さようなら、ドラえもん(ドラえもん)

登録日:2021/03/03 Wed 17:50:00
更新日:2021/03/09 Tue 23:59:27
所要時間:約 6 分で読めます




「さようなら、ドラえもん」とは漫画『ドラえもん』のエピソードの1つ。
小学三年生1974年3月号に掲載された時は「みらいの世界へ帰る」であり、項目名はてんとう虫コミックス第6巻に収録された際のサブタイトル。

ドラえもんがのび太と別れ未来に帰るという実質的な最終回にあたるエピソード。
また、これまでドラえもんの道具ばかり頼っていたのび太が、自分の力だけでジャイアンに立ち向かう『ドラえもん』屈指の名シーンが描かれた回でもある。

【あらすじ】


まてえ、このやろう。

たすけてえ、ドラえもん。


開幕早々ジャイアンに追いかけられるのび太
間一髪家に逃げ込むと、いつものごとくジャイアンに仕返しをするためにドラえもんに道具を貸してほしいと頼む。
だが、ドラえもんは「ひとりでできないけんかなら、するな!」と一喝する。
ドラえもんの毒舌ぶりはさほど珍しくないが、今回は明らかに様子がおかしい。
のび太はドラえもんに事情を聞くと、衝撃の事実を知ってしまう。


帰る!


未来の世界へ?


何と、ドラえもんは近日中に未来の世界へ帰らなければならなかったのだ。*1
突然の別れに驚いたのび太は、いつも以上に泣きついてドラえもんを引き留めようとするが、ママとパパはそれぞれ「ドラちゃんにはドラちゃんのつごうがあるのよ。」「ひとにたよってばかりいては、いつまでたっても一人前になれんぞ。」と窘める。
その夜、家族揃ってドラえもんのお別れ会を実施したが、のび太の表情は暗いままだった。

そして、ドラえもんと一緒に過ごす最後の夜。
普段は押し入れで寝ているドラえもんだが、今日はのび太の布団に入って寝るようだ。
2人とも別れが惜しいのかなかなか寝付けず、「ねむらなくてもつかれないくすり」*2を飲んで朝まで過ごすことに決める。
その後、綺麗な満月に誘われて夜の散歩に出掛けた。


のび太くん…………。

ほんとうにだいじょうぶかい?

なにが?

できることなら……、帰りたくないんだ。

きみのことが、心配で心配で………。

ひとりで宿題やれる?

ジャイアンやスネ夫にいじわるされても、やりかえしてやれる?

ばかにすんな!ひとりでちゃんとやれるよ。

やくそくする!


その言葉を聞いたドラえもんは感極まって涙を流し、「ちょ、ちょっとそのへんを、さんぽしてくる……。」と言って先に行ってしまった。
のび太は、涙を見せたくないというドラえもんの気持ちを理解していたようだが。

一人ドラえもんが戻ってくるのを待っていたのび太は、寝ぼけて夜の町を徘徊しているジャイアンを目撃した。間の抜けた寝顔をニヤニヤしながら眺めていると、運悪くそのタイミングでジャイアンが目を覚ましてしまい、そのことに気づいて激怒。
のび太は思わずいつもの癖でドラえもんを呼ぼうとするが、慌てて口を閉じてジャイアンを隠す。
ここでドラえもんを呼んで助けて貰うことは実に簡単だ。
だが、それでは今までと変わらない上、先ほどの約束を破る事になり余計にドラえもんを心配させてしまう。
のび太は、ドラえもんに安心して帰ってもらう為、自分の力だけでジャイアンと戦うことを決意する。


けんかなら、ドラえもんぬきでやろう。


ジャイアンものび太の提案に嬉々として賛成する。
ドラえもんの支援が無いのび太は取るに足りない相手と思ったのだろうか。
なお、ドラえもんはのび太が助けを呼ぶ声には気づいたが、のび太の姿が見えなかった為、先に家に帰ってると思いまっすぐ帰宅する。


そして、のび太とジャイアンの喧嘩が始まったが、体格や経験値の差は歴然であっという間にのび太はギタギタにされてしまう。
だが、今日ののび太は一味も二味も違う。
いくらジャイアンに叩きのめされても闘争心が折れることなく、何度も何度も果敢に立ち向かう。
それに伴いジャイアンの暴力も苛烈になり、靴は片足脱げ、眼鏡は外れ服はボロボロになり右目回りに酷い痣ができる等の凄惨な姿にしてしまう。
しかし、のび太は気力を振り絞って帰ろうとするジャイアンを掴む。


ぼくだけの力で、きみにかたないと……。


ドラえもんが安心して……、


帰れないんだ!


一方ドラえもんは、一時間も経つのにのび太が帰って来ないことにただならぬ胸騒ぎがして、夜の町を探し回る。
そして、空き地にてジャイアンと喧嘩するのび太を見つける。


いてて、やめろってば。

悪かった、おれのまけだ。ゆるせ。


まさにその時、あまりののび太のしつこさに辟易したジャイアンが負けを認めたのだった。


のび太くん!

