母也堂(Q.E.D. 証明終了)

登録日:2020/03/31 (火) 06:54:33
更新日:2020/03/31 Tue 21:08:04
所要時間:約 13 分で読めます






ところで…『母也堂』という話をご存知ですか?

それがなに?

なんと言うか…いつの時代も娘を思う母の気持ちは強く…
そして油断ならぬものだと思ってね



「母也堂」とは、Q.E.D. 証明終了のエピソードの一つ。単行本第34巻に収録。同時収録作は「災厄の男の結婚」。
以下、ネタバレにご注意ください。



【ストーリー】
高飛び込みの大会に出場する中学時代の同級生・白河涼を応援するために級友たちと岩手県遠野市へとやって来た可奈(と応援の頭数に連れて来られた燈馬)。
涼は両親の離婚後母方に引き取られ、現在は資産家の祖母・白河波里と共に遠野市に住んでいた。
波里は不動産会社の会長を務めており、ちょうどその日も支社長の粟金望が融資を頼みに来ていた所だった。
だがそこへやって来た警察により、一同は涼の父・深津慎司が不審な死を遂げていた事を知る。
彼は元妻で涼の母・白河志乃から借りた車で遠野まで来ていたそうなのだが、何者かに射殺されたらしいのだ。
また遠野の地には、娘を想うあまり過ちを犯してしまった母にまつわる伝説『母也堂』が語られている。
その話を語った粟金もまた、後日謎の死を迎えてしまう。
彼らの死は偶然なのか、それとも…。





【事件関係者】
じゃあ私
母さんがいなくてもお金のある所にいれば幸せな奴なの?
あんなひどいこと言わないでほしかった

  • 白河涼(しらかわ りょう)
可奈の中学時代の同級生。
中学までは東京育ちだが現在は遠野の高校に通う。
今どきの高校生らしく田舎の遠野よりも東京の方が今でも好き。
水泳の高飛び込みの県大会を控えており、全国大会に出場できれば堂々と東京で遊べる大義名分が出来ると張り切っていた。
過去の事もあってか慎司の死を警察に知らされても全く感情が動かなかったが、その一方で「自分がいない方が涼は幸せだ」という志乃の一言に傷つき可奈の前でのみ涙を流す。
しかし精神はかなり強く翌日の県大会では無事に優勝を果たした。
粟金の事は胡散臭く思っていたようだが、それでも彼が飛び込みで溺れた時には可奈と共に即座に救助に向かう。
だがその彼が救助の甲斐なく死亡してしまった事が堪えたのか、事情聴取後は1人だけ先に帰ってしまった。


なるほど
3年前経済危機を予測できなかった人間が
3年後の景気回復を保証するわけね

  • 白河波里(しらかわ はり)
涼の祖母。
東京にも土地を持つ白河不動産の会長を務める資産家で、遠野でも有力者としてその名が知られる。
涼とは逆に遠野の自然が好きで物があふれる東京は嫌い。
粟金からの融資の依頼をけんもほろろに断っていたが、一方で大会で優勝した涼に東京への餞別に大金(具体的には不明だが涼が驚くほどの金額)を渡すなど、
成果を出した者には相応の報酬を与える事を惜しまない性格。
慎司来訪時は母屋を挟んで玄関とは反対にある離れにいたために彼が来た事に気づいていなかったらしく、むしろ自分に会わせずに追い返してくれた幸子を称賛した。


実は一昨日慎司さん来られまして
そのとき涼さんは部活に
奥様は離れにいらっしゃったのですが取り次ぐ必要もないと思いまして

  • 大貫幸子(おおぬき さちこ)
白河家の家政婦。恰幅の良いおばさん。
慎司についての悪評は前々から聞かされていたらしく、慎司が波里に会いに来た時は留守だと嘘をついて追い返した。
また波里の耳を汚す事はないと考え、県警が来るまで慎司の来訪を話していなかった。


…お金を得るには対価が必要ということですな
やりましょう!会社のためだ!!

  • 粟金望(あわかね のぞむ)
白河不動産の東京支社長。
経済危機により再開発の資金が不足してしまったため会長である波里に融資を頼みに来ていた。
表面的には平身低頭だが、裏では波里を『ババァ』、志乃と涼を『マヌケ共』と呼ぶなど非常に口が悪い。
県大会を終えて帰宅中の涼と一同の前に現れ、何故か『母也堂』の民話の存在を教える。
その後の白河家の祝賀会でもご相伴に預かるが、涼が自分と違って波里から大金を貰えた事に嫌味をぶつける。
しかしその後の成り行きで波里から「一番高い飛び込み台から飛び降りれたら1億円融資する」と条件を出され、会社のためならばと快諾する。

飛び込み当日はビビッて全く動けてなかったが、30分以上経ってからようやく飛び降りる(というか落ちる)ことに成功する。
しかしその直後、飛び込んだプールで心臓マヒを起こし不幸にも死亡してしまう。
周囲が既に諦めムードで止める中、自分の意志で飛び降りたため事件性はないと思われるが…
余談だが、(誰の言葉かは不明だが)止めようとする周囲の台詞の中の一つ「10円あげるから降りてきなよ」は地味に酷くないだろうか。


親権をタテに涼を取り戻す!
あいつのためならババァも金を出すさ!

