ギャシュリークラムのちびっ子たち-または遠出の後で

登録日:2012/02/15 (水) 02:13:40
更新日:2024/06/18 Tue 12:26:54
所要時間:約 3 分で読めます





『ギャシュリークラムのちびっ子たち』とは、アメリカの作家である故エドワード・ゴーリーによるアルファベット絵本である。
子供にもやさしいよ!


追記・修正をお願いします。



























『ギャシュリークラムのちびっ子たちーまたは遠出の後で』とは、エドワード・ゴーリーが描いたアルファベット絵本に間違いはない。
子供にも易しいのも間違いはない。
……間違いはないのだが、問題はその内容である。

まず、本の表紙を見てみよう。かわいらしい26人の子供達がいるのだが、その表情が妙に不安そう。
左の方に引率の人物だろうか、を持った黒ずくめの人物がいるのだが……

顔が完全に骸骨

この時点で嫌な予感しかしないが、絵本は見かけによらないものだ。気を取り直して表紙を開いてみよう。








Aはエイミー かいだんおちた(A is for Amy who fell down the stairs)






こんな文と共に、今まさに階段を踏み外して宙に浮き、頭から真っ逆さまに落下しそうになっている少女の絵が目に飛び込んでくる。


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Bはベイジル くまにやられた(B is for BASIL assaulted by bears)






この文章とともに、熊二頭が待ち構えている場所へフラフラと歩いていく少年の姿……。


そう、これは名前のアルファベット順に子供たちが悲惨な死を遂げていく不条理シュールな絵本なのだ。
その死に方も某ケニーにも負けないほど異様にバラエティに富んでいる。
例を出してみると


まさかりぐさり
せんろであっし(圧死)
けんかのまきぞえ
どかん!こなみじん
アルカリごいん(誤飲)


などなど、日常でありそうな恐怖からお前どうしてそうなった、と言いたくなるものまで多種多様な死に様を見せる。
この様子を、英文は韻を踏んだ明るい調子で書いており、文章もごく平易なもの。訳文もそのリズムを意識した調子の訳となっている。
子供に優しくないけど子供にも易しい内容。
その明るい文調とは裏腹に、華奢な人形のような子供達が織りなす悲惨な挿絵のギャップがシュールで不条理な雰囲気を醸し出しており、痛烈なブラックユーモアのスパイスとなっているのは間違いないだろう。


原作者、エドワード・ゴーリーは、ブラックユーモアの極地たる作品を得意とした作家であり、その絵柄の独特さ、物語の痛烈な黒さなどから没後20年以上になる現在でもファンが多い。
(文化人では作家の吉本ばなな、映画監督のティム・バートンなど)
子供が悲惨な目に遭う、という絵本はこの他にも幾つか手掛けている。
そんなに子供が嫌いか、と皆様思うかもしれないが、彼は生涯独身でこそあったがむしろ子供好きだったようで、絵本において悲惨な目に合わせるのは、
どうか現実においてそうならないように、という彼なりの願いの表れなのではとも言われている。


危険に満ちた遠出の後でも、ふつう多くの子どもは戻ってくる。
しかし、一見平穏な日常が、紙一重で死と隣り合わせていることを、ゴーリーは伝えたいのやもしれない。


なおこの絵本の裏表紙は、26個の墓石で締めくくられている。
我々の周りの子供達が、そうはならないように、注意をするべきではなかろうか。



追記・修正お願いします。




Eはアイン らぐなろくにあい


Zはツヴァイ たてにげをされ


Mはメイデン ケツをほられた

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最終更新:2024年06月18日 12:26