007は二度死ぬ』の脚本も手掛けている。

*2 マチルダの「学校に行きたい」という意思表示に対して罵倒した際にはヘアトニックの中身を漂白剤に変えられたほか、不正な商法について意見したマチルダを罵倒した際には、帽子に接着剤を塗られ、一時的に帽子を外せなくなっている。さらにマチルダの愛読書をびりびりに破いた際には、テレビを何かの力で破壊されている。余談だが、この「マチルダがテレビを破壊した何かの力」が物語後半のための「伏線」となっている

*3 いずれにしてもマチルダを連れて行こうとしたのは自分の悪行を知ってる娘を残していくのはまずいという考えからに過ぎなかったのかもしれないが。

*4 莫大な財産を保有していたことから、それを狙ったトランチブルにより殺害された可能性が非常に高く、映画版では特にトランチブルによる殺害を匂わせるような描写となっている

*5 後述するアマンダのように髪をつかんで振り回してからあらぬ方向へぶん投げる、さながら「鉄の処女」のようなお仕置き部屋の「チョーキー」に何時間も閉じ込める等

*6 原作ではワームウッドの物言いを鵜呑みにし、最初からマチルダを敵視していた

*7 「狭いお仕置き部屋に何時間も閉じ込められる」というもので、しかもこの部屋のドアには生徒が寄りかかれないように、錐のようなトゲが植え付けられている。何時間も閉じ込められていたこともあって、原作では彼女の精神は崩壊寸前であったと語られている

*8 死因が他殺であることをほのめかす描写が少しある程度で、「お父さんは殺されたんだ」というマチルダの指摘に対し映画ではハニーが素直に同意を示す一方、原作では「証拠もなしに疑えない」と沈黙を貫いている。