折り合わぬ契約(巨人の星)

登録日:2017/12/25 (月) 00:14:19
更新日:2020/04/08 Wed 22:29:15NEW!
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何がクリスマスじゃあい!

ちくしょおおおおう!!


概要


アニメ版『巨人の星』92話。
タイトル通り、飛雄馬が契約更新の際に巨人代表に給料の倍増を要求するという内容が描かれている。
キレイな面だけではなく、汚さを感じさせるかもしれない部分も克明に描く「本格的人間ドラマ」を志向して制作された同作らしく、
選手と球団側が丁丁発止の年俸交渉を繰り広げる「銭闘」を題材にしたエピソードである。
だが、それだけではなく、アニメオリジナルとして「飛雄馬がクリスマスパーティを催す話」が展開される。
その内容が語り草となり『トリビアの泉〜素晴らしきムダ知識〜』を始めとする多くのバラエティ番組で紹介された事もあってか、妙な方向に知名度がある。
通称「一人クリスマス」

なお、ギャグ回扱いされがちではあるが、この時期の飛雄馬は「野球ロボット」と称されるアームストロング・オズマの登場により
「野球一筋に生きてきた自分は人間でなくロボットなのか」と精神的に追い詰められており、
この話もまた不器用な飛雄馬の悲哀が描かれているため一概にギャグ回とは呼べない。
ギャグはギャグでも「シリアスな笑い」といった所である。破壊力が凄まじいのは否定できないが


あらすじ


選手をも殺しかねない気迫で試合に挑むアームストロング・オズマ。
彼と出会ってから飛雄馬は自分もオズマと同じ野球ロボットなのではと思い悩むようになり、
遂には鏡に映ったオズマそっくりの自分を叩き割る悪夢まで見るようになる。

悪夢から目が覚めると、見舞いに来た伴忠太が現れた。
おどけた様子で飛雄馬を励ます伴。
そんな時、新聞で長嶋の契約更新の記事を見つける。
直後に伴からも花形満や左門豊作が給料に関して交渉を続けている話を聞く飛雄馬。

その後、巨人宿舎にたどり着いた飛雄馬たち。記者から質問攻めを受けるが
そんなに上がるとは思えないと奥ゆかしい返しをした。

この時は気にせず、特に給料の話は気にしていなかったように見えるが…。

「さすがは巨人の星! 巨人で野球が出来ればあとは何もいらんときた!」

野球が出来ればあとは何もいらん。
飛雄馬の顔色が一瞬変わり、オズマに嘲笑される幻を見る。

そして交渉の時。
巨人代表から伴が2割増しになり、飛雄馬の分が回ってきた。
大リーグボールなどの様々な功績もあり6割増しとなり、飛雄馬もそれを受ける。
が、直後にオズマが日本のプロ野球界に入りたい、ただし巨人以外のセリーグ球団でという話を聞き
突如、飛雄馬の顔色が変わり給料の倍増を要求する。

「代表! 気が変わりました! 6割アップでは飲めません! 10割! 給料を倍にしてもらわなければサインは出来ません、絶対に…!!」

その言葉にうろたえる伴と代表。
しかし飛雄馬は感情の赴くままに給料倍を譲ろうとしない。
結局、態度は保留。話を耳にした記者たちから新聞にこの事を大きく報道される有様であった。

そんな中、街中でのサンタの看板を見て突如アイデアがひらめく飛雄馬。
野球そっちのけでクリスマスパーティを催すため巨人宿舎の空き部屋を大掃除。
ノリノリで似顔絵(結構上手い)つきの招待ハガキを書いたりばかでかいケーキを注文していく中、
新聞記事を見ていた父・一徹と姉・明子は飛雄馬の迷走に呆れていた。

その様子にさすがに付き添っていた伴が忠告する。

「なぁ星。わしはな、お前が柄にもないクリスマスパーティをやろうと、花形や左門と仲良くしようとそんなことには口出ししとうない。
 しかし、しかしじゃ! 給料倍増を要求してからのお前は何か道を踏み外しているような気がするんじゃ!
 危ない道を、何か懸命に走っているようにな…なぁ星。お前以前の星に戻ってくれんか。
 巨人の星を目指しまっしぐらに突き進んでいったあの姿! あの姿無くしてお前の進む道がどこにあるんじゃ!?
 勝負に立ち向かった時の相手を殺してしまいかねないあの気迫はどこに行った!?
 野球以外に何もいらん!野球ロボットとして生きると誓った、あの星飛雄馬はどこへ行った…!?

