アイゴ

登録日:2020/10/08 Thu 19:17:40
更新日:2023/07/19 Wed 00:16:20
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アイゴは、

1.スズキ目アイゴ科の海水魚
2.悲しいときや困ったときなどに叫ぶ韓国語のフレーズ
3.トヨタ自動車が欧州向けに製造販売している自動車のモデル

などがある。
ここでは、スズキ目の海水魚について述べる。とくに断りない場合、日本近海に広く分布するアイゴ(Siganus fuscescens)について説明する。


【特徴】

外見は木の葉のような形をしており、体表は褐色である。全長30cm前後になる。
背びれ腹びれ臀びれには太く強い棘がある。この棘には毒腺があり、刺されるとひどく痛む。
食性は雑食である。水中の小動物のほか、海藻も好んで食べる。


【釣り人とアイゴ】

ひれの棘に毒があり、味の評価が分かれる(後述)ことから、外道扱いされることがある。
一方で、引きの強さを好んで専門に狙う釣り人もいる。

釣り餌は一般的なエサであるオキアミやサナギ*1などのほか、植食性の強い本種向けのエサとして酒粕、海苔、缶詰のスイートコーンなどが使われる*2

釣り上げたら毒棘に刺されないように扱う必要があり、食べる場合は下処理*3が重要なので、なにかと手間のかかる魚である。


【食用魚としてのアイゴ】

食用魚としてはマイナーである。
味は磯臭いという一定の評価がある(もっとも、植食性の海水魚はたいていそう言われるが)。一方で「アイゴの皿ねぶり」、つまり料理が載っていた皿までなめるほど美味いとする意見もある。

アイゴの身は締まった白身であり、食べ方は刺身、煮付け、干物など一般的な白身魚に準ずる。内臓の処理が適切でないと磯臭くなりやすいとされる。

アイゴを食用として珍重する地域は、和歌山県徳島県沖縄県などがある。磯臭さの度合いは地域差があるようで、瀬戸内地方では内臓も煮たり焼いたりして食べるらしい。

沖縄では南方系の大型種であるゴマアイゴ(S. guttatus)が高級魚として取引される。また、郷土料理として知られる「スクガラス」は、全長3cmほどのアイゴの稚魚(これを地方名で「スク」という)を塩辛に加工したものである。島豆腐をお皿代わりにスクガラスを載せた「スクガラス豆腐」は、沖縄料理店でよく見られるメニューである。お酒によく合う。
スクは7月~8月にかけての大潮の日に群れをなして海岸に接近する。これを狙うスク漁は沖縄の夏の風物詩であり、「スク水揚げ」の見出しが新聞やテレビに躍る。
そしてなぜか騙される紳士が続出する


【観賞魚としてのアイゴ】

ヒフキアイゴ(S. unimaculatus)などのサンゴ礁に生息する種は色鮮やかな姿をしており、アクアショップで販売されたり水族館で展示されたりする。
本州のアイゴも、ショップで見かける種と同様に、海水魚飼育のための標準的な設備で飼える。
水族館では、小松菜などの野菜を与えて飼育していることがある。


【その他】

地方名

日本各地に独自の地方名がある。中には「バリ」「ネショウベン」といった名前もあるが、これは磯臭さを小便に例えたものである。
「バリ」と呼ばれる地域の中でも長崎県では周期的に大発生することから、「この魚は竜宮城の瓦であり、定期的に交換するとき海に放たれる」と信じられているとか。

磯焼けとアイゴ

磯焼けとは夏にかけて沿岸の大型海藻(ワカメやホンダワラなど)の群落が消失する現象である*4。アイゴは、海藻を食べてしまうことで磯焼けの原因のひとつになっているのではないかと考えられている。





追記・修正は、夏の沖縄でピチピチのスク水揚げを体験してからお願いします。

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最終更新:2023年07月19日 00:16

*1 養蚕業で繭を煮たあとに残るカイコガのさなぎ

*2 主に酒粕と海苔は撒きエサ、スイートコーンは付けエサにする。スイートコーンはチヌ釣りにも使われることがある。

*3 調理するときに刺されないよう毒棘を切り取る。また、くさみを抑えるために内臓の除去や血抜きを速やかに行うことが望ましいとされる。

*4 アワビやサザエの餌場、魚の隠れ家や産卵場所が失われることで水産資源に悪影響があるとされる