ミルワカバ(ウマ娘 シンデレラグレイ)

登録日:2025/08/23 Sat 23:31:43
更新日:2025/08/24 Sun 02:37:41NEW!
所要時間:約 13 分で読めます




本命ばかり見てたら、また足掬われちゃいますよ?
安田に辿り着くまでもなく、前哨戦でこのミルワカバが叩き潰してあげます
覚悟しておいて下さいね。セ・ン・パ・イ♡


ミルワカバは、『ウマ娘 シンデレラグレイ』の登場キャラクター。
史実で活躍した「とある競走馬」をモチーフとしたオリジナルウマ娘

+ 目次

◆概要


第四章『芦毛の怪物篇』から登場したウマ娘。
オグリ達より一つ下の世代であり、クラシック級を終えたばかりの新たなるライバルとしてオグリキャップと対峙する。

褐色肌で×印の模様が入った紫色の瞳を持ち、もみあげと後ろ髪の一部が赤色の黒髪となっている。
また、モデルとなった競走馬と同じ『く』の字の流星が入っている。
いつも牛の角みたいなカチューシャを頭につけているが、これは後述する友人のもの

一つ下の世代であるブライトロック*1とは幼馴染であり、情報共有を行ったりと持ちつ持たれつの関係。
また『牛乳サイダー』といった変な飲み物を好んで飲んでいる

彼女の走りは良く言えば『堅実』であり、悪く言えば『地味
イギリスの名トレーナーである父の影響からか、セオリーに沿った走り方を得意としており、その素質はバンブーメモリーのトレーナーである奈瀬英人やスーパークリークのトレーナーである奈瀬文乃からも高く評価される程。
一方で、オグリ達の規格外の走りと比べると派手さに欠けることも事実であり、当のミルワカバ自身もオグリ達の事を外れ値共と称し、『チマチマと策を凝らしている自分がバカみたい』と自嘲する場面も存在する。

◆作中での活躍



安田記念


再び北原とコンビを組みことになったオグリキャップが、バンブーメモリーと安田記念にてリベンジマッチをすることを約束しているところに登場。
この時、永世三強を共に構成し、有マ記念にて敗北したイナリワンとスーパークリークが天皇賞・春に出走予定だったため『天皇賞・春ではなく安田記念を選択したのは、有マで負けた二人が出てくるから日和ったからだ』と挑発。しかし、そのような挑発には乗らないオグリキャップに『北原は何か考えがあって選択したんだろう』とあっさり流されてしまう。
理性的な返しに動揺しつつも、安田記念にはいくつか前哨戦があることに言及し、冒頭の台詞を言い放ってオグリキャップに宣戦布告をするミルワカバ。しかし…


いや前哨戦には出ないぞ?
す…すまない!配慮に欠けていた!せっかくカッコ良く宣言してくれたのに…!とりあえず応じておくべきだったな!

オグリキャップは安田記念に直行する予定であり、更に配慮に欠けていたと謝罪されるハメに。
完全に出鼻を挫かれたミルワカバは赤面し、『バーカバーカ!!』と下げびながら退散するのだった。


その後、前哨戦である金杯・中京記念を連勝し、*2安田記念にてオグリキャップと対決。
有マ記念にてハイペースの先行でレースを進めた結果オグリキャップは5着に敗れたことから、先行ではなく差しで勝負すると考えるが、前回同様3番手を確保したオグリキャップに仰天。
この時積極的に飛ばす他のウマ娘に対して『有マを見てないワケ?』と心の中で思っていたのだが、その言葉がアオリ文で自分へのブーメランとして煽られることとなった。
これまで念入りに行ってきたシミュレーションがまるで通用しないオグリキャップの走りを間近で見せつけられ、オグリキャップのレコードの勝ちの裏で3着に敗れた。

