F-22(戦闘機)

登録日:2009/06/20(土) 12:40:04
更新日:2025/07/12 Sat 23:33:44NEW!
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F-22 ラプター(Raptor:猛禽類の意)


乗員:1人
全長:18.92m
全高:5.08m
最大速度:M2.42、2575km/h
航続距離:2775km
レーダー:AN/APG-77

F-22ラプターはロッキード・マーティン社、ボーイング社が共同開発した多用途戦術戦闘機かつ世界初かつ現在最強の第5世代ジェット戦闘機である。
1980年後半当時のSu-27などの驚異および、今後登場するであろうSuシリーズなどの脅威にも対応出来るようにと開発され、F-15後継機とされた。

現代米戦闘機の愛称はひとつの生物の名前から取られていたが、「ラプター」はより広範囲を意味する言葉である。
これは空の覇者となり、全ての戦闘機(生物)の頂点に君臨することを意識して、という。

開発経緯

時は冷戦。戦闘機に主として必要とされたのは、超大国同士の正規戦で、敵の強力な戦闘機を相手に航空優勢を得ることのできる能力だった。
西側諸国はソ連諸邦に対し基本的に地上軍の規模で劣っていた。故に空軍の爆撃による敵地上軍への攻撃が生命線だったわけだが、その邪魔をするのが味方爆撃機を狙う敵戦闘機である。この邪魔者を排除し、味方の爆撃機やA-10神が巨大なソ連地上軍を思う存分レイプできるように、アメリカ軍は戦闘機の圧倒的な空戦性能を欲したのである。

さて、1970年代中盤よりアメリカ軍は当時世界最強を誇った戦闘機であるF-15を運用していたが、80年代も中盤となるとソ連もそれに勝るとも劣らないSu-27などの新鋭機を配備するようになる。
そこで始まったのが先進戦術機計画(Advanced Tactical Fighter=ATF。マクロスプラスのAVF=Advanced Variable Fighter計画のモデル)である。
それに求められたものは、いつでも、どこでも、どんな戦闘機でも、完全に叩き落し空を支配する能力。たとえ敵の新鋭機が相手だろうが状況が不利なソ連領内での戦闘だろうが一切の関係なく。
まさに「無敵の戦闘機を作るためなら費用を惜しまない」という開発コンセプトだったのだ。
そして試作機YF-22はまさしく、これまでの戦闘機とは隔絶した最強の機体として完成した。


しかし、戦争は変わった。

ソ連崩壊。冷戦終結。
F-22量産型の開発が着手された頃、アメリカを本当の意味で脅かすほどの正規軍はもはや地上に無く、軍事予算は削減の方向へと舵を切っていた。
そして当然、超大国が配備するような高級高性能な戦闘機がアメリカの爆撃機を狙うような状況は無くなった。
時代はマルチロールへ。空中戦闘に特化した最強の機体ではなく、何でもできる便利な機体が求められるようになった。アメリカにとっては、そんな片手間の機体でも脅威の減少した空を支配するには十分だったのだ。
そのため空軍はF-22に対地攻撃能力を付与し、機体開発の重要性を強めた。
また、批判的な議院を納得させるために、一時期F/A-22と呼ばれ正式配備は続くことになったが結局F-22へと戻された。


概要

機体構造

F-22の特徴は、
  • 高いステルス性能
  • 滑らかな機体
  • 圧倒的な運動能力
  • スーパークルーズ能力*1
  • 就役当時としては先進的なアビオニクス(航空電子機器)の搭載
などを備えていることであろう。
この能力を敢えて地上戦で例えるなら、短距離走並みの速度で長距離移動するほとんど見えない兵士が、こちらの射程外から正確に狙撃してくるようなものである。接近どころか見つけることすら難しい。
そして万が一接近できたところでナイフ格闘もクソ強い。何この無理ゲー。こんな化け物が集団で襲ってくるのである…
F-22「最高に勃起モンだぜ!!こっちだけズルして無敵モードだもんな!」

外見は凹凸の無い滑らかな身体であり、F-15とF/A-18を足して2で割った外見と言われている。

F-22の外見は精密に計算された形状であり、角ばったF-117のものとは異なったステルス構造である。
レーダー波を敵のアンテナに反射させず別方向へと反らすよう、平面整列構造になっている。
これは胴体表面のあらゆるパーツの角度を同じにすることでレーダー波を特定の方向へ反らしながら、空力性能の高い設計を可能にした。
他にもレーダー波吸収素材も用いている。

空気取り入れ口ダクトも工夫されている。
ダクトは機内で持ち上げられると共に内側にカーブしているため、エンジン正面はレーダーから隠れるようになっている。
F-22の洗練された外見は激しい機動を取ってもステルス性は確保されていて、尚且つ高機動性を備える形状である。

F-22は9G、-3Gまで耐えられる。また6Gに耐えながらマッハ1.6で飛行可能。
最新のコンピューター制御により、機体に負荷のかかる機動ができないのである。
これは機体の寿命を保つ為であり、パイロットに対しての親切設計というわけではない。

