運命のきずな!ウラヌスの遠い日(セーラームーン)

登録日:2020/07/05 (日) 21:02:27
更新日:2020/07/06 Mon 12:49:29
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「運命のきずな!ウラヌスの遠い日」とは、テレビアニメ『美少女戦士セーラームーンS』の第17話(シリーズ通算106話)のサブタイトル。
1994年9月3日に放送。


脚本:榎戸洋司
演出:五十嵐卓哉
作画監督:爲我井克美
美術:田尻健一



今回、初めて謎に包まれていた戦士である天王はるか/セーラーウラヌスと海王みちる/セーラーネプチューンの過去が明らかになる。
全編を通して天王はるかのモノローグで構成されており、詩的な表現が特徴的な回。
ややちびっ子には難解で雰囲気も大人っぽいのが特徴であり、当時の大人の視聴者には圧倒的な人気を誇った回でもある。
この回によって、はるかとみちるのコンビは「百合界のカリスマ」と呼ばれる決定打となった。






【あらすじ】





あの頃、僕は風になりたかったんだ―――



トンネルの中を全速力で走っていくオートバイに乗っている天王はるか。ハンドルを切り、カーブを越えながらトンネルを抜けていく。



ただ風のようになりたかった。重力の支配を全て振り切り、空の彼方へと突き抜けていく、そんな自分になりたかった―――

彼女のモノローグと共に、風に舞う妖精のようなはるかの絵が映し出される。



どこかの学校らしき建物の見える丘に、はるかは立っている。



思えば、あの頃の僕は、ただ自分の運命から逃れようともがいていた。
いつだって、戦いの中で勝ち取るものは、新しい自分だった。

ふと見上げると、風が吹きすさび、雲が太陽を覆おうとしている。不穏な顔で俯くはるか。




デス・バスターズの研究室。
薄暗い中で教授がランニングマシンで全力で走っている。



適度な運動は、脳に良い刺激を与える。おお…閃きそうだ…!
仕上げと行こうか…おおおおおっ!!来た来たぁあああああ!!ラストスパァァァト!!


直後、ウィッチーズ5ユージアルのデスクに電話。
走りながら電話をかけた教授は、今回のターゲットを陸上選手にするよう指示。ユージアルがデータベースで調べた結果、選ばれたのは高校生ハードル選手のエルザ・グレイだった。


よろしい。では早速、それに相応しいダイモーンを用意しよう。
フハハハハハ、ハーッハッハッハッハッハァ!!!ゲホッ、ウェッヘッヘッヘェ!!

慣れない運動で咳き込む教授は、専用レンジでハードルにダイモーンの卵を植え付ける。


ハードラーーー!!


いつものようにワゴン車に乗って出撃するユージアル。今日の出口は動物園のゾウの小屋からだ。園内を全力疾走するワゴン車になぜ誰も突っ込まないのだろうか


都内の高校・白樺高校。
そこに、うさぎ達セーラー戦士5人の姿があった。
今日は来年の高校受験に備え、学校見学に来たのである。
バレー部にまた入ることを夢見る美奈子を「きっと受かるわよ」と応援するレイとうさぎ。が、直後にうさぎに「美奈子ちゃんはね」と嫌味を言うレイ。
それに食ってかかるうさぎだったが、レイにいいようにかわされる。
文句を言ううさぎをフォローする亜美



うさぎちゃん、大丈夫よ。どんな学校でも、試験に受かれば入学できるのよ。


…フォローになってなかった。

口論するうさぎとレイだったが、一同はそこで校庭を走る一人の女子生徒を見つける。
彼女はエルザ・グレイ。短距離とハードルで新記録を保持している有名人だ。

5人に気付いたエルザはそのまま談話をすることに。途中、美奈子とまことのお尻を触って筋肉を観察し、「二人とも陸上向きよ」と勧誘したりもする変わった面も見せるのだった。
休みも練習に精を出すことを褒められるエルザだが、ふと心中を明かす。