その後、安田記念の取材に来た藤井達に対し「自分の事をバカにしに来たのか」と追い払ったり、宝塚記念での特番でも素っ気ない態度を見せたりした他、取材に応じるオグリの姿をジッと見つめていた。





以下ネタバレ注意





谷間の世代


ボクがデビューしてから、常にこの世界の中心には"怪物"がいた

第162R『お前の所為だ』にてミルワカバの過去について語られた。

ミルワカバはデビュー戦にて10バ身差という大差で勝利を収める。
余りにも圧倒的な勝ちっぷりにはレースを見ていた周囲の評価も上々であり、一部では"天翔"カツラギエースの再来とまで言われるほどのものであった。

後日、ミルワカバは上機嫌でブライトロックや角のカチューシャをつけた友人を連れて、自分のデビュー戦の記事を見るために雑誌売り場へ行く。
『デビュー戦のあと1時間も取材を受けた』『あれだけのレースだったのだから大々的に取り上げられてるはず』と期待するミルワカバだったが…





雑誌の一面を飾っていたのは、オグリキャップとタマモクロスであった。

奇しくもこの時、世間はオグリキャップとタマモクロスの天皇賞秋で持ち切りの状態
雑誌でも数ページに渡って天皇賞秋の特集が綴られており、自身のデビュー戦に関しては数ページ先に小さく記載されているだけというあんまりな扱いであった。
この状況に「誰だって初めはそんなものだから次はもっと取り上げられるように頑張ろう!」とフォローするブライトロック、それに対してミルワカバは動揺しつつもそのつもりだと応じるのだった。

しかしその後もミルワカバが大々的に注目されることはなかった…
あずさ賞での勝利は、オグリキャップの春全休にかき消され
中日スポーツ杯で自身初の重賞勝利を達成しても、オグリキャップの復帰が優先して報じられ
クラシック戦のトライアルレース神戸新聞杯を制しても、オグリキャップのオールカマー勝利に話題を奪われる
どれだけ走っても、どれだけ勝ってもオグリキャップの活躍に霞んでしまうのだった。

そしてクラシック戦終了後、あのカチューシャの友人がトレセン学園を辞めると言い出した。
「どれだけ頑張っても誰も見てくれない」と嘆く友人に『まだまだこれからだから頑張ろう』と励まそうとするが…

もう無理なの!!!
だってオグリキャップがいるんだよ!?あんなのがいる世界で戦い続けられるわけないでしょ!?
私たちがいる意味なんて…ないじゃない…

オグリキャップの活躍の割を食っていたのはミルワカバだけではなかった。
オグリキャップの輝かしい走りによって、自分達のクラシック世代そのものが注目されなくなっていたのである。
加えて後の世代では、メジロ家を始めとする将来有望なウマ娘が既に注目されている状態。
そんな二つの強豪に挟まれた『谷間の世代』、どれだけ頑張っても誰も注目してくれない状況に、彼女の心は既に壊れてしまったのである。

そして一人となったミルワカバはオグリキャップが表紙を飾る雑誌を握り潰し、彼女に対する憎悪を滲ませるのだった
全部…!!全部お前だ…!!
お前がボク達を陰に堕とした!!
全部お前の所為だ!!オグリキャップ!!!

以上のように彼女がオグリキャップに対する感情は極めて重く
自分達から話題も何もかも奪ったオグリキャップが憎いが、だからこそオグリキャップの強さを認めている
そして全力を出した『怪物』であるオグリキャップをレースで倒したい
と愛憎に近いものを持っている
だが一方で、実際に見かけたオグリキャップはそうした屈折した思いによって形作られたイメージとは異なるものであり、あまりのド天然さに毒気を抜かれてしまった。

