地獄のタクシー(世にも奇妙な物語)

登録日:2020/03/29 (日) 22:42:16
更新日:2020/04/19 Sun 19:29:39
所要時間:約 7 分で読めます




「神は死んだ」

これは哲学者ニーチェの言葉です。
神は死んだ。もしそうだとして悪しきものが神によって裁かれないとするならば、一体誰が裁くのでしょうか?


霧が出てきました。
こんな夜は奇妙な世界の扉が開いてやってくるはずです。
心悪しき者を悔い改めさせる者が…

地獄のタクシーは世にも妙な物語のエピソードの1つ。放送は1995年の秋の特別編。

全体的に「奇妙」よりも「洋画ホラー」感強いエピソードだが、それ故に「『世にも』で怖い話と言えば」の筆頭に上がる作品である。

【登場人物】
  • 豪林修
演 - 佐野史郎

とある中央病院の院長。診察・治療と並行して新薬の実験・開発も行うなど一見有能なようだが…

【ストーリー】

「貴様はクビだ!」

開口一番部下の医師に怒る豪林。治療で担当する車いすの老婆の足に回復の傾向が診られたと説得するも「誰がそんな指示を出した?私は足の切断手術をしろと行ったはずだぞ。」と聞かず。「たまたま回復の傾向を見せただけ」と一蹴し「善は急げだ」と嫌がる老婆に対し部下に切断手術を命じる。
一方、隣の部屋ではマウスを大量に飼い新薬の投与実験中。濃度を増やすよう指示するが「これ以上上げたらマウスが死ぬ恐れが…」と心配する助手に対し「やってみんことにはわからんだろ。どうせネズミの命だ。」と強行。
そんな中、看護婦が男の子を連れてやってくる。どうやらその子が飼っていたペットのネズミが逃げ出したらしい。「なんでそんなくだらんことを」と無視しようとするが、手に取ったマウスに男の子が気づく。どうやら耳に白い模様があるのが特徴らしい。が、「似たようなネズミはいっぱいいる」と取り返そうとする男の子を振り払い「大体病院でペットを飼うのは禁止のはずだ。それにこのネズミは新薬開発に役立とうとしている。医学進歩のために死ねるならネズミも本望だ。」と助手に命じて濃度を上げた新薬を注射。恨めしそうに見る男の子を一瞥する中、薬で即死したネズミを男の子に放り投げて返却。さらにまだ縋る老婆の担当医に再び「貴様はクビだ!」と宣告する。

その帰り道。
「いいかお前たち。『医は仁なり』なんてのはあれは嘘っぱちだぞ。そんなこと信じてたら病院経営はできない。『医は金なり』だ。バカな患者が多いがうまくやれば儲けも大きい。」
媚びへつらう医師たちに高説を垂れる豪林。儲けも安泰で開発中の新薬の認可も近く、臨床試験も上々。副作用を心配する部下の不安も「副作用が出るケースはごく稀だ」と一蹴。新薬で莫大な金と世界的名声を手に入れるのは最早決まったも同然であり、万歳三唱で浮かれる部下を後目にタクシーを呼ぶが、表通りに出ないと捕まらないという部下の指摘に早くタクシーを捕まえるように命じる。

「どいつもこいつも全然使えねぇ…」
そう苛立つ中で、いきなり周囲に霧が立ち込める…



霧の中から現れたのは古びたイエローキャブ(アメリカのタクシー)。
部下を呼び戻そうとするが戻って来ず、仕方なく1人で乗り込むことに。



タクシーが発進すると車内で一服。「禁煙車です」と運転手に注意されるが「しばらくの間だ。我慢しろ。」と構わず吸い続けるが…


「お客様…お医者さんですか?」

職業を言い当てられた事に驚く豪林だが、「私から苦労がにじみ出てるか?」と文句ばかりを言う患者の愚痴をこぼすが、運転手は否定し「『臭い』です」と言ったところで急ハンドルを切り豪林は体勢を崩す。どうやら車の前を犬が横切ろうとしたらしい。だが豪林は「犬なんか轢き殺せばいい」と言い放つ。その様子をバックミラー越しに見る運転手。
改めて『臭い』の話をするが、豪林からは『死の臭い』がするという…

タクシーが進む中、『死の臭い』について語る豪林。豪林の病院では重病患者も多く、新しい治療を試みて失敗するケースも多い。
「まるで実験動物ですね」と返す運転手に「まあ私にとっては患者もネズミも同じ実験動物だ。1人の患者、1匹のネズミの命で何万人もの命が救えるかもしれない。それが医学の進歩というものだ。違うかね?」とまくし立てる豪林に相づちを打つ運転手。「医者は現代の神なんだ。多少の事は許される。」とまで言い放つ豪林に