走るのは好きだったから…でも、どうしても勝てなかった子がいてね。
彼女はいつも風のように私の横を通り過ぎていったわ。


その選手はすぐに陸上を辞めてしまい、結局彼女に二度と勝つことはなかったという。今もなお、エルザはその選手の背中を追い続けているのだ。

しばしの歓談の後、別れる戦士達とエルザ。しかし、道路にはユージアルの車が、そして校内の木の上にははるかの姿があるのだった。


学校を去りながら「やっぱり頑張って勉強しなきゃね」と呟くうさぎに感心した一同は彼女を励ます。
そこへエルザの悲鳴が。
ユージアルにピュアな心捕獲の銃で狙われたのだ。持ち前の瞬発力で攻撃をかわすエルザに感心するユージアル。
そこへ響く「待ちなさい!」の声。
セーラームーン率いるセーラー戦士達5人だ。



健全な高校生活を脅かす悪い子ちゃんは許しません!

愛と正義の、セーラーチームが…

月に代わって…

おしおきよ!


いつもの邪魔に呆れつつも、ユージアルは「出でよ、ダイモーン!」とスターターピストルを掲げる。
ダイモーンのトランクが開けられ、スターターの発砲と共に勢いよく飛び出すダイモーン・ハードラー

陸上選手とスパイクを模したダイモーンに邪魔者の始末を命令するユージアル。
まずはヴィーナスがヴィーナス・ラヴミー・チェーンを放つが、ハードラーはそれを軽々と飛び越える。さらにハードラーは「ハードライン!」と実体化した白ラインで5戦士を縛り上げた。

その様子を陰で観察していたはるかは、みちるに場所とターゲットがエルザであることを伝える。
逃げ出したエルザを、ユージアルは容赦なく銃で撃ち抜き、彼女のピュアな心の結晶が摘出されてしまった。



その様子を複雑そうに見つめるはるか。
実はエルザははるかとみちるの共通の知り合いで、はるかにみちるを紹介した人間なのだった。



…それは彼女がセーラーウラヌスとして覚醒する前のこと。
はるかはいつも夢見ていた。「沈黙」が世界を支配し、やがて破滅へと導いていく様を。
そこへ響く、一人の戦士の声。



沈黙が迫ってくる。早くメシアを探さなきゃ。
それが出来るのは、私と、あなた。



気付いたはるかは、陸上競技場に立っていた。中学女子の短距離走の大会だ。ライバルのエルザ・グレイが「負けないわよ」と声をかけてくる。
だが、はるかは信じられない速さで周囲の選手から距離を伸ばしていき、首位でゴールする。




自分の運命から、ただ逃れたいと思っていたあの頃、どんなスポーツをやっても、僕に敵う者などいなかった。
陸上競技もそう。ただ退屈しのぎでやっていただけだ。
結局僕の興味を最後まで繋ぎ留めていたのはモータースポーツだけだ。その頃の僕は、サーキットだけが全てだった。

あの時、海王みちるに逢わなければ……。




試合が終わり、はるかはエルザに声をかけられる。曰く、「あなたに紹介したい人がいる」と。
その少女―――海王みちるは、絵画やバイオリンに秀でた天才で、はるかに興味を持っているという。



あなた汗ひとつかいていないのね。かなり力を抑えているんじゃなくって?

どういうこと?

風の騒ぐ音が聞こえるんじゃない?


