小鳩常悟朗

登録日:2015/01/15 Thu 11:09:16
更新日:2025/04/19 Sat 14:46:17
所要時間:約 5 分で読めます







 じゃあ、始めよう。ぼくが思うに……、これは推理の連鎖で片がつく。 



小鳩常悟朗(こばと じょうごろう)とは、〈小市民〉シリーズの主人公である。
同シリーズの探偵役と語り手を務める。

CV:梅田修一朗

地元の進学校、船戸高校に通う高校生。
旺盛な知的好奇心と非常に高い推理能力を持つ生粋の探偵役であり、「ひとより早く真相に辿りつける」ことから、
幼少期よりそれを自慢として生きてきたが、後述の理由により謎解きを封印。「小市民になる」ことを志す。


「小市民」を目指す同志である小佐内ゆきとは、『恋愛関係でも依存関係でもない、互恵関係』を結び、
自分が問題に巻き込まれそうなときは相手を利用する、相手が小市民の道を外れそうなときは注意する、と2つのことを約束して共に行動している。

彼女とは同じ中学校の出身であり、お互いがどんな問題を抱えて小市民を志すかを知る仲である。
小鳩自身は好き好んでいつでも一緒にいるほどの仲ではないと考えているが、周りからはカップルだと思われている様子。
それはそれで小市民としては都合がいいらしい。



高校入学前は周囲を顧みず名探偵としての力を存分に振るっていたため、
小学校時代の同級生であり、高校でまた同窓生となった堂島健吾からはその変化を訝しく思われているが、
小鳩自身進んで他人と関わる方ではないため、校外でも接する機会のある友人は彼(と小佐内さん)くらいである。

地の文でも台詞の上でも他人に関して「儀礼的無関心」を貫く小鳩だが、健吾とはウマが合わないらしく、根本的に当たりが強い。
もっとも非常時に真っ先に頼りにするのが健吾であり、また一度頼ると全幅の信頼を寄せているようなフシもある。


本人はなるべく謎と関わるのを避けようとしているが、
他人から押し付けられたり、不運に遭遇したり、解けそうな謎を見つけると黙っていられなくなったりして、
上述のゆき、健吾とともに日常の謎に立ち向かうのが<小市民>シリーズの基本パターンとなっている。

決め台詞は「ぼくが思うに、これは○○で片がつく」。
○○には事態の解決方法が入り、この言葉が発せられると物語は大抵解決編に移行する。




なぜ謎解きを封印したのか健吾から尋ねられた際には、「わかりやすいトラウマが中学時代にあった」としている。それも、
「もったいぶっていたらまるで手遅れになって、逆恨みを買った」
「人様の幻を破って泣かせただけで、なに一つ好転しなかった」
「自信を持って開陳したら、圧倒的に上をいかれた」
と三連コンボを喰らい、自分が他人の問題に口を挟んで全てを解決することで、誰かに喜ばれることなど殆どなかったのだと気づく。
+ 小鳩の驕りと躓き
『冬期限定』でその一端が明かされており、昔ある事件の推理を「自信を持って開陳」するも、推理を披露する相手だった同級生から最後に(当時の小鳩には分からない理由によって)おせっかいだと拒絶された上、よりにもよって拒絶された後に肝心の推理自体が大外れだと判明するという盛大なミスをやらかしていた(なお推理失敗理由自体の再検証も数年たった『冬期限定』の時期までする気にならない程ショックだった模様)。
その失敗は、同作終盤にて予想外の方向からの逆恨みという最悪の形で自分に帰ってくることに…。
また『冬季限定』のラストにはそんな過去の自分のやりようが、多分『秋季限定』での交際破綻から人のためではなく自分の「ある種の自己顕示欲」から来ていたのではとも感じ、昔の自惚れを反省していた。