そして、ミルワカバがつけているカチューシャはこの時の友人が捨てたものなのだが、『人から受け継いだカチューシャをつける』というのはオグリキャップと全く同じである。

宝塚記念


そして宝塚記念にて再びオグリキャップと対峙する。
この時、永世三強の一角であるスーパークリークが足の故障によって回避。それでもイナリワンを始めとする強豪が集まったものの、周囲は「オグリキャップが勝利する」という空気となっていた。
レースでは荒れたバ場状態の中で二番手の好位を確保し、そのままレースを進めていく。
理屈上では、道中の直線では息を入れて第四コーナーの下り坂でスパートをかけるのが定着。しかし前との距離が広がることを嫌ったオグリキャップは第三コーナーで仕掛ける。
それにつられるように他のウマ娘も第三コーナーでスパートをかけ始め、レースは大きく動いていく


しかし先頭に立ったのは、全てをセオリー通りにこなしていたミルワカバであった。


オグリ達の規格外の走りに惑わされそうになるが、そもそもセオリーというのは本来勝利への定石を表すもの。
完璧な位置取りで完璧なペースでレースを進め、そして完璧なタイミングで仕掛ける、それは一見すると地味かもしれない。
しかし同時に堅実で隙のないレース運びは確実な結果を齎すものなのだ。
そしてミルワカバは誰よりもレースに対してひたむきに努力し続けた。
例え誰からも注目されなくとも、夜遅くまでトレーニングを行ったりと研鑽を重ねてきた。
全ては自らの世代を闇に葬った怪物、オグリキャップを倒すために。

そんなミルワカバに応えるかのように、オグリキャップも領域・灰の怪物を発動。
どんな展開になっても最後には勝利を掴もんとするオグリキャップに愚痴りつつも、そんなオグリキャップだからこそ倒しがいがあると『怪物』を倒さんとミルワカバは躍起になる。





しかし突如として、オグリキャップの領域が消失。
オグリキャップは差し切ることができず、あっさりとミルワカバは勝利してしまった。
実はこの時、オグリキャップのピークは過ぎており、彼女の領域も消失しつつある状態であった。
ミルワカバが求める『怪物』オグリキャップは、ようやく対峙した時には既にいなくなっていたのである。
まさかのオグリキャップの敗戦に観客は騒然。オグリキャップや北原も何が起こったのか分からない状況だったが、この結果に一番納得がいかなかったのは、勝利したミルワカバであった。

フザけんな…フザけんなよ…おい…
何やってんだよ!!?お前!!!
認められるワケないでしょう!!?こんな決着…あってたまるか!!!
なに負けてんだよ!?あんたオグリキャップだろ!?
こんな…こんなの違うッ…!!

こんなの芦毛の怪物じゃない!!!

オグリキャップは誰よりも強くなければいけない、誰よりも強い君以外は認めない*3
そんな感情を抱いていたミルワカバは、呆然とするオグリキャップの胸ぐらを掴んで激昂。
自身が勝ったにも関わらず勝利の無効を言い出し、それをブライトロックに止められることとなった。
なお、止める際にはアームロックをかけられた模様。それ以上いけない。
あとどんな空気でウイニングライブは行われたのだろうか…

その後、宝塚記念を勝利したことで多少注目されるようにはなったものの、それ以上にオグリキャップの敗北、そして脚部故障が報じられることに。
オグリキャップに勝っても尚、彼女が注目されることはなかったのである。
ブライトロック「ほらもぉ~ワカバがまたふくらんだ!!宝塚勝った奴の顔かこれが!?」

その後


そして夏を経て天皇賞秋で三度目の対戦。
今後はスーパークリークのみならずイナリワンまでもが直前に回避する事態となり、全ての注目がオグリキャップに一極集中する中での対戦となった。
そしてレースでは序盤からペースを上げてオグリキャップを威嚇、常にオグリキャップを意識しながらレースを行う。
しかし当のオグリキャップの領域が完全に消失し、そのままズルズルと下がっていく様を間近で見てしまう。
結果として4着とオグリキャップに再び先着することができたが、自分の戦いたかったオグリキャップはもういない現実を突き付けられ幻滅『もうどうだっていい』と投げやりになってしまう。
そしてそれが尾を引いたのか続くジャパンカップでは低迷するオグリより2着下の13着という大敗を喫してしまった。

倒すべき相手も何もかも失ってしまい、宙ぶらりんの状態となってしまったミルワカバ。
彼女が報われる日は果たして来るのだろうか?