F-22はプラット・アンド・ホイットニー社のF119-PW-100を二基を搭載した双発機(ツインテール)である。
このエンジンらによる強力な推力と滑らかな機体構造、そしてウェポンベイ(兵器倉)に兵装を格納することにより、アフターバーナーを使わずにスーパークルーズ能力を可能にした。
F-22以前の戦闘機はどれだけ速かろうとも武装状態では空気抵抗が増し、巡航速度が亜音速以下が普通だった。
アフターバーナーを短時間使用すればマッハ2.25まで加速でき、低高度においてでもマッハ1.4で飛行できる。
さらに1万8000mから1万9800mまでの高度で飛行できる。
強力な推力によりこうした高高度へ一気に上昇できる。これは迎撃任務にて重要な要素である。

F-22は推力偏向ノズルが装備されている。
上下方向に20度まで推力軸を傾けることができ、また開閉できる。
この推力偏向ノズルにより空気の薄い高高度での機動力確保や、低速域、高迎角飛行時の高い運動性確保が実現できるのだ。

兵装

ステルス性を確保するため、従来の戦闘機とは異なり兵装は機体内部に納められている。(ミサイルを機外にぶらさげているとステルス性が無くなってしまうのだ)
ウェポンベイは左右空気取り入れダクト側面に一つずつ、機体下面に一つの合計三つである。
左右のウェポンベイは短距離空対空ミサイル専用となっている。
ミサイル機関銃を発射するときはウェポンベイを開けて発射する。
そのため発射するまでに若干のタイムラグがある。
機関砲はM61A2が装備されている。

左右ウェポンベイのミサイルは発射時、機体から遠ざけるようにミサイルの先は少し外側に向けている。
機体下面ウェポンベイからミサイルを発射する場合、秒速8mの速さでミサイルを外に放り出す。
左右ウェポンベイには短距離対空ミサイルのAIM-9M/Xサイドワインダーを1発ずつ、機体下面には中距離対空ミサイルのAIM-120A/B AMRAAMを4発またはF-22用に開発されたAIM-120C*2と、その発展型のAIM-120Dを6発を搭載可能。

対地攻撃兵装としてはGPS誘導爆弾を運用でき、1000ポンドのGBU-32 JDAMであれば2発まで、もしくは250ポンドのGBU-39 SDBであれば8発まで搭載可能。
それぞれ最大まで搭載してもAMRAAMを2発搭載できる。
レーザー誘導爆弾を搭載出来ないので移動対地目標への誘導爆撃は不可。なので、戦闘爆撃機のF-15Eや後に登場したステルスマルチロール機のF-35よりかは対地攻撃能力は劣る。

なお、主翼下に合計四つのパイロンを装備でき、更にパイロン4つを装備した状態で、ミサイルを合計8発搭載できる。
こちらは発射能力がないので基地間の移動時などにミサイルを運ぶためだけに使われる。


アビオニクス

レーダーは感知されるのを防ぐために少し上向きに固定されている。
通常は角度60度コーンだが任務に応じてレーダー照射の範囲を絞ることができる。
約250km先の目標を探知でき、多様なモードとの組み合わせにより「ファーストルック・ファーストショット(先に見つけて、先に撃つ)」の最重要要素になっている。また相手の発するレーダーや通信電波を逆探知して方向を解析するESM(エレクトロ・サポート・メジャー)も備わっている。
近い将来ではレーダーはより強力なレーダーに改良されるらしい。
この新しいレーダーは出力を一点に集中させることができ、これにより巡航ミサイルなどの回路をノックアウトできるようになるとか。

ネットワーク機能も充実しており、F-22は互いにデータリンクにより戦闘情報を交換でき、連携して戦闘行動を行うこと可能である。
また索敵範囲外の敵機または友軍機の情報を司令部や早期警戒管制機から受信することもできる。

さらにパイロットがレッドアウト、ブラックアウトなど起こしたり平衡感覚が狂った時は、操縦桿を手放せば自動で機体を水平状態に戻すことができる。


実戦配備

F-22は高性能の分開発当初より高コストになってしまったが、これは当初は約750機量産される予定でその分コストダウンを図っていたが、
冷戦終結による予算削減によって1機辺り約1億4200万ドルまで高騰。それにより生産予定機数は183機となった。
F-22の最大の敵は議会とも言える。

この穴を埋めるため爆撃機化したFB-22や艦載機化も提案されたがいずれも通ることはなかった。
ハイ&ローミックス構想に基づいて、廉価版ともいえるF-35が企画、開発され配備が進められている。

