三菱・ランサーエボリューション

登録日:2009/08/26 Wed 12:17:22
更新日:2025/05/18 Sun 23:42:12
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ランサーエボリューション(ランエボ)とは、かつて三菱自動車が生産していた車。

小型セダンであるランサーをベースにサーキットでも通用する性能を持たせたモデルである。

世代を追う毎に最先端技術を投入されることが多く、三菱自動車のイメージリーダー的な位置付けである。

その起源は1973年に発売された初代ランサーの競技車両ベースモデル1600GSRにさかのぼる。

当初はランサーの特別仕様車として限定販売のみだったが、Ⅶからはカタログモデルに格上げされた。

ベース車両がモデルチェンジにより変わったところが切れ目であり、4代目ランサーがベースのⅠ~Ⅲ、5代目ランサーベースのⅣ~Ⅵ、
6代目ランサー(同セディア)ベースのⅦ~IX、ギャランフォルティス(北米仕様ランサー、台湾仕様ランサーフォルティス、同io)ベースのⅩで、
ランエボ一世代、二世代、三世代、四世代と数える。

Ⅹはギャランフォルティスがベースとなったが、前出の通り北米や台湾ではランサー(同フォルティス、io)で販売されているため問題はない。

Ⅰ~Ⅱのデザインは「加齢臭なかほり漂う、汗クッサイ親父セダンを頑張って、どうにかカッコ良くしましたby三菱」な程度だが、
Ⅲ以降のデザインは「アナハイムエレクトロニクス社が総力を結集して造り上げた鬼畜イカレポンチセダンVerカトキ」と言っても過言ではない、
素晴らしいまでのガンダムフェイスなカッコイイ4ドアセダンのおくるま

むしろ「トランスフォームしてガンダム」になっても許される。

Ⅹはベース車に近いイメージだが、追加ダクト等でエボリューションならではのオーラが漂うマシンとなった。


エンジンはIXまで2.0L直列4気筒ターボエンジン4G63を搭載。
そのエンジンは1979年の東京モーターショーで発表されたランサーEXラリーターボに搭載されていたG63Bが源流。
そして輸出仕様ランサーEX2000ターボに搭載され、IXまで搭載される名機となった。

Ⅹからは新型2.0L直列4気筒ターボ4B11型が搭載されている。
12kgの軽量化とエンジンの低重心化、としてトルクが向上された。


スバル・インプレッサとはWRCでの激闘から因縁の関係であり、メーカーやディーラーも対抗心を燃やしている。
だいたいはドライバーもそうである。

しかし、インプレッサWRXSTIのハッチバック化やランエボ自身の大型化、双方のWRC撤退からWRCでの対立は消えたが、
全日本ラリーを筆頭にスーパー耐久、ジムカーナ、ダートトライアル等ほぼ全てのモータースポーツでいまだに火花を散らしている。


ランエボの歴史

ランサーエボリューション(Ⅰ)


ランサーエボリューション(以下ランエボ)は92年WRCグループAで勝利するために生まれたモデルである。
このグループAというのは、FIAが定めた規定で、市販車をベースに改造範囲が厳しく制限されていた。
このため、レースに勝つためにはベースとなる車の性能が勝利に直結する状態であった。
当時の三菱自動車はWRCにギャランVR-4で参戦していたが、大柄なボディがラリーでは不利であり、より、小さく高出力なモデルが必要であった。
そのため、三菱はギャランVR-4のエンジンを1クラス小型のランサーに無理矢理搭載
まさに公式魔改造により軽量高出力のスーパーセダンとしてランサーエボリューションは誕生した。
エンジン出力は250ps 最大トルクは31.5kgで2Lクラスとしては破格の性能であった。
しかし、小型セダンのランサーにより大きなエンジンと4WDシステムを強引に移植したため極端に曲がりにくいクルマとなってしまった。
以降のモデルはいかに曲がりにくいクルマを曲がりやすくするかをその時代の最新鋭の技術を用いて改良されていくのがランエボの命題となっていたのも、
この生まれがルーツなのかもしれない。
商業的には、グループA規定には生産台数2500台以上の市販車とあり、それを満たす為に2500台のみ生産し特に宣伝もしなかったのだが…
わずか3日で完売した。

