封神演義(漫画)

登録日:2009/11/05 Thu 02:56:21
更新日:2024/03/17 Sun 10:08:36
所要時間:約 6 分で読めます




週刊少年ジャンプで1996年~2000年まで連載されていた藤崎竜作の歴史SFファンタジー漫画。
コミックスは全23巻、完全版は全18巻。

元は中国の伝奇小説「封神演義」、をベースとして大幅にアレンジした安能務作の「封神演義」を原案としている。本作はそれを更に藤崎竜がアレンジしたものになる。

一応原作付きである作品とはいえ人気が無ければ打ち切り、あれば引き伸ばすジャンプの作品の中では、円満な最終回を迎えた珍しい作品。
ジャンプのバトル漫画では避けられない力のインフレも上手くストーリーに組み込んでいる。

2018年に続編またはスピンオフの『封神演義 外伝』が短期集中連載されている。


【あらすじ】


古代中国、殷王朝時代。第30代皇帝紂王は優れた名君であった。しかし邪心を持つ仙女妲己を皇后に迎えてから、彼女の怪しい術に惑わされ、抜け殻になってしまった。紂王と妲己は悪政を続け、国は乱れた。
それを見兼ねた仙人界崑崙山の教主元始天尊は悪の仙道を神界に封じ込め、革命による新たな王朝を作る計画「封神計画」を弟子の太公望に実行させる。


【登場人物】

(※キャストは仙界伝・ゲーム版/覇穹の順)

主人公。元始天尊の一番弟子。殷の異民族狩りにあった羌族の生き残り。かなりの策略家でのちに周の軍師になる。
人気投票ではジャンプ漫画の主人公には珍しく全て一位だった。
「望はまだ立ち止まる訳には参りませぬ!」

殷を裏から操る作中トップの策略家である仙女。
正確には人間「蘇妲己」を乗っ取った狐の妖怪仙人であり、蘇妲己の肉親含め世間的には「紂王に嫁いだ途端乱心した」と見なされている。
「女の心は海よりも深くって、男には分からないモノなのよん」

最強の宝貝「雷公鞭」を持つ道士。終盤まではひたすら傍観者。変な服とか言っちゃダメ。
「気に入りませんね。私の美学に反します。」

崑崙山一の天才道士。変化の術(チート)を使いこなす。女装好き。実は通天教主の実の息子であり、人間ではない。
「僕がみんなを好きだから戦っているんだ」

  • 哪吒 CV:宮田幸季/古川慎
母親の胎内の肉塊に宝貝「霊珠」を埋め込まれて産まれた「宝貝人間」。
自分勝手な自信家だが、後々若干協調性が出てくる。ややマザコン気味。
「宝貝人間にも魂は宿るのだな…」

殷の大師。歴代の王に仕え、殷をわが子のように考えている。週間連載中は彼の圧倒的な強さに絶望すら覚えた読者も少なくない。
恐らく崑崙の全仙人をもっても倒す事は難しいであろう実力を持つ。
「余力を残して戦うのは死にゆく者に対して失礼だったな。だが私が本気を出した以上……仙人界は今日滅亡する!」

殷の鎮国武成王。仙人に劣らない戦闘能力と妲己の誘惑の術に打ち勝つ精神力をもつ天然道士。
「もう俺とお前の殷はなくなっちまったんだ…もうねぇんだよ…」

妲己・聞仲に並ぶ実力の持ち主。勝利よりも自分のやり方を重視し、「美しい戦い」がモットー。
作中でも屈指の実力者なのだが、その派手でブッ飛んだ演出により数多くの腹筋を破壊してきた腹筋破壊兵器であり、愛すべきバカ。
本来は封神されると魂魄となり飛んでいくのだが、何故か公明のみ生前の姿をとり、さらに天使が迎えに来るという演出付き。
作者のお気に入りらしく、完全版の表紙ではまさかの 2 冊 独 占を果たした。
「さぁ、闘おうじゃないかっ!」

  • 姫昌(文王) CV:麦人/清川元夢
殷の四大諸候の一人で、西伯候として西岐の守りを受け持つ。殷に対する忠誠心も高かったが、妲己の策略により軟禁され、長子の伯邑考が殺されその肉を食べさせられる
西岐に戻った後に、殷に対する反撃を決意し軍師に太公望を迎える。
「釣れますか?」

姫昌の次子。ノリは軽くかなりの女好きだが人望は厚い。理想の女の子は「プリンちゃん」呼び。

姫昌の第100子。元は捨て子だったが姫昌が養子にした。雲中子の元で修業していたが、修業・パワーアップと称した実験・改造により、赤黒い肌と黒い翼を持つ姿に。
義賊の頭領として暴れていたところに太公望と出会い、父の為に戦う決意をし、仙人界へ再び修業に戻るが、以降空気気味に。 比較的太公望と接触したのも早かったのに空気。
そんな彼も『仙界伝』ではレギュラー。

「鄧嬋玉」と記載されることも。聞仲から周に派遣された自称「美少女スパイ」だったが、紆余曲折あって周側に帰順し、太公望達の仲間となる。大の鳥嫌い。
土行孫に一目惚れし、最終的には土行孫と半ば無理矢理結婚へ。
「奈良漬!!!」

