ギャオス(ガメラシリーズ)

登録日:2025/08/13 Wed 21:13:04
更新日:2025/09/07 Sun 19:29:10
所要時間:約 10 分で読めます





「ギャオス」とは、ガメラシリーズに登場する怪獣。


概要

初登場は昭和シリーズ第3作『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』。
シリーズを代表する敵怪獣であり、「ガメラ=子どもを守るヒーロー」という方向性を決定づけた偉大な存在にして、ガメラ最大の宿敵である。
言わばゴジラシリーズで言うキングギドラ枠。
ただし、そういったイメージが定着したのは平成シリーズからで、昭和の頃はあくまで「今回の敵怪獣」の一体でしかなかった。

翼を羽ばたかせ大空を舞う姿から劇中でも現実でも鳥扱いされる事が多いが、実際は羽毛も嘴も無く、牙があり超音波を武器とするというコウモリ…もっと踏み込むと吸血鬼ドラキュラがモチーフの怪獣である。
企画段階では「バンパイヤー」というそのまんまな名前だった。
時代が進むにつれてデザインがワイバーンのようになってきているので、ある意味オンバーンの先輩とも言えるか。

ちなみに、ドラキュラがモチーフなのは日本が勝手に決めた「世界四大モンスター」のうち、キングコングとフランケンシュタインを東宝が使っていたため、東宝特撮を一方的にライバル視する大映サイドが「ならこっちはドラキュラ伯爵だ」ということで注目したとのこと。

性格はどの作品でも残忍であり、食べられる物は何でも食べ、種を残す為なら平気で共食いを行うばかりか、場合によってはガメラすら「敵」ではなく「食料」と見做す。

最大の特徴は種類の多さ。
新作に登場するたびに新種・変異種が増え、個体数も増殖する傾向にあり、映像作品以外も考慮すると全ての種類を把握するのは困難を極める。
特に1997年発売のシューティングゲーム『ガメラ2000』ではギャオスのDNAがエイリアンに悪用されて魔改造されまくる事に。
没になったとは言えギャオス・アルマジロは迷走しすぎだろ。
それどころかイリスにジーダスとほぼ別物の怪獣が誕生したケースもあり、自由度とポテンシャルの高さに関してはゴジラデビルガンダムにも匹敵しうる。
「ガンダムを怪獣扱いするな」?いやもう怪獣でいいだろアレは。


ギャオス一覧

名称は玩具商品で用いられた物やファンの通称も含む。
ここに記載されてる個体以外にもいると思うので、知ってる方はどしどし追記をお願いします。


昭和ギャオス

別名 超音波怪獣
身長 65m
翼開長 172m
体重 25t
飛行速度 マッハ3.5

『大怪獣空中戦』に登場したいわゆる「初代」
富士山の周辺を根城としていた。
最初の発見者である英一少年により「ギャオーって鳴くからギャオス」と命名される。

首の骨が二股で音叉のようになっており、これを震動させて超音波メスを発射する。
この構造により、首を動かす事は殆どできないのだが(ただ、明確に「首が回らない(物理)」なのはこの代のみ)、命中率は非常に高くヘリコプターどころか戦闘機にも当てて容易く両断している。
また、首を動かせないというのは左右に向けてであって、下に向けることはできた。後述の「脚を自切した」場面はまさにそれ。
その他の技として、羽ばたくだけで戦車を吹き飛ばすほどの風圧を放つ。
頭頂部は空腹時には緑に、危機的状況には赤く発光する。
高い再生能力を持ち、劇中ではガメラに水中に引きずり込まれる事を回避する為に超音波メスで自らの足を切断し、逃走したのだが、1日と経たずして再生した。
なお、「ギャオスは足を欠損したぐらいでは頓着しない」という描写は以降の作品でも受け継がれた。

コウモリらしく血を好み、人間を食らい、人工の「限りなく血肉に近い味の液体」にも飛び付いた。
なお人間を捕食する際には丁寧にも手でわしづかみにしてから口へと運んでいる。

弱点はコウモリなのでもろに日光…というか紫外線で、長時間浴びると細胞が破壊されて肉体が萎縮を始めてしまう。
それ故に夜にしか活動しない。
火にも弱いのだが、こちらは腹から放つ消火液である程度カバーできる。

