ボールトンポール デファイアント

登録日:2014/04/23 (水) 22:42:00
更新日:2022/05/13 Fri 09:31:09
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ボールトンポール デファイアントとは、ひいき目に見てもわりとアレな戦闘機の皮を被った英国面である。
デファイアントとは「挑戦的な」という意味だが、いくらなんでも挑戦的すぎっつーか自殺的だぞこれ。

性能諸元(Mk.I)

全長:10.77m
全幅:11.99m
全備重量:3,900kg
エンジン:ロールスロイス・マーリン3(1,030馬力)
最大速度:489km/h
航続距離:750km
武装:4連装7.7mm旋回機銃塔
乗員:2名

開発史

1935年に英国空軍(RAF)が提示した要求仕様F.9/35は、第一次大戦で活躍したブリストル・ファイターと同コンセプトのものだった。つまり、

単発複座で後部機銃による同航戦が可能な戦闘機

というもので、パイロットは操縦に専念できるし銃手は広い射角で攻撃に専念できるからイケるんじゃね?と思われた。
空中戦で二人羽織をやれとはRAFもなかなか無茶を言う。
でも前方投射火力は最低限自衛用に必要だろ、常識的に考えて

ちなみに本機は基本的に本土防空などの迎撃戦闘用で、間違ってもドッグファイトに使うような機体ではない。
というのも、この頃はRAFがほとんどドッグファイトを経験しないままの時期で、第一次大戦で好き放題本土爆撃を受けた経験から戦闘機の主目的は

爆撃機の早期掃討による本土防衛

とされていたのだ。なので、多連装機銃塔搭載機の編隊による火力の有機的集中投射は有効性が見込めると考えられた。当時は
ところで、この試案が提示された当時は、開発中の機体はともかくいまだ複葉機が現役だった頃である。つまり本機は

高翼単葉ないし複葉(あとたぶん出て来ないだろうけど硬式飛行船)の鈍足多発爆撃機迎撃用

だったわけだ。まあ実用化された頃には爆撃機は高速化していた&格闘戦に長けた単発単座戦闘機が護衛についてたわけだが
と言うかだな、自前でブレニムだのハムデンだのの高速多発他座爆撃機作っといて、

なぜ戦闘機開発にそれをフィードバックしなかった!?

そして本機最大の謎、前方投射火力がまったく存在しない理由は、

低翼単葉機が発達すると高速化しすぎて、正面切って機銃撃ってる余裕なくなるんじゃね?

という理屈。なお実際にはry
そしてデファイアントを見ていながらファントムじーちゃんでやらかした*1大正義アメリカ軍ェ……

初飛行は1937年8月で、受領開始は1939年12月。総生産機数は1,065機。

余談だが、本機の機銃手は生還率が低いことで有名。というのも、

コンパクトに設計しすぎて銃座が狭くパラシュートを背負ったまま座れない。しかも機銃を上方、機銃塔そのものを前に向けないと乗り降り自体できない

という、どうあがいても欠陥じゃねぇかこれ……な仕様のせい。墜落中にのんきにそんな事やっとる暇なんぞあるかいな

なお、ガッチリした機体に動力銃座がズドンと座っているので見た目だけはなかなか強そうに見える模様。実際は……聞くな。

戦歴

不遇不遇アンド不遇。不遇すぎて一周回って笑えてくるレベル。まあ端から見たらネタ機以外の何物でもないわけだが。

登場当初こそドイツ機を計65機撃墜するというなかなかの累積戦果を挙げたが、実はこれ、

ハリケーンやスピットファイアが敵戦闘機と殴り合ってる間に爆撃機をこっそりぶん殴ってたから

と、なんというか、うん……。いや、本来の運用法なんだけどね?その後バトル・オブ・ブリテンなどに投入された結果、あっさりと馬脚を現す。
自機より相対的上方にしか攻撃できないことがバレてバッタバッタと叩き落とされていき、あっさりと御役御免となった。

