登録日:2012/02/15 (水) 02:13:40
更新日:2026/09/11 Fri 12:41:10
所要時間:約 3 分で読めます
『ギャシュリークラムのちびっ子たち-または遠出の後で』とは、
アメリカの絵本作家エドワード・ゴーリー(1925~2000)の手になる絵本である。
1963年に発刊。原題は“The Gashlycrumb Tinies, or, After the Outing”。
日本においては、柴田元幸の翻訳版が奇しくもゴーリーが没した2000年に発行されている。
絵本のジャンルは「アルファベット・ブック」。
「A」から「Z」までのアルファベットを、イラストや単語と一緒に楽しく学べる教材的絵本のこと。
子供にも
やさしいよ!
可愛いちびっ子たちと一緒に追記・修正をお願いします。
『ギャシュリークラムのちびっ子たち-または遠出の後で』が、エドワード・ゴーリーが描いたアルファベット絵本であること間違いはない。
上記の概要も全て正しい内容である。
子供にも易しいのにも間違いはない。
……間違いはないのだが、問題はその内容である。
まず、本の表紙を見てみよう。かわいらしい26人の子供達が描かれている。
…いるのだが、その表情が妙に不安そう。
また、左の方に引率の人物だろうか、
傘を持った黒ずくめの人物がいるが……
顔が完全に骸骨
この時点で嫌な予感しかしないが、絵本は見かけによらないものだ。
さて、表紙を開いてみよう。
最初のページにはただ一言
文字通り、ヘルネという誰かに捧げる本であるようだが、それが誰なのかは杳として知れない。
…気を取り直して、本編を読んでみよう。
Aはエイミー かいだんおちた
こんな文と共に、今まさに階段を踏み外して宙に浮き、頭から真っ逆さまに落下しそうになっている少女の絵が目に飛び込んでくる。
次のページは
Bはベイジル くまにやられた
この文章とともに、熊二頭が待ち構えている場所へフラフラと歩いていく少年の姿……。
そう、これは名前のアルファベット順に子供たちが悲惨な死を遂げていく不条理でシュールなブラックユーモアの絵本なのだ。
| 頭文字 |
英語名 |
日本名 |
| A |
Amy |
エイミー |
| B |
Basil |
ベイジル |
| C |
Clara |
クララ |
| D |
Desmond |
デズモンド |
| E |
Ernest |
アーネスト |
| F |
Fanny |
ファニー |
| G |
George |
ジョージ |
| H |
Hector |
ヘクター |
| I |
Ida |
アイダ |
| J |
James |
ジェイムズ |
| K |
Kate |
ケイト |
| L |
Leo |
リーオ |
| M |
Maud |
モード |
| N |
Neville |
ネヴィル |
| O |
Olive |
オリーヴ |
| P |
Prue |
プルー |
| Q |
Quentin |
クェンティン |
| R |
Rhoda |
ローダ |
| S |
Susan |
スーザン |
| T |
Titus |
タイタス |
| U |
Una |
ユーナ |
| V |
Victor |
ヴィクター |
| W |
Winnie |
ウィニー |
| X |
Xerxes |
ザークシーズ |
| Y |
Yorick |
ヨリック |
| Z |
Zillah |
ジラー |
その死に方も
某ケニーにも負けないほど異様にバラエティに富んでいる。
例を出してみると
- モモでちっそく
- まさかりぐさり
- せんろであっし(圧死)
- けんかのまきぞえ
- どかん!こなみじん
- アルカリごいん(誤飲)
- のぞみもうせて
などなど、日常でありそうな恐怖からお前どうしてそうなった、と言いたくなるものまで多種多様な死に様を見せる。
この様子を、英文はごく平易な文章でありながら、韻を踏んだ明るい調子で書いている。
訳文の場合もそのリズムを意識した調子の訳となっている。
子供に優しくないけど子供にも易しい内容。
その明るい文調とは裏腹に、華奢な人形のような子供達が織りなす悲惨な挿絵のギャップがシュールで不条理な雰囲気を醸し出しており、痛烈なブラックユーモアのスパイスとなっているのは間違いないだろう。
なお、タイトルの「ギャシュリークラム(Gashlycrumb)」についてだが、この単語自体は、ゴーリーの造語だとされている。
ただ、これは“ghastly”が訛った“gashly”と“crumb”の組合せで、意味はそれぞれ「酷い・恐ろしい」「ロクでなし・人間のクズ」。
つまり「ギャシュリークラムのちびっ子たち」とは「酷くてロクでなしのちびっ子たち」という意味になるのである。
作者のエドワード・ゴーリーは、ブラックユーモアの極地たる作品を得意とした作家であり、その絵柄の独特さ、物語の痛烈な黒さなどから没後20年以上になる現在でもファンが多い。
ゴーリーは「子供が悲惨な目に遭う」内容の絵本をこの他にも幾つか手掛けている。
「そんなに子供が嫌いだったのか」と思われたかもしれないが、彼は生涯独身でこそあったがむしろ子供好きだった模様。
絵本において悲惨な目に合わせるのは、「どうか現実においてそうならないように」という彼なりの願いの表れなのではとも言われている。
上記の「酷くてロクでなしのちびっ子たち」も、酷くてロクでなしなのは子供達ではなく、そんな状況に子供を置いてしまったり看過してしまう我々大人のことを指しているのであろう。
危険に満ちた遠出の後でも、ふつう多くの子どもは戻ってくる。
しかし、一見平穏な日常が、紙一重で死と隣り合わせていることを、ゴーリーは伝えたかったのやもしれない。
なおこの絵本の裏表紙は、26個の墓石で締めくくられている。
我々の周りの子供達が、そうはならないように、注意をするべきではなかろうか。
追記・修正お願いします。
- pixivにこれをダンガンロンパで再現したのがあったけど、元ネタがあることをここで初めて知った。 -- 名無しさん (2014-10-20 19:54:20)
- これで読書感想文書いて何故か怒られました(半ギレ)ゴーリーの絵ほんと好き -- 名無しさん (2017-06-19 22:55:46)
- これを元ネタとするCreature FeatureのA Gorey Demiseも聴いてみよう -- 名無しさん (2017-06-19 23:13:09)
最終更新:2026年09月11日 12:41