劇中では三度ガメラと交戦し、最終的にうなじを噛みつかれて逃げられなくなり、富士山の火口に引きずり込まれる。
断末魔の代わりに最後の超音波メスを放ちつつ、肉体が萎縮して今度こそ死亡した。

前述のようにこの時のモチーフは吸血鬼。あれでもないこれでもないとアイデアや脚本、デザインの紆余曲折あって完成したこの時のデザインが(もちろん時代に合わせてアレンジは入ったが)『大怪獣空中決戦』や『小さき勇者たち』、'15ミニムービーや『Re:Birth』でも使用されているのはご存じの通り。
如何にも翼竜然としたデザインは「飛べなくはないがドッグファイトまではできない」ガメラとの対比を「ドッグファイトできる」として狙ったようだ*1。そのためかガメラが平気の平左な昼間にはほぼ行動できず、さらに泳げない歩くの苦手とガメラが得意とする地形ではほとんど戦えないと、弱点に関してもガメラと対照的になっている。

当時の大映や撮影隊の気合の入れようはすさまじく、なんとギャオスによる記者会見まで行われた。
招待された記者たちも最初は「アホですか?(大意)」と不評だったものの、いざ始まってみるとみんなノリノリ。「怪獣としてどこが強いんですか?」「ガメラへの具体的な勝算はありますか?」などの質問が飛び、ちょっとしたスター選手みたいに扱ってもらえて大成功に終わったと記録されている。
そのためなのか?同作には記者が「ギャオスに左右真っ二つにされたクルマで走り続けて名古屋の社に報告を持って帰ろうとする」離れ業をこなすギャグシーンが存在する。
ちなみに本当に車を切断したのではなく、モーターショーでトヨタのブースに「中はこうなってるんですよ」を見せるために最初から切ってあるクルマがいたのを覚えていたスタッフがおり、借りられたそれを、別途板とキャスターで走らせることで「ギャオスに斬られたけどそのまま走り続ける車」を表現している。


+ ギャオスの巣穴
当時の児童誌などに掲載された資料では「ギャオスの巣穴」なるものが発表されていた。
いわゆる「怪獣の解剖図」などの同類なのだが、空気が循環する鍾乳洞、水飲み場、死体置き場、産卵場、そして幼虫が飼育される洞窟が描かれている。
……誤字ではなく、オケラのような土を掘る腕を持った巨大な虫が「ギャオスの幼虫」とされているのである。
正直ギャオスとは似ても似つかないというか、何でそうなったというしかないデザインであった。さすがにこればっかりは以後のシリーズでも虫だけに完全に無視され、ギャオスは孵化直後から生体と同じ姿とされている。

想像するなら、この巣穴のイラストを描いた人物が『空の大怪獣ラドン』をうろ覚えで記憶しており、同作に登場したメガヌロンを「ラドンの幼体だったかな」と勘違いして、「ラドンの幼体が虫なら、ギャオスもそんな感じだろう」と思って書き込んだと考えられる。
実際、この「ギャオスの幼虫」のイラストは、メガヌロンにそっくりだった。
なにせ当時はDVDはおろかVHSもなく、映画の内容を確認しようと思ったら再上映に期待するしかない時代。『空の大怪獣ラドン』は東宝製作だから「ちょっと確認させてくれや」と頼むのも難しいだろう。
ご丁寧に『空の大怪獣ラドン』にはラドンの卵も、そこから孵化するラドンの姿もあったし、メガヌロンは大きなインパクトがあった一方で、雛に食べられるシーンはごくあっさりしたものだった。
となれば、おぼろげな記憶でメガヌロンそっくりな「ギャオスの幼虫」が出てしまったのもあり得る話である。


宇宙ギャオス

ガメラ対大悪獣ギロン』に登場。
惑星テラの環境をコントロールする電子頭脳が狂った為に大量繁殖したギャオスの亜種で、「ギャオスは群れで活動する」というイメージの元祖。

体色が銀色、血液が紫色なのを除けば地球のギャオスとは何ら変わりはないのだが、地球のギャオスとは違い昼間でも活動できる。
また、とんでもない悪臭がするらしく、倒しても食料として利用できない為、テラが滅びる大きな一因となったらしい。

