コブラ・マニューバ

登録日:2012/02/28(火) 20:50:15
更新日:2024/04/17 Wed 23:52:37
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1989年6月。
フランスの首都パリで、パリ国際航空宇宙ショーが開催されていた。
そこでは、当時は西側ではとても珍しかった、ソビエト製戦闘機であるSu-27が展示飛行を行った…


そして、そのSu-27は、観客を唖然とさせるとんでもない曲芸飛行を披露して見せた。

ゆるく上昇したかと思うと、そのまま機首が垂直に持ち上がり、そのままの姿勢を保ってみせたのだ。
そして、機体は姿勢を再び水平に戻し、何事も無かったかのように飛び去ったのである。


東側の戦闘機が西側のイベントに参加するだけでも大ニュースであるというのに、その戦闘機はそんな恐ろしい性能を見せつけてきた。
この事は航空関係者に衝撃を与え、そして件の機動は鎌首をもたげたコブラを連想させることから、「コブラ・マニューバ」と名付けられたのである。この時にSu-27に搭乗していたヴィクトル・プガチョフの名をとって「プガチョフ・コブラ」などとも呼ばれる。


…よくわからないって?

つまり、水平飛行中に進行方向と高度を変えず、機体の仰角を約90度から120度までグワーッと上げて、そのまま水平飛行に戻ったんだよ!



航空機自体の性能と、優れたパイロットの技術が合わさることでようやくできる、ロマンに満ち溢れた飛行なのだ。
機体が垂直に近づく瞬間、パイロットには4.5Gもの重力がかかるというのだから驚きである。



まあ、実戦で使うものではなく、あくまで機体性能の良さを伝えるデモンストレーションに用いるものだが。
パイロットの間でも「実戦でも使える」とする人と、「ただの曲芸だ」とする人がおり評価が分かれるのだそうな。
一応コブラをやる前にはオーバーG防止のために相当遅い速度まで減速する必要があり、スピード=エネルギー=生存力となる空戦中に減速するという行為自体が危険で、
できた所で意味は無いというのが通説。
ただ「失速寸前の速度域でもコントロールできる」という点については色々と便利な点があるというのはアメリカも認めている。

しかもこのコブラ、さらに変態的なバリエーションがある。

①フック
基本の動き方は変わらないが、こちらは水平旋回中に行うもの。つまり、機首が旋回半径の中心を向く。
Su-27の発展型であるSu-35が、1993年のドバイ航空ショーにおいて初披露した。

②クルビット
コブラした状態から機首を水平に戻さず、そのまま後方に倒して、その場で一回転する(簡単に言えばバク宙)というもの。推力偏向ノズル(VT=Vectored Thrust)を装備したSu-37が披露したが、理論上は推力偏向ノズル無しでも可能と言われている。実際カナードもVTも持ってないMK-30MKK辺りがエアショーでやってたりする。

③ダブルクルビット
現在、実践できたのは推力偏向エンジンを備えた試験機、Mig-29OVTのみ。
前述のクルビットを行った後、さらにもう一度その場で一回転する。
クルビット直後で失速状態のところを、推力偏向エンジンによって無理矢理行うため、実践できるのは推力偏向エンジンを備えた機体のみとされている。

④ロースピード・ホバリング
これもMiG-29OVTの得意技。
コブラの姿勢(ピッチアップ85~90)を保ったまま直進する。見た目的には真上を向きながら機体の腹側に進んでいく。
既にアビオニクスコンピューターの中にこの飛行を行うモードが組み込まれており、モードセレクト後コブラしてスティックをキープすると、後はエンジン出力や動翼の微調整はコンピューター側でやってくれるとのこと。

この変態機動を行った機体達

一応F/A-18とF-22は似たような動作が可能であると言われている。
ただアメリカ側は上に書いたような理由で利点は無いとしているのでアピールはしていない。


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最終更新:2024年04月17日 23:52