五目並べ

登録日:2021/03/18 Thu 00:36:00
更新日:2021/08/13 Fri 22:57:40
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「五目並べ」とは囲碁の道具を用いて行うゲームである。
調整版ゲームである「連珠」についてもこちらで解説する。


●目次

概要



ルールは非常に単純。
縦横19列、計361目の碁盤の上でお互いに順番に黒・白の碁石を並べていき、縦・横・斜め(45度方向なら右斜め・左斜めどちらでも可。)のどこかに同じ色の石を5個並べた方が勝ちである。碁盤の「目」に石を5つ並べることが最終目標である事から「五目並べ」という訳である。

その他のルールに関する補足事項としては、一般的には先攻は黒とされることが多く、先攻の最初の置き場所は暗黙の了解として天元(碁盤中央の目)が多い。また置かれた石は対局終了まで取り除かれない為、置いた石と同じ目に置くことは出来ない。


日本では300年前、即ち18世紀前後から原型となるゲームが存在したとされている。
これだけ聞くと古そうに思うかもしれないが、元の使用道具である囲碁はそこから1000年近く前にあたる奈良時代には既に日本に伝わっていた事を考えると「囲碁用具を用いた派生ゲーム」としては意外と新しいゲームという見方も出来る。



用語



「五連」とも。縦・横・斜めのいずれかに同じ色の石が5つ並んだ状態のこと。
名前が示す通り、「5つ以上」ではなく「5つ丁度」である。
当然これが出来た時点で即勝利となる為、両者ともにこの形を積極的に狙っていく必要がある。


縦・横・斜めのいずれかに同じ色の石が4つ並び、かつ列の両端の内少なくとも片方が空いている(相手の石がなく、かつ碁盤の端でもない)状態。
要はリーチの状態で、あと1つ列上に石が置かれれば勝ちになるが、あまり露骨にやれば当然相手は妨害してくるので、いかに相手に気付かれずにこの形を作れるかが肝心。
また、間が1つ空いた四を「飛び四」と呼び、四と同等に扱う。


縦・横・斜めのいずれかに同じ色の石が3つ並び、かつ両端が空いている状態。
この状態を作る事が出来た場合、次の手番で四を作る事が出来る。
また、四同様に間が1つ空いた三は「飛び三」と呼ばれ、三と同等の効果を持つ。そして両端の内片方が止まっている場合は「眠三」と言い、三とはみなさない。


  • 棒四
列両端が開いている状態の四のこと。
この状態が出来てしまうと、相手が片方を止めても次の自分の手番でもう片方の端に置くことで五が完成する為、作った側は勝ちが確定する。


  • 長連
6個以上(かつ9個以下)の石が一列に置かれている状態
ルールによって扱いが異なり、これも勝利手であるとするルールとそうでないルールがある。


  • 三三
異なる2つの角度の列に三が同時に完成すること、ここから五が完成するまでに相手が2つの三を完全に止めることが出来ない為、これも作った人の勝ちが確定する。(ただし、相手も必勝形が出来ている場合はどちらが先に速く五を作れる形かなどで勝敗が分かれる。)


  • 四三
異なる2つの角度の列に四と三が同時にできること。
この形も本来ならば三三と同様の理屈で作った側の勝利が確定する手なのだが例外として例えば自分が四三を作っても、四の側を止める着手で同時に相手側に四が新たに生まれた場合、今度は自分がそこから相手側の五を作ることを阻止しなければならない為(こちらは四を止められたので三しか残ってなく、このままでは一手差で負ける)、この場合は例外的に四三から勝ちを確定されない。相手に四ができる状況では油断してはいけない。


  • 四四
異なる2つの角度の列に四が2つ同時にできること。
やはりこの形も三三・四三同様必勝形になる。
なお、異なる2つの角度ではないものの、四が一直線上に並ぶことで出来る四四もある。


  • 満局
最後まで打って勝敗が決定しなかった試合。
この状態になった場合はその局を引き分けとしてゲームを強制終了する。


ゲーム性




五目並べに限った話ではないが、ゲームを行う上で以下の点が気になる人は多いだろう。

「先攻と後攻ではどちらが有利なのか?」



こういった内容は数学では「ゲーム理論」という分野で研究・考察される。
「展開を作る事が出来る」事が先攻の強み、「相手の手を様子見できる」事が後攻の強みである為、それらの特徴等も踏まえることで「先攻が有利なゲーム」「後攻が有利なゲーム」「そのどちらにも分類されないゲーム」「ルールが複雑で解析が困難なゲーム」など、さまざまに分類される。


では五目並べはどうなのか。
結論から言うと、このゲームは「先攻が有利なゲーム」に分類される。
しかもその傾向はかなり強く、「第1手からお互いが最善手を打ち続けた場合、先手必勝になる」事が証明されている。
(五目並べに代表される、m行×n列の盤上で縦・横・斜めのいずれかにk個の石の列を作るゲームは「m.n.k-ゲーム」と呼ばれ、各条件ごとに考察がなされている。)