「黙れ、伴…!!」

知らずに飛雄馬の神経を逆なでした伴に思わず飛雄馬が怒鳴る。

「く…くそう! 何がクリスマスじゃあい! ちくしょおおおおう!!

その場を走り去る伴。
夜6時の鐘が鳴る中、飛雄馬はパーティ会場へと帰る事にする。


…が、各々のライバルたちは飛雄馬の心境をつゆ知らず招待を無視してしまう。
むしろクリスマスに浮かれているように見えた飛雄馬の姿に失望している有様であった。

阪神選手「星がクリスマスの招待状?ハッハッハ、こいつは傑作だよ。あいつ、給料倍増を要求してから頭が少しおかしくなったんじゃないのか?
     それで花形くん、君は行くのか?」
花形「フン、クリスマスケーキを食べにどうしてわざわざ巨人宿舎まで行かなきゃならないんだい?
   野球一筋に生きる火の男、星飛雄馬。それ以外の星くんには興味が無いね。反吐が出る!

弟「なああんちゃん、星飛雄馬からクリスマスの招待状が来とったろう。今日ばい、行かんて良かと?」
左門「お前たちの方が先約じゃったけんのう」
弟「わーい! 星飛雄馬なんてやめとけやめとけー!」
左門(星くん、わしは君に借りがありますたい。君にその借りば返すために、わしの心は鬼になっている事ば、君は知らんとですか…!)


巨人宿舎。

伴、左門、花形、明子の名札が置かれた席には誰も来ていない。椅子には飛雄馬が一人だけで佇んでいた。

誰一人来ないまま、刻々と時間だけが過ぎていく中、先輩選手から飛雄馬宛に届いたハガキを手渡される。


左門「星くん、来年はこの左門、命ばかけて大リーグボールば打ちこんでみせますたい。パーティはその後でも遅くなか」

花形「メリークリスマス。そんな言葉は無用だ。君との間に交わされる言葉はこれのみ。『勝負』!」


「くそう…!」
毒づきながら名札を握りつぶす飛雄馬。
明子の名札を握ろうとするも寸前で飛雄馬宛に電報が届く。

ザンネン ユケヌ アキコ


明子が一徹の手前で遠慮して来なかったのだと悟る飛雄馬。

「結局、誰も来なかったという事か…!」
直後、飛雄馬の脳裏に妄想のオズマの罵倒が響く。

「フハハハハ。誰も来なかった。それは当たり前だ。クリスマスは人間同士でやるものだ。
 貴様がこれだけの支度をして待っている。しかし誰も来ない。それはみんなが貴様を野球ロボットだという事を知っているからだ!
 ロボットはクリスマスなどやらん!
 なんならどうだ、星? ロボットはロボット同士、俺とやらんか。メリークリスマス! ハッハッハッハ!!

「誰が! 誰が貴様なんかと!!」

妄想のオズマの嘲笑が何度も響く中、飛雄馬は感情の赴くままに部屋を荒らしていく。
食器を割り、テーブルをひっくり返し、ツリーを窓から放り投げた後、飛雄馬は泣きながら叫ぶ。

「貴様なんか! 貴様なんか日本に来たら!! 日本に来たら叩きだしてやる…叩きだしてやるぞー!!」

メチャクチャになったパーティ会場で飛雄馬は泣いた。ただただ泣いた。
「ちくしょう…俺は人間だ…人間なんだぞ…! ちくしょう…!」


外では伴が宿舎の様子を遠くから見ていた。

「大リーグボールの無敵ぶりに野球一途の心を失い、金を欲しくなる、甘ったれた青春を楽しみたくなる。
 星よ、わしは貴様がそんな奴じゃないことをよう知っとる。しかし、何やら星の心に新しい嵐が吹き始めている。
 お前が一人で苦しんでいたんじゃわからん。俺に言え。貴様が苦しんでいる一千万分の一でも俺が背負ってやる…」