余談

モチーフ馬

モチーフとなったのはおそらく、1990年宝塚記念勝ち馬の『オサイチジョージ』。
ミルワカバという名前も、オサイチジョージ号の父・ミルジョージ(イナリワン号の父)と母・サチノワカバを合体させたもの。
クラシック期から1990年序盤に重賞4勝をあげ、その勢いで安田記念2着を経て宝塚記念にてアメリカ遠征を予定していたオグリキャップに勝利し『怪物を撃った男』として名を残し、1989年クラシック世代の中で唯一古馬G1を制した
しかしその後勝利することはできず、最終的にオグリキャップ引退の翌年、1991年有馬記念でオグリと同世代のダイユウサク(1990年天皇賞(秋)とダイタクヘリオス勝利の1991年マイルCSでオサイチとも対戦)が勝利する影で8着となった後引退。
引退後種牡馬となるも、ミルリーフ系全般の日本での需要低迷やオサイチと同世代のアメリカからの輸入種牡馬の大活躍もあってかダイユウサクよりは種付け数は多かったが後継を残すこともできなかった。
そして最終的には1999年に用途変更がされた後に行方不明となってしまっている。

尚、作中での『カツラギエースの再来』という呼び声にも元ネタがあり
  • オサイチジョージの馬主と調教師は、カツラギエースと同じ野出長一氏と土門一美調教師。
  • オサイチジョージが金杯を制した時の鞍上は、カツラギエースの主戦騎手である西浦勝一ジョッキー。
  • ヤエノムテキに騎乗していた岡部幸雄騎手が宝塚記念でのオサイチジョージの走りについて『カツラギエースをやられてしまった』というコメントを残している。
と共通点が存在している。


谷間の世代

ミルワカバのクラシック世代は劇中で『谷間の世代』と呼ばれているが、現実の競馬でもオサイチジョージの89世代は牡馬クラシックの上位勢が故障・出来落ち*4で古馬戦線を満足に戦えなかったこと、そして上の世代も下の世代も歴史に名を遺す名馬が揃っていたことにより、一際影が薄い世代となってしまっている。
現時点において89世代から実名でのウマ娘の実装がされている競走馬が皆無な事からも察することはできるだろう。

とはいえ、89世代の全てが注目されてなかった訳ではなく
  • 武豊に初めての牝馬クラシックをプレゼントし、『ユタカの恋人』と称されたシャダイカグラ
  • そしてそのシャダイカグラの不幸な事故により、日本競馬史に残る大波乱を起こしたサンドピアリス
  • 牝馬にして南関東三冠を成し遂げた不世出の女傑ロジータ
  • 中央競馬の最高齢出走記録となる15歳まで現役を続けたミスタートウジン

と記録を残す競走馬は確かに存在している
だからこそ余計に牡馬クラシック勢の影が薄くなっている側面は確かにあるのだが…


追記・修正お願いします。

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最終更新:2025年08月24日 02:37

*1 モデルとなったのは1990年クラシック世代の競走馬、ホワイトストーンと考えられる

*2 モデルとなった馬は加えて産経大阪杯にも出走しており、スーパークリークに次ぐ2着となっている。

*3 奇しくもこのセリフが出た170Rが掲載されたヤングジャンプ50号には【推しの子】の最終話も掲載されていた。

*4 ダービー馬のウィナーズサークルと菊花賞馬のバンブービギンはクラシック終了後に骨折が発生し早期引退、皐月賞馬のドクタースパートは長い低迷期に入っていたが、ラストランとなったステイヤーズSにてレコード勝ちを収めて引退することができた。