はるかは確信する。彼女こそが夢に出てきた戦士であることを。そして彼女もまた、自分の正体を知っていると。
だがそれを彼女は認めたくなかった。認めてしまえば、全てが変わってしまうと予感していたから。

つっけんどんな態度をとるはるかに、みちるは「絵のモデルになってくださらない?」と頼む。だが「パース。そういうの好きじゃないんだ」と断るのだった。


客船上のディナーパーティーでバイオリンの演奏をするみちる。客席にはタキシード姿のはるかの姿もあった。
観客がみちるの噂話をしている。どうやら、「人嫌いであまり友達を作らない」のだという。
客席を去るはるかを、寂しそうに見つめるみちる。

船の階段に入ったはるかは、街が大津波に飲み込まれる様を描いた油絵を見つける。
そこで「お気に召したかしら?」とみちるの声。彼女ははるかのことも天才レーサーであると知っていた。はるかもまた、直感でその絵をみちるが描いたことに気付く。


あなたって有名よね。私の学校にも、あなたのフリークがたくさんいるわ。
その子、女の子のくせに、あなたの車で海岸をドライブしてみたいんですって。

ふ、世界の終末か。虫一匹殺せないようなお嬢様が、よくこんな空想画を描けるもんだ。

空想じゃないわ。私には、それがはっきり見えるの。あなたと同じようにね。


それを聞き、みちるを睨みつけたはるかははっきりと言い放つ。


馬鹿らしい。僕は日本初のジュニアレーサー、天王はるかさ。前世の宿命も世界の終末も、僕には関係ない!
誰かがやらなければならないなら、君がやればいいさ!僕のことを勝手に調べるのはやめてもらいたいな…!


だがみちるは必死に言葉を振り絞る。


勝手なことばかり…私だって御免だわ。私には、バイオリニストになるって夢があるのよ。
世界を破滅から救うなんて馬鹿馬鹿しいこと、やってられないわ!


…結局二人は、そのまま喧嘩別れすることになる。



後日、レースに出場するためにはるかはサーキット場にいた。
そこで彼女は、ピットで呻き苦しんでいる声を聞き、気になって覗き込むと、学生らしき一人の少年が「助けて…」と苦しんでいた。
介抱しようとすると、突然少年が絶叫を上げ、みるみるうちに肉塊のような巨大な怪物に変身したのである。
咄嗟に鉄パイプで攻撃しようとしたはるかだが、元の少年の姿がフラッシュバックして躊躇してしまい、吹き飛ばされてしまう。
たじろぐはるかに攻撃を仕掛けようとする怪物。すると両者の間に眩い光が放たれる。

光はやがて、一本のスティックに変化した。恐る恐るそれに手を伸ばそうとするはるか。
すると「駄目よ!」という声がした。…海王みちるだ。


それを手にしてはいけないわ。一度手にしたら、もう二度と、普通の生活に戻れない!


そしてみちるは、懐から同じようなスティックを取り出し、大きく掲げる。
すると彼女は、はるかの夢に見た戦士―――セーラーネプチューンへと変身した。
ネプチューンは怪物に容赦ない一撃を加える。棚の下敷きになり怪物は動けなくなった。

だがはるかは「こいつはさっきまで人間だったんだぞ」と庇う。



君は平気なのか?人殺しなんだぞ!

沈黙が迫ってくる。こうしなければ、さらに多くの犠牲者が出るわ!

だから手段を選ばないというのか?

そうよ。私は手段を選ばない。


すると怪物が起き上がり、はるかに襲い掛かろうとする。だが、ネプチューンは彼女を身を挺して庇い傷つくのだった。
深い傷を負いながらも、ディープ・サブマージを放つネプチューン。
その一撃で怪物は倒れ、元の少年の姿に戻った。

はるかに介抱されるネプチューンは、「殺していたかもしれない…ううん、次はきっと殺すわ」とごちる。


平気なわけじゃないのよ。でも、私は戦士だから。選んじゃった…。

「だったらどうして僕を庇ったりするんだ」とはるかは問う。手を怪我したらバイオリニストになれないのに…。
すると初めて本音を口にするネプチューン―――みちる。



私は、あなたがもう一人の戦士だからあなたのことを調べたんじゃないの。
あなたがその人と分かるずっと前からよ…。
あなたが初めてレースに出た時に、近くで見ていたわ。
一度でいいからあなたの車で海辺を走ってみたかったな……。
あなたは誰にも甘えられない人。そしていつも自分の気持ちに素直な人。