「神ですか…何か大切なことをお忘れでは?」


その言葉にジャケットを探るが、どうやら財布を忘れてしまったようだ。急いで病院に引き返すよう指示。病院につき、タクシーに待つよう指示して深夜の病院に入るが…


財布…?忘れ物はそんなもんではないでしょう…




病院に入ると宿直のはずの看護師もおらず無人の状態。「サボってる」とイライラする中で電話が鳴り響く。電話を取ると

「痛い…痛い…」

との声が。イタズラ電話だと思いすぐに切るがイライラは募るばかり。

マウスを飼っている実験室に戻るとケースの中のマウスが全て脱走していた。「誰かが逃がした」と思い、あの「クソガキ」こと男の子が逃がしたと考えるが、背後を振り返ると扉の向こうから足音が…

扉を開けても誰もおらず「何だ気のせいか…」と振り返るとそこには青白い顔をした男が…
イライラから一変、凍り付き「どこから来た…」と問う豪林に
「痛いです…痛くて冷たいんです…」と言う男に宿直の医師に診てもらうよう看護師を呼ぶが、
「いないんです…誰も…院長先生以外は…先生も看護婦さんも…」
「バカな」と信じない豪林に男はさらに続ける。

「心臓が…鼓動を感じないんです…」

そうやって入院着をめくった男の身体には向こうを見渡せるほどぽっかりと開いた左胸が…

ようやく男の正体を思い出した豪林。それは2年前に死んだはずの男だった。
「先生…ください…代わりに先生の心臓を…」

ついに恐怖で院長室を飛び出した豪林。しかし、廊下にはこれまで診て来た患者たちでいっぱいだった…


「先生…私の腕を…返して…返して…」
「腎臓を返して…返して…」
「脚…脚…」


「ベストは尽くした…」「手遅れだったんだよ…」「手術ミスじゃない…勝ちもあれば負けもあるんだ…」そんな言い訳をする豪林に患者たちの手が伸びた所で背後の扉から病院内を逃げ回る。
「俺が何をしたんだ…何も悪いことはしてないぞ…必要だったんだ!医学の進歩のためには多少の犠牲はつきもの…違う…違うか!?」
突き当りの手術室に駆け込み助けを求めるが、その瞬間後頭部を殴られ気絶してしまう。




手術室のライトで目を覚ました豪林。だが彼の身体は手術台にロープに括りつけられていた。抵抗する豪林に対し、執刀医が「新薬実験の為の患部摘出手術」の開始を宣言。暴れる豪林に対しもう1人の執刀医が「チューチューとさっきからうるさい『ネズミ』だ」と言い放つ。
麻酔を持ってきた助手に対し執刀医は「ネズミに麻酔など贅沢だ」と拒否。まずは「足からだ」と巨大チェーンソーを取り出す。
抵抗する豪林に執刀医は「ネズミ1匹の命で何万人救われるかもしれない」「医学進歩の為ならネズミの命なんで安いものだ。」とチェンソーで右足を切り落とす。

「先生、患部は左足じゃ…」
「そうだった。しかし、新しい治療を試みれば時には失敗だってある。」
「医者は神だ。多少のことは許される。」

自らの発言とまさしく同じ言葉を発する執刀医たち。彼らの頭は自分達が実験に使っていたネズミの形をしていた…

そして今度は左足を…







絶叫しうなされる豪林。が、気づくと元のタクシーにいた。「夢か…」と気分を落ち着ける豪林に対し、「夢とおっしゃいましたか…」と返す運転手。
「そうだ。恐ろしい夢を見た…俺の足がな…」と言ったところで手にベチャとした感触が伝わる。

その手にはべっとりと血が、そして豪林の足は…


「夢でなんかあるものか…お前は医者でありながら命を粗末にした…その報いを受ける時だ。」


「どこへ連れていくだ…」と慄く豪林に運転手は宣告する。



行く先は…地獄だ。


そう笑いながら振り返る運転手も赤黒い包帯に塗れた男だった…


絶叫しながら「下してくれ!」と懇願する豪林。だが、外にいる部下はタクシーに気づかず車外から叫ぶ声も聞こえない。
尚も助けを求めながら豪林を載せたタクシーは再び霧の中へと消えていった…


1人の悪しき男が裁かれます。
男は奇妙な世界の囚人となったのです。
裁きは永遠に続くでしょう。
そこは一度連れ込まれたなら二度と逃げられない世界なのですから…

【余談】
放送後、漫画家の釋英勝氏が「当エピソードが自身の作品を無許可で翻案したものである」として放送局のフジテレビ・制作局の共同テレビ・脚本家に対し「再放送及びソフト化をしないという謝罪広告」及び慰謝料の損害賠償請求訴訟を起こしている。が、裁判の結果は棄却(世にも側の勝訴)となった。
とはいえ、これらが影響したか世にものエピソードの中でも再放送回数は少ないエピソードとなっている。

追記・修正はマウスの命も大切にできる方がお願いします。

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