劇中では一個体がギロンと交戦するも結果は惨敗。
右足と両翼、そして首を切断されて死亡した。
その後さらに輪切りにされたが上記の通り臭いのでギロンはギャオスを食べられなかった。
後に別の個体も登場したが、こちらはギロンの姿を確認するやいなや逃げている。


スーパーギャオス/ギャオスハイパー

平成三部作に登場したギャオス。
詳しくは項目参照


アルビノギャオス

『ガメラ4 真実』に登場したとされる白いギャオス。
ギャオスハイパーの突然変異体でガメラのプラズマ火球を無力化する事ができるという。


ギャオス・アルマジロ

全高 6.7m
全幅 13.2m

『ガメラ2000』に登場。
ステージ4の中ボス。分岐点によりノーマッドバイパーとの選択
転がって移動し、装甲が厚い。
ギャオスである意味とは。


ギャオス;M(KIND)

身長 13m
全幅 3.5m

『ガメラ2000』に登場。
ステージ4のボスであり、読みは「ギャオスマカインド」。
腕と翼が独立しており人型に近くなった。
デジモン好きは「邪悪なアルフォースブイドラモン」をイメージするといい。


ネオ・ギャオス

『ガメラ2000』に登場。
ステージ5のボスであり、頭が二つある。


ギャオス3

全長 220m
翼長 120m(開翼時)
全高 30m

『ガメラ2000』に登場。
ステージ6のボスであり、読みは「ギャオススリー」。
三体で一個体のギャオスで、脚が退化している。


ギャオスソルジャーA(Arrow)型/ギャオスソルジャーG(Glide)型

『ガメラ2000』に登場。
上記のギャオス3が群れとして率いる。


バイオニック・ギャオス

『ガメラ2000』に登場。
ステージ7のボス。
ギャオスのDNAとガメラのDNAを掛け合わせて誕生したハイブリッド。
相反する存在同士を掛け合わせた為か、頭部にギャオスの面影があるぐらいでどちらにも似ていない巨大怪獣になってしまった。
強いてあげるならビオランテが近い…か…?
一度は倒したかと思いきや、下半身を切り離して飛行する第二形態へと移行する。
シルエットだけならメガドラモンである。


オリジナルギャオス

体高 30m
翼長 90m
体重 500t

小さき勇者たち~ガメラ~』に登場。
「オリジナル」はジーダスの元になった事に由来する。
青い体と二股の舌が特徴。
歴代でも小柄ながら体重は大幅に増加した*2

1973年に日本に群れで飛来し、自衛隊の総戦力の17%が失われる等、甚大な被害をもたらしたとされる。
劇中では四体がアヴァンガメラと交戦し、最終的にアヴァンガメラの自爆によって全滅した。
だがその怨念は肉片と共に残り、それを食べたトカゲがジーダスと化してしまう。
これに関しては「ギャオスの細胞は他の生物を異常進化させて怪獣化させる力がある」とも説明された。G細胞やんけ。


ギャオス2015

2015年にシリーズ50周年記念として公開された映像『GAMERA』に登場。
大量の群れで東京を襲撃し、まなぶ少年の父親を含め人々を喰らい続けてこれを壊滅状態に追い込んでいたが、突如出現したガメラの火炎噴射で一掃させられた。


リバースギャオス

身長 不明
翼開長 最大100m(小説版では150m)
体重 200t
飛行速度 マッハ3以上
※上記のプロフィールはガメラと交戦した個体のもの。

GAMERA -Rebirth-』に登場。
本作でガメラと交戦する5大怪獣のトップバッターを飾る。
例によって群れで行動しており、大型の一個体と複数の小型個体が登場。
眼球がむき出しなどかなり醜悪なデザインとなっている。

本作の怪獣達は10万年前に栄えた超古代文明が産み出した生命体である為、どいつもこいつも高い知能を持っているのだが、その結果歴代でも特に残忍でサディスティックな性格として描かれている。
例として小型個体がボコ達を追いかけまわす場面があるのだが、あれはわざと逃がして怖がらせるのを楽しんでいたという。
もちろん共食いもする気満々だった。