僕は素直なんかじゃない。逃げてばかりだ。

私はあなたのことを、あなたよりよく知っているの。だってずっと見てたんだもの。
あなたにだけは、私と同じ道を歩んでほしくないの。
ただあなたが、その人だと分かった時、私、嬉しかったな……。
ごめんね…こんなこと、話すつもりなんかなかったのに…ごめんね……。


そこまで言われたはるかは、決意を固めた目で変身スティックを見つめる。









そして現在。はるかの手には、あの日受け取ったスティックが握られている。
そこへ現れるみちる。


お仕事のようね。

ああ、行こう、みちる。

ええ、よくってよ、はるか。


ウラヌスプラネットパワー・メイクアップ!

ネプチューンプラネットパワー・メイクアップ!


二人はそのまま、セーラーウラヌスとセーラーネプチューンに変身した。

間髪入れずに、ウラヌスはユージアルにワールド・シェイキングを放ち、彼女からピュアな心を叩き落とす。
続いてネプチューンがハードラーのラインを千切り、ムーンら5戦士の拘束を解くのだった。

旗色が悪くなったユージアルは後をハードラーに任せて退散。
ハードラーのライン攻撃を避けるネプチューンと5戦士(遅れてムーン)。
「何度も同じ攻撃を食らうもんですか!」とマーズはバーニング・マンダラーで牽制し、逃げるハードラーをウラヌスが追う。



残念だけど、僕からは逃げられないよ。僕は風だからね。


そのままハードラーを羽交い絞めにしたウラヌスは、「今だ、ネプチューン!」と指示。
躊躇なくネプチューンはディープ・サブマージを放ち、「危ない!」と叫ぶマーズら4人と、「ダメ!」と恐れるムーン。
だが、寸前でウラヌスは攻撃から逃れ、直撃したハードラーはダウンした。

直後、ネプチューンの「今よ!」の合図と共にムーンはムーン・スパイラル・ハートアタックを放ち、「ラブリー!!」と叫んでハードラーは倒れ、元のハードルに戻った。

ウラネプの見立ての結果、エルザのピュアな心はタリスマンではなかった。ウラヌスによってピュアな心はエルザに返され、彼女は息を吹き返した。
マーズ「悔しいけど…」ヴィーナス「やるわね、あの二人」と感心する一同。エルザはウラヌスの姿に何を思ったのだろうか。


夕陽の海辺をはるかの運転する車が走っている。助手席にはみちるがいて、後部座席にははるかの絵が描かれたスケッチブックが置いてある。



そして僕はこの道を選んだ。いや、自分がセーラー戦士という確かな事実を認めただけだ。
そう、僕は世界を救うメシアを探さなきゃならない。立ち止まることは許されない闘いの日々。

だけど、君に逢えて良かった……。

え?


このままずっと二人で走ろう。今夜は帰さないぜ?

まぁ♡


目を合わせたように、二人は笑い合うのだった……。






【余談】

  • 榎戸洋司氏の『セーラームーン』シリーズ脚本担当第3話目である本話は、はるかとみちるの心情を克明に示し、各方面から絶賛された。
「ウラネプ担当脚本家」という異名もファンの中で根付くほどであった。
その功績もあって、21話(通算110話)のタリスマン出現や36話(通算125話)のサターン覚醒などといった重要な回の脚本を任され、更には次回作『SuperS』のシリーズ構成まで任されることとなる。


  • 回想シーンで登場した怪物は「プロトダイモーン」といって、ダイモーンのなり損ないである。
これは原作の雑魚敵としても登場しており、土萠教授は実験として無限学園の生徒にダイモーンの卵を産み付け、完全体を生み出す試行錯誤をしていたようだ。


  • 本話初登場のウラヌスとネプチューンの変身バンクは、ノンクレジットだが幾原SDの友人でもある庵野秀明が絵コンテを担当している。






追記・修正は海辺をドライブしてからお願いします。

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最終更新:2020年07月06日 12:49