かったよ、ぼく。


ボロボロになってしまったのび太の姿は勝者とは程遠いものかもしれない。
事実、喧嘩の技量はジャイアンより遥かに劣っており、終始殴られっぱなしだった。*3
だが、ドラえもんの為に戦う精神力の強さがジャイアンを降伏に追い込み、試合には負けても勝負に勝つという結果を生み出した。
のび太はドラえもんとの約束をしっかり果たしたのだ。


みたろ、ドラえもん。かったんだよ。

ぼくひとりで。もう安心して帰れるだろ、ドラえもん。


もう、あの頃の弱虫なのび太はいない。
ドラえもんは何も言わずに号泣していたが、この時の彼の気持ちはもはや聞くまでもないだろう。
そのままのび太を家に連れて帰り手当てをして、静かに眠るのび太をずっと見つめるのだった。


翌日、のび太が目覚めるとタイムマシンの出入口となっていた勉強机の引き出しが元に戻っていた。
いつも通りの日常を送るが、ただ1つ変わった事は……。


ドラえもん、きみが帰ったらへやががらんとしちゃったよ。

でも……すぐになれると思う。

だから………、心配するなよドラえもん。




〈ドラえもん第6巻おわり/第7巻につづきます〉
*4

なお、この後ドラえもんがのび太に残したあるひみつ道具が2人の運命を大きく変える事になるのだが、それはまた別のお話。

【執筆背景等】

『ドラえもん』自体、元々は小学館の学習雑誌、いわゆる「小学○年生」シリーズの掲載作品であり、
4月から進級する読者にとっては同誌掲載作品とともに「一年経ったらさようなら」しなければならない存在でもあった。
また、『ドラえもん』は連載開始当初「小学五年生」と「小学六年生」では連載していなかったため、「小学四年生」3月号には「建前上の最終回」を用意しなければならなかった。
そのため、『ドラえもん』の最終回は本作以外にも「ドラえもんがいなくなっちゃう!?(小学四年生1972年3月号掲載)」「ドラえもん未来へ帰る(小学四年生1971年3月号掲載)」の2作が存在する。

……さて、ここでおかしな点に気付かないだろうか。
最終回を必要としていたのが「小学四年生」であり、先に挙げた2作がそこに掲載され、かつ単行本に収録されなかったのに対し、本作は「小学三年生」に掲載されたうえに単行本に収録されていると、明らかに扱いが異なる。
実は他2作と異なり、本作だけは「建前上の最終回」ではなく「真の最終回」を意図して描かれたものだったからである。

テレビ朝日系のドキュメンタリー番組『驚きももの木20世紀』の1997年8月8日放送分「ドラえもん伝説 永遠の漫画少年 藤本弘」によると、当時作者は新連載をいくつも抱えており、さらに日テレ版ドラえもんも放送終了していたことから、本作をもって『ドラえもん』を終了させるつもりだったのだという。
しかし、いざ終了させてみても作者の頭から『ドラえもん』が離れることはなく、思い直して連載続行を打診、後日談「帰ってきたドラえもん」の執筆と「小学四年生」4月号への掲載をもって連載は続行されることとなる。

とはいえ、一度最終回を挟んだということもあって、所謂「謎本」ブームの際に発行された『ドラえもん』考察本の中には「『さようならドラえもん』までと『帰ってきたドラえもん』以降では作風に変化がみられる」と指摘しているものもあった。

また、ラストシーンのゴミ箱には「OWARI」と書かれているのだが、単行本掲載時は「LOVE」という字に書き換えられている。
終わりじゃなくなったからだろう。


日テレ版ドラえもんの最終回のタイトルも「さようならドラえもんの巻」だがこれの内容は「ドラえもんがいなくなっちゃう!?」である。これが放送されたのはこの話の前であり名前が被ったのは偶然だろう、

【アニメ版】

◇大山版「帰ってきたドラえもん」
1981年1月3日放送。
後日談の「帰ってきたドラえもん」も含まれている。

◇大山版 映画「帰ってきたドラえもん」
1998年3月7日公開。
ドラえもん のび太の南海大冒険」の同時上映の1本。
後日談の「帰ってきたドラえもん」も含まれている。

◇わさドラ版「さようならドラえもん」
2009年3月20日放送。

◇映画「STAND BY ME ドラえもん」
映画序盤、セワシに「のび太を必ず幸せにする」と設定されたドラえもんに「のび太がしずかちゃんと結婚する」という未来を確定させた事で目的達成…と、ドラえもんが未来に帰る理由付けがなされている。




みたろ、ドラえもん。追記・修正したんだよ。

ぼくひとりで。もう安心して帰れるだろ、ドラえもん。

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最終更新:2021年03月09日 23:59

*1 理由は語られておらず不明。この点はアニメ化された際に補完されたことがある

*2 字面がヤバい薬を連想させるのか、これを取り出したドラえもんの目がラリっているコラ画像が存在する

*3 のび太がジャイアンを打ち負かしたシーンをよく見るとジャイアンにある程度ダメージを負わせており完全に殴られっぱなしというわけではない。

*4 てんコミを初めて発売した際は「とりあえず6巻まで」という形になったため、一区切りとして初版ではこの文言がなかった。その後、7巻以降の発売が決まったため増刷時に追加された。