崑崙十二仙の一人。太公望とは同期のため仲が良く、太公望を「望ちゃん」と呼ぶ。敵に対してはまずは話し合いで解決しようとする平和主義者。
「自分で決めた事だから同情も憐れみもいらない。ただ悲しんでくれればいい」

  • 元始天尊
崑崙山の指導者。三大仙人の一人。太公望の師匠でもある。
長い白髭と長い白眉に長い頭、と一見すると好々爺と言った風情だが、実は太公望と同レベルの策士。戦略家。
封神計画の司令塔で、「魂を崑崙山に誘導する」と言う術式は彼が展開している。実は凄い人。

金鰲島の指導者。三大仙人の一人。聞仲や妲己、趙公明たちの師匠でもある。
決して悪人ではないが、彼の弟子たちが大勢妲己の支配下に置かれてしまっている。そして本人は……

桃源郷に住む三大仙人の一人。とんだ怠け者で、普段は強力な防護機能を持つ怠惰スーツを着用して眠っている。実は申公豹の師匠。

かつて崑崙十二仙のリーダーだった仙人。終盤に太公望達の前に現れ、助太刀する。
実力は本物だが、熱くやかましい男で、かなり強度のシスコン
見た目がWS版(後述)主人公にそっくり。


【世界観】

時代は古代中国の殷王朝末~周王朝始め。
仙人骨をもつ人間は仙人にスカウトされて仙人界へ行き、道士として修行を積み、宝貝(パオペエ)を使えるようになり寿命で死ぬことも無くなる(非常にゆっくりと老いはするが)。まれにスカウト漏れもあり、その場合は仙道としての力が肉体に全振りされ、宝貝こそ使えず年も普通にとるが並外れた身体能力を持つ「天然道士」となる。(黄飛虎などがこれにあたる)

仙人界は人間中心で教主・元始天尊の崑崙山、妖怪中心で教主・通天教主の金鰲島に分かれている。宝貝は仙人の能力を増幅する道具なのだが、魔法のアイテムと言うより超科学兵器になっている。

尚、原作からして時代考証は千年単位でズレていたりする。

【その他】

前にも述べたように原作に大幅なアレンジが施されており、
  • 原作の太公望はジジイであるのに対して、藤崎竜版では「見た目は子供(少年?)、中身はジジイ」に。
  • 原作で死ぬ奴が生き残ったり、素晴らしい生き様だったり
などなど、原作との相違点をあげたらきりがないが、終盤では「古代中国」の世界観を覆す程の改変がある。


テレビアニメ

仙界伝 封神演義

1999年にスタジオディーン制作のアニメ『仙界伝 封神演義』がテレビ東京系にて放送された。
が、原作のストックが不十分なため若干ストーリー改変が入っていた事や、作画崩壊・キャラの性格や設定の改変などのため、一部のファンからは黒歴史扱いされていた。

だが現在は、
  • 2クールと短い尺ながらも要所は抑えている事
  • 原作漫画では疎かになりがちだった「古代中国」の歴史描写
  • 後の伏線とも取れる描写などはしっかり描かれている
  • 多すぎる登場人物を絞った事によって人物描写(特に雷震子、殷郊・殷洪兄弟)に重点を置けた事
  • 原作漫画では有耶無耶に終わった九竜島の四聖、妲己とのアニメなりの決着
…などから、現在では安定した評価を得ている。
作画崩壊も「当時のアニメではこんなものでは?」「むしろフジリューの緻密すぎる絵柄をアニメに昇華させる意味では頑張った方」との声も。
アニメ終了後もドラマCDが数点作成されるなど、一定の人気は確保出来ていた事は違いないだろう。

どうでもいいが、アニメ放映中は単に「原作」と言った場合に何を指すのかの説明が必要になった。

米倉千尋氏が手がけたOPとEDは今なお人気が高く、米倉氏の代表曲として掲げるファンも少なくない。

OP「WILL」 唄・米倉千尋
仲間から太公望に対する曲。
「夢の国を探す君の名を」

ED「FRIENDS」唄・米倉千尋
太公望から仲間に対する曲。
「今始まる未来君にあげるよ」

韓国版のOPが凄まじい空耳ソングでもある。


ちなみに、『仙界伝』はゲームにもなっている。
PSゲーム「仙界大戦」「仙界通録正史」は評価は低いが(「仙界通録正史」はある意味ネタである)
WSゲーム「仙界伝」、「仙界伝弐」は良作と言われている。
「仙界伝弐」は最終回のその後のストーリーである。

余談だがPSの「仙界大戦」では伯邑考が殺されない為、姫昌が死ぬ事も無い。
代わりに原作では封神されない申公豹を太公望ご一行が倒しちゃったりする。

WS版はファンならぜひプレイする事をオススメする。


覇穹 封神演義

2017年には仙界大戦をメインに『覇穹 封神演義』として再アニメ化が決定。制作はC-Station。
2018年1月から6月までTOKYO MX・サンテレビ・KBS京都・BS11にて放送された。
……のはいいものの、全23話というあまりにも少ない話数のためか、ダイジェスト方式でストーリーが展開されており、
かつての仙界伝以上にファンからの酷評が目立っている。



追記・編集は皆さんの手で自由に。


――導はなくなったのだから。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2024年03月17日 10:08