出撃した在日米軍のエアフォースを返り討ちにする戦闘力を見せたが、最終的に駆けつけたガメラによって全滅させられる。
だが、ギャオスによってボコを始めとする子供達はマーキングされ、怪獣達に執拗に付け狙われる事になり、さらにギャオス出現に反応してユースタス財団が保管していたジャイガーの卵が孵化。
おまけに日本以外にも襲撃していたらしく、ガメラが対応に追われた結果、ジグラが野放しとなり、その死骸は後にバイラス蘇生の為に活用される…と、まさに災厄の幕開けに相応しい活躍となった。


エスギャオス

体長 360m
体重 3600t

『GAMERA -Rebirth-』のラスボス
本作のギャオスの特異個体であり、目が複眼で六つもあったり、斑模様だったりで非常に不気味な姿をしている。
名前の「エス」は特殊な変異を意味する「special mutation」や、「スゴい」の意味があるらしい。
超古代文明の末裔であるユースタス財団評議会曰く、このような個体が発現したのは10万年ぶりとの事である。

歴代ギャオスどころかガメラシリーズ全体で見ても最大級の巨体を持つ大怪獣で、マザーレギオンすらも上回る。
ただしその巨体故かギャオスなのに空を飛ぶ事ができず*3、劇中では泳いだり地面を這って移動した。
戦闘力の方はというと、超音波メスの威力は一撃で入り江を真っ二つに割るほどにまでなっている。
しかし巨体を利用してガメラに格闘戦を挑んだら、ガメラは右腕が再生してないのにも拘らず、ガメラにぼこられて慌てて間合いをとり、その後放った超音波メスもガメラの甲羅はまだしも腕の方でも防がれる等、微妙に情けない場面も。
だが、エスギャオスのもっとも厄介な点は長い舌から投与する「RNAウイルス」
ユースタス財団がエスギャオスに備えたこれは、怪獣をリプログラミングする効果を持ち、人類を守るようプログラムされているガメラに対するピンポイントメタである。
しかし舌から出す為、ウイルスを出す間は超音波メスが使えない弱点がある為、間合いをとった米軍と自衛隊から一方的な集中砲火を受けるはめになった。

劇中では幼体の状態で超音波メスを使ってバイラスの死骸から飛び出し、エミコとバイラスの死骸を食べて急成長。
短時間で上記の巨体となる。
その後、ガメラを狙って海を渡り、ガメラを守る自衛隊と交戦。
佐々木率いる戦車部隊に思わぬ苦戦を強いられるも、部隊は佐々木と江夏を残して全滅と相成った。
ここでボコがガメラが回復する時間を稼ぐ為に自ら囮となり、エスギャオスは一旦標的をガメラからボコに変更する。
もちろんガメラがそれを許すはずがなく、ついに最後の怪獣バトルが幕を開ける…。

余談だが、「カモメのジョナサン」「醜いアヒルの子」「なら白鳥になれる」とやたら鳥に喩えられたギャオスでもある。
だから、コウモリなんだっつーの!
ついでにラスボスなのに思いっきりオープニングとエンディングに出ている。特にエンディングの方はギャオス→ジャイガー→ジグラ→ギロンバイラス→エスギャオスと順番に出てくるので、2回目のギャオス登場に「おや?」となった視聴者は多い。隠せ。


派生怪獣

イリス

ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』に登場した、シリーズ屈指の美しさを持つ外道怪獣
詳細は項目参照


ジーダス

『小さき勇者たち~ガメラ~』に登場。
上記の通りギャオスの肉片を食べた為に怪獣となった存在。
非常に獰猛だがギャオスの怨念に操られているにも等しい状態でもあるらしい。
ノベライズ版では同様の経緯で誕生した「Gバルゴン」「Gバイラス」「Gギロン」「Gジャイガー」「Gジグラ」も登場した。



追記・修正はカメよりコウモリの方が好きな方にお願いします。

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最終更新:2025年09月07日 19:29

*1 当時「後ろ足だけひっこめて、ジェット戦闘機やロケットの要領でまっすぐ飛ぶ」アレはまだ設定として定着していなかったし、そもそも金子・樋口シリーズほど頻繁には本編中で飛んでいない。これは飛行シーンのために飛び人形ガメラに取り付けて使うロケット花火が極めて高価だったことから。

*2 むしろガメラ怪獣は「軽すぎる」と言われる事の方が多いのだが。

*3 そもそも翼がボロボロ。