塩辛

登録日:2012/02/15 Wed 21:05:15
更新日:2022/11/16 Wed 23:52:55
所要時間:約 3 分で読めます




塩辛とは、魚介類などの身を内臓と一緒に漬けにした発酵食品。
その歴史は古く、縄文時代から食べられていた。

基本的に塩分が多いと微生物の活動が弱まり、食べ物の持ちがよくなる*1
が、一部の食品は塩分の多い環境でもそれに耐える微生物が活動を続けることがあり、
塩分が多いまま特定の発酵だけが進んで独自の味を持つ。これが塩辛。
主に魚介類が使用されることが多いが、獣や鳥の肉を使った塩辛もある。
生臭いから嫌いという人も多いが良質なものは臭みが少なくて美味。
完全に発酵しきって液体になったものを調味料として使用するものは「魚醤」と呼ばれる。日本のしょっつる、いしる、いかなご醤油、タイのナンプラー、ベトナムのヌクマムなど。

名前の通り塩辛い味のため、熱々ご飯のお供やお酒のつまみに良い。お茶漬けの具にしても美味しい。
また、アンチョビ代わりとしてパスタピザにも利用できる。というか、アンチョビというのが小イワシの塩辛だしね。


◆魚介類


  • イカ
おそらく塩辛の中では最も有名だろう。
安くて肝が大きいスルメイカが主に使われている。
ご飯やお酒に合うのはもちろん、ほくほくに茹でたジャガイモチーズと一緒に食べても美味しい。
赤い色をした「赤作り」が一般的だが、富山ではイカスミを混ぜた「黒作り」もある。驚きの黒さ。
また厳密には塩辛ではないが、生きたイカを醤油をベースにしたタレに漬けたイカの沖漬けというものもある。
また、ホタルイカの赤作りや沖漬けや黒作りも存在する。
水産物加工品大手の桃屋は、塩分15%超の「塩からい」塩辛の瓶詰めを意地んなって作り続けている事で知られている。

  • タコ
山葵で漬けた「たこわさ」が有名だろう。
タコのコリコリとした食感が楽しい一品。
某女子高生探偵曰く「ポン酒と相性抜群」。

  • ナマコ
腸を使った「このわた」や卵巣を使った「くちこ」がある。
仄かな甘みが癖になりそうな珍味。

有明海の沿岸各地で作られる、サワガニやシオマネキなどの小さい蟹を殻ごと粉砕し、塩や唐辛子と共に発酵させた「がん漬け」が有名。
韓国の「カンジャンケジャン」(ワタリガニの醤油ダレ漬け)もカニの塩辛の一種。

肉は無発酵の塩漬け・乾燥で食べられる。
シャケの腎臓*2を塩蔵・発酵した塩辛は「めふん」と呼ばれ、前者とは別個の発酵食品で北海道名物。範馬勇次郎の好物としても知られる。
ミネラルやビタミンが豊富であり健康食品としても注目されている。

  • ハタハタ
秋田県の県魚であるハタハタを塩蔵・発酵させ、液体を取り出して「しょっつる」という調味液として利用する。小魚の醤油、と理解してOK。タイのナンプラーなどと発想は同じ。
しょっつる鍋や汁物の出汁に使われる。

鰹の胃や腸を塩漬けにして熟成させた「酒盗」という塩辛が古くから作られている。
その名の通り酒の肴にするとみるみる酒が無くなっていく。
また、調味料としてチャーハンなどの料理に使用することも。魚介の旨味の塊だが、塩味が強烈なので味見は慎重に。
鰹なだけに高知県の名産として知られる。

「うるか」という塩辛が珍味として知られている。
内臓のみを使った「苦うるか」の他、身を混ぜた「身うるか」などがある。

  • エビ
甘エビ(ホッコクアカエビ)の塩辛が代表的だがボタンエビや白エビもエビの甘さと舌触りが感じられて美味。エビの甘さを生かすために米麹が入れられていることもあり、まろやかな旨味が楽しめる。

  • アミ
韓国ではアミ目の小エビの塩辛をセウチョと呼び、キムチなど色々な料理に魚介の味を追加する食材として重要である。こちらは材料の原型がとどまっている。
東南アジアでもアミの塩辛が大切な調味料として使われているが、こちらは完全に発酵しきってペースト状。
どちらも臭いがすごいので調理は慎重に。

  • タラ
タラの胃袋の塩辛は韓国ではチャンナンジョ、日本ではチャンジャと呼ばれている。
唐辛子とニンニクに漬けられたキムチ風の辛みとコリコリした歯ごたえが人気。

沖縄ではアイゴの稚魚をスク、塩漬けをカラスと呼ぶ。スクの塩辛スクガラスを島豆腐に乗せたスクガラス豆腐は沖縄のおつまみとして知られる。


余談だが 世界一臭い食べ物・シュールストレミング は鰊(ニシン)を塩ではなく海水で漬け込んで発酵させたもの。
不完全な塩辛である。詳しくは項目を参照。

◆肉類


鶏の内臓や皮を塩漬けにしたもの。
魚介類の塩辛と比べて臭みがなく、塩辛は生臭いから苦手という人でも美味しく頂ける一品。

みげ(鹿の胃袋)などを使う。
万葉集では「我がみげは御塩のはやし」と鹿の塩辛のことが詠われている。

  • ツグミ
野鳥のツグミの身と内臓を刻んで塩漬けにする。
現在では鳥獣保護法によって獲ってはいけないことになっているため、現在では味わうことのできない一品。



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最終更新:2022年11月16日 23:52

*1 実は砂糖でも似たような事になる。糖分の多いジャムは保存食になる。ただ砂糖は塩に比べて量産が面倒なので、普及が遅れた。

*2 背骨に沿った、いわゆる「サカナの血ワタ」