ランサーエボリューションⅡ

エボIIはエボIを普通に進化させたもの。主にフロントのジオメトリー周り。
これにより曲がらないという部分に関してはほぼ解決したとか。

ランサーエボリューションⅢ

顔面ガンダム化計画第一弾。
派手なエアロがついたが、前後のバランスが悪いと評判。
またエンジンも安易に圧縮比を上げたためにエンジンブローしやすい。
WRCで初の王者になったことや、豆腐屋漫画の初代ラスボスというイメージがあるからか歴代でも屈指の人気車種。
「よく燃える」と言われるが、これはタービン強度が低い為らしい。
高い排圧にタービンが耐えきれず、タービン軸受けが発熱して出火するとか?
当時の三菱製タービンは、軸受けをボールベアリング化しておらず、潤滑油不足で発火したらしい。

ランサーエボリューションⅣ

ここからベースモデルのフルモデルチェンジに伴い第二世代へ。
街乗りモデルのGSRにAYCというリア左右の駆動分配をコントロールする特殊なデフが付いたが、これが異音の原因になりまくってGSRユーザーを悩ませまくった。
RS用の機械式デフにするにはデフキャリアごとの交換が必要で結構なお値段がする。
半径のきついコーナーでは「ションベンスタイル(インリフト)」に成りがち。
これは三菱の開発陣も見落としていた穴であり、Ⅴ以降はサスアームを延長化して対応している。
某豆腐屋漫画においても、エボⅣがハチロクに敗れる原因になった。(エロスの化身を駆る人曰わく「タコの"ヘボ"ツッパリ」らしい)

ランサーエボリューションⅤ

ガンダム化計画第二弾。
エボIVでブレーキが弱いと評判だったのでブレンボ製の強力なブレーキを装備。さらに年々戦闘力を増していくWRカーにグループA規格のマシンで対抗するため、ワイドトレッド化を施し3ナンバー化。
エボIVで280馬力を達成しながらも冷却系統にあまり手を加えなかった結果、サーキットで全開走行するとオーバーヒートが多発するなどの問題が生じたため、フロントの開口部を大型化し、ラジエーター・オイルクーラーも大型化。さらに元々インタークーラー冷却用のウォータースプレーを装備していたが、新たにラジエーター冷却用のウォータースプレーを追加。インタークーラー用は広い範囲を冷却できるようにするため、噴射部の形状を変更した。
エンジンにもさらに手が加えられ、ピストンの軽量化とターボのノズル面積を拡大、過給圧のアップが行われエンジン馬力は280馬力のままながら、トルクは38.0kgmへとアップした。
サスペンションにも手が加えられ、フロントサスペンションは倒立式に変更し大幅に剛性アップ。リアサスペンションはロールセンターを30mm下げ、エボIVで欠点となっていたインリフトを低減した。
加えて全体的な軽量化が図られ、ガラスは全てエボIVからワンランク薄いものに変更された。さらに競技用のRSではルーフとリアトランクの板厚をワンランク下げるオプションまで用意された。

これらの大変更によって、それまで「曲がらない、止まらない」と言われていたランエボは、あらゆるサーキットで格上のマシンとされていたスカイラインGT-RやNSXを追い回す、或いは悠々とぶち抜いていくマシンに生まれ変わった。モータースポーツ活動でも、これまでのラリーに加えて耐久レースなどにも本格参戦するエボが現れ、活動範囲を広げている。WRCではドライバーズタイトル、マニュファクチャラーズタイトル、グループN部門タイトルを獲得し、WRC完全制覇を成し遂げる快挙を果たした。

なお、僅かな欠点として『ガソリンタンクの容量が小さい上に供給口が偏りやすい方とは反対側にしかない』というものがあり、高速サーキットで連続走行しているとタンク内でガソリンが偏り、供給できなくなってガス欠症状に陥ることがある。後に供給口を左右両サイドに設けた対策品が公式から販売されている。

ランサーエボリューションⅥ

第二世代の最終弾。
RSのフォグランプカバーがどうみてもアレなので卑猥な名前を付けられた。
後にトミ・マキネンエディションというマイナーチェンジ版も出た。
そっちではバンパー形状変更で卑猥なカバーは無くなっている。
WRCのグループA規定で、リアウイングのサイズについて「ランサーエボリューションIVと同程度のサイズにすること」という一文が追加されたため、サイズをエボIVと同じサイズに縮小し、かつエボVと同等のダウンフォースを確保するため2段化した。
……が、これはグループA規定には適合していたにも関わらず、WRカー規定に抵触するとしてFIAから指導が入った。三菱は抗議したものの覆らず、WRCでは下段を塞いで使用している。