連珠



これではゲームとしてはともかく、競技としては「公平性」という観点において大きな問題を抱えていると考えられるため、後攻に有利な条件が追加された調整版五目並べである「連珠」が19世紀後半に作られた。

追加されたルールは以下の通り。

  • 縦横15列、計225目の小型囲碁盤の連珠盤でゲームを行う。
  • 先攻は第1手を天元に置かなればならない。
  • 後攻は第1手を天元と隣接する8目のどこかに置かなればならない。
  • 先攻は第2手を天元と隣接or天元から2目離れた位置の合計23目*1のどこかに置かなければならない。(後攻2手目以降は置き場所に制約がなくなる。)
  • 先攻は三三・四四・長連を禁じ手とする。(例外あり)

このゲームにて追加された「禁じ手」は「そもそも打つことが出来ない場合」と「打った後に禁じ手である事を指摘された場合敗北となる場合」の2パターンがあり、後者の場合は後攻には通常ルールでの勝利の他に「先攻に禁じ手を打たせる」ことでの勝利が可能になるため、戦略の幅が広がる。因みに指摘することなく続行した場合はその禁じ手を後から指摘することは出来なくなり、対局を続行しなければならなくなる。
???「バレなきゃあ禁じ手じゃあねぇんだぜ…………」
また「例外あり」とあるが、これは「禁じ手」と「正しい勝利条件(五)」を同時に満たした場合は勝利を優先するという事である。なお禁じ手と四三が重なった場合は禁じ手の反則適用を優先する。
黒の長連は負け、白の長連は勝ちである。(黒が五と同時に別に長連を作った場合は黒勝ち)

なお「先攻1手目(天元固定)→後攻1手目→先攻2手目」の3手で出来上がる形は、対称なものを除くと実は26パターンしかなく、パターンの事を「珠型」と呼び、「渓月」「疎星」など無駄に風流な名前が付けられている。
ルールによってはこの「珠型」を指定してゲームを始めることも。




……と、ここまで連珠についてを述べてきたが、実は連珠もまた最善手の打ち合いを続けていくと先手必勝になる事が知られている

現在、連珠は競技団体が存在し、世界大会なども開かれているのだが、そこではさらに「開局規定」*2と呼ばれるゲーム序盤の条件を追加して先攻後攻の優位差をフラットにしてゲームの均衡性を保っている。



類似ゲーム



五目並べは単純なルールのゲームなだけあって、類似したゲームが多数存在する。


  • 三目並べ
所謂「〇×ゲーム」のことで、縦横3列の9マス上で〇×を描いていき、先に縦・横・斜めに3個の記号列を作った方の勝ち。
これだけを見ると、五目並べの超簡易版にしか見えないが、実はこのゲームは最善手の打ち合いになると必ず引き分けになる事が知られている。
なお余談だが、五目並べや三目並べの一般化であるm.n.k-ゲームの解析では特別なルールを仮定しない場合、「最善手の打ち合いになった場合、先手必勝もしくは引き分けのいずれかになる」ことが知られている。
先が見えやすいゲームのため派生ゲームが存在し、例えばスリーオックス(タカラトミー商標)は電子盤面であり四個目からは自分の古い手番の記号が消えていく。(記号に三手番(自分のみ数える)の寿命があると考えるとイメージしやすい)
また別のルールには描くのではなく駒を使用し、合計6個置かれたらそれから後は駒を移動して三目を目指すというルールもある。

  • 重力付き四目並べ
「コネクト4」と呼ばれることも。
条件付きの四目並べで、横方向には制約はないが、縦方向はその縦列の一番下に落ちる様に石を置いていかなければならない。
こちらのゲームは最善手の打ち合いになると先手必勝になる事が知られている。

  • 立体四目
縦4×横4×高さ4の範囲で石を置き、縦、横、斜めに石が4つ並べば勝ちになる。
縦方向には縦列の一番下に落ちる様に石が置かれる制約もかかる。
立体なので意識の死角ができやすく、気づかないうちに3×3が成立しやすい。

  • コネクト6
条件付きの六目並べ。比較的大きな盤で行う事が好ましいとされる。
最初に先攻が1手を打った後、それぞれが交互に2手ずつ打っていく
五目並べでは後攻は先攻よりも多くの石が盤上に存在する(=石の数で常に先攻が数的優位に立っている)というシチュエーションはあり得ないが、このゲームではそういった事がなくなっている。
このゲームはシミュレーションが複雑なため、現在でもはっきりした先手・後手の必勝法等についてが解明されていない。



追記・修正は先手必勝である五目並べの競技上の均衡性が整備されたルールを考案しながらお願いします。


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最終更新:2021年08月13日 22:57

*1 隣接位置8目の内、後攻1手目の位置を除く7目 + 2目離れ位置16目

*2 仮に先手とされた者が珠型を決定し、仮に後手とされた者が先手と後手どちらを持つかを決める「珠型交代」と、先手が先手の3手目に打ちたい場所を2箇所指定し後手が選択する「五珠二ヶ所打ち」が国際ルール