仙人(藤崎竜版封神演義)

登録日:2010/06/05(土) 21:39:16
更新日:2023/05/04 Thu 10:03:16
所要時間:約 6 分で読めます




藤崎竜の漫画作品『封神演義』における一種の超人。
原典である明代の伝奇小説『封神演義』におけるそれに作者独自のアレンジを加えたものであり、
必ずしも一般的な仙人の定義とイコールではない。

元始天尊曰わく「人間の生物としての力を極めんとする者」
100万人に1人の確率で生まれる仙人骨(骨髄の少ない骨格らしい)を持つ者のみがなれる。
仙人骨を持つ者は高い能力を持つが故に、地上にいると混乱を招く危険があるため、必ず幼い頃に仙人界にスカウトされ力の使い方を学ぶ。
だが稀にスカウト漏れや、元は常人だったが常軌を逸した鍛錬によって肉体の性質が変性し、
後天的に仙人骨を手に入れた聞仲のような者もいる。

一人前の仙人はそれぞれの洞府(本拠地)で弟子を取り後進の育成に努めることを義務付けられており、
この仙人の下で修業に励む弟子たちを道士と称する。当然、修行中の道士は未熟者であることが大半だが、
楊ゼンや申公豹のようにそんじょそこらの仙人をぶっちぎりで凌駕するほどに高い実力を持ちながら、
身軽な立場を取るためにあえて弟子を取らず道士のままでいる者もいる。
仙人と道士はひっくるめて仙道と呼ばれる。

地上への過度の干渉はタブー視されており、仙人界の技術や知識を悪用して人界を牛耳ろうとする者は粛清の対象となる。
同じ理由で超絶的に強い仙人が前線に出張る事態を回避するため、作中、仙界から派遣されて地上で活動する人員は大体道士である。

俗世を遠く離れたフィールド・仙界(仙人界とも)に住まい、独自の社会を形成している。
物語開始時点では人間出身の仙人によって運営される崑崙山と妖怪仙人によって運営される金鰲島の二つの巨大な派閥に大分されており、
両者は表だって争うことこそない(とされている)ものの、長きにわたって冷戦状態にある。
技術力は互いに抜きつ抜かれつしている関係だが、作中の段階では金鰲島が一歩先を行っている。

仙人界で修行を積むことで仙道の力を吸い取って奇跡を起こす不思議なアイテム・宝貝や仙術を使えるようになる。
術も一般人の目から見れば相当の超常現象を起こせるものの、基本的に宝貝に比べれば大したことはできないとされている。
また、そうしたオーバーテクノロジーを除外しても仙人界は非常に学問が発達しており、
作中では仙道が近代的な科学や哲学をごく普通に披露する機会も多い。高位の仙人=それぞれの学術分野のエキスパートということもざらである。

完全な不老ではなく少しずつ老化するが、老衰で死ぬことはない。
また、ごく若いうちに仙人になった場合、高齢になっても外見はそのままであり、主人公の太公望も見た目は少年だが実年齢は72歳、
他の仙道のキャラも作中の時間経過に照らし合わせると三十路四十路はゴロゴロしている。蝉玉ちゃんも初登場時で38歳である。
死亡しても魂さえあれば復活できるため、厳密には封神しても完全に殺害したことにはならない。

崑崙山サイドの仙道は無益な殺生を固く禁じているため全て菜食主義者でなまぐさは食べないが、
栄養吸収の燃費がいいのでそれでもいたって健康に生活できている。なお、飲酒・喫煙は禁じられていない模様。





○天然道士

本作におけるオリジナル設定。上述の仙人骨を持ちながらスカウト漏れによって仙人界に行か(け)なかった者の総称。

そも原典の封神演義で神に封じられる運命にある人物とは基本的に
・仙道にしておくには出来が悪く
・一般人にしておくには非凡すぎる
…という中途半端な位置づけにある者たちであり、そういう連中を新しく作った『神』というカテゴリにぶちこんでしまおう*1というのが大筋であるが、
この中の後者にあたるキャラクター群に配された記号が天然道士である。
登場人物の中では武成王・黄飛虎やその息子の黄天祥、太公望の弟子(自称)の武吉などがこれに該当する。
本来修行により宝貝や仙術を使うために用いられるエネルギーを純粋に肉体の機能に回すことで、
常人や仙道をも超えた驚異的な身体能力を得ている。そのため宝貝は使えないものの肉弾戦では妖怪に対しても引けを取らない。
例を挙げれば武成王は武器を振り回すだけで頑強な作りの建築物を崩壊させるほどの剛力を発揮し、
武吉は視力10.0、赤外線を探知して暗闇でも物が見え、犬並みの嗅覚や水上を疾走するほどの脚力を誇る。
ちなみに加齢のスピードは一般人と同じで、仙道に比べると老けるのは早い。

原典ではどれほど武勇に秀でた猛将でも仙道の宝貝の前にはイチコロ・あるいは速攻で捕虜にされてしまうかませ犬であり、
いうなれば物理は強いけど魔法防御力・ステータス異常耐性がゼロ状態であるが、
フジリュー版では背景にこのようなロジックがあるため、ある程度は仙道とも渡り合えるし、
純粋なフィジカルが求められる状況でのサポートで大活躍できるという見せどころが用意されている。




●妖怪仙人


人間以外のモノが千年以上もの間月日の光を浴び続け、自我と魔性の力を得、仙人となったもの。
動物や植物などの生物はもちろん、鉱物や楽器などの非生物でも時間さえかければ成ることができる。
自我と魔性を得た者は妖精、妖精が人間に変化できるようになると妖ゲツ、妖ゲツが常に人型を保てるようになると妖怪という順にランクアップしていき、妖怪のランクに達した者は仙人を名乗ることができる。
一定以上のダメージを受けると原型(本性)に戻ってしまう。基本的には原型に戻ると無力化される*2が、幻獣などが原型の場合は逆に物理的には強くなる。
しかし、多くの妖怪仙人は人前で原型を晒すことを最大の屈辱と認識しており*3、本性を現しての戦闘は最後の手段といって良い。
最後の手段で巨大化した悪役は絶対勝てないけどな!
しかも一度原型に戻ると、また数年間月日の光を浴びないと再び人型を取ることができないため、実利の面でも原型を現すのはデメリットが大きい。
原型をあらわすのとは別に、術や宝貝を使えるという仙人の強みと原型の持つ野生の強みを半分ずつ活かした
『半妖態』という異形の姿に変身して戦うこともあり、平均的にはこの形態が最も手ごわい。
元が肉食動物の場合他の生物を捕食するのが自然な本能なので、崑崙山の仙人と違い殺生や肉食(人間含む。)は特に禁止されていない。
しかしそれを置いても残酷な性格の者が多いらしく、人間たちとの仲はあまり良くない。
そのためもあってか崑崙山、金鰲島に住み分けされているが、崑崙山所属の妖怪や、金鰲島所属の人間の仙人も少ないながら存在する。


●仙人の起源



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最終更新:2023年05月04日 10:03

*1 この文脈からもわかるように、一般的に中国においては神というのは仙人より格下の概念である。

*2 たとえばカマキリの妖怪仙人が原型をあらわしても所詮ちっこいムシケラなので踏まれて終わりである。石ころや道具だったら身動きもとれない。

*3 ただし、妖怪しかいない金鰲島のような内輪では必ずしもそうでもないようである。