ランサーエボリューションⅦ

第三世代になったエボ。
センターデフを電子化(ACD)した。

ランサーエボリューションⅧ

フロントバンパーの▲がひたすら不評。

ツインクラッチSSTを導入し、4WDとAYCとACDを投入。要は、4輪にかかるトルクをコンピューターで個々に変え、走行性能をアップする。

2015年に特別仕様車、「ランサーエボリューション ファイナルエディション」を発表。
2016年4月までには全てが納車され、三菱自動車のカーラインナップからも消えて、これももってランエボの歴史を閉じた。

派生車種

CT9A型ランエボⅦ、ランエボⅧ、ランエボⅨは派生モデルも存在する。
ⅦにはATモデルの「GT-A」
Ⅷ、Ⅸはカーボン製風力パーツ等で走りが強化された「MR」。
Ⅸ、ⅨMRにはランサーワゴンをベースにした「ランサーエボリューションワゴン」「ランサーエボリューションワゴンMR」
が用意されていた。

ちなみにⅧ、Ⅸ、ワゴンに用意されたMRとは「Mitsubishi Racing」の意味で、駆動方式がMRのランエボという訳ではない。
また、このMRの名はギャランGTO→GTO→ランエボと、三菱のフラッグシップマシンに代々受け継がれてきた名である。


プラモデルでのランエボ

長谷川から、Ⅰ~Ⅵが(ラリー、市販車)
フジミから、Ⅲ、Ⅴ~Ⅸ(市販車)が
タミヤから、Ⅴ、Ⅶ(ラリー)、Ⅵ(市販車)
アオシマからⅩ(市販車、ラリーアート仕様、けいおん!痛車、エッチングパーツ付)
AMTからⅦ(ワイルド・スピードU仕様)が発売された。

長谷川のエボⅠ、ⅡはエボVに金型が改修されたために絶版になった。また黒成型のエボⅢと白成型のエボⅣが発売された事がある。まあ理由は解るね…。

フジミのエボⅢはⅤを無理やり流用しているため余り実車に似ていない。

アオシマのけいおん!痛車はデカールが薄くて車体の色が透けてしまうらしい。
キット自体は車高を標準、ローダウンと選択出来たり、エッチングパーツで細部まで再現出来たりする。


余談

映画「ワイルド・スピードX2」の主役にランエボⅦが抜擢(発狂チューンド)。
主人公ブライアンの相棒として、三代目エクリプス(コイツもカッコイイので売れまくった)とコンビで画面狭しと大暴れ。
その飾り気の無いソリッドなデザインと他を圧倒する性能が全世界のガンダムファンを魅了、主人公ブライアン役のポール・ウォーカー氏が大層ランエボⅦを気に入り、
撮影後、ウォーカー氏はドル束握り締めて三菱ディーラーに突撃。
第一声が
ランエボⅦ寄越せぇ!
アンタ、どんだけエボⅦ愛してたんだ?

残念ながら、ウォーカー氏の愛したランエボⅦは当時生産終了。
後継機のランエボⅧがウォーカー家に嫁入りした。
ただし、ウォーカー家に嫁入りしたエボⅧはエボⅦに改装されている。

Ⅸまでの心臓たる4G63エンジンは、水平対向エンジン至上主義者たちに「耕運機エンジン」と揶揄される。
これは、4G63エンジンの設計が古く、使用プラグが耕運機と同じな為。
だが、後世を見据えた設計だからこそ生き延びたともいえる(弱点を常に克服してきた為。名機となった)。
強靭なエンジンブロックは、ボアアップで2.2l。スリーブ打ちして2.4lまで排気量アップ出来る。

Ⅲ~Ⅵのエボは中古車でも何故か安く、100万円以下でも極上の良機体が発掘出来ることもあった。
しかし、2024年となった現在ではⅩの最終型ですら発売終了から10年近くが経ち、Ⅸ以前は20~30年落ちと旧車に片足を突っ込んでいるような状況。
せっかく手に入れたのに純正パーツは既に廃盤で修理できない、修理はできるが恐ろしく費用がかかるということも決して珍しい話ではなくなっている。

ただしエボⅣは、エボⅢよりも評価が低い。

残念な話だが、エボⅠ~ⅢにⅣ以降のエンジンをそのまま載せ替える事が出来ない。これはエンジンの搭載方向が逆な為。

追記・修正はランエボで『峠の王者』になってからお願いします。

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