  • 深津慎司(ふかつ しんじ)
涼の父で波里の元娘婿。
借金するは浮気するはの最低な父親。3千万円もの借金で首が回らない状態だったらしい。
涼を引き取れば養育費名目で波里に金をせびる事ができると考えたらしく、元妻の志乃の元に現れ無理やり車を借りて東京から遠野まで来ていた。
涼を巻き込みたくなくて止めようとする志乃を殴ってまでキーを持って行くなどDVの疑惑もありそうである。

しかし燈馬たちがやって来る2日前、遠野の国道沿いで車中で死体となって発見される。
当初は電柱にぶつかっての交通事故死と思われたがその後の県警の調べで、拳銃で腹を撃たれた事による失血死が直接の死因だと判明する。
車のドアは全てロックがかかった状態で凶器の拳銃は助手席に置かれていた。
自殺ならば即死できるよう頭を撃つはずなので自分で撃った可能性は低いと考えられる。
また同じく2日前には白河家に来たようだがその時波里は離れに、涼は部活に行っていたため幸子により追い返されていた。


あの子をそっとしといて!
私達が関わらない方があの子は幸せなのよ!!

  • 白河志乃(しらかわ しの)
涼の母で波里の娘。
かつて東京に住んでいた際に慎司と出会い駆け落ち同然で波里の元を去っていた。
慎司と離婚してからは涼と2人で暮らしていたようだが、自分の収入では娘を高校に通わせられないため波里の元に涼を預けた。
しかし家出した過去の引け目もあり自分も実家に戻るという選択肢はないらしく、現在は東京で働きながら一人暮らしをしている。
慎司死亡の報告に来た県警に同行して実家を訪れるが、その後は仕事があると言って泊まる事無くそのまま帰京した。
頑固な娘だと呆れる波里に対しても「涼は私が守る」と言い切って行った。
翌日の県大会も会場まで来ていたが、この時は陰で密かに応援するだけに留まっている。
さらにその後、粟金の飛び込みの日にも県営プールに来ていた所を警備員に目撃されるが、声をかけられると何故か逃げ出してしまった。

慎司死亡時に助手席に座っていた可能性が高い事から県警からは最有力容疑者とみなされている。

  • 鬼の面の人物
粟金死亡後の事情聴取から帰る一同の前に現れた、鬼の面を被り赤いちゃんちゃんこを纏った謎の人物。
持っていた鎌を波里に向けた後、自分の喉を掻っ切るかのような仕草をするという、威嚇とも犯行予告とも取れる行動を取りそのまま逃走する。
涼を取り戻すために志乃が波里を威嚇した、というように見えなくもないが…?


応援団は人数多いほど効果があるの!
「枯れ木で山は大賑わい」って言うでしょ!
言いません!*1

  • 燈馬想
この漫画の主人公兼ホームズ役。
応援団の頭数稼ぎのためにクラスメイト達と共に遠野へとやって来た。
当然、涼とは初対面のため可奈や級友たちが再会に沸き立つ中で申し訳なさそうに自己紹介していた。

  • 水原可奈
この漫画のヒロイン兼ワトソン役。
父を亡くし意気消沈しているかもしれない涼を気遣うが、彼女からは母に避けられていた事の方が悲しかったと心情を吐露される。
また祝賀会では「たかが水に飛び込んだくらいで…」と空気に水を差す粟金に「じゃああんたに出来んの!?」と食って掛かっていた。

  • 岩手県警の面々
国道沿いの死体の身元が波里の元娘婿の慎司だと判明し、拳銃の管理上の問題もあり、慎司死亡の報告のため志乃を連れて白河家を訪れた。
自殺或いは波里、幸子、粟金のいずれかによる他殺の線は低いと考えており、
慎司と共に車に乗っていた可能性が高いであろう志乃を最有力容疑者と見ている。
また彼女が粟金死亡時にもプールにいた上に逃げ出した事もあり、事情を聞くために彼女を連れ再度白河家へと訪れた。





【キーワード】
  • 拳銃
慎司の死体と共に車内の助手席にあった拳銃は、元は波里の父親が所有していた旧日本軍時代の物らしい。
ただ幸子は既に壊れた物だと思っていたようで、普段は家の外にある蔵(それも鍵をかけてない)に閉まっていた。
弾は一発だけしか発射されていないが、車体を貫通した形跡はないため車中から発射されたものと思われる。

  • ロープが結ばれた石
県営プールで粟金が飛び込んだ時、プールの底にはロープが結び付けられた大きな石が沈んでいた。
ただし粟金の身体に外傷は見られないため、この石にぶつかった訳ではないようだ。

  • 母也堂
遠野に伝わる実在の伝承の一つ。『母也明神』の名でも知られる。
ある村に巫女と娘とその夫がいた。娘夫婦は仲がよかったものの巫女は娘への愛情ゆえに娘婿を嫌っていた。
そんな折に長雨で村の貯水池の堰が破れた時、巫女は娘婿を葬る計略を立てる。
村人たちには神のお告げと称して『堰の側を通る白衣白馬の者を人柱として池に沈めよ』と言い、一方娘婿には白衣白馬の姿で隣村までお使いに行くよう指示した。
村人に捕まった娘婿は素直に人柱に応じたものの、夫を愛する娘は彼と共に白馬に乗り一緒に池に沈んでいった。
その直後流れてきた大岩でお告げどおりに堰は塞がれたが、娘を失った巫女は嘆き悲しんで自分もまた池に身を投げてしまったそうだ。
岩手県遠野市松崎町には巫女の屋敷跡地に建てられたという祠が今も鎮座している。

粟金は大会後、何故かこの話を涼へと伝えている。





これは殺人ではなく"選択"なんです





以上……証明終了です。

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