配備から長年実戦を経験することはなかったが、2014年にシリアのイスラム過激派への爆撃にて初めて実践投入された。最強戦闘機のデビューがテロリストへの爆撃とは世知辛い世の中になったものである
また、2023年2月には米国本土に飛来した中国の観測気球に対応するため出撃。初めての空対空撃墜スコアを獲得した。WW1かな?
F-22のその性能はF-15を5機同時に相手にし、無傷で勝利するなどF-15後継機として恥じない実力。「航空支配戦闘機」の名は伊達でない。
他にも「F-15を相手として100戦以上行われた模擬戦闘で無敗」「目視しているのに(F-15の)レーダーに映らない」などまさに最強戦闘機。
しかし、F/A-18相手に撃墜された記録やF-15F-16の2機相手に負けたりしているため、常勝無敵って訳ではないのだ。(もっとも、交戦回数を考えれば十二分に常勝無敗の域だし、負けたらニュースになるのはこいつくらいしかいない)
2020年代に入るとステルス塗装の維持だけでなく老朽化の腐食によってランニングコストも増大しており問題となっている。

その他、彼女の運用史

彼女には機密が多く、箱入り娘なので他国には輸出しないことになっている。
一時期、老朽化したF-15Jの後継機として「日本へのF-22輸出を検討する時期だ」と日本にF-22が輸出される話が上がっていた。
が、輸出の話は中止に。
他にもオーストラリアやイスラエルも購入を検討したが許可されなかった。
更に不景気の煽りとソ連という特大の敵を失い、高コストな上に需要が消えたF-22は生産中止になった。

日本への展開としては在日米軍基地に臨時で配備されることがたまにあるくらい。
特に嘉手納への一時配備は何度かされており、主翼に増槽を下げフェリーしてきた彼女が目撃されている。
嘉手納のF-15CがF-15EXへの機種転換を行っていた際も、その中継ぎとして嘉手納に配備されている。

2011年には何名ものパイロットが原因不明の体調不良を訴え、現在配備されている全機の長期飛行停止命令が下された。
その後の調査で原因は耐Gスーツのバルブやフィルターが原因であることが判明した。

2018年はF-22にとって厄年だった。
配備基地だったフロリダ州のティンダル空軍基地にハリケーンが直撃し、17機が大破した。
その損失分を補填する思惑でもあったのか、同年には日本のF-2後継機としてF-22にF-35のアビオニクスを搭載したモデルを提案する珍事一幕もあった。
これに感化されたのか、YF-23を対抗馬として掲げたものもいた
そちらは結局日伊共同開発という形に落ち着いたが。

世界最大の超名門が育て上げた、外の世界を知らない天才箱入り娘。
凹凸の無いツルペタな身体にスク水を纏い、大きなツインテールを下げた彼女は恥ずかしがり屋で、すばしっこくレーダーに映るのが大嫌い。
けれど激しい機動で人の目を引き付け、自分の家でドジを踏み、自分のアソコ(ウェポンベイ)をくぱぁしたりと中々の変態っ娘なのではないだろうか。
妄想乙って言うな。


創作出演

その外見と屈指の高性能機とあってか創作物への出演数は非常に多い。
F-22の映画デビュー作品は実写版「トランスフォーマー
この映画ではF-22を撮影するために、わざわざ軍からF-22を借りてきたらしい。
F-22好きなら、スタースクリームとの市街地戦は見る価値あり。
まぁ次々と落とされていくF-22を見るのは心が痛むが。

エースコンバットにおいては初代から最新作まで皆勤賞である*3
特に4作目主人公の乗機として定着して以降は特別塗装機でほぼ毎回用意されるほどの人気であり、プラモデルなどの立体化も多い。

ライトノベル激突のヘクセンナハト』ではなんと「史実で制式採用の座を争った『YF-23』に敗れ、実験機のまま保管されていた幻の機体」として登場(名義は『YF-22』)。
理由は「ヘクセンナハト世界の基幹技術『術式』の媒体となる『紋章』を書き込むスペースが少ない」だが、本編ではそのスピード等を買われ艦載機化されたものが発掘され観測機として使用された。

立体物

創作物出演が多いように立体化も多くかつてはタミヤなどがYF-22を販売、F-22が配備されて以降はそちらが多くのメーカーから発売されている。
国内ではトミーテックからは技MIX、エフトイズからハイスペックシリーズで1/144塗装済み組み立て品が発売されており、前者では実戦配備部隊にのみならず
上述のスタースクリームやメビウス1ver、洋上迷彩ver*4などが発売されている。
だが技MIXブランド自体が終了、後者も流通の関係上再販が難しいこともあいまってこれらの人気は高く定価よりも高値で取引されている。


メビウス1、追記・修正(エンゲージ)》


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最終更新:2025年07月12日 23:33

*1 燃料消費の凄まじいアフターバーナー(推力増強装置)無しで超音速飛行が可能であること

*2 翼端が切り落とされ、コンパクトになっている

*3 ただし1.2はYF-22、3はコフィン化されていたりしている

*4 洋上での視認性低下を目的とした日本独自の迷彩、近年ではこの塗装に変更する航空機が増えている、また愛好家にも人気が高くこの塗装での架空の航空機立体化もされている