まあ「彼我のスピードが凄まじい勢いで相対的高速化していった時代に、旋回Gがかかる中で旋回機銃でドッグファイトとか無茶言ってんじゃねーよダラズ。
そもそも運用コンセプトから外れとるわ」という話ではあったわけだが。

んじゃどうすんべ、となった時に夜間出撃で2回戦果を挙げていたのが着目され、夜間戦闘機として使用されることになった。
こっちはぼちぼちの戦果を挙げたが、普通の夜間戦闘機と逆で、パイロットがレーダー手兼任*2だったため使いにくいと不評だったらしい。
まあ、夜間迎撃なら機銃塔での同航戦に持ち込みやすい、というのはあった。この頃には7.7mmなんぞ豆鉄砲だったけどな
でもぶっちゃけモスキートまでの「つなぎ」

そんなこんなで行き場がなくなった後は、訓練機や標的曳航機、航空海上救助機として使用された。
面白い例ではドイツのレーダーに対抗して「マンドリル妨害装置」を組み込んだECM機としても運用されている。

つまるところ、総括すると『徹頭徹尾とことん時代にコンセプトが合ってなかった機体』といえるか。
5年早かったら無双できt……大戦自体起こってないので結局無理ですね、わかります。

バリエーション

  • Mk.I:初期計画に基いた量産型
    • NF Mk.I:夜間戦闘型
      • NF Mk.IA:夜間戦闘型改。邀撃戦闘用レーダー搭載
    • Mk.II:夜間戦闘強化型。マーリンXXエンジンと改良型邀撃レーダー搭載
      • TT Mk.I:Mk.IIベースの標的曳航機。機銃塔未撤去
      • TT Mk.III:標的曳航機。機銃塔撤去済
    • ASR Mk.I:救助型。ゴム製救命ボートを搭載、漂流者に投下する

余談

空軍のみならず海軍でも同コンセプトの「ブラックバーン ロック」という艦上戦闘機が開発されている。
同社のスクア艦上爆撃機をベースに開発されたが、結果は、まあ、その、何だ……お察しください。
具体的には原型機より速度が落ちて瞬間火力据え置きで爆装能力オミットされました。ハハッワロス。

両機のコンセプト元のブリストル・ファイターには前方機銃ついてんだけどね……

創作ではマイナー兵器オタク作家・𠮷岡平が架空戦記の全盛期に書いた『ニカウンガの砲声』に登場。第二次世界大戦から数年後のアフリカで、低速&低空飛行で装甲列車を追い抜きながら銃塔を横に向けて機銃掃射するというこんな変態機でしか出来ない戦い方を見せたが、装甲列車の護衛についていた主人公機にあっさり墜とされる。なお主人公は珍しい機体だからと、撃墜する前に私物のカメラで記念撮影をしていた。
また神野淳一の電子書籍小説『夜の妖精、鋼鉄の翼、たった一つの願い』に、夜間空中戦闘用として登場。なんと本当に作中世界のバトル・オブ・ブリテンに参戦した。
ちなみに原型となった小説『シルフィ・ナイト』では「ファンタジー世界のデファイアントっぽい機体」だったが、電子書籍版に改定される際「パラレル1940年の英国にあるデファイアント」に変更された。
あと、多分ネタ機枠で第二次大戦機のフライトシムに出演してる……んじゃないかな、たぶん。
ニッチ過ぎて筆者よくわかんない。



追記・修正は本機でバトル・オブ・ブリテンに従軍してからお願いします。


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最終更新:2022年05月13日 09:31

*1 ミサイル万能論()により航空機関砲はオミットされました。そして当時のミサイルの信頼性は軍政家が思うほど良くなかったという事実。結果、性能に劣るMiG軍団にドッグファイトで追っかけまわされるはめになり、慌てて機首を延長してバルカン仕込んで解決

*2 普通はパイロットが銃手兼任、後部座席にレーダー手