詳しい過去は明かされていないが、『秋期限定 下』において、ゆきとの会話で「恋愛は、ほら、あの子と付き合ったきりだったし」と意味深なことを言っている。
下らない思いをするくらいなら、無芸で現状に満足する小市民でありたいと考えた小鳩は、謎解きを封印したのだった。

しかし本人はいまだに推理することにこの上ない喜びを感じており、問題に巻き込まれることを望んでいるようでもある。
そのことは、たびたび周囲から指摘されている。




同作者の〈古典部〉シリーズの主人公、折木奉太郎とは、
 ・消極的名探偵であ(ろうとす)る
 ・人間関係に関して非常に淡白(人付き合いはそつなくこなすが、クラスメイトの名前もロクに覚えないほど)
 ・推理力は非常に高く、一度情報が出揃えば結論に容易にたどり着く
 ・自らの信条を第一においている
と多くの点で共通する。




以下、シリーズ(特に『夏期限定』以降)のネタバレあり。未読の方はブラウザバックを強く推奨。




























自分とゆきに降りかかる危険を、持ち前の推理力で何度か解決した小鳩であったが、

高2の夏に遭遇した小佐内ゆき誘拐事件解決の際、全てがゆき自身の誘導で起きたものであり、
自身はこの件の探偵役として機能するために、しばらく掌の上で踊らされていたことに気づく。

そして、自分とゆきが共に行動している限り、自分たちは小市民ではいられないのだということにも。
双方の結論は合致しており、2人はここで互恵関係を解消し、別々の道を歩むことを選ぶ。
(このあたりの心理描写は必見。『夏期限定トロピカルパフェ事件』なんて甘いタイトルを謳っておきながら、相当に苦い流れである)




その後の9月。小鳩は唐突にクラスメイトの仲丸から告白を受け、交際を始めてしまう。
同じころゆきも、ひとめぼれされた後輩の瓜野と交際を開始。
これまでふたりの縮まる距離にドキドキし、応援していた読者の多くが、落胆し絶望し作者の非情を呪ったのであった。


小鳩自身は恋愛を小市民的にほどほどに楽しんでいたようではあるが、まったく執着を見せず、恋人の二股が発覚した際も、内心では「まったく的外れで、一切必要のない情報」だと考えている。
…が、そういった浮気すらどうでもいい様な彼の冷めた感性や、小鳩が気になる「謎」は相手にはどうでもいい事だった等互いの性格のズレのせいで結局仲丸にふられ、しかも自他共に認める恋多き女だった彼女から「ふっても何にも感じなかった相手は初めて(意訳)」と一刀両断された。
でも、瓜野のクライマックスでのフラれ方よりは多分まし…かも知れない。

そしてその前後に発生した連続放火事件を、仲丸と別れた後解決した小鳩は、一つの結論に達する。
「必要なのは「小市民」の着ぐるみじゃない。たったひとり、わかってくれるひとがそばにいれば充分なのだ」

恋人に頼ることで小市民たろうとするも、それに失敗し、裏切られたふたりは、
ふたたび互恵関係を取り戻し、自らの悪癖と折り合いをつけるため奮闘するのだった。





【台詞】

「ここで泣き寝入りしなかったら、小市民じゃない」

「ぼくは気づいたんだよ。誰かが一生懸命考えて、それでもわかんなくて悩んでいた問題を、端から口を挟んで解いてしまう。
 それを歓迎してくれる人は、結構少ない。感謝してくれる人なんて、もっと少ない。それよりも、敬遠されること、嫌われることの方がずっと多いってね!」

「下らない思いをするぐらいなら、無芸で現状に満足する、幸せの青い鳥はわたしの部屋にいたのね的な小市民を志すと決めたんだ。
 そこを批判され、『腹に一物』って言われて、どうしろって言うんだよ!」

「喋らせてくれてありがとう。やっぱりこっちの方が」「体温が上がるよ」

「ぼくにとって小佐内さんは、必要だと思う」









ぼくが思うに、これは追記・修正で片がつく。


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最終更新:2025年04月19日 14:46