飛雄馬の苦しみを分かち合えない事に伴もまた、涙を流していた…。


余談

  • 飛雄馬を終始苦しめるような言動を残したオズマだが、この回のオズマはあくまでも飛雄馬の妄想に過ぎないという点を忘れてはならない。
    後に飛雄馬はオズマと紆余曲折の末に和解し良い親友となるものの、やがてオズマは悲劇的な形で物語から退場してしまうことになる。
    • ちなみにこの退場回もアニメオリジナルであり、原作でのオズマは大リーグボール2号に敗退し帰国した後そのままフェードアウトしてしまっている。

  • この回の本放送日は1969年12月27日と、ちょうどクリスマスの時期であった。ちなみに次回は年明けと現実の時間軸に合わせている。

  • この回で凄まじい乱心ぶりを見せてくれた飛雄馬だが、その後も迷走は続き93話にてアイドルグループ「オーロラ三人娘」のメンバー・橘ルミと交際し始めるが、結局程なくして別れてしまう事となる。
    • …というか、飛雄馬のメンタリティは総じて不安定の傾向があり、そもそも大リーグボール1号が生まれるに至った経緯も「球質が軽い」という弱点をカバーするためのものであったが、
      「速球投手としてやっていけるのでは」と天狗になりアドバイスを送った先輩選手を呆れさせた挙句、結局左門に大敗して完全な虚脱状態に陥っていた事がある。
      この回の後にも、両想いの仲となる日高美奈が病に侵されている事を知るや否や美奈の傍にいたいがために練習を怠けた挙句、息絶えた美奈を見た直後、
      ショックのあまり木に何度も頭を打ち付け崖から転がり落ちるなど(気持ちは解らんでもないが)この回に負けず劣らずの強烈な奇行を見せた。さらに、大リーグボール2号を攻略せんとするライバル選手たちの多くの策に動揺する姿を多く見せているなど、面倒くさい言動は枚挙に暇がない。
      飛雄馬の声を務めた古谷徹氏のもう片方の代表作主人公と「思い悩み成長していく」という点が妙なところで一致しているのも興味深い…かもしれない。

  • ちなみにこの回で飛雄馬がハガキを書いている場面には筆先とハガキを映したところのみ実写映像が使われているが、別にスケジュールがヤバかったとか低予算だったとかではなく、当時のアニメではそこそこ見られた手法であり、『海のトリトン』のEDや『超電磁ロボ コン・バトラーV』のヨーヨーの場面でも実写が使われている。

  • 上述の通り、左門や花形、明子に招待状を送った飛雄馬だが「そもそも巨人宿舎にライバル球団の選手や身内を招待する行為が野球以前に社会人として非常識ではないか。これでは野球ロボット呼ばわりも無理はない」という視聴者からの厳しい指摘もある。

  • 空想科学読本6.5』によれば、今回のパーティーには(飛馬が破壊した寮の備品の弁償も含めて)現代の価格に換算すると100万円を超える予算がかかっている様子。
    • 『だが、ここまでクリスマスに燃える男のことを、誰も野球ロボットなどとは呼ぶまい。明日から人は、キミをこう呼ぶだろう。』
      『「完全無欠のクリスマスロボット」と!』

  • 漫画『烈!!!伊達先パイ』では主人公のライバルである真田ゆきぢ君が同様の失敗をやらかし、部下のSASUKEから「星飛雄馬みたいッスね」と突っ込まれている。

  • 2012年12月初頭、ニコニコ生放送でこのエピソードが12月24日の23時から上映会が行われると発表された。
    まさかの公式による上映会開催に、クリスマスに予定が無い多くの人々が期待を胸に膨らませたが、
    開始予定の23時になっても画面は暗転状態で上映会が始まることはなく、戸惑う視聴者をよそに上映会はわずか10分で終了した。
    運営の発表によればトラブルの原因は機材の動作不良との事である。その後、改めて25時から上映会は行われたが、
    運営の体たらくに落胆してニコニコ及びPCから離れていた人たちは上映会が再開していた事を知る事ができず、結局見る事はできなかったという訳である。
    • ニコニコ運営『結局誰も見なかったという事か!

  • YouTubeのTMSアニメ55周年公式チャンネルでの本話の配信では
    「🎄伝説のクリボッチ回😭【公式】巨人の星 第92話「折り合わぬ契約」"THE STAR OF THE GIANTS" EP92(1968)」
    という身もふたもないタイトルを付けられていた。



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